「特定複合観光施設区域整備法」(「カジノ実施法」)の強行採決に強く抗議し、同法律の廃止を求める声明
1 2018年7月20日、カジノ実施法が、参議院本会議において自民、公明、日本維新の会などの賛成で可決され、成立した。
7月8日から西日本を記録的な集中豪雨が襲っており、本来、石井国土交通大臣は、集中豪雨の災害対応に集中すべきであった。しかし、石井大臣は、カジノ審議を優先し、野党から強い批判を浴びた。また、7月12日の参議院内閣委員会において、西村官房副長官がアメリカの大手カジノ運営企業にパーティー券を購入してもらっていたことを認めた。カジノ推進法案提出者の中にもパーティー券の購入をしてもらった者が複数人いることも判明し、カジノ解禁の本質は、アメリカのカジノ業者の利益のために、国家及び都道府県が刑法の禁止する民間賭博施設の設置に関与する点にあることがいっそう明らかとなった。この西村官房副長官は、7月12日、集中豪雨による災害の最中、「赤坂自民亭」の写真をSNSに投稿し、批判を浴びた人物でもある。
このように、国民の生活や安全よりも、カジノ業者の利益を優先する姿に、安倍政権の腐敗ぶりが現れている。
2 カジノ実施法については、国会審議の中で、複数の問題点が明らかとなったが、それらの問題は何一つ解決されなかった。特に、ギャンブル依存症の問題が全く解決されなかったことは非常に深刻な問題である。政府は、ギャンブル依存症対策として、カジノを設置できる区域を3つまでと限り、入場料金及び1ヶ月の入場回数に制限を設けたと説明している(入場料・認定都道府県等入場料を合計6000円とし、日本人等の入場回数を連続する7日間で3回、連続する28日間で10回に制限する)。しかし、政府の説明は、「経済的、社会的、精神的問題が生じているにもかかわらず、ギャンブルをやめることができない」というギャンブル依存症の特質を全く踏まえていない。入場規制についても、1日を24時間とカウントすることで、「週6日の滞在」も可能であり、ギャンブル依存症の対策とはならない。そればかりか、カジノ実施法は、カジノ事業者が賭金を貸し付けることを認めるなど、客をいっそう深くギャンブルにのめり込ませ、ギャンブル依存症を拡大・深刻化させるものとなっている。さらに、最初の区域整備計画の認定日から起算して5年を経過した場合において、所要の措置をとるとされており、今後、規制が緩和されることも容易に想定される(設置区域については、7年後)。
3 自由法曹団は、これまで、2014年4月に「カジノ法案の廃案を求める意見書」を発表し、その後も、同年10月「カジノ法案の廃案を求める決議」、2016年12月「カジノ法律案の廃案を求める声明」、2018年5月21日「『特定複合観光施設区域整備法案』の国会提出に強く抗議し、同法律案の廃案及び『特定複合観光施設区域整備の推進に関する法律』の廃止を求める決議」をあげ、カジノ法に一貫して反対してきた。自由法曹団は、今回のカジノ実施法の強行採決にも強く抗議し、同法の廃止を求めるものである。
2018年8月3日
自由法曹団
団長 船尾 徹