<<目次へ　【声　明】自由法曹団

みんなで喜びあえる卒業式・入学式に

─卒業生・入学生のみなさんへ─

卒業 ・入学おめでとうございます。

　次の学校へ進む心の準備はもうできましたか。
みなさんの学校ではどんな卒業式・入学式が行われるのでしょうか。子どもたちが主人公の式が行われるといいですね。式場には日の丸が置いてありますか？君が代の音楽が流れますか？
みなさんは日の丸に礼をしますか？君が代を歌いますか。

私たちはこう考えます。

　日の丸は、かつて日本が侵略戦争をしたときのシンボルとして使われたことからとてもいやな気持ちを持つアジアの人々がいます。また、日本の人にとっても戦争によってお父さん、お母さんが死んでしまったり、子どもが死んでしまったり、家族がバラバラになったりと、日の丸を見ただけでつらく悲しい気持ちになる人もいます。

君が代はどうでしょうか。

　君が代は天皇をたたえ、天皇の時代が永遠に続くようにという歌詞の歌ですから、憲法にかかれている「国民主権」（この国の主人公は私たちですという意味）とはかけはなれてしまいます。
　君が代も日の丸と同じように戦争を思い出してつらい気持ちになる人や、二度と戦争をしない国にしようと考えている人にとっては、とても歌いたくない歌だと思われることもあります。
　また、歌の意味とか思い出だけではなく、暗くて陰気なメロディが何となく嫌いという人もいます。
　日の丸も君が代もいろんな理由で嫌いな人がいるということを知ってください。
そして日本の素晴らしい法律＝憲法は、誰もが自分の考えを持つことは自由で、嫌いなことや苦痛に感じることをむりやりさせられることをがまんしなくてもよい（このことを思想・良心の自由といいます）とかかれています。
　１９９９年に日の丸が国旗、君が代が国歌と定められる法律ができましたが、国会では国会議員の質問に文部大臣がこう答えました。
「君が代が流れるときに立たなかったり、歌を歌わなかったことで学校で子どもたちが嫌な思いをしたり、先生からむりやり歌いなさいと言われるようなことはあってはならないと思っています」
ですから、日の丸や君が代のことで自分の考えを持つことや、自分で考えて立たなかったり、歌わなかったりすることは自由にできることです。
卒業式、入学式はみなさんが主人公なのです。

　卒業生・入学生のみなさん、みなさんの新しいスタートに心からのおめでとうを贈ります。
みなさんの未来がきらきらと輝き、はばたき巣立っていく今日の日が、きっといつまでも心に残る、素晴らしい門出の日となりますように。

　私たち自由法曹団は、日の丸や君が代にいろんな意見や気持ちを持つ人がいること、そして誰でも自由に意見をいえることをお伝えしてみなさんへのちいさな贈り物にしたいと思います。

２０００年　春の日に　　　　　自由法曹団

自己紹介
私たちは全国の弁護士の集まりで自由法曹団という団体です。裁判で法廷に立つだけが弁護士の仕事ではなく、日本の法律や国民の権利を考え、意見を言うことも私たち弁護士の大事な仕事と考えています。