参議院選挙制度に関する公職選挙法改正に抗議する声明

 

 本年7月18日、自民党が提出した参議院議員の定数を6増(比例区で4増、埼玉選挙区で2増) とし、比例区に拘束名簿式の「特定枠」を設けることを内容とする公職選挙法の一部を改正する法律案(以下「改正法」という。)が、自民・公明の賛成多数で、衆議院で可決・成立した。

 改正法のうち比例代表制度への特定枠の導入は、2015年7月の参議院選挙制度改正による「合区」で立候補ができなくなる自民党現職議員を救済するためのものである。

 2015年7月、自民党らは、2014年11月26日最高裁判決が求めた都道府県を選挙区の単位とする選挙制度の抜本的改善を行わず、「島根・鳥取」、「徳島・高知」を合区にすることで問題を先送りにした。ところが、これら4県で2019年に改選される参議院現職議員は全て自民党議員であり、合区により選挙区から立候補できない者が出てくる可能性が高い。そこで、「特別枠」を設けて自民党現職議員の「救済」を図る改正案を提出し、本国会で可決・成立させたのである。

 自民党による党利党略、選挙制度の私物化以外の何ものでもない。

 また、今回の改正法は、十分な審議をせず、与党による採決の強行が行われた点でも極めて問題である。

 選挙制度は議会制民主主義の土台であり、どのような制度にするかは議会を構成する各党会派で議論を重ね、合意を得る努力を尽くすことが不可欠である。

 しかし、自民党は、2019年参議院選挙での「特別枠」導入という党内事情を最優先し、合意形成への責任を放棄して、本年6月1日、突然に改正案を参院改革協議会に提示した。そして、会派間での協議を求める野党の声に背を向けて、2018年通常国会の終盤(6月14日)に改正案を参議院に提出した上、参議院と衆議院でわずか計9時間強の審議を行っただけで、野党の反対を押し切って、自民、公明の賛成多数で可決、成立させた。

 改正法は、その内容だけでなく、審議・採決においても党利党略を優先したものであり、この点からも選挙制度の私物化とのそしりを免れない。

  本来、前記の最高裁判決を受けて、議員の総定数や都道府県単位の選挙制度の抜本的 見直しを行うべきであった。そうすれば合区の導入も、今回の改正法も不要であった。  しかし、自民党は、2015年改正公職選挙法での「平成31年に行われる参議院議員の通常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における議員一人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする」との附則をも反故にし、党利党略を優先して参議院選挙制度を歪め続けている。

 自由法曹団は2014年12月25日付け意見書「参議院の意義とあるべき選挙制度」で、民意の適正な反映のため、都道府県単位の選挙区を排し、全国を7ブロックに分けた大選挙区制を導入することを提言している。この大ブロック制になれば、一票の格差も1.04倍となり、今回の自民党の改定案で試算されている格差2.985倍を大幅に縮小できる。自由法曹団は、改正法に反対するとともに、すみやかに現在の都道府県選挙区を前提とした選挙制度の抜本的見直し、民意を正確に反映した選挙制度の構築を求めるものである。 

 

 2018年7月20日

               

                     団 長  船  尾