<<目次へ 【意見書】自由法曹団



戦争国家を目指す改憲をゆるさない

広範な共同を呼びかける決議

 現在イラクでは、侵略戦争を進めた米英軍の占領支配のもとで、依然として戦闘が続発している。すでにイラクでは、一般市民だけで1万人もの人々が犠牲となったといわれている。ところが、政府は、アメリカの要求に追随し、現に戦闘が行われているイラクに自衛隊を派兵した。そして、米英軍の物資輸送や武器をもった米兵の輸送まで行い、米英軍の戦闘行為に加担している。これは、日本国憲法で禁止された交戦権の行使や武力行使に該当する違憲行為にほかならない。
 しかし、アメリカの進める戦争は、平和を求める世界の流れに真っ向から反するものである。イラク戦争に対しては、世界各国で1000万単位の人たちが街頭に繰り出して戦争反対を訴えた。ドイツやフランスなど多くの国がアメリカに対する協力を拒否したほか、イラクに軍隊を派兵していた国々も相次いで撤兵に動いている。さらに、去る4月だけで600名を超える人々を虐殺したファルージャの悲惨な事態や拘留したイラク人に対する虐待に対して、ますますアメリカへの非難の声が高まっている。
 ところが、日本では、戦争する国を目指して、有事法制づくりが進められ、教育基本法の改悪がねらわれている。小泉首相が2005年秋までに改憲案をまとめるようにと指示した自民党はもとより、民主党、公明党まで改憲案の検討を開始するなど、明文改憲にむけての動きが急速に強められている。改憲手続きを定める国民投票法案などの国会提出も準備されている。なかでも重視しなければならないことは、改憲勢力が前文及び9条の平和主義を改憲することにねらいを定め、アメリカの要求する集団的自衛権の行使を実現し、自衛隊を海外派兵して戦争に参加する道をいっそう拡大しようとしていることである。それは、アメリカ軍とともにイラクに先制攻撃を強行したイギリス軍と同様の行動を、自衛隊もとりうるように憲法を改悪しようとするにするものに他ならない。これは、アジアはもとより、世界に対する戦争の脅威をいっそう強めるものである。しかも、このように戦争しうる憲法のもとで、これまでにも増して国民の生活や権利、民主主義が犠牲にされることは必至である。
 私たちは、このような改憲策動を断じて許すことはできない。平和を求める国際的な世論と連帯を強めながら、何よりも改憲に反対する圧倒的な国民的世論で改憲を阻止しなければならない。それは、平和を実現し、小泉内閣の進める悪政をやめさせ、人間らしい生活と権利の実現を求めるたたかいであり、憲法を生かすたたかいでもある。
 そして、いま必要なことは、イラクへの自衛隊派兵や年金改悪に反対する取り組みをはじめ、平和を求め、生活と権利のためにたたかっている力を、平和憲法を守るために大きく結集し、さらに多くの人びとに改憲反対の声を広げていくことである。そのために、さまざまな立場の違いをのりこえ広範な共同をつくりあげることが不可欠である。
 私たち自由法曹団は、改憲を阻止する共同を広く呼びかけるとともに、改憲策動を許さないために全力をあげて取り組むことを決意する。

2004年5月24日
自由法曹団2004年研究討論集会