<<目次へ 【声 明】自由法曹団
「労働基準法の一部を改正する法律案」に反対する声明
- 政府は、二月一〇日の閣議で労働者のすべてのナショナルセンター、日弁連・自由法曹団・日本労働弁護団など法曹界の批判を無視して、「労働基準法の一部を改正する法律案」を国会に上程することを決定した。法案は、けっして「一部」を「改正」するものではない。それは、最低労働条件を国の法律で定め、違反に対しては処罰し、そのことによって人間らしく働く権利を保障するという憲法と労基法の原則を破壊する大改悪である。
- 法案は第一に、一日八時間働いても労使委員会が定めた時間しか働いていないという裁量労働制や、企業の都合で一日の生活のリズムを崩し、一年もの長い枠ぐみで、一日あたり一〇時間、週五二時間も不規則に動かすことのできる変形労働時間制の拡大を盛りこみ、一日八時間労働の原則を根本から破壊する。第二に、幅広い要件で、「専門的」知識や経験をもっている労働者を三年間の短期で使い捨てる短期雇用契約制を新設している。これは、後に予定されている派遣労働の原則自由化と結びついて、安定雇用を破壊するものにほかならない。第三に法案は、男女共通の労働時間の規制については労働大臣の指導基準を定めているだけで、法的規制はしないとしている。これは、九九年四月一日の女子保護規定撤廃の施行までに男女共通の労働時間の規制を実現するとした前国会の審議経過にも反するものである。
改悪は、いまでも過労死年間一万人といわれる五、四〇〇万労働者の労働をいっそう苛酷なものにし、家族を含めて国民の四分の三をしめる人々の生活を根底から破壊する。不払残業の合法化、不安定雇用労働の拡大などによって、労働者が奪われる賃金は数十兆円の規模に達するであろう。二、〇〇〇万を超える女性労働者がまともに働きつづけられなくなるのも目に見えている。
- 労働者・国民の生活と権利を守るために活動してきた自由法曹団と一、五〇〇人の団員弁護士は、ただひたすら財界のために、その「労働力流動化」「総人件費抑制」政策に奉仕するこのような大改悪を強行することにきびしく抗議する。
自由法曹団は、法案を阻止し、男女共通の労働時間の規制をはじめとする人間らしく働くルールの確立のために全力をあげてたたかうことを広く労働者・国民に訴えるとともに、すべての人々に、力をあわせて全力をあげてたたかう決意をここに表明する。
一九九八年二月一〇日
自由法曹団