<<目次へ 【決 議】自由法曹団


信越線の復活を求める決議

 信越本線は一八九三(明治二六)年に五百名の犠牲をともなう工事で開通して以来、百余年にわたって全国の在来線の幹線鉄道網のなかでも重要な役割をはたしてきた。 ところが、信越本線は、昨年一〇月長野新幹線開通と引き換えに横川・軽井沢間で切断され、さらに、軽井沢・篠ノ井間で民営化されてしまった。
 長野新幹線の建設は、従来の新幹線(東海・山陽・東北)とは違い、政府・自民党の申し合わせにより建設費の地元負担に加え並行在来線の廃止が大前提とされた。このような暴挙は日本の鉄道史上の大きな汚点になり、公共交通の重大な後退につながりかねない。
 現在、沿線住民を先頭に全国の鉄道愛好家が結集して、前橋地方裁判所に二一一名、長野地方裁判所に二七三名がそれぞれ原告となって、運輸大臣の廃線許可処分取消請求訴訟を提起している。
 この訴訟を通じて、在来線の役割を沿線住民のみならず県民、全国の信越本線利用者と共に政府・運輸省はじめ関係機関にあらためて問い直し、信越本線の全線の復活をめざし、同時に国民の有している交通権(誰でも、どこへでも、安く、安全に、快適に移動し、自由に貨物を送り受け取ることができる権利)を改めて確認して、地球環境の保全に適合する交通体系とモータリゼーションの見直しをふくめた公共交通体系確立のために大いに論議を巻き起こすことが期待されている。
 本総会に出席した私たちは、会場となった上山田温泉にたどりつくのに、信越本線が分断されたことにより、かえって不便となったことを体験した。
 私たちは、この訴訟において、裁判所が「原告適格なし」として門前払いをせずに、廃線により住民の利便が侵害されている実態を審理するよう求める。
 また、私たちは、政府が信越本線を一刻も早く復活させることを求めるものである。
 右決議する。

一九九八年一〇月二六日
自由法曹団一九九八年長野総会