<<目次へ 団通信1125号(4月11日)
高橋 勲 | 裁判員法案・刑事訴訟法「改正」法案についての自由法曹団の評価と方針 ー両法案を一体としてとらえ、重大な決意をもってその抜本修正を求める |
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三上 孝孜 | 刑訴法改正案の危険性 | |
飯野 春正 | 松島暁さんの意見に賛成 | |
飯田 幸光 | 裁判員制度と外国人の裁判員資格 | |
大崎 潤一 | 三月六日改憲対策本部活動者会議のご報告 「普通の市民」をどう説得するか |
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齋田 求 | 三月二四日国会要請行動の報告 | |
渡辺登代美 | 「共謀罪」学習会を行ないました | |
神田 高 | 三・二〇に参加してー二つの教訓と課題 | |
萩尾 健太 | 四・一三国鉄闘争支援大集会にご参加を | |
島田 修一 | いま法律家は何をすべきか ーイラクの平和回復と憲法九条改悪阻止のために |
団司法民主化推進本部本部長 高 橋 勲
一 はじめに
三月二日政府は「裁判員法案」と「刑事訴訟改正法案」を国会に提出しました。裁判員制度については三月一六日、衆議院本会議で趣旨説明が行われ、両法案はすでに衆院法務委員会において、審議がはじまっています。
自由法曹団は八〇年の歴史の中で、戦前のあの治安維持法のもとでの刑事裁判、そして、戦後の相次ぐ民主勢力に対する刑事弾圧事件や再審無罪を求めるたたかいなどを大衆的裁判闘争としてたたかってきました。そして、この歴史と伝統は今日に引き継がれています。
自由法曹団が今次司法制度改革の中で、とりわけ刑事司法の民主的改革に重大な関心を持って臨んできたのもこの立場からです。政府の司法改革推進本部の「裁判員制度・刑事検討会」の議論を経て、先の両法案が国会に提出されたいま、自由法曹団がこの二つの法案に対して、いかなる評価を行い、いかなる態度を取り行動するかは団に課せられた歴史的責任をどう果たすかということが問われているのだと考えます。
司法民主化推進本部はこの間法案作成に至る経過を注意深く見つめ、その都度団の意見を発表してきました。そして、三月二四日には両法案がいよいよ国会に提出され審議に入るという新たな事態を迎えて、法案に対する自由法曹団の声明「重大な決意をもって裁判員制度・刑事訴訟法『改正』法案の抜本修正を求める」を団内外に発表するに至ったものです。
この意見をまとめるに至るまでの経過に触れながら、両法案についての団の見解につき整理しておきたいと考えます。
それは、今この時期に自由法曹団がその責任を果たし、かつ私たち団員の一人一人が司法民主化のたたかいに各々の立場で力を発揮するうえでも限りなく大切だと考えるからです。
二 「裁判員制度」についての団の評価と見解
団はかねてより、国民が司法に参加することの意義を強調してきました。私たちの日本の司法に対する見方は次のようなものでした。
「現在の日本の司法は、憲法で保障された国民の権利を実現する『人権の砦』としての役割に背く重大な問題を抱えており、官僚司法の弊害は極限に達しています」。そして、「この官僚司法を転換し、国民のための司法を実現するには、裁判官制度改革と並んで主権者国民が司法に直接参加することが必要だ」と訴え続けてきたのです(二〇〇一年九月、団意見書「国民のための司法改革を」など)。同時に団は今回の司法改革が、国民のための司法改革と自民党・財界のための司法改革という「二つの流れ」の「せめぎ合い」であることを指摘し、国民のための司法改革の実現のために全力をつくすことを表明してきました。こうした立場から、団は「すべての訴訟類型に陪審制の導入を」求め続けてきたのです。
刑事裁判「改革」として、司法制度改革審議会がその最終意見書で「裁判員制度」を提唱した点について、団は「審議会が陪審制度の導入を一切見送り、わずかに刑事重大事件のみに裁判員制度を導入するという極めて限定的な国民の司法参加を提起するにとどまったことは、不十分」としつつも、「戦後初めて一般国民が司法に参加する制度の導入を提起した点では、一歩前進と評価できます」としました。
また、団は裁判員制度をこのように評価しつつも、裁判員制度を実効あらしめ、制度改革として実現するための「不可欠の前提条件」として、(1)国民参加の形骸化は許さない、(2)直接主義・口頭主義実質化、(3)被告人の裁判を受ける権利・弁護権の十分な保障の三つを提示したのです。
このように、裁判員制度の導入にあたって、そのもとでの刑事裁判手続の抜本的改革が必然的に伴わなければならないことを団は当初から主張してきました。とにもかくにも、何らかの形で「国民の参加」制度ができればよいという方針とは無縁であることはいうまでもありません。
そして団は刑事裁判改革を着実に進めていくという現実的かつ責任ある立場から、裁判員制度の制度設計とそのもとでの刑事裁判手続の改革についても積極的に提案してきたのです。例えば、上記見解をさらに具体化した意見書「裁判員制度はどうあるべきか」(二〇〇二年九月)は、団のこの問題についての基本方針を示すものです。また、団の全国総会においてもこの方針は総会議案書や決議として確認されてきたことはいうまでもありません(二〇〇二年岡山総会、二〇〇三年福岡総会決議など)。
したがって、裁判員制度法案と刑訴法改正法案が国会に提出された今、両法案に対して、団がいかなる評価を行いどう行動していくかは、以上に述べた団の基本方針を踏まえ、かつ法案が国会に提出されているという現実を直視して決せられなければならないと考えます。
三 両法案の確定に至る経過と法案の問題点
裁判員制度法案と刑事訴訟法「改正」については、政府の司法制度改革推進本部の「裁判員制度・刑事検討会」を中心に議論がなされてきました。
しかし、議事の経過などをふり返ると今日のこの国の刑事裁判の実態、それがいかに日本国憲法や国際水準に照らして問題が多く、ある意味では「絶望的」であるかについて、これを直視した議論があまりにも不十分だったと言わざるを得ません。とりわけ、この傾向は「官側」の委員に顕著であり、井上座長にもこの見識が決定的に欠けていたと私には思えてなりません。
昨年一〇月二八日に、それまでの議論の経過を必ずしも正確に踏まえたとは言えない形で提示、発表された「座長試案」、そして、パブリックコメントを実施しながら、結果的にはそれを事実上「無視」して作られ、本年一月に発表された法案「骨格案」は、法案提出を何とか通常国会に間に合わせるための「立法作業」との批判を免れえないものだと思います。そして三月二日の閣議決定は基本的にこの「骨格案」に基づく法案がその対象となり、国会に提出されたのです。
四 団の両法案についての評価をめぐる議論の集約
団は、以上のように、裁判員法案とそのもとでの刑事手続改革についてはとくに重視してきました。したがって、前述の「座長案」に対しても「骨格案」に対しても、きびしく討議し修正を求めるきびしい意見書を提出、発表してきました。
とりわけ、「骨格案についての意見」(二〇〇四年二月一二日付)は、名古屋で開かれた団本部二月常任幹事会にも報告し、確認されたものです。
そして、法案提出。団の司法民主化推進本部ではこのように意見を積み上げてきた経過を重視しつつ、国会に提出された二つの法案をあらめて検討しました。また、この議論には、この間意識的に執行部にも参加していただきました。
さらに三月一三日の常任幹事会、三月一六日の「全国活動者会議」でも討議を行いました。
そのうえで、団としてとりまとめたのが、冒頭に触れた二〇〇三年三月二四日付声明です。
声明の発表当日、坂本団長、島田幹事長を先頭に司法民主化推進本部のメンバーは衆院法務委員会の方々を訪問し、その趣旨を伝え理解を求める活動を開始しています。
声明全文は自由法曹団のホームページにアップしてあります。
五 両法案についての団の評価と方針
上記声明に盛り込まれた両法案に対する自由法曹団の評価と方針のポイントは次のとおりです。
(声明の趣旨)
この「二つの法案」は形の上では独立した法案である。しかし、その構造は、裁判員制度の導入を理由にあるいは機として、刑事裁判のあり方を設計するという有機的に結びついた関係にあり、二つを切り離して評価することはできない。現実に裁判を受ける国民の立場から一体としてみたとき、「裁く側の都合」を最優先し、「裁かれる側の防禦権」を現状よりも大きく後退させるものといわざるをえない。
したがって、自由法曹団は、国民の人権を保障する公正・適正な刑事裁判を実現する立場から、この「二つの法案」では容認できず、両法案の抜本的修正を求める。
これが、自由法曹団の両法案に対する基本的な評価です。
(抜本的修正を求める要求)
団声明はこの基本的評価に基づき次のような抜本的修正要求を示しています。
(1)先送りを許せない制度改革として
1 「取調べ過程の可視化」(録音ないしビデオ録画)と「代用監獄の廃止」
2 起訴前保釈制度の創設と、常態化している実態をふまえての保釈制度の改革を行うこと。
なお、裁判員法案に、裁判員等に対する接触禁止規定がもうけられている(七三条)ことに対する厳格な歯止め。
これらにつき、裁判員法案の周知期間である五年間のうちにきっちり制度設計をすることを義務付けること。
(2)公判審理を形骸化させないための措置として
1 検察官の手持ち証拠の開示については、開示制限行使をさらに絞りこむこと。少なくとも「証拠の一覧表」は弁護人にも開示することを義務づける。
2 被告人・弁護人については公判前整理手続き後の新たな証拠調べ請求権の制限条項をもうけない。
3 自白調書などの任意性に関する吟味と決定を、公判前整理手続きで行うか裁判員の出席した公判審理として行うか法案では不明瞭であり、慎重な検討が必要である。
(3)被告人・弁護人の防禦権に新たな規制をかけてはならない
刑訴法「改正」法案は、訴訟指揮権の実効性確保の名の下に、弁護活動自体に対し、裁判所が制裁権を発動する権限を新設しようとしている(二七八条の二、二八九条三項、二九五条三項四項)。
しかし、こうした訴訟指揮権の強化は、弁護活動を不当に制限する危険がある。新設条項については全面削除を求める。
(4)裁判の公開と監視・批判による国民の「司法参加」を阻害してはならない。
そのために
1 判決までは、裁判員に一定の守秘義務を課すことはやむをえないとしても、その違反に対しては、罰金刑にとどめる。
2 判決後に事実認定および量刑についての当否を述べることを罰則をもって禁ずる裁判員法案七九条三項は削除する。
3 判決後になお守秘義務を課せられる「職務上の秘密」についてはさらに要件をしぼりこみ明確にする。
4 裁判公開の原則に反し、国民の裁判批判を困難にする、証拠の目的外使用の一律禁止措置条項の全面削除
を各々求める。
(5)裁判員法案独自の問題の修正要求として
1 法案の合議体の構成につき原則裁判官三名、裁判員六名としているが、これでは国民の常識を裁判に反映することにはならない。裁判官は一名ないし二名で十分であり、裁判員は七名と修正すべきである。
2 評決については三分の二の特別多数決とすべきである。
(法案への対応)
団のこの声明で示した抜本修正事項は、国民のための司法改革を求めてきた多くの法律家や国民に共通する要求でもあるのです。日弁連の求める修正事項とも多くの点で共通します。
団はこの抜本的修正要求をまとめるにあたり、団内での様々な意見を配慮し慎重に討議を行いました。
そして、これらの修正要求の全部または大部分が認められなければ、裁判員制度は形だけのものとなり、刑事手続の重大な改悪とあいまって、この国の刑事裁判は改革ではなく改悪になってしまうと考えるに至ったのです。そして、もし、国会審議の流れの中で不幸にしてこのような事態になれば、私たちはこの両法案に反対せざるを得ないと考えるものです。
そして、そのような事態にならないことを心より願って引きつづき刑事裁判の真の改革をめざして奮闘する決意を表明したのです。
六 むすび
裁判員制度の評価をめぐって、団内にも様々な意見があることは事実です。しかし、国会に法案が提出され、審理がはじまろうとしている今日、団は冒頭にのべた使命と責任において、両法案に対する態度を団内外に明らかにすることが求められていると思います。
団のこの声明に盛り込まれた立場は、この度の刑事裁判改革を私たちが目指す真の改革にむけて一歩でも近づかせるために、重要論点につきまさに「重大な決意をもって」抜本的修正を求め、また多くの国民に対し私たちのこの要求の正当性につき理解を求め、そして力をあわせて奮闘しようと呼びかけたものです。
全国の団員の方々のご理解をお願いする次第です。
大阪支部 三 上 孝 孜
今回の刑訴法改正案には重大な問題がある。
団は、抜本的修正を求める声明を発表されたが、私は、これに賛成である。
私は、次のような問題があると思う。
1 公判前整理手続の新設と裁判公開原則の後退
刑訴法案は、新たに公判前整理手続を新設し、第1回公判の前の手続において、訴訟関係人を出頭させて陳述させ、証拠調べ請求、証拠調べ決定、証拠調べに関する異議申立に対する決定、証拠開示に関する裁定等を行うとしている。
これは本来の裁判の前倒しである。証拠調べ請求や、証拠決定、それに対する異議申立、証拠開示請求等は、刑事裁判における重要な手続である(民事裁判でも同様)。ところが、そのような重要な手続について、裁判公開の原則が保障がされていない。訴訟関係人のみの参加が許された密室で裁判の帰趨を決めるような重要な手続が行われてしまう。
公判前整理手続を新設するならば、証拠調べ請求等は、公開された法廷で行うようにしなければ、裁判公開原則が保障されない。
2 連日的開廷の義務化と弁護人の準備期間(ウエテイング・トライアル)の保障の不存在
刑訴法案は、公判前整理手続や期日間整理手続を新設し、そのうえで、「裁判所は、審理に二日以上を要する事件については、できる限り、連日開廷して、継続して審理を行わなければならない」とする。
審理に二日以上を要する事件ということになると、ほとんどの事件が連日開廷の対象になる。
検察官は、起訴した時点で、有罪を立証する証拠を揃えているのに対し、被告・弁護人は、起訴された以降に、証拠収集活動等を行わざるを得ないのが実態である。しかも、保釈がなかなか認められない「人質司法」の現状では、防禦活動、弁護活動は容易でない。
公判前整理手続や連日開廷が新設されるならば、被告・弁護人の防禦・弁護活動のための十分な準備期間(ウエテイング・トライアル)の保障の原則が法律上明記されなければならない。
3 被告・弁護人の立証制限
刑訴法案は、被告・弁護人は、やむを得ない事由によって公判前整理手続又は期日間整理手続において請求することができなかったものを除き、後に証拠調べを請求することができないとする。
冤罪事件等では、被告人に有利な証拠が、公判開始後に発見されることが珍しくない。
このような立証制限は、被告・弁護人にとって重大な不利益をもたらす。
4 証拠の目的外使用禁止に対する刑罰
刑訴法案は、被告・弁護人は、開示された証拠の複製等を、被告事件の審理等以外に使用する目的で、人に交付又は提示してはならないとする。
そして、被告人が証拠の複製等を人に交付し又は提示したときは一年以下の懲役等に処するとする。
また、弁護人又は弁護人であった者が、証拠の複製等を、対価として財産上の利益その他の利益を得る目的で、人に交付し又は提示したときは、一年以下の懲役等に処するとする。
冤罪や起訴の不当性を訴える事件等において、被告・弁護人や救援団体等が、無罪を世論に訴えるビラ・パンフレット・書籍等を発行することが広く行われている。ところが、刑訴法案では、そのビラ等に証拠を引用することも出来なくなる。ビラ等に証拠を引用すれば、被告人のみならず、弁護人も、共犯として処罰されるであろう。
また、無罪を獲得した事件等について、弁護人が、書籍を出版することは広く行われている。刑訴法案では、元弁護人が、書籍に証拠の複製等を引用した場合、出版により、財産上の利益を得る目的で、証拠の複製等を人に提示したとして、処罰されるおそれがある。
5 弁護人に対する在廷命令と過料、損害賠償命令、懲戒
刑訴法案は、裁判所は、必要と認めるときは、弁護人に対し、公判準備又は公判期日に出頭し、これらの手続が行われている間在席し又は在廷することを命ずることができるとする。そして、この在廷命令違反に対し、過料の制裁及び損害賠償命令を規定し、弁護士会への処置請求を義務付ける。
これは恐ろしく強権的な規定である。裁判所が、弁護人に対し、過料と損害賠償命令と懲戒処置請求の制裁で、強権的に裁判所の手続に従わせようというものである。
このような強権的な立法をしなければならないという立法事実や必要性はどこにあるのだろうか。裁判の運営は、当事者間の信頼関係に基づいて、互いに協力して行うべきである。
6 弁護人に対する尋問・陳述制限命令と懲戒
刑訴法案は、弁護人が、裁判長の尋問・陳述制限命令に従わなかった場合、弁護士会に通知して適当な処置をとるべきことを請求でき、弁護士会は、そのとった処置を裁判所に通知しなければならないとする。
これは当初の案から修正され、弁護人に対する過料がなくなった。
しかし、それで良いということにはならず、まだまだ問題は大きい。
処置請求については、刑訴規則三〇三条に規定があるが、内容はもっと緩やかである。同規則では、「弁護人が訴訟手続に関する法律又は裁判所規則に違反し、審理の迅速な進行を妨げた場合」に限り、「弁護人に理由の説明を求めることができる」とし、「特に必要があると認めるときは、・・・弁護士会に通知し、適当の処置をとるべきことを請求しなければならない」としているだけである。
7 その他
そのほかにも、弁護人の陳述についての被告人の意思確認手続、弁護人と被告人の連署書面の提出要求等の問題がある。
今回の刑訴法改正は、戦後、新憲法の下で制定された刑訴法の大改革である(私は、大改悪だと思う)。民訴法改正と似たところはあるが、そのときは法制審で緻密な議論がされた。今回は検討会での骨格的な議論だけで、いきなり膨大な法案が国会に提出された。日弁連は、検討会座長案、同骨格案に対し、抜本的修正を求めてきたが、刑訴法案が国会に提出された段階で、部分的修正要求にトーンダウンさせた。
刑訴法案と同時に出された裁判員法案を、何としても通したいという方針によると思われる。
しかし、裁判員裁判も、同じ刑訴法が適用される。このような危険な刑訴法で進められる裁判員裁判が、理想的なものになるとは思われない。
裁判員制度実施まで、五年の猶予期間が置かれる。現国会で、刑訴法案を通さなければならない必要性はない。刑訴法案を裁判員法案と切り離して、別途、十分な審議をする等して、その抜本的修正を実現するべきだと思う。
群馬支部 飯 野 春 正
団通信一一二三号に載った松島暁さんの裁判員制度に関する意見を読みました。松島暁さんの意見に賛成です。
くじで選ばれる裁判員は民意の代弁者ではなく、裁判員制度は民主主義的制度とは言えないこと、また、そもそも刑事裁判は厳格な証拠の評価による事実の認定が求められるもので、民意がストレートに反映されてはならない領域であること、そして、顕名なき裁判員の裁判は無責任で暗黒裁判になること、いずれも全くそのとおりと思います(ただ外国人の問題については、私はこれまで思い至りませんでした)。
二つ三つ素材を提供して、私も議論に参加したいと思います。
一つは、今の裁判官がこの裁判員制度をどう迎えるか、ということです。現在の官僚司法のもとにある、フツーの裁判官は裁判員をお客さんとして扱うでしょう。裁判員と一緒に裁判をするなどとは考えていないと思います。ただ見学傍聴者と違って裁判官自身が何がしかの説明をしなければなりませんし、議論もするたてまえですから、仕事が増えわずらわしくなることは否めません。だから「裁判員はできれば二、三人、多くても五、六人で勘弁してくださいよ」という気持です。これを最高裁は「コンパクトなものにしたい」と言い換えているのです。
裁判官三人は常時一緒にいます(昭和三〇年代終わりから四〇年代前半にかけて一時裁判官室の個室化が流行った時期がありますが、その後仕切りが取り外されたりして一つの部を構成する裁判官は一室にまとめられました。理由はお判りと思います)。
「今日はお客さんのある事件ですからかくかくの点が問題になるかと思いますが、こんなふうに進めましょう」と三人は打合せをして、審理や評議に臨みます。昔の用語で言えばフラクションですね。相手は素人です。結果は想像に難くないでしょう。
ときに、評議で何かと発言の多い裁判員がいるかもしれません。個性の強い裁判長は「あなたにはわかりませんよ」というかもしれません。「お黙りなさい」というかもしれません。裁判員は口惜しがりますが、帰って友人に憤懣をぶちまけることもできません。懲役がまっているからです。
裁判所や裁判官にとって、わずらわしさだけでなく都合のよいこともあります。国民の側から裁判批判、裁判所批判がやりにくくなることです。裁判員制度は裁判員が匿名により責任を問われないだけでなく、裁判官の責任をあいまいにすることにも役立つのです。
もう一つ、思想信条を理由とする裁判員の辞退について一言。新聞報道によれば、原案にない思想信条を理由とする裁判員の辞退について論議が起き、これを認める方向で、政令に委ねることになったとのことです。思想信条という重大な事柄を政令に委ねること自体問題ですが、本人が「私は人を裁かないというのが信条です」と言えばそれでよいのでしょうか。もしそうでないとしたら「何という宗教ですか」「それはどういう教義ですか」「怪しげな宗教ではありませんか」などと問われはしないでしょうか。そしてこの思想信条の表白を拒めばどうなるのでしょう。たいへんな問題を含んでいます。
また関連して、裁判員として出頭しても評議の際、どうしても意見を言わない裁判員がいたらどうなるのでしょうか。常に被告人の有利にカウントされるという規定もないようです。
以上松島さんの文章を読んで、思っていることを書きました。
今からでも遅くはないと思います。裁判員制度自体に関する議論を捲き起こし、反対の意見を広げていきましょう。そして万一法律が通ってしまっても、施行までの五年間徹底した議論を続け、必要なら施行の延期を繰り返し、最終的に廃止に追い込むことも可能だと思います。
東京支部 飯 田 幸 光
三月二一日付け団通信に東京支部の松島暁先生の裁判員制度に関する投稿が掲載されました。その中で外国人の裁判員資格に言及されております。折角の松島暁先生の貴重な問題提起に便乗して、若干のコマーシャルをさせて戴きます。
外国人の裁判員資格と外国人の地方参政権付与の問題は、実は、表裏一体の関係にあります。その意味では、外国人の地方参政権付与について政党や日弁連が積極的に提言しているのに、その動きに全く冷淡な態度を取りつづけている団体が外国人の裁判員資格の問題に思い至らないのは、やむを得ないことだと思います。
しかしながら、個々の自由法曹団の団員は、従前から、とりわけ一九九〇年以降、外国人を含めた市民の司法参加の実現のために日弁連、単位会その他のNGOの活動を通じて地道な努力を重ねてきました。例えば、日弁連・司法問題対策委員会・国民の司法参加に関する部会は、在留外国人に陪審員資格を付与することを前提とした刑事陪審法改正討議要綱を一九九二年一一月二七日に公表し、ついで一九九六年五月三〇日に刑事陪審法改正討議要綱改訂版を発表しました。日弁連・司法問題対策委員会・国民の司法参加に関する部会は、その後、日弁連・司法改革推進センター第二部会、日弁連・司法改革実現本部第二部会などに組織変更されましたが、その歴代の部会長、副部会長として指導的役割を果たした団員諸氏が沢山おられます。
東京三弁護士会陪審制度委員会も一九九六年一一月に参審制度要綱試案を発表しその中で、在留外国人に地方自治体の首長・議員に関する選挙権、被選挙権と参審員資格を付与することを前提に、参審員要件を地方自治体の首長・議員の選挙に関する有権者とすべきことを提案しています。
かなりの団員が加盟しているNGOである陪審裁判を考える会、自由人権協会、新潟陪審友の会なども、在留外国人への裁判員資格の付与、裁判員要件を地方自治体選挙の有権者、住民基本台帳・外国人登録原票搭載者とすることなどを求めて今も引き続き運動しています。
私も、二〇〇一年度の日弁連理事会において、米軍占領下の沖縄で被告人・被害者ともに米国人であるケースでも沖縄県民が陪審員に選任されて立派に任務を果たしたことを記述した日弁連沖縄調査報告書に言及しながら、在留外国人への裁判員資格の付与が重要であることを強調した発言をしております。東京弁護士会期成会は、二〇〇四年度選挙政策の外国人の人権保障の項で、在留外国人の裁判員資格否定を非難して定住外国人に裁判員資格を付与するよう再検討を要求しています。
最近の日弁連人権擁護委員会第六部会(国際人権部会)でも、在留外国人に地方自治体の首長・議員に関する選挙権、被選挙権と裁判員資格を付与すべきことや、外国籍日弁連会員を調停委員から排除している最高裁の処置をやめさせるべき事などで意見の一致を見ております。更に、今年一〇月七日、八日の日弁連人権擁護大会(宮崎)のシンポや人権大会決議で外国人の裁判員資格付与問題も取り上げられるものと思われます。多数の団員諸氏が是非参加されますようお勧め致します。
担当事務局次長 大 崎 潤 一
いささか遅くなりましたが、三月六日に行われた改憲対策本部の活動者会議についてご報告します。
当日は四五名という多数の方が参加されました。十分な数が用意された資料も足りなくなるほどで、この参加者数の多さに驚きと意気の高さを感じたという声を会議の後も聞きました。
当日は団長の挨拶に続き、講師の愛敬浩二先生(名古屋大学助教授)の講演が行われました。先生の関心はコアな改憲反対論者の周りにいる人たちをどう改憲派に取り込ませず、改憲に反対してもらうかということのようです。そこで講演の第一章も「私の問題意識→『普通の市民』をいかに説得するか?」が表題でした。
講演の第二章は「改憲論の動向」ですが、私が一番興味を引かれたのは、「『チャンス』ゆえの改憲論の迷走」という言葉でした。改憲論者は改憲のチャンスと見たためにかえっていろいろな改憲論を出してきて、そこから迷走をして改憲の動きがうまく進んでいないのではないかというのです。もちろん、単なる楽観論ではなく一見改憲論が元気なように見えながらその割にはもたついている現状の一面を指摘したものだと私には感じられました。
講演の第三章は「考察すべき問題」でした。ここで印象に残ったのは、先生が『憲法九条の効用』の語り口を重視していると述べられたことです。憲法九条があるからこんなにいいことがあるという話をしようと努められているとのことでした。
続いて山崎団員から国民投票法についての報告がありました。国民投票法の本質に加えて、予想される法案の問題点として、改正を各項目ごとに提案するのか、全体を不可分のものとして提案するのか(ワンパッケージ)は国会の発議にゆだねられていること、その他、投票運動にさまざまな制限があるなど国民の意思を反映しない手続きになっていることなどが報告されました。討論の中で、そうした問題点は国民の望まない九条改悪を目的にしているからだという意見が出されました。こうした九条改憲のための国民投票法案反対という観点で一致して反対の取り組みをしていくこととなりました。
討論の内容を限られた字数で書き記すことは不可能ですので、愛敬先生の発言から私の選択でいくつかを載せたいと思います。
改憲論者の描く国際像、アジア像はどんなものなのかという団員の質問に対し、愛敬先生は改憲論者は国際社会の像を持っていないのではないか、言ってみれば一国改憲主義だ、と答えられました。
また愛敬先生は、憲法九条について文化人全体では積極的な発言があり、イラク戦争でも社会学者、文学者、現代哲学者などがこの戦争に加担していいのかという発言をしていると言論状況の紹介をされました。
愛敬先生は、ベトナム戦争を後にマクナマラは反省した、この戦争に韓国は派兵をして戦死者も出している、憲法改正によって日本がそんなことになっていいのかと話されました。
討論の中では各地の取り組みとともに愛知のパワーポイントが実演されました。活動者会議後に出されているファックスニュースでは全国の運動も紹介しています。まもなく五月集会ですが、それまでにもあちこちの取り組みをどしどし対策本部にお寄せくださり、活動者会議の成果が早速現れていることをお知らせください。
そして五月集会では改憲反対の大きなうねりを作り出し、その経験を持ち寄って活発な討論が行われることを期待しています。
担当事務局次長 齋 田 求
自由法曹団司法民主化推進本部は、三月二四日、衆議院法務委員会委員に対して、合意による訴訟費用の敗訴者負担制度反対、裁判員法案及び刑事訴訟法改正案についての抜本的修正を求めて要請行動を行いました。
坂本修団長を含め参加者七名で法務委員すべての議員控え室に敗訴者負担問題に関する意見書と声明『重大な決意をもって、裁判員法案・刑事訴訟法「改正」法案の抜本修正を求める』を配布したほか、何人かの法務委員と意見交換することができました。
まず、敗訴者負担問題と共謀罪については、会期の関係から今国会では審議に入らないのではないかとの意見が複数の議員からありました。
次に、裁判員法案及び刑事訴訟法改正法案についてですが、民主党の複数の議員と意見交換することができましたが、どの議員もその問題点については認識していましたが、裁判員制度については「今回裁判員制度を導入しないと国民が司法に参加する途が閉ざされてしまう、という考え方」の議員と、「重要な法案なのでもっと時間をかけて議論すべきである。今回、裁判員制度が導入できなくても国民の司法参加の途は閉ざされない。という考え方」の議員に分かれているようでした。
また、民主党では、権利保釈の除外事由の制限、取り調べの際の弁護人の立会権、取り調べの可視化に関して議員立法として法案を提出する予定であるとのことでした(なお、同法案及び要綱については民主党のホームページから閲覧可能です(http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/houmu/BOX_HOM0059.html)。しかし、他方で開示証拠の目的外使用禁止については問題であるとの認識はあるものの、政府側が強硬であり、なかなか難しいという印象を持っている議員が多かったように思います。
最後になりますが、今回の議員要請により、法務委員会の委員の中にも団のとる立場と矛盾しない立場の委員が存在することや民主党が弁護人の取調べ立会権、取調べ可視化について議員立法による法案を提出することなどの情報を得られたことは大変有意義であったと思います。
事務局次長 渡 辺 登 代 美
「住民運動も労働組合活動も、全部犯罪に?知りたい!共謀罪の危険な実質」。
四月二日に、団・救援会・全労連の共催で行なった学習会のキャッチコピー。我ながらなかなか良くできていると思うのだけど、如何でしょうか。
基調報告は二本。国民救援会の望月憲郎さんによる「治安強化ねらう警察の動向について」と、今村核団員による「共謀罪について」。望月さんは、H一五年警察白書や昨年八月に発表された警察庁の「緊急治安対策プログラム」を分析しながら、東京での国公法弾圧堀越事件を交えて報告した。今村団員は、昨年一二月に警察問題委員会が作成した「共謀罪―五つの質問」を、よりわかりやすく解説した。全労連の沢中正也さんからも、年金改悪など労働者をとりまく現在の情勢について報告頂いた。
当然のことかもしれないが、警察白書では、有事法制反対運動や諫早湾干拓事業阻止環境保護運動なども「公安の維持」という章の中でとりあげている。共謀罪が成立してスパイによる捜査が行なわれるならば、ターゲットにした労働組合や民主団体を壊滅させることも可能になる。痴漢冤罪事件では、被害者と目撃者が共同すれば犯罪者をデッチあげることが容易であるが、共謀罪にはこれと同じように犯罪を捏造できる構造がある。アメリカの反テロ法では、電話やメールなど、二四時間監視することができる。何と恐ろしい社会になっていくことか。
話が暗くなってきたところで、最後に司法総行動でがんばる話やイラク派兵・国民動員法反対東海道沿線街宣行動(神奈川支部の手前味噌です)の話などで、元気が出た雰囲気を作って終了した。
最初に救援会・全労連と共謀罪創設に反対する運動ができないかと相談した際、とても運動レベルではない、共謀罪の中身についてまず学習しなければならない、ということで本学習会を行なった。埼玉・千葉の救援会からも、それぞれ三名くらいずつが参加してくれた。
法案は提出されているが、今国会では審議されない模様。共謀罪ができるとどのような社会になってしまうか、という危険性の認識は共有できた。どのような行動をしていけるかは今後の課題である(敢えて運動といわないところが味噌)。
東京支部 神 田 高
その1“統一”
東京の三・二〇イラク反戦行動に参加した。地元の市議をしている妻は用事でいけなかったが、五才になりたての息子と一緒に地域の共産党の支部の女性たちとまず芝公園にむかった。あいにくの雨で?どうかな??と思っていたが、地下鉄駅から出て芝増上寺へむかう道には、様々な旗やゼッケンを携え足早に歩く人たちが流れとなっていて心強く思った。会場近くの陸橋の下で雨をしのいでビラまきをしていた本部の島田幹事長や松井東京支部長ら団員の姿を見て挨拶をした。ご苦労様。とても三万人など収容しきれない芝公園内に入って風船ももらったが、舞台は見えず、傘ばかり。それでも、舞台方向からは元気な声が聞こえてきた。なかでも、陸・海・空・港湾労組二〇団体から連帯の挨拶に来られた中川香さんの話は印象に強く残った。「晴女の私が来て雨を降らせて申し訳ない。いろいろありますが、図々しいお願いですが、是非この後日比谷公園に来てください」(笑い)。W・P・N(ワールド・ピース・ナウ)からも連帯と共同の力強い訴えがあった。
寒さに震える息子を抱いてデモ。小一時間で日比谷に着く。公園内の小音楽堂での二〇労組のコンサートをちょっと聴いて、公園中央を横切って、今度は野外音楽堂でのW・P・Nの集会。同じ地域の平和委員会の人などとも会う。W・P・Nのパレードについていって銀座でライオンビールでも飲もうかと思っていたが、三度の気温で息子のことを考えあきらめ、日比谷図書館地下の食堂へいく。それぞれの集会に来たことが明らかな人々が一緒に飯をくって一体感が生まれているのが面白い。
三・二〇にイラク反戦の民衆のパワーは発揮されていた。さまざな課題や紆余曲折はあろうが、統一的な共同行動は広がらざるを得ないだろう。それは各主催者の意向というより、民衆が求めているものである。
その2“メディア”
集会から帰ってきてテレビニュースをいくつか見る。W・P・Nの方は報道していたテレビがあった。NHKを含め、流石にイラク攻撃一周年の世界的行動を無視できなかったのだろう。しかし、同じ三万人が集まった芝公園の方は映像どころか言及もない。
マスコミ報道のあり方はとりあえず措くとして、問題にしたいことの一つは、われわれは、テレビに報道されるような運動に取り組みを“特化”させるべきなのか、いなかである。もちろん後者が正しい。イラク反戦の国民的な運動を報道するのなら、当然メディアは同規模の芝公園での集会も報道すべきである(全国の取り組みも)。しかし、それをしないのには根の深い問題がある。イラク反戦をできるだけ報道したくないとの社の方針もあるだろう。しかし、このメディアの姿勢を変えることは容易でないにしても、日本の平和と民主主義を推し進める上で避けて通れない。ここは逃げることはできないと思う。
若干角度は異なるが、第二に、共産党のビラ配布事件についてのメディア報道の問題。三月三日の東京新聞は“「政治的行為」異例の逮捕”との大見出しで社会面で取り上げている。しかし、同紙の「移動編集局」(横浜)では、「休日に共産党のビラを配っていた公務員が逮捕起訴された。言論・思想の自由が圧殺された戦前への第一歩にならぬよう、共産党だけの問題とせず新聞自身の問題として突っ込んだ報道がほしい」との意見が出されている。これに対し同紙側は「『異例』とコメントすることで権力側の意図を示したつもり」と回答しているが(同紙三月二四日朝刊)、本当にこれでいいとは思っていまい。三月五日朝日社説は、立川の市民団体のビラ配布逮捕を取り上げているが、共産党ビラ配布事件には全く言及がない。
さてどうするか。妙案はないが、ヒトラー時代の神父の言葉を引用するまでもないことだが、これも避けて通れない課題だ。
東京支部 萩 尾 健 太
「国鉄労働者一〇四七名の解雇撤回!ILOの完全履行を求める」国鉄闘争支援大集会が開催されます。団員の皆さんも是非ご参加下さい。
日 時 四月一三日(火)一八時〇〇分開場
会 場 日比谷公会堂
昨年一二月に最高裁は「JRの使用者責任」を免罪する不当判決を出しましたが、政府・JRから二度にわたる「首切り」を強行された一〇四七名の国鉄労働者は、一七年が経過しようとする今日も粘り強くたたかっています。一日も早く勝利解決を図ろうと学者六名(伊藤誠・経済学者、金子勝・立正大学教授、芹沢壽良・高知短期大学名誉教授、暉峻淑子・埼玉大学名誉教授、早川征一郎・法政大学大原社会問題研究所教授、山口孝・明治大学名誉教授)の呼びかけで集会実行委員会が発足し、東京清掃労組、建交労鉄道、国労東京中央支部、東京地評が役員を出し、国労・建交労・国労闘争団・全動労争議団・東京の東・西・南・北・千代田・中央・三多摩の各ブロックが事務局を担当しています。
勝利の春を思わせる桜の花のポスター・チラシを持って、国労闘争団・全動労争議団がペアとなり、地域・職場へナショナルセンターの枠を越えてオルグを実施しています。オルグ先では「闘争団・争議団が一緒にオルグに来るのは理想的な姿」と歓迎されています。
集会の司会は都教組書記の古沢美代子さんと学支労(前育英労)書記次長の岡村稔さん、建交労鉄道の「潮太鼓」で開会し、青年劇場の福山さんがシナリオ、元劇団「阿修羅」の松木さんが舞台監督の構成劇「一〇四七人の絆」を上演します。昨年一二月二二日に最高裁から出されたJR採用差別事件の判決では、五名の裁判官の中で裁判長を含む二名の裁判官が「反対意見」を表明しましたが、最高裁でどのような激論がかわされたのか。さらに、国鉄分割民営化を決めた「国鉄改革国会」での「差別はしない」との大臣答弁を反故にされた事実経過、国労・全動労・動労千葉の組合員への差別、脱退強要など露骨な不当労働行為の実態を明らかにしながら、ILO勧告を武器に「一〇四七名の絆」を力に、政府に解決を迫る構成劇です。国鉄合唱団、かあさん合唱団「つゆくさ」、国労大井工場スペシャルブレンドなどが出演します。
参加して楽しく勇気が湧く企画です。みなさん、ご参加宜しくお願いします。
幹事長 島 田 修 一
イラクへの自衛隊派兵強行、有事関連七法案の国会提出、そして九条改悪…。世界の平和に挑戦し、この国を「戦争する国」に作り変える激しい動きが続いています。「人道復興支援」の名のもと、国民の平和意識を派兵容認に「変容」させる事態も作り出されてきています。戦後日本の歴史を大転換させるこの策動に直面している今、法律家は何をすべきなのでしょうか。
私たち法律家五団体は、昨年一〇月四日にシンポ「東北アジアの平和の展望」を開催し、朝鮮半島の平和実現へ向けた法律家の役割を考えました。しかし、事態はその後も進行を続けています。今年に入り、小泉内閣は重武装の自衛隊をイラクに送り込んで米英の軍事占領に加担するとともに、九条の明文改憲を本格化させてきました。にもかかわらず、この国では有事法制と九条改悪に対する危機意識が広がる状況にはなっていません。
そこで、私たちは標記のシンポをとおして、イラクの惨状を直視したうえ市民の救済へ向けて何が求められているのか、イラクの平和回復を求める運動と「戦争する国」作りを許さない運動をどうつなげていくか、九条改悪反対運動が限られた一部の地域、一部の人々に止まっている現状を打開するために法律家全体が立ち上がり、広範な団体や市民が結集する運動へどのように発展させていくか、その道筋をどのように考えるか。こうした実践課題に正面から向き合い、そこでの法律家の役割と任務を共通の確認とするための討論集会を企画しました。このテーマにもっともふさわしい、憲法学者、NPO、弁護団からの問題提起、それを受けての討論からこのことを求めていきたいと思います。法律家の皆さまのふるってのご参加をお願いいたします。
日 時 〇四年四月二四日(土)午後一時〜五時
場 所 東京四谷・鉄道弘済会館「菊の間」(〇三・五二七六・〇三三三)
第一部 問題提起と報告 山内敏弘教授(龍谷大学)ー憲法学の立場から/熊岡路矢氏(日本国際ボランティアセンター代表)ーイラクの現地から/佐藤博文団員(札幌地裁・違憲訴訟弁護団)/川口創団員(名古屋地裁・違憲訴訟弁護団)/
第二部 討論・意見交換
参加費 無料
主 催 青年法律家協会弁護士学者合同部会/日本国際法律家協会/日本反核法律家協会/日本民主法律家協会/自由法曹団
連絡先 日本民主法律家協会(電話 〇三・五三六七・五四三〇)