<<目次へ 【声 明】自由法曹団


警察の腐敗・犯罪行為の再発防止に関する声明


  1. 神奈川県警の腐敗・犯罪行為の発覚に続き、新潟県警で今回看過しがたい問題が発覚し、その他全国各地で警察の問題が噴出し、多くの国民が、市民の生命・安全を守るべき警察に対して大きな不安と不信を抱くに至っている。また、警察を管理すべき国家公安委員会の無責任きわまりない対応にも多くの国民の怒りが集中している。こうした警察の実態を反映するかのように犯罪の検挙率が年々著しく低下し、国民の生活を守るべき警察の機能が失われていることは重大な問題である。こうした事態の改善のため、警察・公安員会の民主化・抜本的改革が求められている。
  2. 新潟県警は、長期間監禁されていた女性の発見につき、第一発見者を警察官と偽る虚偽の発表をし、さらに新潟県警本部長は、右監禁事件の報告を受けていながら責任者としての任務を放棄し、関東管区警察局長らと温泉ホテルでの雪見酒の宴会や麻雀に興じていたことが明らかになっている。このように、県警本部長の任務放棄、関東管区警察局長の監査が監査の名に値しないものであったことは明白である。
     加えて、警察庁が派遣した特別調査チームは、県警本部長や関東管区警察局長が遊興していた事実を把握できず、形式的な説明を聞いただけで、国家公安員会に報告していた。
     このように、警察内部の監査、調査は全く機能せず、内部の自浄作用は全く期待し得ないことが明らかになった。新潟県警の今回の問題は「例外」「個人の心構えの問題」に解消し得ない構造的な問題である。
  3. 国家公安委員会は今回の事件に関して新潟県警本部長を減給処分、関東管区警察局長に対しては処分しないことにした。
     この「処分」は国民の健全な常識からかけ離れた極めて甘い「処分」であるばかりでなく、「持ち回り」で決められた違法なものであったことも明らかになっている。さらには「持ち回り」による「決定」を当初の国会答弁でことさらに隠し虚偽の答弁をしていたことも国家公安委員長の重大な職責違反である。
     国家公安委員会、都道府県公安委員会は警察庁や都道府県警察の「追認機関」にならず、厳正な「管理」を実現するためにもその権限の拡大、警察に対する直接の指示監督権限の付与、事務局の充実、調査能力の向上、公安委員の選任の公選等の抜本的な制度改革をすべきである。
     そしてさらにこのことは、警察活動を監視、監督するには、市民の代表からなる警察オンブズマンのような外部からの監督、救済機能を持つ警察監査制度が創設されなければならないことを示している。
  4. 警察の腐敗・犯罪行為の原因の一つには警察の極端な秘密主義がある。警察の予算、組織、教育、人事等警察の実体が国民にいっさい明らかになっていない。こうした実体が腐敗・不正を増幅させる温床となっている。個別事件の捜査情報など特別のものを除いて、警察・公安委員会の人事、組織、予算等は情報公開の対象とすべきである。
  5. 警察の人事、予算は極端に警備公安警察偏重になっている。この「偏重」が刑事警察の弱体化の重大な要因である。警備公安警察は国民・市民を敵視し、かつ神奈川県警の緒方宅電話盗聴事件に見られるような違法な活動をしている。国民敵視の警備公安警察は直ちに廃止すべきである。
  6. 警察の抜本的改革のためには、ほかにもキャリア優先の人事の見直し、警察官の人権意識の向上、労働基本権の付与の検討など検討すべき事項も多いが、外部監査の導入、情報の公開、国民敵視の警備公安警察の廃止を中心として警察組織の民主化・抜本的改革が早急に実現されるべきである。
     国民の安全の観点から是非とも刑事警察の充実、検挙率の向上が至上問題であり、こうした警察の民主化、・抜本的改革を通じて警察の再生が図られるよう切望する次第である。
     右声明する。

二〇〇〇年三月一八日
自由法曹団常任幹事会