<<目次へ 【声 明】自由法曹団
小泉首相と日本政府は、あなた方自身が、世界と日本の平和に対する最大の脅威となっていることを深く自覚すべきである。
イラク戦争は、国連決議によらない無法な戦争であるだけでなく、戦争の口実であった大量破壊兵器はいまだ発見されず、戦争開始の口実すら失った何の大義もない戦争であった。しかもイラクではいまだ戦争状態が継続している。アメリカは、軍事占領を続けるだけでなく、アイアン・ハンマー作戦などと称して、イラクの人々に対する殺戮を続けている。
アメリカは「同盟」国に対し、新たな出兵や軍隊の増派を求めているが、これを拒否する国、態度を慎重化する国々が増えている。これは、大義なきイラク戦争を糾弾しブッシュの戦争に加担を許さないとする圧倒的な国際世論、平和を希求する広範な人々の力による。
こうした状況のもとで、憲法を踏みにじり日本が自衛隊をイラクに派兵したらどうなるか。自衛隊派兵はアメリカの軍事占領に対する支援であることは誰の目からみても明らかであり、日本政府が「人道支援」を強調したところで通用するものではない。自衛隊派兵は、アメリカの暴力を助長するだけでなく、平和を希求する広範な人々の願いに背を向けることになるであろう。自衛隊派兵は、イラクに際限のない不幸を持ち込む「最悪の選択」である。
日本政府は、米・英のイラク攻撃に、いちはやく賛辞をおくり、世界に向けてアメリカを「盟友」と言いつづけた。そして、自衛隊の派兵を対米公約とし、着々と準備を行っている。亡くなった日本人外交官2名は、対米関係に忠誠を捧げ続ける政府、小泉政権の犠牲者である。
にもかかわらず、日本政府は、自衛隊を派兵するという基本方針に変わりはないと強弁し、明日にも派兵を閣議決定しようとしている。日本政府が、自衛隊をイラクに派兵すれば、イラクの民衆にも自衛隊員にも新たな犠牲者が生まれることは確実である。小泉首相は、戦地に赴く自衛隊員に対して、「戦争にひるむな」「日米同盟のために死んでくれ」とでも言うつもりなのか。断じて容認することはできない。
日本政府にいま求められているのは、アメリカの軍事占領を中止させるよう、強くそしてねばりづよく働きかけることであり、国連を中心としてイラクの人々が主権を回復し、自己統治を行う道筋をつけるために最大限の努力をすることである。
自由法曹団は、イラクへの自衛隊派兵の計画をただちに中止することをつよく要求する。
自由法曹団は、世界と日本の平和を希求する多くの団体、個人と連帯し、イラクと世界の平和実現のために奮闘するものである。
2003年12月8日
自由法曹団 団長 坂本 修