2002年12月
貴団体におかれましては益々ご清栄のことと存じます。
さて、現在、政府のもとに司法制度改革推進本部がもうけられ、わが国の司法制度のあり方について大きな変更を加える制度設計が検討されています。
私たちは、利用者である市民に身近であり、労働者や消費者などの社会的な弱者が侵害された人権を救済する力を出してくれる裁判所と裁判手続きへの改革をめざして声をあげ、運動しています。
ところがその要求に逆行するとんでもない動きもあります。
そのひとつが、現在ほとんど使われていない「仲裁法」にかわる新仲裁法制定の問題です。「仲裁制度」とは、裁判所ではなく、特定の仲裁人が、当事者双方の合意がある場合に、仲裁によって紛争を解決するという制度です。問題は、契約の際に予め将来の紛争について「仲裁によって解決する」との合意がなされると、現実に紛争がおきてしまったときには「仲裁」を求めるしかなく、裁判などに訴える道が閉ざされてしまうことです。
このことは、労働者が企業と雇用契約を結ぶときの就業規則や、消費者が業者と契約をするときの契約書・約款に「仲裁条項」が存在する場合には、深刻な結果となります。労働者や消費者には知識がなかったり、実質的な選択権がなかったりでそのまま契約を交わしてしまうと、後日紛争が生じ、裁判に訴えて、きちんと証拠調べをして権利救済をしてもらいたいと考えても、予め裁判を受ける権利を放棄したと扱われてしまうのです。
これでは「強者」である企業が、「弱者」の権利救済の最後のよりどころである裁判を予め奪う手段となってしまいます。
現在、この問題を担当している「仲裁検討会」では、労働契約と消費者契約などについて、特則をもうけるかどうかについて最後のつめをしています。この12月から1月が山場です。
この時期に、労働者や消費者などの裁判を受ける権利を奪うなという幾千の声を届ける必要があります。
ぜひ問題の重要性をご理解いただき、団体署名にご協力をお願いいたします。