<<目次へ 【声 明】自由法曹団
政府は、本日、自民党の意向を受けて、盗聴法案をはじめとする組織的犯罪対策法案を上程することを閣議決定した。
自由法曹団は、法制審の答申案がなされた直後から盗聴法案を重点的に検討してきた。その結果、盗聴法案は、小手先の修正を加えても治癒できないほどの根本的欠陥を抱えた法案であることが明らかとなったので、これらの問題点を三回にわたり意見書を作成配布し警鐘を鳴らしてきた。
すなわち、 盗聴法案は、民主主義の基本である通信の秘密保障の憲法条項及び警察などの権力の濫用を規制する令状主義を定めた憲法条項に違反すること、必然的に犯罪と関係ない者の通信を幅広く傍受せざるをえないものであり且つ犯罪に関連ない通信を傍受された者は傍受されたことすら知らされないなどプライバシー権の保障が全くなされていないこと、確定判決で認定された政党幹部宅の電話盗聴を今日なお否認し続ける警察が濫用する危険性について歯止めがないこと、刑事司法警察活動と行政警察活動の区別をあいまいにすること等々である。
本日上程を決定した組織的犯罪対策法案は、法務省が与党協議会に示した要綱骨子案そのものである。この要綱骨子案は、二二回にわたる与党協議会においても自由法曹団が指摘してきた幾つかの問題点が浮き彫りにされたものである。そして、余りにも問題点が多く且つ深刻なため、自民党は他の与党の同意を取り付けるため、対象犯罪と令状請求者及び令状発布裁判官をしぼり、無令状盗聴を加重し、さらには時限立法化するなどの修正案を用意せざるを得なかったのである。ところが、自民党は与党協議をうち切って、修正意見を全く取り込まない要綱骨子案をそのまま法案として上程することを決めてしまった。
本日の閣議決定は、与党協議の過程で既に欠陥が明白となっている要綱骨子案をそのまま上程するものであり、誠に無責任極まりないものと言わざるを得ない。
自由法曹団は、盗聴法案が治癒不可能な欠陥法案であること、政府自民党がいくつもの深刻な問題が存在していることを認識しながら敢えて上程を強行したことに対し、強く抗議するとともに、国民各層と協力して廃案にするため力を尽くすものである。
一九九八年三月一三日
自 由 法 曹 団