<<目次へ 【声 明】自由法曹団
昨日(五月一九日)、沖縄県収用委員会は、反戦地主らが所有している米軍用地の強制使用について裁決を行った。裁決の内容は、一三施設(基地)二四二筆の対象土地のうち、二二九筆の土地については強制使用を認容したが、嘉手納基地や普天間基地、キャンプシールズ、牧港補給地区内の土地一三筆については強制使用を認容しないとして、那覇防衛施設局の申請を却下したものである。
沖縄の米軍用地は、米軍が沖縄戦において武力をもって奪取して囲い込み、あるいは戦後「銃剣とブルトーザー」によって強奪したものであり、違法占拠の状態が今日に至るまで継続しているものである。そして、米軍基地は、基本的人権の侵害、環境破壊をはじめ様々な被害を住民にもたらしてきた。しかも、アジア太平洋地域さらには地球規模に及ぶ在日米軍の役割を確認した九六年四月の日米安保共同宣言に示されているように、米軍基地は日米安保条約の条項からも明白に逸脱するものとなっている。このように米軍用地の強制使用が法的にも根拠のない違法なものであることがいっそう明らかになっている。
本件裁決申請に関しては、一九九七年二月二一日から九八年一月二九日にいたるまで、一一回にわたる公開審理が開かれたが、反戦地主と弁護団は、すべての基地について強制使用の違憲性・違法性を具体的に主張してその問題点を明らかにし、強制使用裁決の全面却下を求めてきた。
今回、一三筆の土地に対してなされた却下裁決は、いわゆる地籍不明地に関するものであり、地籍不明地について裁決申請地の特定がなされておらず、裁決申請手続きに治癒することのできない重大な違法があるとするものである。地籍不明地について過去になされた強制使用裁決の誤りを正した判断である。また、認容裁決のうち瀬名波通信施設内の土地については、返還準備期間として使用期間を一年と定めたものであり、実質は却下裁決と評価されるものである。これらは、反戦地主・弁護団及び違憲共闘会議を中心とした公開審理の取り組み、並びに米軍用地の強制使用に反対し基地の縮小・撤去を求める運動の大きな成果である。
他方、二二九筆の土地に対してなされた強制使用の認容裁決は、最長一〇年間の使用期間を求めた国の申請に対してこれを最長五年間に短縮したものであるが、反戦地主の要求に基本的に背くものであり、公開審理を通じて強制使用の違法性を明らかにした反戦地主・弁護団の主張に耳を傾けないものであって、到底容認できるものではない。
私たちは、国が本件却下裁決について建設大臣への不服申立を断念し、この却下裁決にしたがって、即刻反戦地主にそれぞれの所有地を返還するよう強く求める。また、基地機能の強化や基地の移設及び拡大に反対するとともに、米軍基地の縮小・撤去を求め、米軍用地の返還実現をめざしてたたかう決意を新たにするものである。
一九九八年五月二〇日
自 由 法 曹 団