<<目次へ 【声 明】自由法曹団
国鉄の分割・民営化の過程で、国労や全動労の組合員に対して、組合所属を理由とする不当労働行為がなされたこと、そして、多くの組合員が組合所属を理由としてJRに採用されなかったという不当労働行為が存在したことは、この間の地労委・中労委の命令によってすでに明白になっており、一一年を経た今日、歴史的な事実というべきである。そして地労委・中労委が、詳細な事実認定をもとに、JRに対して一〇〇件を超える救済命令を発し続けてきたことは、ごく常識的で当然な結論として広く世論の支持を集めてきた。
今日争いのもちこまれた裁判所に課せられた責務は、地労委・中労委のこのような流れに立ちJRの責任において一〇四七名の被解雇者と家族にこれ以上の苦しみを与え続けることなく、実効的な解決を図るよう命ずることであった。
それにもかかわらず東京地裁民事第一一部と同一九部が、五月二八日、中労委命令の取消を命じる判決を言い渡したことは、不当労働行為救済制度の存在意義を否定するに等しいものであって、断じて容認できないものである。われわれは、このような不当判決に対して断固抗議する。
八六年四月の国鉄分割民営化の破綻は、運輸省が巨大な債務膨脹につき、旧国鉄の債務は国民全体が負担すべき国の借金であるなどと述べ、あらたな予算措置を講じざるを得ないという事態からしても今日明白になっている。
自由法曹団はこの一一年間全国各地で展開されてきた労働委員会闘争や裁判闘争を全面的に支援してきたほか、この分割民営化を利用者・地域そして国民的な利益に反するとして強く糾弾しその批判的運動を展開してきた。
今回の民事第一九部の判決の判断理由の中では、国鉄改革法二三条のもとでも、JRが不当労働行為責任を負うという重要な見解を示した。また国鉄(清算事業団)と政府が不当労働行為に対して責任を負うべきことは、右判決に関係なく全く異論のないところである。東京地裁判決を機に、JRと国鉄清算事業団・政府が、国鉄の分割民営化の過程における国家的な不当労働行為について、解決の責任を負っていることは、いっそう明白になったというべきである。
国労・全動労などの組合員が組合所属を理由にしてJRへの採用を拒否されてから一一年、清算事業団からも解雇されてから八年余が経過した。
われわれは、政府とJRが責任をもって紛争解決のために取り組むことを強く求めるものである。
一九九八年五月二九日
自 由 法 曹 団