<<目次へ 【決 議】自由法曹団
全国的に問題となっている廃棄物処分場問題の根本の原因は、これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄を中心とする産業構造にある。ごみとして処分される物質の製造・流通自体を抑制する資源循環型社会が実現するならば、現在の紛争の原因となっている処分場自体が不必要となることは明らかである。併せて、有限な地球の資源の浪費を避けられる。したがって、廃棄物問題を根本より解決するもっとも有効な政策は、企業自体にごみ処理の責任を負わせること、すなわち自分が製造・流通させた物質は自分で回収・再使用(利用)することを義務づけることである。
ところが、国は、ごみ自体の発生を徹底して抑制するという資源循環型社会を目指すことな く、現在の大量生産・大量消費・大量廃棄社会を前提として、大型焼却炉による大量焼却を中心とした政策を打ち出している。国は、公共関与などを利用して、焼却炉を大型化・高度化させることにより、ダイオキシン類の発生量を「基準値」以下に抑えることができ、「安全」なごみ処理ができると称している。しかし、有害物質に「安全値」がないこと、技術の高度化には限界があることは、これまでの公害闘争などの経験から明らかになっていることである。また右政策は資源浪費に一層の拍車をかけるおそれがある。
したがって、国民の生活と人権を守るうえで、私たちは現在の国の政策の誤りを到底看過することはできない。
ところで、岡山県吉永町で第三セクターにより計画されている管理型処分場に対する阻止闘争は次のような経過をたどってきている。すなわち、設置計画に対し、住民・町が一致協力して反対運動を展開した。それを受けて、岡山県も昨年(一九九八年)五月二〇日に「国の基準値を満たしているが、それでも危険であるから許可しない」という決定を出した。そこで設置者は国に不服申請を出したが、本年六月九日に、国は「基準を満たしているかぎり許可せねばならないが、当該施設は浸出水処理において基準を満たしていない」として県の不許可決定を結果的に支持する、いわば玉虫色の決定を出した。これを受けて、設置者は、県に対して、不許可決定の取消訴訟を本年八月に提訴し、住民側もこの裁判に訴訟参加することを決定し、現在に至っている。
右経過は、県が、実質的に許可・不許可の判断をしたという点、厚生省の基準を満たしても安全ではないという判断をしたという点、更に、公共関与型である第三セクターであっても危険性の判断は変わらないとした点の三点で国の方針と真っ向から対立する。
したがって、このたたかいにおいて住民側が勝利することは、国の方針を根底から問い直す大きな力となり、その転換をも進めうるものとなる。
私たちは、現在の国のごみ行政を根本から問い直すために、吉永町の事件で住民側が完全に勝利することをめざし、吉永町における管理型産業廃棄物最終処分場設置に反対する住民、自治体及び弁護団のたたかいを全面的に支援することを決議する。
一九九九年一〇月二五日
自由法曹団一九九九年総会