新入団員から
「魂」を持ちつづけて

村崎 修 むらさきおさむ
東京支部 36期 99年入団

 弁護士になり、十数年経験をして、今年(99 年)自由法曹団員となった私に原稿の依頼がきました。夏の日であったと思います。その頃、私は「子どものこと、法のこと、社会のこと」などを考えていた時期であったと思います。特に、法のことを考えていたと思います。それで本原稿の依頼をありがたく思い引き受けました。
 ただ、引き受けたものの、考えがまとまらずにいます。今の思いをカッコつけないで語るしかありません。
 まず夏に思い悩んでいたこと、今、考えていることのひとつを記したいと思います。それは「魂」です。人間の尊厳と言い換えてもいいでしょう。私が「魂」を豊かにもってそれを十分にいかせられているか。あるいは、魂のある判断、行動をしているか、と問われると「そんな」という答えしかできません。私が魂、人間の尊厳を求めていることは確かだと思います。どうして、それが実現できないのでしょうか。
 このように考えます。現実の社会は、人間の尊厳を拒んでいることも事実です。だから、我々は、それを実現するために闘っているのだと思います。しかし、闘うためには、現実から目をそむけず、現実を見据えなければなりません。しかし、これがときに魂を弱らせてしまいます。魂が弱まると闘う相手を見間違ってしまいます。そこで、どうすればいいかということを考えています。今の到達点は、現実を見据える力をつけた上で、それを否定できる魂を持ち続けることだと考えています。
 最後のまとめになってしまいますが、以下のことを少しの勇気をだして告白しておきます。私は以前ある法律事務所にイソベンとして勤務していました。そこで、商事法務という雑誌で商事判例紹介というコラムを担当したことがありました。そこのコラムに日立製作所の田中さんの残業拒否により不当解雇された事件の最高裁判所判例を紹介したことがあります。ところが、これを載せたために、以後、そのコラムの担当は解任され、その後、その法律事務所から解雇通告をうけ、独立しました。
 いまワープロを打っていて、何でも主張できることに、その価値(人間の尊厳)を認めないわけにはいきません。魂を持ち続けることのできる場所はここだと考え、入団したのだと思います。

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