<<目次へ 【声 明】自由法曹団
自民党、自由党、公明党の与党三党は、一月二七日夜、野党側との話し合いをいっさい拒否したまま、衆院比例定数の二〇削減法案を衆議院において強行採決し、引きつづき二月二日午後趣旨説明も委員会審議も行わないまま、参議院地方行政・警察委員会委員長の中間報告という異例の「手順」で、与党三党の賛成多数で強行可決した。
この暴挙は、与党三党が連立維持のために決めた「冒頭処理」の方針を国会に押しつけたものであって、議会制民主主義のルールよりも連立維持の党利党略を優先させたものである。
憲法第一五条は、選挙権を「国民固有の権利」として保障しており、選挙権にかかわる問題を与党だけで決めた日程にあわせるためにほとんど審議することなしに採決することは許されない。公約も世論も無視して「当選して多数を握った以上何をやっても自由」と言わんばかりの行為は、議会制民主主義を破壊するものに他ならない。現行の小選挙区比例代表並立制を導入した際に、当時の細川首相は、「国民の政権選択の意思が明確な形で示される小選挙区制の特性と、多様な民意を国政に反映させるという比例代表の特徴とがあいまって、より健全な議会制民主主義を実現できる」と述べていた。
民主主義は少数者の声をも大切にすることからはじまるところ比例定数削減は比例部分に示された少数者の意見を切り捨てることに他ならない。このように比例定数削減は多様な民意を反映させる機能を低下させて小選挙区の比重を高めるもので選挙制度の枠組みを大幅に変更する第一歩であり、十分な審議が尽くされなければならないものであったことは言うまでもない。しかも多数党にとって有利な制度変更を多数党による強行採決によって成立させるなどは言語道断の暴挙である。
自民党が衆院比例定数削減を提案したのは、小選挙区の比重を高めれば有利になるという思惑からであり、冒頭処理というスケジュールを強行したのは自由党との連立政権を維持するためである。今回の衆参両院の強行採決は、二重三重に国民を無視した党利党略であり、議会制度の根本を否定する歴史的暴挙である。
与党三党は、比例定数削減を強行する一方、本年一月までに企業・団体献金の禁止の方向で見直すことを義務づけた現行の政治資金規正法附則第一〇条を削除し、企業・団体献金の永久化をはかろうとしている。同法附則第一〇条は「この法律の施行後五年を経過した場合においては、政治資金の個人による拠出の状況を踏まえ、政党財政の状況等を勘案し、会社、労働組合その他の団体の政党および政治資金団体に対する寄付のあり方について見直しを行うものとする」と定めており、これを削除しようというのである。与党三党が今なすべきことは比例定数の削減ではなく、国民に対する公約である政治資金規正法附則、企業・団体献金の禁止の方向に踏み出すことである。
私たち自由法曹団は、与党三党による議会制民主主義のルールをふみにじる衆参両院の強行採決の暴挙に断固抗議するものである。
二〇〇〇年二月四日
自 由 法 曹 団
団 長 豊 田 誠