<<目次へ 【決 議】自由法曹団


北朝鮮問題および北東アジアの平和についての決議


 「日本国民は、・・・政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、・・・この憲法を確定する」。戦後58年、日本はこの誓いのもとで他国に武力行使しない国として歩んできた。しかし今、この憲法の誓いが破られようとしている。
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を「悪魔」のように言いはやすマスコミに煽られ、日本は軍事大国への道を突進している。国連も国際法も無視したアメリカ・イギリスのイラク侵略を真先に支持し、違法な占領のために数千億円の国費を支出することを決めた。あまつさえ武力事件の続くイラクに率先して自衛隊を派兵しようとしている。軍事優先の論理が再び日本国民の生活の上に重くのしかかろうとしている。
 一方、北朝鮮の核問題をめぐって8月27日から29日に6者協議が行われた。日本を含む北東アジアの安全保障問題にとって歴史的な出来事であった。第二次世界大戦後、国際社会は戦争を違法化する努力を積み重ねてきた。各地で非核地帯が作られ、不戦の誓いが世界を覆いつつある。北東アジアにおいてもこの6者協議を紛争の平和的解決をはかる安全保障として発展させたい。
 しかし「北朝鮮の脅威」を誇大に叫び続け、アメリカの先制攻撃戦略に同調しようとする日本の軍事大国化の動きは、この歴史的な前進の最大の障害になりかねない。平和と繁栄の北東アジアの時代を築くのか、朝鮮半島と北東アジアに再び戦争の惨禍をもたらすのか、いま、日本国民の選択が人類史の上でも問われようとしている。
 いうまでもなく現代の戦争は民衆の生活と権利を徹底的に破壊する。「自由と民主主義をもたらすために」として始められたイラク攻撃によって、日常的に生命の危険にさらされ続けているイラク国民の現状は、そのことをまさに白日の下にさらけ出している。日本国憲法が定めた数々の自由も基本的人権も、先制攻撃を当然とする軍事優先の社会では有名無実のものとなりかねない。二度の世界大戦がもたらした悲惨な結果を深刻に反省して作られた国連等の平和のための国際機構や「法の支配」のルール、その最先端にある日本国憲法の平和条項は何としても21世紀の地球社会、なかんづく未来を築く若い世代に受け継がれなくてはならない。
 今、私たちがこのことのために声を挙げ、行動することが求められている。なかでも、日本の現状に照らせば、北朝鮮問題に関する冷静で理性的な議論と合理的な政策を提示することが大事である。朝鮮半島で絶対に再び戦火を生じさせてはならない。北朝鮮問題はなんとしても平和的方法で解決されなければならない。そしてアメリカと日本の政府を、進歩を求める人類の歴史の大道に立ち戻らせなければならない。
 自由法曹団は日本国民の自由と人権の擁護・確立のために80有余年奮闘してきた。この歴史と伝統をさらに発展させて、この歴史の分岐点で平和のうちに暮らす民衆の権利の一層の前進のために奮闘することを決議する。

2003年10月25日
自由法曹団2003年総会