<<目次へ 【決 議】自由法曹団


衆院比例区定数削減に反対する決議

 自民党、公明党、自由党は、連立政権につくにあたって、来る臨時国会冒頭において、衆院比例区の定数を二〇削減する公職選挙法「改正」案を成立させることに合意した。
 比例区定数の削減は小選挙区の比重を高めるものであり、小選挙区制が日本の政治に良い結果をもたらしたと検証された場合にのみ、その正当性が認められる。一九九六年一〇月に小選挙区比例代表並立制による総選挙が行われ、三年を経過したのであるから、このような検証なしには、比例区定数を削減することはできないはずである。九六年の総選挙において、自民党は小選挙区において、三八・六%の得票で五六・三%もの議席を獲得し、比例区をあわせても三割台の得票で半数近くの議席を得た。国民は、各種の世論調査で、政治に「民意が反映されていない」と回答し、選挙制度の見直しを求めている。そもそも、憲法の国民主権の原理からすると、国会は、国民のなかにある民意の分布状態を鏡のように反映させるものでなければならず、いちじるしく民意をゆがめる小選挙区制は、選挙制度としてふさわしくない。小選挙区制が選挙制度として失格であることは明らかである。
 ところが、連立与党は、このような検証をまったく行わないまま、三党だけで比例区定数二〇の削減を合意した。その理由とするところは、「官民ともリストラをすすめており、国会議員も痛みを分け合う」というものである。しかしながら、三党合意では、政治資金規正法付則第九条において二〇〇〇年一月までに政治家個人に対する企業・団体献金の禁止措置を講ずることが定められているにもかかわらず、これを先送りしてしまった。そのうえ、毎年三一〇億円余の政党助成金はそのままである。これほどまでに、金に執着する政党や政治家が「国民と痛みを分け合う」などと言っても、とうてい信用することはできず、口実にすぎないことは明白である。しかも、二〇人の衆院議員を削減することによって減る議員関係費は年間一六億円程度にすぎず、三一〇億円余にのぼる政党助成金に比べれば微々たるものにすぎない。
 政府与党は、衆院比例区定数を削減して、政府を批判し行政をチェックする野党議員数をますます減少させ、国会で「数の暴力」をよりいっそう振るえるようにすることをもくろんでいる。そして、女性衆院議員二三人のうち一六人が選出されている比例区の定数を削減することによって、世界最低ランクに属する女性議員比率は改善されないどころかますます低下することになる。「国民と痛みを分け合う」というのであれば、政府与党が今なすべきことは、政党助成を廃止して企業・団体献金を禁止することであり、民意をゆがめる小選挙区制を廃止して、リストラに苦しむ国民の声がそのまま国会に届くようにすることである。
 私たちは、法律家として、小選挙区制による選挙で国会が構成された後、国会が憲法をふみにじる法律を続々と成立させてきたことに憤りをおぼえている。
 国民主権の原理をふみにじり、憲法の危機をいっそう深刻化させる衆院比例区定数の削減に反対するものである。

一九九九年一〇月二五日
自 由 法 曹 団