<<目次へ 【決 議】自由法曹団
一 一〇月四日、自民党・自由党・公明党が「政治・政策合意文書」を交わし、「国連平和維持軍(PKF)本体業務の凍結を解除するための法的措置を早急に講ずる」と合意した。
これは先の通常国会で、周辺事態法をはじめとする新ガイドライン関連法を強行成立させたことに続き、自衛隊の海外での武力行使の道を一層あからさまに拡大しようとする企みであり、断じて許されない。
二 一九九二年に成立したPKO法(国連平和維持活動等協力法)は、自衛隊の海外派兵の道をはじめて開いた。国際紛争解決の手段として武力行使を禁止する憲法九条に正面から抵触し、当時の世論調査でも反対の声が賛成を上回ったにもかかわらず、政府・自民党は、公明党・民社党の協力を得て、強行成立させた。
私たちはPKO法自体が憲法九条に反する違憲の法律であると一貫して主張してきた。
PKO法に賛成した政府も、憲法九条との整合性を無視することができず、いわゆるPKO五原則を法に盛り込んだことを合憲の根拠とした。五原則とは、@紛争当事者間で停戦合意の成立、A紛争当事者が、わが国の平和協力隊の受け入れを合意、B中立性を保って活動、C以上の一つでも欠けた場合には撤収する、D武器使用は自己又は隊員の生命身体の防衛のために必要な最小限のものに限られること、である。
三 このPKO五原則に加え、PKFの本体業務の凍結が法案成立の条件となった。すなわち法の附則二条において、自衛隊の部隊等が行う国際平和協力業務のうち、イ、停戦監視や武装解除などの監視、ロ、武力発生の防止のためにもうけられた地域における駐留・巡回、ハ、武器の搬入・搬出の有無の検査・確認、ニ、放棄された武器の収集・保管・処分、ホ、紛争当事者が行う停戦線設定の援助、ヘ、紛争当事者間の捕虜の交換の援助、などいわゆる平和維持軍(PKF)の活動については「別に法律を定める日までは、実施しない」とされたのである。
この修正がなされたのは、PKF本体業務は、武力攻撃の現実的危険性に直面しながら遂行し、その任務の遂行への妨害を排除することを本質とし、武力行使と不可分の関係にある明白な軍事行動であり、PKO五原則ともおよそ両立しえないとの強い批判を無視できなかったからである。PKF本体業務への不参加は憲法九条に反すると考える国民多数の憲法意識にしたがった判断であった。
四 PKF本体業務の凍結解除は、PKO五原則をも破壊することになる。ガラス細工といわれているPKO法の成り立ちの基礎そのものを崩壊させるものである。
第二次大戦後日本の軍隊・自衛隊は、海外において一人の命も奪うことがなかった。私たちは人類史としても価値ある経験を持続している。
しかし、成立した新ガイドライン関連法は日本の軍隊がアメリカ軍の「後方地域支援」を通して「周辺」諸国の人民に対する武力行使を行う道をひらいた。そして、新ガイドラインは、PKO活動を通した米日両軍の共同作戦をうたう。PKFの凍結解除はこれを具体化する立法である。これを許すならば、旧日本軍が侵攻し占領支配した東南アジアの地域に再び日本の軍隊が進出することを一層現実化させる。
PKF凍結解除は「戦争をする国」をめざす新たな策動である。
私たちは、今高まる戦争法の発動を許さない国民運動とも連帯し、憲法九条違反のPKF凍結解除を断固阻止することを決意し、表明する。
一九九九年一〇月二五日
自由法曹団一九九九年総会