<<目次へ 【声 明】自由法曹団
現在、第一四五通常国会が開かれておりますが、わたしたちは、一切の修正を許さず盗聴法案の廃案を改めて強く要求します。
この法案は、基本的人権としての通信の秘密・プライバシー権に対する重大な侵害をもたらす危険性が大きいものです。また、いつ、だれが、どのような会話を交わすかを予め特定できない令状は、事実上無制限の盗聴を警察に許してしまう結果になります。
この間の法案審議のなかでも、立法そのもの必要性に対する疑問、憲法第二一条の保障する「通信の秘密」、第三一条の「適正手続の保障」、第三五条の保障する「令状主義」の原則(捜索場所、押収対象物の明示・特定を要求する)に反する点など、法案の持つ重大な問題点がつぎつぎにあきらかにされています。
盗聴の必要性と対象について、法務省当局の答弁は、「事件はさまざまな形態によっておこされ、背後の関係がわからないもの、組織的な可能性があるものなど、(通信傍受の)必要性は、類型的には決まらない」としています。これでは、一般の犯罪、軽微な事件も盗聴の対象となる危険が大きく、また、これから実行されるかもしれない事件も含まれるなど、令状主義の空洞化につながることは明らかです。
盗聴法は、報道機関の通信もその対象にしており、マスコミへの電話も盗聴されるとなれば、スクープの取材や告発電話などもかけられなくなります。報道の自由、取材の自由がおかされ、真実は闇に葬られることになりかねません。
そして、日本共産党国際部長宅の電話盗聴事件の違法行為について、犯行も認めない、謝罪もしない警察に、事実上無制限な盗聴の権限を与えることは、すべての国民が、常に重大な人権侵害の危険にさらされることになります。
この法案の成立をあくまで進めようとする自民党の要請で、最近も野党との個別協議が行われているようです。しかし、対象犯罪を限定したり、あるいは、違法盗聴の処罰規定の罰則を多少重くするなどの修正をしたとしても、法曹界、言論界などから指摘されている、法案の違憲性、重大な人権侵害を生む多くの問題は、何ら改善されません。したがって、盗聴法案は廃案にするしかありません。
この間、超党派の国会議員の有志の方々が盗聴法案反対の立場から集会を開催し、さらに三月二三日にはアメリカのバリー・スタインハード氏を講師にしての市民集会を企画するなど、盗聴法案反対の世論は急速に盛り上がってきています。
わたしたちは、盗聴法案反対の運動を発展させるとともに、自民党の修正策動を一切許さず、盗聴法案を廃案とするよう重ねて強く要求するものです。
一九九九年三月二〇日
自 由 法 曹 団