<<目次へ 【声 明】自由法曹団


「テロ特措法」に基づく基本計画の再延長・拡大に反対し自衛隊の即時撤退を求める声明

 2001年11月16日,「テロ対策特別措置法」の基本計画が閣議決定され,これを受けて,現在,インド洋に日本の自衛艦が派遣され,「アメリカ・イギリスの艦船の護衛,燃料の補給等」の任務にあたっている。そして,その基本計画の延長期限が本年11月19日に切れることになるが,政府は基本計画をさらに6ヶ月間延長する閣議決定をするという。その際,これまでの任務に加えて,米英以外の国の軍隊への補給及びタイからアフガニスタン周辺国への米軍基地建設用の重機の海上輸送も新たな任務に加えるといわれている。

 9・11同時多発テロ事件を契機にして,アメリカは「テロとの戦い」の名 のもとに国際法で禁止されている報復戦争を強行した。それは罪なきアフガンの人々に対する大量虐殺という結果をもたらした。暫定政権が発足した現在でもアフガンへの戦闘行為が続けられ,日本の自衛艦が補給を行ったアメリカ艦船から飛び立った戦闘機によりアフガン市民が犠牲にされ続けてきた。

 こうしたアメリカの軍事行動に対する自衛隊による支援が,国際紛争を解決 するための戦争を放棄し,一切の武力行使を禁止した憲法第9条及び前文の精神に反することはもはや明白である。アフガニスタンは暫定政権のもとで復興の道を歩もうとしている。この期に及んでのアフガンへの軍事行動には一片の道理もなく,これ以上のアメリカの軍事行動への加担は断じて許されない。

 また,派兵されている自衛艦の具体的行動についての情報は,秘密のベール に包まれたままである。国会によるシビリアンコントロールが全く機能していない状態で自衛隊が海外で行動していることはゆゆしき事態である。そればかりではない。万一,アメリカがイラクに対する軍事攻撃を開始したときには,日本の自衛艦が護衛し,燃料を補給したアメリカの艦船から発進した戦闘機が,イラク攻撃に参戦しない保証はない。「テロ特措法」の枠組みが潜脱される危険性が高いのである。

 私たち自由法曹団は,日本政府に対し,憲法の平和主義に基づく平和外交を 推進し,平和を求める世界の諸国民と共同してアメリカの戦争拡大を阻止するとともに,これに逆行する「テロ特措法」の基本計画再延長・拡大の閣議決定は行わず,現在インド洋に展開している自衛艦については即時撤退させることを求めるものである。

2002年11月16日

自由法曹団常任幹事会