<<目次へ 【声 明】自由法曹団
東ティモールでは将来の地位を問う住民投票が開票され、七八・五パーセントの住民が独立を支持したことが判明するや、孤立を恐れたインドネシア残留派私兵集団による武力攻撃やテロ行為はこれまで以上に激化し、各地で虐殺・発砲・放火・略奪が相次ぎ、極めて深刻な状況となっている。
一九七五年一一月、数世紀にわたってポルトガルの植民地支配におかれてきた東ティモールにおいて、ポルトガル独裁政権の崩壊により、ポルトガルがここを撤退したのを受けて「東ティモール独立革命戦線」などが「東ティモール民主共和国」の独立を宣言した。しかし、インドネシアはこの独立を認めず、ただちに武力侵攻し、翌年一方的に東ティモールの併合を宣言した。この武力併合は国際法や国連憲章の立場からも到底認められるものではなく、国連総会も一九七五年以来八〇年代の初めまで毎年、この「軍事介入」を非難し、「インドネシア軍の撤退」を求める決議を採択してきた。
こうしたなかで、日本政府はアメリカとともに東ティモール問題での国連総会決議に反対し、ODA資金の東ティモール抑圧のための支出を黙認してきた。
この間インドネシア政府と国軍は、親インドネシア住民を入植させ、併合支持派を育成しながら、独立運動派や併合に抵抗する東ティモール人を拷問・殺害の対象とし、約二〇万人を殺してきた。しかし、住民が自らの将来を自らの手で選択しようという機運は止むところがなく、今回の住民投票はこうした歴史的背景のなかで、国連アナン事務総長の仲介でインドネシア・ポルトガル両外相によって結ばれた合意文書に基づいて行われたものである。選挙の結果によって一〇月または一一月に、インドネシアの国権最高機関である国民協議会に一九七六年の併合の認定の取り消しを提案して、本格的手続に入ることになっていた。
この合意文書によれば住民投票にあたって、インドネシア政府は平和と治安の維持に責任をもつことが確認されており、ハビビ大統領も選挙の結果が出た際に「政府は東ティモールの住民の選択を尊重し、受け入れる」と発表してきた。
ところが、今回の残留派私兵集団による無法な破壊活動や暴力行為を国軍と警察は放置・黙認するだけでなく、直接これに関与してきたことは数々の報告から明らかであり、弁解の余地がない。
こうした状況を踏まえ自由法曹団は、東ティモールの暴虐を一日も早く止めさせるため次のことを要求する。
(一)インドネシア政府は残留派私兵集団の支援をただちにやめ、武力攻撃・テロその他の行為を厳しく禁止するとともに、無法状態を収束させるために断固とした行動をとるべきである。
(二)インドネシア政府はもちろん、すべての関係者と周辺諸国は、先の国連の仲介によるポルトガル・インドネシア両政府の合意や国連総会決議を遵守し、住民投票で示された住民の意思を実現するために全力を挙げてその責任を果たすべきである。
(三)日本政府は、選挙の結果を尊重し東ティモール独立反対の政策を改め、インドネシア政府のテロ容認の態度を厳しく戒め、ODA援助のあり方を強く見直すべきである。
右声明する。