<<目次へ 【決 議】自由法曹団


定期借家制度 導入方針の撤回を求める要請書

 四月二七日、貴党など与党三党は、新規契約について定期借家制度を導入するとの合意をなし、今国会に借地借家法「改正」案を提出するとの方針を表明した。
 しかしながら、定期借家制度の導入理由としてあげられている「良質な借家の供給という効果」が全く期待できないことは、その予想される家賃額などを推測すれば明らかである。
 定期借家制度が導入されるならば、新規契約ではほとんどの家主が定期借家契約で入居募集をすることとなり、借家人には選択の余地はなくなるであろう。そして、定期借家契約においては契約期限ごとに多額の更新料や家賃の値上げが要求されることになり、それに応じられない借家人は明け渡しをするしかないこととなる。このようにして、これから借家を求める国民には居住の安定が保障される借家は存在しないこととなるのである。
 借家は住居として生活の本拠となるものであるから、単に寝泊まりできれば良いというものではない。住居には居住の安定が不可欠である。他方、公営住宅法「改正」にみられるように公共住宅政策はますます後退しつつあり、弱者が安心して住み続けられる公共住宅はきわめて少ない。また零細業者は日々最低限の収入で営業しており、期限に店舗の移転を強いられることは廃業の危険にさらされることを意味する。
 報道によると、右与党合意では、定期借家制度は既存契約には適用しないとしているようだが、既存契約の合意解約などにより定期借家契約への書き換えが迫られるおそれは強く、既存契約にも重大な影響が生ずることは明らかである。
 このような状況の下において、一〇〇〇万世帯を超える民間借家にこの定期借家契約が適用されるならばその影響はきわめて重大である。借家における居住の安定は崩壊し、零細業者の営業も危殆に瀕することとなる。
 私たちは、このように重大な権利侵害をもたらす法案に強く反対の意思を表明する。
 同時に貴党に対し、以上の問題点を真摯に検討し、定期借家制度導入を撤回されるよう要請する。

一九九八年四月三〇日
自由法曹団
団長  豊田 誠

自由民主党 御中
社会民主党 御中
新党さきがけ 御中