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田中  隆 「2・5」から戦争法制(事態対処法制)へ
志田なや子 新自由主義の漫画または悲劇(イラク)
島田 修一 日弁連「東北アジアシンポ」に参加して
菅野 昭夫 愛国者法(九月一一日事件後のアメリカ合衆国における治安立法、治安政策)(5)
河内 謙策 自由法曹団は一つの提案をすべきではないか
渡辺登代美 三・六全国活動者会議に参加しよう!
ー講演・問題提起は愛敬教授にー
中野 直樹 司法改革関連法案の国会審議直前
三月一六日 全国活動者会議をひらきます
自由法曹団 「自衛隊のイラク派遣に反対する法律家アピール」運動の報告




「2・5」から戦争法制(事態対処法制)へ

平和・有事法対策本部副本部長  田 中  隆

1 「2・5」の周辺風景

 二月三日、陸上自衛隊本隊・イラクへ派兵。
 二月七日、派兵部隊・クゥエートからイラクへ「進軍」。
 二月九日、国会・「イラク派兵計画」承認を強行。
 これがイラクをめぐる二月初頭の動きであり、「2・5ピース・キャンドル・ナイト」の「周辺風景」でもある。
 だが、この国の風景はこれにとどまらない。二月二日、政府は有事七法案を都道府県知事会に提示。三月上旬の国会提出を表明した。自衛隊の海外出兵と「海外出兵国家」の後方法制や米軍支援法制が同時的に現実化したそのさなかに「2・5」があったことになる。

2 「ピース・キャンドル・ナイト」が灯したもの

 「2・5」については、この「団通信」にも多くの原稿が寄せられることになっているから、内容や感想はそれらに譲り、ここでは特徴と課題をスケッチするにとどめる。
 (1)最後の一週間で大きくうねりが広がり、主催者から労働組合幹部まで「予想外の参加者」に驚いた集会。(2)出発時刻以後に中途参加も含めて大きくふくれあがり、最後までほとんど離脱がなかった一時間半のパレード。(3)都民中央法律事務所が新宿に提起して新宿が「錐」になり、自由法曹団が「展開軸」になった運動の展開。(4)都民中央ー新宿ー自由法曹団・法律事務所ー東京地評・全労連と多くのセンターのネットワークで組み上げた実務。(5)準備と実務をOA上で構築し、最終盤には一日数十本がとびかったメールの密度。
 このそれぞれが「2・5」の断面であり、平和・有事法対策本部で最初から対応し、最後は実行本部のセンターに座った筆者にとっても新鮮な驚きだった(詳細は「2・5行動・実務報告」 有事法制ML掲載 以下、参照文献はすべてこのMLに掲載している)。
 設立八〇年の歴史を誇る「古き組織」の自由法曹団が、NGO流の現代的な手法で仕かけ、主には労働組合・民主団体といった「既成の運動体」に投げかけて、その「既成の運動体」の構成員の心に火を灯した行動が「2・5」だった。「組合員の予想外の参加に驚いた」「地域が元気になった」「キャンドルが集会の必須アイテムになった」「やれるという自信がでてきた」・・こんな声が聞こえてくる。
 「もって瞑すべし」というところだろう。

3 戦争法体系の完結―事態対処法制

 二月二日に政府が示した有事七法案とは、武力攻撃事態法第二二条によって整備が規定されていた事態対処法案(条約三件を含めて「有事一〇案件」)。事態法は「プログラム法」で、事態対処法制(個別法制)が整備されてはじめて発動できるシステムになっているからこれが「有事法制体系」を完成させる法制ということになる。
 登場するのは、(1)国民動員法制(国民保護法制案)、(2)臨検法制(外国軍用品等海上輸送規制法案)、(3)米軍支援法制(米軍行動円滑化法案・自衛隊法「改正」案と日米物品役務相互提供協定(ACSA)の「改正」、(4)交通・通信管制法制(交通・通信総合調整法案)、(5)捕虜等取扱法制、(6)非人道的行為処罰法案とジュネーブ条約追加議定書1、2の批准、の六ジャンル(七法案と三条約案件)。
 「見出し」からも明らかなように、ジュネーブ条約の交戦規定をそのままこの国に持ち込み、捕虜・臨検・交通通信管制といった作戦の要諦を立法化し、米軍への支援態勢を構築し、自治体・地域ぐるみの国民動員システムで後方を固めようというもの。まさしく「戦争法体系」にほかならない。
 このうち国民動員法制については、有事三法成立前の〇二年夏から検討・準備が進められており、〇三年一一月には詳細な「要旨」が発表されていた(「要旨」については、〇三・一二・〇四「国民動員法制『要旨』について」で解析を試みた)。これに対して、他の対処法制は暮れまではまったく実像が見えず、「「一年を目途に整備」との附帯決議のある国民動員法制を先行させるのでは」との観測もあった。だが、政府は他の分野を含めた対処法制のすべての提出を表明し、三月上旬にはこれら「戦争法体系」が第一五九通常国会に出揃うことになる。
 この動きに伴って、第二次有事法制闘争は、「国民保護」と銘打った法案の欺瞞を暴くたたかいから、「臨検」や「捕虜」や「米軍支援」に彩られた戦争そのものに対決するたたかいに昇華するだろう。「むしろたたかいやすくなった」とも言えるだろう。

4 イラク出兵と事態対処法制

 現に戦場のイラクに自衛隊が行っている。そのイラク出兵と事態対処法制・個別法制はどうリンクするか。有事法制ー事態対処法制の本来のベースは「武力攻撃」であり、「イラクは戦場ではなく、大規模テロもゲリラ攻撃も戦闘ではない」との「タテマエ」をとる政府にとって、イラクと有事法制はそのままリンクできない。他方、「首都東京に報復の大規模テロが発生したら」「原理主義者のゲリラが米軍基地を襲ったら」・・これは政府とても否定はできない。
 この「隘路」を埋めるために国民動員法制に挿入されるのが、「大規模テロ等緊急対処事態における緊急対処保護措置」。閣議決定で「緊急対処事態」を認定し、地方自治体や指定公共機関等を動員して「避難」「救援」「災害対処」などを行うことになり、罰則等も含めて「武力攻撃事態と同様の扱い」とされる。
 「大規模テロ等」では、「武力攻撃事態法は発動されないが事態対処法制は発動される」という「横だし」が起こることになるのであり、これが国民動員法制だけにとどまる保証はない。「イラク出兵部隊のゲリラを拘束」「在日米軍基地にゲリラ攻撃があったときの武器・弾薬の相互提供」などの「隣接領域」も多々存在しており、ここまで事態対処法制が拡大する可能性なしとしない(法文を精査しないとわからないが。有事法制ーイラクー事態対処法制の展開については、東京支部総会特別報告集「事態対処法制・国民動員法制」で検討を試みた。知事会説明前の〇四〇二〇一付)。
 イラク出兵のさなかに提出される事態対処法制は、イラクと直接リンクした構造を持っていることになる。

5 三年目の三月

 旧有事法制阻止闘争本部を立ち上げた〇二年春、アフガン戦争とリンクした有事法制に「往くべきは平和の道」を対置した。このタイトルの第一意見書の発表は三月五日である。イラク攻撃が迫っていた〇三年春、世界制覇をもくろむブッシュ・ドクトリンの「帝国の道」に、世界の若者たちが立ちはだかった。三月八日、この国でもワールド・ピース・ナウの若々しい行動が爆発した。
 いま三年目の春。
 イラク攻撃一周年の三月二〇日にはふたたび世界規模の行動が予定され、この国でも準備が進められている。自由法曹団や新宿が「2・5」で灯した「平和の灯火」は、そのうねりに流れ込んでいくに違いない。そして、その三月、イラクの後方を固める事態対処法制が国会に登場し、「海外出兵国家」の戦争法体系が完成させられようとする。
 この国の政府は、どうやら「くるところまできた」観すらあるが、世界は決して「帝国の道」を「王道」とさせていない。
 「2・5」から戦争法(事態対処法制)へ。
 「往くべきは平和の道」を掲げる自由法曹団と対策本部が、ふたたび立つべきときを迎えている。

(二〇〇四年 二月一七日脱稿)



新自由主義の漫画または悲劇(イラク)

東京支部  志 田 な や 子

はじめに

 二月八日、石破防衛庁長官は「大量破壊兵器があったかどうかは別にして、日本は自衛隊を派遣してイラク復興へ取り組む」とテレビ番組で発言した。しかし、イラク全体の占領とその政策が根本的に間違っているときに、自衛隊の派遣先であるサマワだけを天国にして治安を安定させることなどできない。

民営化原理主義

 イラクでは失業率が七割にのぼり、治安が安定しない原因の一つとなっている。もともとイラクでは国営企業が大半を占めているが、米占領軍当局は企業が民営化されないかぎり、操業を認めない。企業が稼動しないかぎり、職はない。そこに膨大な数の復員軍人が加わって、失業問題は深刻化し、いっこうに改善されない。

米復興ビジネスの実態

 イラクの復興事業は、米企業が一手に引き受けている。戦争によって破壊された社会資本を復旧させるだけでも、たくさんの仕事があるはずだ、と思う。しかし、そうはいかない。最も簡単そうな道路の補修工事でさえ、米企業はイラク人を雇わず、外国から作業員を連れてくる。電話回線などの復旧工事は行われず、携帯電話が導入された。電話回線などの工事ならば、イラクには湾岸戦争後たちまち復旧させたほどの技術者がおり、そうした人々を活用すれば、雇用を増やし通信事情を改善することができたはずである。
 発電所や水道施設の復旧もいっこうにすすんでいない。発電所や水道施設は、二十年ほど前から湾岸戦争勃発までの間に、フランス、ドイツ、日本、ロシアなどの企業が工事を受注したものである。イラン・イラク戦争中、イラクは西欧に敵対するイラン・イスラム革命に対抗する国として、西側から手厚い援助を受けていた。
 発電所や水道施設は老朽化したとはいえ、それぞれの国の企業から部品を取り寄せ補修工事をすれば、状況を劇的に改善できたはずである。しかし、工事を請け負った米企業は部品を取り寄せない。
 そこで、発電所を復旧できず、慢性的な電力不足の状態が続いている。うがった見方をすれば、老朽化した施設を全壊させて、施設全体の工事を請け負うのでなければ、儲けにならないということかもしれない。善意の見方をすれば、復旧工事が遅れているうちに、治安が悪化して工事どころではなくなったともいえる。
 慢性的な電力不足のために、原油の精製所を稼動させることができず、世界第二位の原油埋蔵量をほこるイラクでガソリンを輸入にたよっている。そこで、ガソリンスタンドに長蛇の列というテレビ報道のような有り様が出現するのである。
さいごに
 イラクの専門家酒井啓子氏の発言などから知った以上のような事実をみると、イラクで起こっていることは、新自由主義の漫画とでもいうべきものである。だが、イラクの民衆にとっては漫画どころか、悲劇そのものである。



日弁連「東北アジアシンポ」に参加して

東京支部  島 田 修 一

 二月七日、日弁連と大韓弁護士協会が共催、国連広報センターが後援した標記シンポに参加した。基調講演を行ったアニファ・メゾウィ国連NGO部長が「土曜日にこれほど集まるとは信じられない」と驚き、パネラーの一人パク・チャンウン弁護士が「韓国でこれだけ人が集まれば社会や政府が変わる。しかし日本は変わらない」と皮肉った。五百人がクレオに集まり、講演と討論の五時間、東北アジアの平和構築へ向けた「NGOと市民運動の役割」の重要性を確認する実りあるシンポとなった。

 アニファ氏は、国連NGOの役割の特徴について、NGOは当事国と敵対関係にないため平和構築の価値ある仲介者として活動でき、特に初期段階での紛争予防活動に力を入れてきたこと、過去一〇年間その役割が飛躍的に高まってきたこと、世界平和を実現するには貧困と差別と人権侵害の解消が必要不可欠だが、特にミレニアムサミット(〇〇年)で確認された極度の貧困(一日一ドル以下の生活者は世界人口の二割)の解消が国際社会の責務となっていること、アナン事務総長が呼びかけている朝鮮半島と周辺諸国の平和実現を目指した「創造的戦略」を進めていくにはNGOの役割が大きいが、東北アジアのNGOは僅か六八組織でアジア太平洋地域の二二%でしかないから(アジア太平洋地域は世界の一四%)、この地域でNGOを広げていくため一人ひとりの努力が求められていると訴えられた。
 パネリストは、韓国からパク弁護士、イ・ヒョンスク「平和を創る女性の会」代表、日本から藍谷邦雄・日弁連実行委員長、吉岡達也・ピースボート代表、君島東彦・北海学園大学教授の五名。発言順に紹介すると、藍谷氏は、アメリカの単独行動と日本の有事法制、憲法改悪の動きが朝鮮半島の「危機」をもたらしているが、危機の実態が共有されず言葉だけが先行している日本国内の実情を憂慮し、六ケ国協議だけでなく市民運動の役割が大事であるとして、アナン事務総長の呼びかけに応えた紛争予防のためのNGO会議「東北アジア地域協議会」が近々東京で開かれ、平和のための市民の役割を掘り下げていく予定だと紹介された。そして、日弁連が取り組んできた活動(有事法反対、イラク攻撃反対、自衛隊派遣反対、戦後補償、拉致事件は政府間交渉で解決すべきとの政府申入、韓国の弁護士会との交流等)は多民族・多文化社会が共存していくためだが、国内のNGOひいては東北アジア各国のNGOとの間にネットワークを形成して人的交流と東北アジアに「開かれた社会」を作り出すことが市民の役割だと強調された。
 パク氏は日本語で、韓国政府のイラク派兵に対する大韓弁護士協会の取組みは弱いが、憲法裁判所に差止請求した民弁の活動を紹介されたうえ、藍谷氏と同じく東北アジア法律家団体のネットワークの必要性とそれを東南アジアへ広げることを呼びかけられた。
 吉岡氏は、ピースボートはNGOや市民とネットワークを作るため海外の現地を訪ねて自分たちは何をしなければならないかを検討してきたが、その結果、イラク戦争を食い止められなかった無力感より、平和を求める市民社会がアメリカに対抗する世界のスーパーパワーに成長している現実がある、したがって今後も市民のつながりを広げていく運動への参加を訴えられた。
 イ氏は、朝鮮半島の危機の構造は、北朝鮮の核脅威と深刻な経済難、先制攻撃戦略による米朝間の敵対的葛藤状態、日朝間の敵対的葛藤状態、和解と葛藤が交錯する南北関係にあるが、日本の軍事的役割の増大と右傾化が危機を加速させていると憂慮され、東北アジア平和構築へ向けての具体策として、朝鮮半島の停戦体制を平和体制に転換させるロードマップの作成、東北アジアNGO六者会談の即時構成、九条改悪策動の中断等を求められた。
 君島氏は、日本国憲法は東アジアの文脈の中で捉えられるべきだとして、その条約的性格(不戦条約と国連憲章二条四項の国内法化)と社会契約的性格(戦後日本が東アジアで存続するための契約)から、地域のすべての国をメンバーとする普遍的な地域的安全保障の枠組みを求めていること、したがって昨年五月衆議院が有事三法を可決するに際して韓国国会議員三〇名が反対FAXを届けたように、東アジアの人々は九条の維持・変更について意見を述べる資格があること、平和を作る主体は政府ではなくピープル=市民であるから、日本の市民は議会、裁判およびNGO活動を通じた平和のための行動が要請されていること、その行動を通して東アジア市民社会を形成し地域的安全保障を作り出していくこと、九〇年代以降、政府や国連の政策を民主化させてきた実績をもつNGOを抜きにして平和を議論することはできないこと等を訴えられた。

 アメリカを盟主とする戦争と抑圧に対抗し、国家・文明・民族の違いを超えた平和共存、国連中心の平和秩序を求める国際社会のうねりが強まるなか、講演者とパネラーはこぞって、東北アジアにおいてもうねりを作り出すための市民の役割と行動が求められていることを強調された。この地域は、巨大な通常兵力が集中し、核脅威と緊張・敵対関係が続き、対話と信頼醸成の枠組みも作られて来なかった冷戦地域である。予防外交、紛争の平和的解決、非核地帯を国家間合意としたASEANの努力に対し、今日でもアメリカ、日本そして北朝鮮が軍事衝突の危険を作り出している。この危機を打開して平和への展望をどう開拓するか。本シンポは、市民の行動と国境を超えた連帯が重要な役割を担うことを発信した。反戦平和運動、統一運動、軍縮・国防政策監視運動、米軍犯罪根絶運動、日本軍国主義復活反対運動、平和文化醸成活動、国際連帯活動という韓国市民の「冷戦文化を平和文化に置き換える」重層的な努力は目を見張るものがある。この巨大な運動が南北宥和を導く共同宣言(〇〇年)を作り出したのである(日朝平壌宣言はその運動の成果ではなかった)。また、海外の現地に行って人々と交流することを通して自己の課題を探るピースボートの実践は教訓的である。これらの行動と交流が東北アジアに対する先制攻撃の抑止力となってきたことはまちがいない。過去を克服して各国市民との和解と信頼と連帯をどう作っていくか、強めていくか。東北アジアでのこの行動は「まだ初歩的な段階」だし、NGOのネットワークもこれからだが、この地域における国際連帯を進める運動での日本市民の役割は大きい。「固く団結して努力」しよう、そのためにも狭い民族主義の方向に向かわせようとするこの国の危険な動きを中断させなければならない、この思いを強くさせたシンポであった。また、NGOは福祉、社会教育、環境保全、人権擁護、平和推進、女性の権利実現等、さまざまな分野で運動を展開して国連や国家意思の形成に影響を与えているが、国家に対抗する市民社会の成長に不可欠な存在であるとも再認識させてくれた。

 藍谷実行委員長は主催者挨拶で、「特定、個別の人権侵害を本日取扱うことはしない」と述べられたが、木村晋介弁護士から会場発言があった。「パネラーの意見はアメリカの大国主義と日本の有事法が東北アジア平和危機の基本としたが、その捉え方はまちがっている。拉致は北朝鮮の国家政策に依る。北朝鮮にはNGOも民主主義もない。数十万の人々が収容所に入れられている。食料支援しても分配は不平等で食べる権利すら認められていない。二千万民衆の人権が抑圧されている。その一つの現われが拉致。このような国家の存在をどうするか。これを抜きにして東北アジアの平和は語れない。今の体制を保障したままでは語れない」
 野次と拍手が会場で交錯したが、この発言に対し、イ氏「過去の涙も現在の涙もいま生きている。二つの涙をいっしょに解決すべし。涙を再発させないためにも新しい秩序が必要だ」、パク氏「半島では今でも悲劇が続いている。従軍慰安婦は六〇年間も傷を背負って生き続けている」、吉岡氏「真実と和解の委員会(マンデラ南ア大統領)のように過去を直視して真実の究明と和解をアジアでも行うべきだ。過去を克服しないと真の信頼関係は築けない」。体制を保障したままでは平和は語れない、の意味は何だろう。また、日弁連主催の国際シンポであったのに日弁連執行部の挨拶がなく、李鐘元立教大学教授の基調講演も直前にキャンセルとなる等、説明不足の面もあった。



愛国者法(九月一一日事件後のアメリカ合衆国における治安立法、治安政策)(5)

北陸支部  菅 野 昭 夫

国際法を無視するグアンタナモ基地での拘禁

 二〇〇二年一月以降、アフガニスタン戦争で捕虜となった多数の囚人がグアンタナモ基地に送られ、そこで拘禁されている。この収容のもようについて、最近米軍が取材に応じるようになったため、内外のマスメディアが報道するようになった。読売新聞(二〇〇三年一二月一一日号)及びタイム誌(二〇〇三年一二月三日号)によると、政府が公表している囚人数は四四カ国からの六六〇人とのことである(NLG総会での報告者は囚人数が約一一〇〇人と推定される旨述べている)。彼らは、まず二m×二・四mのケージに収容される。トイレは側溝のみで、夜間も照明に照らされ、三〇秒毎の監視が二四時間続く。二週間に一回、シャワーと運動が二〇〜三〇分間許される。彼らに対しては、外界との連絡や、弁護士とのアクセスは認められず、ひたすら熾烈な尋問が行われる。協力的でない囚人に対しては睡眠や水を与えないことを、当局は認めている。収容から一八ヶ月の間に三二人が自殺を試みた。そして、囚人が尋問に協力的となると、彼らの待遇はその程度に応じて順次改善され、最後は相当自由な拘禁状態となる。しかし、非協力的な被拘禁者は、裁判にもかけられることなく無期限に拘禁できるとされている。
 周知のように、戦時捕虜の待遇に関しては、一五六カ国が批准しているジュネーヴ条約があり、アメリカ合衆国も一部を除き批准している(批准を留保している部分についても、国際法上、国際慣習法としての拘束力がある)。この条約によれば、戦時捕虜は二種類に分類される。第一は、戦争状態にある権力の代理人として行動した者で、責任ある指揮に従って軍事行動に従事し、公然と武器を所持し、ユニフォームのような識別可能な服装をしているなどの条件を満たせば、戦時捕虜(P.O.W)として取り扱われる。戦時捕虜に対しては、尋問を行うことは許されず、家族との通信、自国の兵士と同等の居住環境その他の待遇を保障し、かつ彼らが敵対的態度を保つことを許容しなければならない。第二は、民間人(シヴィリアン)として戦闘行為を行った者で、彼らは犯罪人として処遇される。従って、それぞれの国内法に従って処罰されるが、言うまでもなく、それぞれの国内法が保障する被疑者、被告人の権利を侵してはならないばかりか、国際法的にはアメリカも批准している自由権規約(B規約)の諸権利を遵守しなければならない。
 ところが、ブッシュ政権は、ジュネーヴ条約には無い「不法戦闘員」(unlawful combatant)という概念を、これらの被拘禁者にあてはめている。その根拠は、これらの者は、ユニフォームも着ていなかったし、戦時法規にも従っていなかったからだと言う。
 しかし、その主張は、どのように考えても、正当性を欠いている。まず第一に、ジュネーヴ条約によれば、戦時に拘束された者は、戦時捕虜と推定され、かつ、その推定に疑問があるときは、拘束を行った政府は、どちらの類型に属するかについて認定する国際的な法廷の召集を求める条約上の義務を有し、自国の判断で勝手に認定してはならないと規定されている(アメリカ合衆国はその条項を留保なしに批准している)。第二に、仮に、彼らが戦時捕虜でないとしても、前述のように、睡眠も水も与えずに尋問を行い、外界との接触を遮断し、弁護人選任権を否定し、犯罪の嫌疑も告知せず、裁判にもかけず、無期限に拘禁するなどということが、アメリカ憲法や、自由権規約からいって、許されるはずもない。そもそも、彼ら被拘禁者については、世界中のどの国の裁判所からも治外法権という、司法的ブラックホールが出現したことになるのである。
 従って、グアンタナモ基地における拘禁は、アメリカ国内においてさえ、第二次大戦時の日系アメリカ人の収容所における拘禁(後にアメリカ政府がその違法性を認め、補償を行った)以上の蛮行と批判されている。

愛国者法II制定の企て

 しかしながら、ブッシュ政権にとっては、愛国者法の現状はなお不十分なのである。二〇〇三年一月に任期満了を迎えるジョン・アシュクラフト司法長官は、ヴァージョン・アップした愛国者法?の草案を関係機関に送付した。その正式名称は、二〇〇三年「国内治安強化法」というもので、以下のような驚くべき内容である。
(1)アメリカ国民に対しても、もしテロリストと政府が認定した組織(遡及的な認定も含む)に物質的援助を与えたときは、その国籍を剥奪できるものとする。(これまでは、国籍の離脱は本人の意思表示が必要であったが、この法案では、テロリストに対する援助という行為も国籍の放棄とみなされる。しかし、アメリカ人からその国籍を剥奪すれば、国外追放ということになるが、一体どの国へ追放するのであろうか?)
(2)永住許可を持つ外国人でも、もし司法長官がその人物を九月一一日事件国家の安全にとって危険と考えたときは、犯罪の嫌疑や証拠なしにでも、直ちに国外追放できるものとする。
(3)政府に対し、テロリストの探査、捜査、訴追、予防等の目的のために、DNA情報を市民から収集する権限を付与する。試料の提出を拒んだ者は二〇万ドルの罰金と一年の拘禁の罰を科する。
(4)政府機関に対し、令状等の司法チェックなしに、何人の電話、インターネット、Eメイルを盗聴し傍受する権限を付与する。
(5)テロの疑いで拘禁している者については、起訴されるまでは、政府はいかなる情報も公表することを要しないものとする。(アメリカの歴史上初めて「秘密逮捕」が合法的となる)。
(6)愛国者法のサンセット条項(議会の承認を得るために、各種権利の制限を二〇〇五年までの暫定措置とした条項)を撤廃する。
 以上が、愛国者法IIの骨子である。もし、この愛国者法IIが制定されれば、アメリカは、警察国家というよりは、ゲシュタポ国家というにふさわしいものになる。

愛国者法に対する批判と反撃

 愛国者法制定当初は、「テロとの闘い」という「大儀名分」の前には、劇薬もやむをえないという政治的雰囲気の中で、批判は殆どかき消されてしまった。しかし、NLG、ACLU(アメリカ自由人権協会)、CCR(憲法的権利センター)などは、当初から、敢然とその違憲性を主張し、ACLU、CCRは被拘禁者を代理して訴訟を提起した。
 二〇〇三年のNLG総会は、この愛国者法に対する闘いを主要テーマとして開催されたが、総会に出席した私たちにも、全体集会、メージャー・パネル、ワーク・ショップにおける報告や発言から、NLGが総力を挙げて愛国者法との闘いに取り組んでいることが十分に理解された。例えば、NLGの移民部会は、九月一一日事件後、愛国者法による弾圧とどう闘うかについての説明会、相談会を全米各地で開催するとともに、おびただしい数の被拘禁者や国外追放対象者について弁護人となって成果を挙げ、また、それらの弁護人に対して情報と法技術の提供を行うなどの献身的な取り組みを行ってきた。また、前述のように、NLGは各地の反戦デモに対する法執行機関の弾圧を回避し、弾圧と闘うために、多数の弁護士が、リーガル・オヴザーヴァーとして現場に立会い、また大量逮捕者の釈放に力をそそいでいる。NLGのブルース・ネスター議長は、「NLGは、湾岸戦争では見るべき取り組みをすることが出来なかった、しかし、九月一一日事件からイラク戦争の今日まで、NLGは、法的援助を必要とする移民や、侵略戦争に反対し市民的自由を擁護しようと立ち上がった人々にとって、「頼れる存在」となることが出来た」と、挨拶した。
 そのような中で、愛国者法のもたらす人権侵害があまりにもひどいため、マスメディアが次第にそれらのケースを報道するようになると、やがて、市民による草の根の反対運動が組織されるようになり、二〇〇三年一〇月にメーリーランド州で会議が開催されている。さらに、全米で二〇〇三年六月までに一二二の市、町、郡及び三つの州の議会が愛国者法の撤廃を求める決議を可決するに至った。
 二〇〇三年一二月には、二つの連邦高等裁判所が、グアンタナモ基地における拘禁について改善を命ずる判決を言い渡した。即ち、ニューヨーク連邦高裁は、放射性物質の入った爆弾の使用計画を理由に逮捕拘禁されている米国市民を、大統領が議会の承認なしに敵戦闘員として扱う権限はないから、三〇日以内に釈放するか、通常の刑事裁判にかけるよう命じた。また、サンフランシスコ連邦高裁は、アフガニスタンで捕虜となり、基地に拘禁されているアルカイダやタリバンの容疑者は、アメリカの司法制度に従って、弁護士と接見させ、公開審理に付さねばならないとの判決を言い渡している。
 このように、愛国者法に対する反撃は次第に成果を挙げつつある。

(二〇〇三年一二月二六日記)



自由法曹団は一つの提案をすべきではないか

東京支部  河 内 謙 策

 二月五日の防衛庁包囲行動の成功の上に立って、団は何をなすべきか、ということについての私見を述べさせていただきたい。
 私は、団は、日本のすべての平和活動家・あらゆる平和団体に対して、“今こそ、意見の違いを乗り越えて、イラク派兵反対、有事法制反対、憲法九条を守れ!の連絡会(仮称)を職場・地域・学園につくりましょう。”という提案をし、その組織を作るために平和のコーディネーターとして奮闘すべきである、と考えている。
 私が、そのように考える第一の理由は、二月五日の行動が成功した基礎に、“今何かをしなければならないのではないか”と考えている多くの人の気持ちがあることを重視したいからである。これは重要である。当日の行動に“老人”が多かったことを嘆く人もいるが、“老人”が奮起していると、肯定的にとらえるべきではないだろうか。また当日、数は多くないと思われるが、沿道から、自発的に参加した若者や市民がいたことを間接的に聞いた。“兵は拙速を尊ぶ”(孫子?)とも言う。今後の方向をいち早く明確にすることが求められていると思う。
 第二の理由は、日本の平和運動がここ三〜四年の間、いわば“非常事態”で奮闘しなければならない情勢にあることが、ますます明白になりつつあるからである。言うまでもなく、現在進行形のイラク派兵問題から憲法改悪に至る日程のことである。この危機をのりきるためには、平和勢力の統一した取り組みが求められるにもかかわらず、平和勢力はばらばらであり、憲法改悪のための国民投票法案についても、新有事法制についても反対運動の方針は見えてこない。これを克服するために、団のイ二シアティブが求められていると思う。私は、団が、二月五日を成功させるために、全国団体に問題を持ち込み、全国団体を通じて行動をするというスタイルをとらなかったことを高く評価している。
 私の上記提案に対して、“憲法問題は、憲法改悪反対の一点で団結すべきである”という反論もありうるだろう。しかし、これは現在の情勢の下では、机上の空論である。いろんな課題ごとに一点での団結を言っていたら、平和活動家は、疲弊してしまうだろう。 

 [2004年2月12日記]



三・六全国活動者会議に参加しよう!

ー講演・問題提起は愛敬教授にー

改憲阻止対策本部担当次長
渡 辺 登 代 美

 自民党、民主党が改憲案づくりを進めることを明らかにしたのに続き、公明党の神崎代表も、六月を目途に「論点整理」を行ないたいとの意向を表明しました。今国会には、国民投票法案が提出されます。憲法「改正」はいよいよ具体的な日程にのぼってきており、参議院議員選挙の重要な争点になりそうです。
 北東アジアの平和を推し進め、憲法九条を生かすことがいまこそ必要なのだ、という確信をもって今後の運動を展開していきたいと考えています。次のとおり、全国活動者会議を行ないます。全国各地から、是非参加して下さい。

  日時:三月六日(土)午後一時〜午後五時
  場所:団本部
  講師:愛敬浩二・名古屋大学助教授
     「最近の改憲論議の特徴と、それに如何に対抗するか。」(仮題)
 若手の憲法学者で、改憲動向に関する論文、各地の講演活動などでも活躍中。
◎ 講演の後、全国各地の運動の交流、国民投票法案に対する取組みなどについて議論します。



司法改革関連法案の国会審議直前

三月一六日 全国活動者会議をひらきます

司法民主化推進本部事務局長 中 野 直 樹

法務委員会に二一本の法案提出予定

 司法制度改革推進本部提出として、民事訴訟費用等に関する法律の一部改正法案(弁護士報酬の敗訴者負担制度)、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案、刑事訴訟法及び検察審査会法の一部改正法案(準備手続き創設、証拠開示、連日的開廷、被疑者国選弁護人など)、労働審判法案、行政事件訴訟法の一部改正案、総合法律支援法案など一〇本が予定されている。
 法務省提出として、破産法案、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部改正案(共謀罪のみならず、サイバー犯罪条約を締結するための法整備)など一一本が予定されている。
 六月一六日会期末までの期間では、常識ではとうてい処理できない重要法案目白押しである。与党では、参議院先議の手法と、これまでの週二日の定例日制を取り払い連日審議なる強引な日程も検討しているとの情報がある。
団として委員会要請
 二月一二日、団として、衆院法務委員会の委員三五名に、「人権侵害・誤判を生む刑事裁判にしてはならない  裁判員・刑事司法手続きに関する意見書」と「裁判上の合意による弁護士報酬の敗訴者負担制度」についての意見書をもって、要請行動を行った。この二つの文書は、この問題に関する団の理論・政策のいまの到達を記したものである。前者の意見書は、裁判員制度と刑事手続法を切り離して評価することは誤りとのスタンスをとり、発表されている二つの「骨格案」をセットにしてみたとき、誤判防止の視点がまったく欠如していること、全体として「裁く側」の都合が貫かれ、「裁かれる側」の権利拡充がないばかりか、新たに重大な制約が加えられようとしていること、裁判の公開と監視・批判による国民の司法参加を阻害する重大な仕掛けがあることを批判したものとなっている。団員の担当した厳しい刑事裁判闘争の事例もとりあげ、事実をもって「骨格案」のもつ危険性を訴えている。
 ホームページにアップしたので、ぜひ活用されたい。

法務委員会の構成

 衆院法務委員会は、自民一八、公明三、民主一三、改革一の構成である。団員である木島日出夫氏、社民党の保坂展人氏は先の総選挙で議席を落とし、共・社不在の委員会となってしまった。民主党は佐々木秀典議員が筆頭理事予定、裁判官出身の山内おさむ議員も理事の一人である。公明の漆原良夫理事は弁護士出身で、与党PTの責任者である。共産党の法務担当は、井上哲士参議院議員(法務委員会委員)と石井郁子衆院議員。石井議員はもともと文教分野であるが、木島前議員のベテラン法務担当秘書が石井議員の秘書となり、体制補完している。
 二月末に法案が揃う予定である。この時点で全国から、これまで司法民主化闘争に携わってきた団員が集まって、重要法案に対する評価と闘争方針を論議したいと思います。

 予定の確保をお願いいたします。
        日時 三月一六日 午後一時から五時
        場所 自由法曹団会議室
 追記  刑事裁判における証拠開示、裁判官の訴訟指揮権行使の濫用などに関する事例を集めています。また、準備手続き段階で弁護人が取調請求証拠の開示義務を課せられると、警察などに証人つぶしをされるかもしれないとの危険を感じた事例を経験したことがないでしょうか。情報を団本部までお寄せください。



「自衛隊のイラク派遣に反対する法律家アピール」運動の報告

自由法曹団/青年法律家協会弁護士学者合同部会/社会文化法律センター/日本反核法律家協会/日本民主法律家協会/日本国際法律家協会

 法律家六団体が全国の弁護士と法学研究者に呼びかけた標記運動は、二週間余の短期間で、しかも弁護士会選挙期間中であったが、弁護士一五五八名、法学研究者等六四名の合計一六二二名が賛同し、一〇〇万円を超える募金が寄せられた。
 二月六日、六団体の代表はアピール文と賛同者リストを政府へ提出して米英軍の不法な占領支配に参加する自衛隊の派遣に強く抗議するとともに、記者会見を開き、自衛隊の派遣中止と即時撤退を求める声を全国から出していこうとのアピールを発表した。当日の行動は次のとおりである。

 午前一〇時、佐々木秀典議員(民主党)秘書の案内で、鳥生忠佑日民協理事長、新倉修国法協事務局長、米倉勉青法協弁学合同部会議長、島田修一自由法曹団幹事長の四名は外務省、次いで内閣府に赴き、最後の防衛庁には山本真一国法協事務局次長が加わった。
 外務省安全保障政策課主席事務官は、「自衛隊は小学校の修復に行き治安維持活動は行わない」「自衛隊は独自の活動を行うから情報交換はするが米軍(CPA)の指揮は受けない」と政府見解を繰り返すだけ。イラクには誰の承認を得て自衛隊は入国したのかとの質問に対し、CPAであると答弁。日本政府はフセイン政権を承認していたから、フセイン大統領の承認を得ないとイラクに入国できないのではないかと質問。これに対して、もはや実効支配していないから承認は求めないと答弁。フセイン政権を倒したのは国際法に違反した米英軍であり、そのような違法行為によって生じた違法状態を承知するのは違法占領に関与するものである。
 内閣府では、宮崎県の女子高生が一人で五〇〇〇筆を超える署名を集めて提出した「自衛隊派遣は慎重対応を」の請願を読まないまま、「国際政治が複雑であることを学校で教えるべきだ」と語って国民の声を無視した小泉首相の姿勢に強く抗議し(応対した官房総務専門官は女子高生請願も受理)、アピール文を首相の前で読み上げて伝えるよう要求。専門官は総理秘書官室と官房長官秘書官に届けることを約束。高校生の意見を記した文書を読みもしないで批判する首相は、意見表明権を保障した子どもの権利条約を踏みにじるものであり、高校生が政府に反対する意見をもつことについて教育の内容にわたって不法介入するもの。大宰府からの梅娘らとは直接会いながら、高校生に直接会うことを避ける態度は大いに問題だ。
 霞ヶ関から前日のキャンドルパレードで一万人が押し寄せた防衛庁に回り、防衛政策課長補佐ら四名と交渉。外務省と同じく「復興支援はCPA指揮下ではなくCPAの同意を得ての活動」「安全確保支援活動は米英軍の後方支援だからCPAの一翼ではない」「正規軍(政府もしくは政府に準じる組織)の攻撃か否かはその場で判断」「隊員に犠牲が出た場合どうするかは情況を見て判断」「隊員は三月で交替する」「沖縄海兵隊のイラク派兵は米軍から通告を受けただけ」等々の釈明。日米新ガイドラインによる情報・諜報の交換があるはずで、その点での情報収集はどうなっているかとの質問に対し、イラク問題は日米安保条約とは無関係であり、新ガイドラインとは関係ないと答弁。そこで、米軍がイラク攻撃を想定して沖縄で訓練をしていることを知っているかと質問したところ、どのような訓練をするかは米軍の問題であり、承知していないと答弁。さらに、米軍が沖縄に駐留するのは日米安保条約に基づくものであって、イラク攻撃は日米安保と無関係というのであれば、安保条約に違反する行動を黙認するのは問題だと追及したところ、これに対する答弁はなかった。
 CPAはイラク全土を実効支配しているのであるから、その指揮下に入らない自衛隊の独自行動などありえないことは明らかである。それなのに、「自衛隊は占領軍の一員」との現地司令官の発言は知らない、自衛隊は占領支配の一翼を占めるものではない、後方支援は武力行使でない、テロは正規軍でないから反撃は武力行使にあたらないという彼らの「論理」は、平和憲法の縛りと派兵反対の広範な運動に包囲された中で、武装した自衛隊を戦後初めて戦場に送り出すための嘘と誤魔化しと詭弁にすぎない。代表団の四〇分に及ぶ追及に防衛官僚二名が見送りもしないで先に席を立ったのも、自衛隊派兵に正当性がないことを彼ら自身がよく知っているからにほかならない。

 申入後、午後から日民協会議室で記者会見を開いた(鳥生、新倉、島田のほか澤藤統一郎日民協事務局長、鈴木敦士青法協弁学合同部会事務局次長が参加)。出席は赤旗と連合通信の二社。反戦運動を国民に伝えないことが、この国を戦争への道に推し進める巨大メディアの役割か。途中で諦めたら負ける、息切れしない反対運動を呼びかけ、当日の行動を終えた(翌日の赤旗で報道)。

 短期間の要請に全弁護士会に所属する弁護士から賛同が集まりました。六団体に所属しない弁護士多数も含まれています。締め切り後も賛同が寄せられ、二月一三日時点で一六四〇名となりました(弁護士一五六八名、研究者等七二名)。団員の皆さんには本通信をもって御礼に代えさせていただきます。また、賛同金が一〇七万円余寄せられて四〇万円ほど残りましたが、六団体は引き続き世界平和構築と憲法改悪反対の共同行動を進めていきますので、その費用に充てさせていただきますことも重ねてご了承ください。なお、本報告書は『法律時報』三月号に掲載予定です(幹事長島田修一)。