<<目次へ 【声 明】自由法曹団


日の丸・君が代法案の成立に抗議する声明

 本日、参議院本会議において、日の丸を国旗、君が代を国歌として法制化する、いわゆる「日の丸・君が代」法案が採決され成立した。
 「自自公」連立政権は尽くすべき委員会審議をないがしろにし、民主党を取り込んで採決を強行したもので、国民を置き去りにしての自自公民の談合$ュ治の結果である。
 自由法曹団は、この法案が国会に提出されたとき、直ちにこれを廃案にすべき旨の声明を出した。その理由として、第一に、日の丸・君が代は日本国憲法の基本理念である国民主権及び平和主義と相容れないこと、第二に、法制化により日の丸・君が代がいっそう強制され憲法の保障する思想・良心の自由を侵害することになること、第三に、政府・自民党のいう定着論≠ノ何の根拠もなく、むしろ定着していないことこそ社会的事実であることを掲げた。
 その後二ヶ月間の国会審議と世論の動向は、このことを一層明らかなものとした。
 今回の日の丸・君が代の法制化については、

 一 日の丸・君が代が国民を侵略戦争に駆り立てる道具として利用されたという歴史的な事実、アジア諸国民にとって、日の丸・君が代は侵略と虐殺のシンボルとして心の傷となっているという厳然たる事実、卒業式・入学式における日の丸掲揚・君が代斉唱が職務命令で教職員に強制されることになるという事実、日の丸・君が代が国民の間に定着したとは云えずむしろ、この問題をめぐって、国論は二分するという明白な事実、そして君が代をいかに解釈しようとも主権在民の基本原理と相反するという誰にでも理解できる事実が明らかとなった。

 二 この間、宗教者たちが、教職員たちが、戦没者遺族たちが、母親たちが、学者・知識人たちが、法律家たちが、それぞれの立場から、日の丸・君が代の法制化を危惧し、反対の声をあげてきた。そして国民のなかにもこの問題を真剣に議論しようという雰囲気が広まってきた。

 三 参議院の特別委員会審議においても、参考人はそれぞれの経験と思いから、日の丸・君が代法制化に懸念・憂慮を表明し、野中官房長官ですら、「国民に理解されていない」、「戦争遂行に利用された」、「アジアには信認されていない」、「内心を表明しない自由はある」などと日の丸・君が代法制化の障害を認めざるを得なくなっていた。

 このような状況のもとで、問答無用の採決が強行されたのである。国旗・国歌法制化という大切な論議をかくも軽視し、かくも急ぐ理由は明白である。
 今国会ですでに成立した、戦争法とも云うべき新ガイドライン関連法及び憲法調査会設置法など、日本の軍事大国化を急速に強めるなかで、政府・自民党は日の丸・君が代を国旗・国歌として法制化し、これを国のシンボルとして改めて権威づけることにより、戦争遂行体制の道具のひとつとしてこれを利用しようとするところにその狙いがある。
 自由法曹団は、憲法の定める国民主権、平和主義、基本的人権を何よりも重んじる立場から、国民無視の採決強行に断固抗議するとともに、日の丸・君が代の強制、戦争遂行体制の確立に強く反対し、広く国民とともにたたかう決意を表明する。

一九九九年八月九日
自 由 法 曹 団
団 長 豊 田   誠