<<目次へ 【声 明】自由法曹団


有事関連3法案「修正案」に関する声明


1 有事関連3法案の本質
 第154国会では、有事関連3法案について審議がおこなわれ、とりわけ「武力攻撃事態とはどこまで広がるのか」が審議の焦点となった。そこでの政府答弁は、政府が従来統一見解として認めてきた「周辺事態」のすべての場合において「おそれ」あるいは「予測される」武力攻撃事態になることもあるというものである。「周辺事態=武力攻撃事態」であり、「米軍の作戦に追随して日本が参戦」ということであり、政府答弁から見えてきた本法案のねらいは、「周辺事態」での米軍有事に対処するところにある。
 これはアメリカの一貫した日本政府に対する要求に応えようとするものであり、有事関連3法案の本質は防御のためではない攻撃型有事法制である。従来の「日本有事」「本土上陸」を想定した「有事立法研究」を、「周辺有事」「侵攻攻撃」型の「有事法制体系」に組み替え、米軍追随の侵攻戦争に軍・官・民をあげて動員しようというものである。この法案の本質が露呈されるや法案反対の世論が急速に広がり、自治体、マスコミからも批判がなされて、世論も当初は賛成多数であったのが逆転し、法案の成立は阻止され継続審議となったものである。

2 修正にもなっていない「修正案」−危険な本質はかわらない。
 今臨時国会で、政府与党は「武力攻撃事態対処法案」について修正するとして、「武力攻撃事態」から「予測」を切り離し、それぞれの事態について、対処の基本理念を明かにするとともに、対処基本方針に記載すべき重要事項を列記し、武力攻撃の「おそれ」と「予測」の一応の定義をするとか、さらに武力攻撃事態のみならず、武装不審船事案、テロ・ゲリラ攻撃などの事案を含めて必要な施策の内容を明示するとして「修正案」を提示してきた。
 たしかに「武力攻撃事態」と「予測事態」について整理されたが中身は全く変わりないものである。国会審議で明らかとなったアメリカの軍事戦略に日本が加担するものであるという本質には全く変化のないものであり、「攻撃型有事法制」の本質は「修正」不可能であることをより明白にしたにすぎない。
 また、武装不審船事案等について必要な施策をすみやかに講ずるとしているが、これらの事案は「武力攻撃事態」とは異なる事案であり、これらの事案に対処するために有事法制など必要でないことが明白になったと言うべきである。

3 「国民保護」という名の「国民動員法案」
 修正案では、「国民保護」という名の法整備のための整備本部を置くとしている。有事関連3法案は経過の上からも法文の上からも「米軍のための戦争動員法」であり、「本土攻撃」「本土有事」など想定しないものである。にもかかわらず政府与党が「修正案」で「国民保護法制」なる法案の法整備を言い出したのは、自治体、国民の批判を受けて、有事法制があたかも「国民保護」を目的とする法案であることをアピールしたいがためにすぎない。
「国民保護」なる法案を付け加えてみたところで「侵攻攻撃型」の有事法制の本質がかわるものではない。それどころか、このたび示された本法案の「素案」が示す内容は、自治体と国民を戦争態勢に組み込んだ「国民動員法」というべきものである。

4 全力を挙げて阻止、廃案へ
 ブッシュ大統領は、アメリカが脅威と認めれば「自衛」のための先制攻撃が許されるという明白に国連憲章に反する戦略をとり、アフガンへの報復戦争に加え、イラクへの武力攻撃もくわえようとしている。私たちはこれまで、いま日本は戦争への道を進むのか、平和の道かの岐路にたっていると訴え、アメリカの戦争に協力することはテロを撲滅するどころか、さらに報復を繰り返すことになることを訴えてきた。有事関連3法案の成立を許すことは、アメリカの軍事戦略に日本国民が協力させられ、攻撃に参加させられることである。世界から戦争をなくすために日本は憲法の趣旨にもとづいて努力すべきであり、アメリカの戦争に加担し、力で屈服させるやり方ではない。私たちのなすべきことは、日本国憲法がその前文で、「恒久平和を願い、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」と述べていることを今こそ全力で実践することである。
 私たち自由法曹団は、有事関連3法案の危険な本質をより明かにし、「国民保護」という名の「国民動員法案」の欺瞞を暴き、有事関連3法案を廃案にするために全力を尽くすものである。

2002年 11月8日

自 由 法 曹 団
団 長 宇 賀 神   直