<<目次へ 【決 議】自由法曹団
政府は、現在、国会で継続審議となっている新ガイドライン法案の成立を強行しようとしている。
本年四月二八日、国会に提出した新ガイドライン法案、すなわち「周辺事態法」(「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」)案、自衛隊法「改正」案、ACSA「改定」案件は、いずれも、昨年九月に成立した日米両政府による新ガイドラインを実施するためのものである。
この新ガイドラインは、アメリカの行う戦争、軍事行動に日本が積極的に協力してこれに参戦することを表明したものである。そして、新ガイドライン法によれば、日本が協力し参戦する「周辺事態」には、地理的限定もなく、アメリカによる侵略戦争にも軍事介入にも日本が協力していくことになる。そのために自衛隊を海外に派兵し、憲法で禁止されている武力行使や武力による威嚇を行い、あわせて、軍事協力のために自治体も国民も動員するものである。しかも、これらが閣議決定だけで実施され、国会には事後報告でよいとされている。
このような新ガイドライン法案が、戦争放棄を明らかにした憲法の平和原則に反するのみならず、基本的人権の保障や民主主義、地方自治の原則という憲法の基本諸原則をも踏みにじるものであることは明らかである。のみならず、この法案は、日米安保条約すら大きく踏み越えるものである。
ところが、日米両政府は、本年九月の日米安保協議委員会で新ガイドライン法案の早期成立を確認し、クリントン大統領は小渕首相との首脳会談でその早期成立への期待を表明している。
新ガイドライン法案に対しては、国民各層から批判や疑問の声があげられているほか、すでに多くの地方自治体で反対の議会決議が採択されている。また、アジア諸国民から新たな軍事的脅威を作りだすものであるとして批判の声が寄せられている。
いま、全国各地で新ガイドラインとその立法化に反対する連絡会づくりが進められており、宣伝・学習活動や署名運動などが草の根から大きく広げられようとしている。
平和と人権、民主主義のために活動している私たち法律家の立場からも、新ガイドライン法案は絶対に容認できないものであり、その成立を阻止するために全力をあげる決意である。
右決議する。
一九九八年一〇月二六日
自由法曹団一九九八年総会