<<目次へ 【声 明】自由法曹団


テロ対策特措法の期間延長に反対し、海上自衛隊のインド洋からの即時撤退を求める声明

 政府は、第156通常国会においてイラク派兵法案とともに国会提出され、継続審議となっていたテロ対策特措法「改正」案の採決を今臨時国会で強行し、今年11月1日までであった自衛艦の派遣期間(時限立法)をさらに2年間延長しようとしている。

 海上自衛隊は、2001年11月以降、インド洋(アラビア海)で米英軍などの艦船を対象に燃料補給を実施することにより、米国のアフガニスタン報復戦争を支援する兵站活動を行ってきた。日本の海上自衛隊は、テロ対策特措法によって、戦後はじめて戦争地域に派兵された。
 米国の報復戦争がもたらしたものが、罪なきアフガンの人々に対する大量殺戮という悲惨な結果であり、日本の自衛艦が燃料補給を行ったアメリカ艦船から飛び立った戦闘機の爆撃により、アフガン民衆が犠牲にされ続けたことは紛れもない事実である。しかも、報復戦争はテロ問題を解決するどころかテロの連鎖をも引き起こしている。

 2002年12月には、それまで派遣していた護衛艦に代え最新鋭イージス艦をもインド洋に派遣した。イージス艦は、本来、米海軍の空母を相手国のミサイルや航空機の空中よりの攻撃から護衛するために開発、建造された艦艇である。護衛隊群の旗艦として海上戦闘における本格的な指揮管制能力をもつ。海上自衛隊と米海軍との間には情報を共有するデータリンクのシステムがあり、イージス艦の取得した情報は瞬時に米艦艇に送信される。日本のイージス艦は米国の戦争体制に組み込まれ、まさに米軍の武力行使と一体化した作戦行動に参加しているものである。

 この間、テロ対策特措法に基づいて派遣された海上自衛隊の補給艦が、イラク戦争に参戦している米国空母キティーホーク機動部隊に間接給油を行っていたことも明らかになっている。もとより、テロ対策特措法に基づく海上自衛隊の活動はアフガニスタンでの対テロ作戦の支援に限定されている。海上自衛隊のキティーホーク機動部隊への支援はテロ対策特措法の逸脱というほかない。
 現在、アフガニスタンでの米国の軍事行動はおおむね終結しており、テロ対策特措法に基づくとしても、この期に及んで海上自衛隊がインド洋で活動する必要は全く認められない。政府が海上自衛隊の派遣期間を延長するねらいは、イラク派兵法による航空自衛隊・陸上自衛隊の海外派兵と相まって、自衛隊の海外派兵を既成事実とし、その恒常化をはかるところにある。このことは憲法9条及び前文の精神の完全な蹂躙である。

 私たち自由法曹団は、テロ対策特措法「改正」案に断固反対するとともに、現在インド洋に展開している海上自衛隊については即時撤退を求めるものである。

2003年10月1日
自由法曹団団長 宇賀神 直