<<目次へ 【決 議】自由法曹団
本年一〇月七日の沖縄の米兵による少女ひき逃げ事件は、何ら罪のない少女の命を奪うとともに、事件直後に裁判所による逮捕状をもって日本側が求めた米兵の身柄拘束にも応じないという、在日米軍の理不尽な態度をあらためて明らかにした。私たちは、このような事件及び米軍の対応に対して、強い怒りを禁じえないものである。
そもそも、戦後五〇年以上にもわたって、アメリカ軍が沖縄に駐留しつづけていること自体が異常であり、速やかに米軍基地が撤去されれていれば、今回のような悲惨な事件はおこりえなかったものである。一九九五年九月の沖縄の米兵による少女暴行事件をはじめ、三沢基地の米兵による女性暴行未遂致傷事件など、最近でも米兵による悲惨な被害が絶えないのである。
また、今回のひき逃げ事件については、日米安保条約にもとづく地位協定がその誘因となっている側面を指摘せざるを得ない。
すなわち、地位協定一七条五項(C)は、米兵について、「被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行うものとする。」と規定している。つまり、事件を起こした米兵が日本側から現行犯逮捕などでの身柄拘束を受けない限り、起訴されるまで日本側に身柄を拘束されることはない仕組みとなっている。そのため、事件を起こした米兵が身柄拘束をのがれるために、現場から逃走して基地内に逃げかえることになるのであり、引き逃げなどという事態をもたらす。そして、そのことが、加害者である米兵に対する損害賠償請求権の行使をも困難にする。
九五年九月の前記少女暴行事件を契機に、日本の主権と司法権をふみにじるこのような地位協定の抜本的な改定がいっそう強く求められてきた。しかし、政府は、地位協定の抜本的改定を怠り続けてきた。沖縄県民はじめ基地周辺住民に様々な被害をもたらしている基地問題について、根本的な解決を棚上げし続けてきたのである。
私たちは、米兵による今回の少女引き逃げ事件に関して、日米両政府に対して厳重に抗議するとともに、米軍基地の縮小撤去、地位協定の抜本的改善を重ねて求めるものである。
右決議する。
一九九八年一〇月二六日
自由法曹団一九九八年総会