<<目次へ 団通信1137号(8月11日)
坂本 修 | 鋭気をやしなって、よい夏休みを | |
河本 和子 | 日本サイロの不当労働行為事件 完全勝利の中労委救済命令を勝ち取る |
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大山 勇一 | 韓半島の中心でイラク・パビョン・バンデと叫ぶ | |
渡辺登代美 | アメリカ大使館裏話 | |
阿部 芳郎 | 「燐が燃えたまちヒロシマ―被爆六〇周年によせて」を編集して | |
坂 勇一郎 | いま、再度取り組みを広げるとき 〜弁護士報酬の敗訴者負担 |
団長 坂 本 修
残暑お見舞い申しあげます。
専従の森脇さんから、「団長は団通信に暑中見舞いの一文を書くのが慣例です。遅れてしまっているので、八月一一日号に『残暑見舞い』として載せたいので至急書いてください」という電話があり、今日(八月四日)あわてて筆をとっています。
それにしても、今年は史上最高の暑さ。おそらく、この一文がお目にとまる頃も、残暑どころかなお酷暑が続いているのではないでしょうか。そう思うと少々いやになりますが、憲法闘争をはじめ、九月以降、本格化する多様なたたかいに備えて、八月はお互いに鋭気を養うようにしたいものです。
参議院選挙の結果については思うところが多々ありますが、いずれにしても、改憲策動はさらに激しさを増してくるでしょう。民主党岡田代表の訪米での「日本の海外における武力行使を可能にする」改憲という「踏み込んだ発言」も改憲の流れをつよめるものです。あらためて、切迫した重大な情勢だと痛感しています。
酷暑は一時のことですが、「戦争をする国」にするための改憲は民主主義と人権を道連れにし、長期にわたって「もう一つの二一世紀の日本」への道を閉ざす「天下の大事」です。国民投票になったら全力をつくすといったのではおそらく〃戦機〃を失し、間に合わない。「戦争をする国」にするための改憲に反対する国民の要求を、堀りおこし、拡げ、結集して、かってない共同をつくりあげる。そして、改憲発議が出来ない政治的・社会的状況をつくるために、あわてず、だがいそがねばならない。いま私たちがなにをするか−それが問われているように思われてなりません。
七月二四日、「九条の会」の発足講演会に参加しました。この国の知性と良心を代表する九人の呼びかけ人中八人の人たちのそれぞれの人生を凝縮した心からの訴え、そして、学者の日常の活動の枠をこえて、運動と組織の第一線に立った小森陽一(事務局長)、渡辺治(事務局員)両先生の気迫に満ちた司会と行動アピールを聞いて、感動しました。長い時間、話し手に目をそそぎ、耳をかたむけて聞き、満場の拍手でアピールを確認した一〇〇〇人の多様な参加者の姿に、新しい風が起き、局面を切り開く力が結集されつつあることを確信しました。
団と一六〇〇人を越える団員が、この歴史的な憲法闘争にどう参加し、なにをなすかが憲法闘争の成否をきめる重要な要素の一つになるに違いありません。団の八月二〇日、二一日、二二日の二泊三日にわたる異例の『改憲阻止合宿』に当初の予定を超えて約一〇〇名の団員が参加してくださることになりました。団本部として本当に感謝しています。この会議で、率直に討議をつくし、心をあわせて、全国的に足を踏み出すことになると期待しています。
七月二九日、全労連二二回大会に招かれ、団長「公務」としてあいさつを述べました。全労連は、「日本の戦後の歴史をかけた」闘争として憲法闘争に全力をあげることを決定しました。各県労連の報告でも長野県労連をはじめ、広範な人々を結集した新たな共同をつくり、「過半数署名」の運動に立ち上がっている状況についての報告があいつぎました。私は、二・五キャンドル集会の経験を報告し、団はいままでの団の活動の枠を超え、九条改憲阻止の一点で新たな共同を拡げる一翼をになうとともに、あの夜の集会の参加者のおそらく七割近くを結集した全労連をはじめとする労働組合と組合員のみなさんと力をあわせてたたかうと述べました。これから各地で、多様な集会、行動が始まると思います。こうした運動の宣伝家として、さらにはある種の組織者として各支部、各団員はそれぞれの得手と知恵、多くの団体、人々とのつながりを生かして、重要な役割を果たすことができるし、そうしたいとつよく思うわけです。
憲法闘争は少なくとも、数年にわたる〃集中した壮大なたたかい〃になるでしょうし、そうしなければなりません。歴史的状況は違いますが、私たちは五九年から六〇年にかけての約一年有余の安保闘争で、当初誰も思っていなかった巨大な運動をつくりました。そのなかから、その後の数十年間のたたかいの〃背骨〃になる〃民衆的力〃をつくったのです。人様々に〃遺伝子〃は違い、身の回りの環境は違います。各人の担っている課題は多く、いそがしくて大変です。しかし、この国を「戦争をする国」には決してしない、憲法を生かして二一世紀の新しい日本をつくる、そのためにたたかうという思いは、世代や活動分野の違いを超えて、私たち団員に共通しています。それぞれにこの思いを燃やし、決して一時の酷暑に燃え尽きず、どんな逆風にも消されないキャンドルになり、それを集めて大きな〃光〃にしてこの秋をともに迎えようではありませんか。
ーあれこれ書いたことと矛盾するようですが、八月には、みなさんがご家族ともども、楽しい夏休みをとられることを心から願っています。
私も久しぶりに、今年はただ一人の「家族」ともども一週間は休むことが出来ます。家でゴロゴロしながら、低カロリーのランチを二人で食べ歩き、さらに出来ればため込んでいた憲法問題関係の何冊かの本を読むことを楽しみにしています。
ではよい夏休みを!
千葉支部 河 本 和 子
1 中労委の完全勝利の救済命令
日本サイロ株式会社(マルハ株式会社の子会社、昭和四二年設立。以下会社という。)が行った不当労働行為事件について、平成一三年三月三〇日、千労委は、日本サイロ労組(以下組合という。)と上部団体である全日本倉庫運輸労働組合同盟の申立を殆ど認める完全勝利の命令を行いました。
そして、会社が、地労委の命令を不服として中労委に対して再審査請求を行いましたが、中労委は、平成一六年七月二六日、再び、労働者側の完全勝利の救済命令を行いました。
2 事案の内容
当時、マルハ株式会社から派遣されてT氏が会社の社長に就任しましたが、T氏は、これまでの良好な労使関係を無視し、労働条件の引き下げを画策しました。このため、平成八年に組合が組合員の範囲を拡大したところ、労働組合に対する様々な敵視政策が行われました。
そして、会社が、本来時間外賃金を支払うべきところ、名目上の管理職を理由に時間外賃金を支払わなかったため、組合が、この是正を千葉労働基準監督署に求めたところ、平成一〇年二月、監督署は、組合の申告をほとんど認めた是正勧告を行いました。
しかし、会社は、この是正勧告の報復措置として、平成一〇年四月大幅な賃金引き下げを含む人事制度の改悪を提案し(以下一〇年度人事制度という。)、執行委員長を含む組合員六名に降格処分と大幅な賃金の減額等を実施したのです。
更に、会社は、これまで活発な組合活動を行ってきた組合の執行委員長と執行委員に対して、仕事が無いことを口実に、一日中仕事を与えず、ただ正しい姿勢で座っているだけの職場待機処分を行い、加えて、これを不当労働行為として、地労委に救済命令を求めていたところ、今度は、地労委で労働者委員が職場待機処分の撤回の意見を述べたことを口実に、自宅を軟禁場所とする自宅待機処分を行いました(以下いじめ事件という。)。
3 地労委の完全勝利の救済命令
地労委は、前記事案について、一連の行為は、組合活動を敵視した不当労働行為であることを認め、(1)執行委員長らに対するいじめ事件の撤回、(2)平成一〇年度人事制度による降格処分の撤回並びに賃金の減額分の支払い、(3)三六協定締結に関する会社の支配介入、(4)これら(1)(2)(3)の会社の謝罪文の掲載などを認め、労働組合側の申立を全面的に認める完全勝利といえる命令を出しました。
4 中労委でも完全勝利の救済命令
会社は、前記命令について、中労委に再審査請求を行いました。
ただし、執行委員長と執行委員の二名に対するいじめ事件については、地労委に対する原状回復とは別に、千葉地裁に対して、慰謝料五〇〇万円の支払いを求めて訴えを提起しました。
千葉地裁では、平成一三年一一月一五日、執行委員長と執行委員の二名について、いじめ事件の撤回と日本サイロの一〇〇パ−セント子会社への出向による職場復帰並びにこれらの処分について、「遺憾の意を表する」ことを認めさせ五〇万円の解決金を支払うことで和解が成立しました。
そこで、この部分を除いたものが、中労委で審理されていました。
そして、平成一六年七月二六日、中労委は、平成一〇年度人事制度が、活発な組合運動を嫌悪した不当労働行為であることを認め、再び、(1)平成一〇年度人事制度による降格処分の撤回と賃金の減額分の支払い、(2)(1)及び三六協定締結による不当労働行為の謝罪文の掲載を認める労働者側の全面勝訴の救済命令を出したものです。
5 地労委・中労委の五審制等について
本件は、弁護団五人で戦ってきました。
今回の事件で、いじめ事件については、地裁に慰謝料請求をいたしましたが、この時、いじめの実態を証拠にするために、証拠保全の手続きを行い、職場待機で執行委員長ら二人が、他の職員と離れた場所で、机の上に何も書類がおけない状態で職務を行っている写真を検証調書として提出することが出来、いじめの実態が明確になりました。攻撃は最大の防御なりということを実感しました。
また、本件は、平成一一年六月、地労委に不当労働行為の救済申立を行い、中労委の命令が平成一六年七月に出され、既に五年が経過しています。
いじめ事件については、長期裁判が予想され、早めの決着を労働者側が望んでいたので、必ずしも望む条件ではありませんでしたが、別に、和解をして、日本サイロの子会社に出向することとなりました。
そして、中労委で勝利をしたとはいえ、これから更に、東京地裁、東京高裁、最高裁が予想され、労働事件については、実質的には五審制となっています。
これまでもこの問題が指摘されていますが、今更ながら、問題の大きさに怒っています。
まだまだ予断が許せませんが、最後まで五人で頑張っていこうと思っています。
東京支部 大 山 勇 一
本年七月二七日から二九日まで、韓国を訪問してきました。
韓国の若者たちが、戦争犠牲者(アジア太平洋戦争、朝鮮戦争犠牲者)と一緒に「イラク派兵反対」を訴えるパレード(釜山からソウルまで)を行っているという話を聞いたところ(二〇日のこと)、たまたま私の予定が夏休みで空いていたので、通訳なしの単独で参加して来ました。
私が参加したのは、行程の都合上、光州と益山(いずれも全羅道)での平和パレードとキャンドル集会でした。
今回の訪韓は、仕事でもなくかといって観光でもなく、強いて言えば、「弁護士としての資格を持った一市民」としての「趣味」と「やりがい」の訪問でした。この一年で五回訪韓していますが、ほとんど街頭演説やチラシまきなどの活動をしていることになります。参加した大学生に、「どうしてイラク派兵に反対しているの?」との質問をしたところ、明確に「この戦争は侵略戦争だから」と答えてくれました。
戦争によってこれ以上イラク民衆の犠牲者を出したくないという思いから、慰安婦の方をはじめ、多くの戦争犠牲者が平和パレードに参加しており、アメリカのピースフルトゥモロウズの方々を思い出しました。
朝鮮戦争のときにアメリカの意図的な「誤爆」によって家族を亡くした遺族の方のスピーチには心を打たれました。
そのような方々が、イラク派兵反対、空爆反対のために、連日平和行進をしています。
わたしも飛び入りでスピーチをさせていただきました。
日本でもイラク派兵差し止め訴訟を毎日起こしており、私がその弁護団の一員であること、日本人の多くが派兵に反対して具体的な行動を起こしていること、また私は靖国参拝違憲訴訟の弁護団であり、戦争遂行のための「心」の支配に対決していること、この靖国訴訟には、七〇〇名を超える韓国人原告が参加し、日韓共同で闘っていること、日本人の多くは韓国の民衆と平和の共闘を考えていることを報告したところ、割と大学生に受けていました。
私のつたない韓国語に受けてくれたのでしょう。
突然の日本からの飛び入りのために、集会主催者に迷惑をかけてしまいましたが、主催者も日本からの「珍客」を最大限に利用しているようでした。
通訳を引き受けれてくれた「民弁」のチェ・ポンテ弁護士には特にお世話になりました(テグ支部の支部長ということです)。韓国語がもっと分かれば、話ももっと理解できるのにと悔しく思いました。集会のトーンとしては、必ずしもノ・ムヒョン大統領に対する評価は高くありませんでした。日本で小泉に対して批判しているように、韓国でもノ・ムヒョンの派兵決定や靖国神社問題への対応に対して強い批判が起きているのを感じました。
平和パレードの後は、必ずキャンドル集会が開催されました。光州では繁華街の通路全体を使い、益山ではスーパーの前を事実上使っていました。
若者による歌あり、ダンスありの愉快な集会で、参加していて、大変面白かった!(韓国のキャンドル集会に参加した団員はみな楽しんでいますね)
ビラの受け取り状況は日本よりはるかによかったです。昨年一一月に明洞・延世大学にて、今年一月に鍾路にて、三月にまた明洞にて、いずれもイラク派兵反対のチラシをまきましたが、そのとき以上に反応は良かったです。
アジア民衆と認識を共有し、連帯して行動することの重要性を再確認しました。それとともに、弁護士が一市民としてアジア各国に出て行き、交流を超えて、ともに市民運動を担い合うことの重要性を再認識しました。
事務局次長 渡 辺 登 代 美
七月二一日、アーミテージ国務副長官が自民党の中川秀直国対委員長と会談し、「憲法九条は日米同盟関係の妨げのひとつになっているという認識はある」「国連安保理常任理事国は国際的利益のために軍事力を展開しなければならない。それができなければ日本の常任理事国入りは難しい」などと発言した。
七月二六日の改憲阻止対策本部会議。「こんなことを言わせたままにしておいていいのか。」「内政干渉じゃないのか。」「抗議の団長声明を出そう。」ここまではいい。で、誰が書くの?すかさず吉田事務局長が次長の私の顔を見る。自慢じゃないが、絶対無理。参加メンバーを見回す。内藤本部長、パス。山本先生、パス。根本さん、だめだめ・・・。あ、書ける人がちゃんといるじゃない。元次長の山崎さん!なんたって去年は有事法制・イラク・改憲とあらゆる決議や声明を次々と書きまくった実績がある。もうひとりの現役次長の大崎さんも「私が書きましょう」とは言わないで黙っている。吉田さんに「じゃあ」と言われてあの眼差しでみつめられると断われないのが山崎さんのいいところ。発言が二一日なのだから、遅くとも今週中には出さなければ。明日中に原案を回すことになった。
執行は?どうせならアメリカ大使館に持って行って抗議しよう。島田幹事長、山崎さん、私の三人は、諸般の事情により今週は裁判日程が入っていないので、行けるのだ。坂本団長も「行こう、行こう」。じゃ、三〇日に。でも、守衛さんが受取るだけですよ。いや、議員の紹介だと然るべき人が対応するらしい。仁比さんにつないでもらおう。そうだ、初仕事だ。
かくして「憲法九条を邪魔者扱いするアーミテージ発言に抗議する」団長声明を、米大使館に執行することになった。
仁比事務所の加藤さんに大変お世話になった。通常は、国会議員からの要請ということだと政治部担当官が対応するのだそうだ。でも、七月三〇日はたまたま出かけていて会えない、門前での対応になる、というのが大使館側の回答。本当に不在なのか逃げたのか、真偽のほどは確認しようがない。なんぼ私たちとて、「では二九日は?八月二日は?」と詰められるほど暇じゃない。それでも仁比議員も同行してくれるという。逆に、「門前対応などというところに、団長、幹事長が行ってもいいのか。」と心配して直接私に電話をくれた。団員弁護士の有難さ。
七月三〇日は、台風接近の暑い暑い日だった。本部に寄って、昨日の晩八時ころにようやく確定した声明文に、団のはんこをついて持って行かなければならない。事務所を出ようとしたら突然の大雨。これで出遅れたため、電車一本乗りそこない、結局皆さんをお待たせする破目に陥ってしまった。米大使館とはいったものの、東京に不案内な次長はどこに行けばいいのかわからない。本部で阿部さんと岡本さんに教えてもらい、南北線に乗る。私の方向音痴を熟知している阿部さんは、不安そうに微笑んで送り出してくれた。南北線は後でできたためか、地下深く掘ってある。溜池山王駅で降りたはいいが、なかなか地上に出られない。ようやく地上に出たら溜池交差点。どれも大きい道で、思ったとおりどこへ行ったらいいのかわからない。地図を出して、この間、六・三〇キャンドルナイトで行ったばかりの道筋を何とかたどる。
米大使館前に着いた。皆さん、暑い中待っていてくれる。次長の大崎さんも加わってくれた。ああ、あたり前だけど仁比先生は上着を着て汗びっしょり。国会初日の忙しいときに本当に申し訳ない。そこに合流しようとすると、警備のお兄さんが、「だめだめ。あっちの歩道を回って」。だって、目の前にいるじゃない。何でここを通っちゃいけないの。仕方なく歩道を回ると歩行者用信号が赤。赤で渡るなよ、と警備のお兄さんがにらんでいる。車なんて来ないのに、大先生方をお待たせしているのに。これがなかなか青にならない。私が「物」を持っているのだから、私が行かない限り絶対に執行できないのだ。「一緒にがんばりましょう。」握手の手を差し伸べてくれた仁比先生にただひたすら恐縮。
門前での対応は、スーパーバイザーだという根本さんという方。「如何なる大国といえども、他国の憲法に干渉することは許されない。」などと、こもごも詰寄る坂本・島田・仁比。心配した警備のお兄さんが二人寄って来る。大丈夫、平穏にお話しているだけですよ。
山崎さんと大崎さんへの連絡はメールでいいけど、坂本先生と島田先生にはわざわざファックス。「執行が午後一時なので、その後ゆっくりお昼ごはんでも食べましょう。」ああそれなのに。坂本団長が「メールは見てるけど、そんなファックスはもらってない。もう昼ごはんは食べてきた。」。島田先生はちゃんと見てましたよ。
などと言いつつ、五人でイタ飯。「ランチ・ビールを飲もう。」と言い出したのは、坂本先生。アーミテージ発言に怒り心頭だったから。大崎先生、この後仕事でしょ。
おまけ
赤旗記事用の原稿を作成するのに東京法律事務所にお邪魔した。坂本先生の机の上には立派なメビウス。赤旗は山崎さんに任せて、私がメビウスをお借りしてこの原稿を打っていると、「このパソコンで活字を打ったのはあなたが初めてだ。」。書きかけの原稿を私のアドレスに送信すると「このパソコンから発信したのも初めてじゃないかな。」。送信記録を見ると、数件ありましたよ。当然、ご自身が操作したものではありませんでしたけど。(瀬野さんと違ってこれは実話です。)
司法ジャーナリスト 阿 部 芳 郎
赤旗編集局に在籍中、どういうめぐり合わせか、原水爆禁止世界大会はおろか、平和運動はただの一度も取材したことがなかった。 個人的な関心の度合いから、警察や司法により興味があったことも理由の一つかもしれない。だから、今回出版したような核兵器廃絶をテーマにした本の編者をつとめることになろうとは、思いもよらなかった。
「平和新聞」の編集アシスタントを引き受けたのが、二〇〇二年の盆明けから。時期がちょうど「九・一一同時多発テロ」から一年目、国会では有事法制が焦点になっていた。そんなこともあり、いやおうなく、平和問題に踏み込まざるをえなくなった。
「あとがき」で触れているように、著者・佐藤氏に私がインタビューした話をメーンに、ところどころにコラムを配して、読みやすいものにする工夫をしたつもりである。佐藤氏の核廃絶をめざす内外での活動と、その原点は、やはり貴重である。なかでも、原水爆禁止世界大会に第一回からずっと欠かさず参加してきたという人は、おそらくこの人以外にないだろう。
悩んだのは、タイトルだった。日本原水協の運動史でもなければ、自叙伝でもない。しかし、被爆六〇周年を前に、多くの人びとへ、核兵器のない世界をめざそうというメッセージをのこしたい。そのためには、書店に並んだとき、手にとってみたくなるタイトルが必要だ。最後の最後に、「燐が燃えた」話を佐藤氏の中学校の創立記念誌から発見したとき、「これで決まりだ」と思った。私事ながらそのタイトルのことを、知り合いのドイツ人に話した。彼は、「それは興味深い」といい、「燐が燃えている様子を撮影した写真はないのか」と聞かれた。さすがに、それはないが、作家の早坂暁氏のエッセーの一部も借りて、それが当時の衝撃的事実であることを証明させてもらった。
自らタッチした本の書評は書けないし、ジャーナリストはみな、どのように読まれたのかを最も知りたい。ぜひ多くの団員、事務所員の方々に読んでいただき、感想を寄せていただきたいと思っている。
本の泉社刊、四六判一六七ページ、定価一四〇〇円(税込み)。購入ご希望の場合は、直接出版社(fax03-5800-5353、または、http://www.honnoizumi.co.jpへ。送料は出版社負担、まとめて注文の場合、割引あり。編者のe-mail(mn7ff1@fiberbit.net)でも受け付けます。
担当事務局次長 坂 勇 一 郎
対策本部事務所の開設(弁護士会館五一〇号室)
日弁連は、敗訴者負担問題対策本部の事務所を開所する。
敗訴者負担問題は法案が継続審議となっており、秋の臨時国会が短期集中決戦の場となることから、運動の拠点を設置することとしたものである。ここを拠点として、日弁連アンケートの取り組み、国会議員への働きかけをはじめとして、情報の集約発信、行動提起等を進めていくこととなる。
事務所の開所式は、八月一二日(木)午後三時〜五時、事務所が設置される弁護士会館五階五一〇号室にて開催される。開所式には、弁護士のほか広く取り組みを行ってきている市民にも参加が呼びかけられている。
日弁連アンケート(パブコメ)の取り組みの強化を
日弁連アンケート(パブコメ)の取り組みが広く呼びかけられている(締め切りは、九月一〇日)。
弁護士報酬の敗訴者負担に反対する全国連絡会をはじめとする各市民団体は、いかなる形の敗訴者負担の導入にも反対するとの立場から、同アンケート(パブコメ)に対しては、反対の意見を寄せようということを呼びかけている。
全国連絡会では、反対の意見を呼びかける四コマ漫画入りのチラシも開発をして呼びかけを行っている。是非、有効に活用されたい。(全国連絡会のHPにPDFファイルでアップされています。http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Stock/4652/manga.pdf ちなみに四コマ漫画が私が実弟の協力を得て作成しました。一度ごらんになってみてください。)
「合意制」に関する議論について
先の常任幹事会で「合意制」に関する議論に若干の混乱があるのではとの意見が出されたので、若干整理しておきたい。確認しておきたい点は、次の二点である。
(1)訴訟上法の制度(法案)と私的契約における合意の区別(法案の理解と弊害)
法案は「訴訟法上」の敗訴者負担制度を定めるものである。この法案とは別に、私的契約における敗訴者負担合意は契約自由の原則に基づいて有効とされている。
(2)現在の情勢下でどう考えるか
いかなる敗訴者負担にも反対するという立場からは、本来「訴訟法上」の敗訴者負担を導入させない(法案を廃案にする)、私的契約における敗訴者負担合意を無効とする(立法措置を行う)ことが、一〇〇%の要求実現となる。しかし、秋の臨時国会における短期の決戦という情勢を踏まえ、また団としてはその立場や位置から、先の常任幹事会においても現下においては法案の廃案を目指すという方針を確認しているところである。
日弁連アンケートの成功を通じて国会開会直後の市民集会(九月二八日)の成功を
国会開会直後の九月二八日(火)夜には、日弁連は市民集会を開催する。
日弁連アンケート(パブコメ)の取り組みを通じて運動の輪を広げ、その成果を持って市民集会の成功を得たい。そして、法案の廃案を得たい(廃案の展望は十分にあるし、仮に廃案にたどり着けないときも現在の各党議員の意見状況に鑑みれば、日弁連が提起している実のある修正を得る展望は十分に存する。)
表題のとおり、今、再度取り組みを広げるときである。是非、全国での取り組みをお願いしたい。