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瀬野 俊之 山形五月集会案内(3) 五月集会・平和の破壊と創造の分科会 (第一分科会)へのお誘い 激動する情勢にどう向き合うか。 知恵と勇気を結集しよう。
今村 幸次郎 五月集会「第二分科会」へのお誘い
泉澤 章 第三分科会にぜひご参加下さい!
笹山 尚人 労働組合のビラへの不当攻撃裁判で勝訴判決
鷲見 賢一郎 企業再編リストラとのたたかい 長野県労委 親会社富士通へ団交応諾を命ずる
伊須 慎一郎 「憲法CAFFE」の取り組み




山形五月集会案内(3)

五月集会・平和の破壊と創造の分科会(第一分科会)へのお誘い

激動する情勢にどう向き合うか。知恵と勇気を結集しよう。

担当次長  瀬 野 俊 之

 第一分科会では、戦争と平和をめぐる世界とアジア、そして「この国」の情勢について討議し、私たちが日々取り組んでいる活動を交流し、今後の展望について語り合います。

【情勢】イラク〜アジア〜改憲

 小泉内閣は、ブッシュの戦争に追随し、自衛隊をイラクに派兵しました。そして、いまアメリカの再軍備に合わせるために、自衛隊の海外派兵を「本務」に格上げする法「改正」を行うことが目論まれています。国民の生命・財産を戦争に動員する有事法制が完成し、自治体レベルでの具体化が進んでいます。そして九条「改憲」です。

 アメリカは、いま世界の中で孤立を深めています。イラク戦争の口実を大量破壊兵器の除去に求めたアメリカの言い分は、もう通用しなくなりました。アメリカは、ただただ、自国の利益を追及し、自国に都合のいい市場を拡大するために、おびただしい数の命を奪ったのではないか。「この国」が「改憲」の道を突き進み、アメリカとの共同を強めることになれば、「この国」もまたアジアの中で孤立を深め、「平和の破壊者」に堕落することになるでしょう。

 最近の中国民衆の反日感情の高まりは本当に心配です。韓国もまたしかりです。靖国神社公式参拝、安保理常任理事国入りの表明、「つくる会」教科書の検定通過などアジアの民衆の心を踏みにじる「この国」の施策は批判されなければなりません。尖閣列島や竹島はどう考えればいいのか。率直に議論したいと思います。

【交流】九条の会〜イラク訴訟〜教科書

 全国各地に九条を擁護する運動が広まっています。団員や事務局員の奮闘が報告されています。地域の九条の会、弁護士九条の会など、各地の取組みをぜひ、報告してください。悩みもあると思います。「幅広く」と言うけれど、そう簡単にはいかない、などなど。「悩みの共有」も団の力になるでしょう。イラク派兵訴訟の広がりと進行具合はどうなっていますか。教えてください。憲法の学習会は進んでいますか。改憲阻止を語る上で何が大切でどういうことに気をつけなければいけないのか、ぜひ経験談を聞かせてください。基地撤去・反対の取組みも全国の課題です。沖縄をはじめ、日々の活動を紹介してください。日の丸・君が代は「伝統的」な統合の手法として猛威をふるっています。裁判や教育現場の状況を教えてください。平和のための法律家による国際連帯も進んでいます。アジアの民衆の平和を希求する意思を国連に届ける運動も新鮮です。ぜひ、話をきかせてください。この夏は、「つくる会」教科書採択阻止のために汗を流さなければなりません。これは、全国各地で例外なく取り組まなければならない課題です。何をどうするか、知恵を出し合いましょう。「つくる会」教科書をすべての採択地区で阻止し、「この国」の市民の良識を示しましょう。地域から発信するアジアの民衆に向けての力強い連帯のメッセージになります。国民投票法案が今国会に提出される可能性大です。投票法案は、「この国」を「戦争する国」にするための重大法案です。全団を挙げて取組みましょう。

 「この国」の改憲を許さず、平和の道を往くために、団員と事務局員の存在は、不可欠だと思っています。「この国」の現在と未来のために、団の知恵を結集しましょう。多くの方の参加をよろしくお願いします。

【担当事務局次長 斎田求・瀬野俊之】


五月集会「第二分科会」へのお誘い

事務局次長  今 村 幸 次 郎

1 第2分科会ー討論の視点

 今わが国では、人々の生活のあらゆる分野、人生のあらゆる段階において、人々の生活・生命・平等・権利を大切にする社会から、人々を企業や国の利益確保のための「手段」ないし「支配の対象」とするような社会変革が目論まれています。

 例えば、労働分野ー雇用の流動化・多様化・階層化、教育分野―多様性・競争・評価を基本にした「抜本改革」、市民分野―借家改悪をはじめとする消費者無視の企業利益確保、環境分野―業者に奉仕する自然破壊の「公共」工事など矛盾が噴出しています。

 このような「社会変革」の根っこにあるのが、グローバリゼーションや小泉「構造改革」です。そして、この流れは、政府・財界の改憲策動ないし「国づくり」戦略により一層加速しています。その行き着く先は「国益のために戦争する国」でしかありません。

 このような状況の中で進行する生活破壊に対して、団はどのように闘っているのか、そして、これからどのように闘っていけばいいのか。第二分科会では、このことについ討論していきます。労働、教育、市民、環境など各分野での取り組みについて、相互に経験交流しながら討論していきたいと考えています。

2 具体的な進行案

 第一日目は、団員によるパネルディスカッション(約六〇分)とそれを受けての討論(約六〇分)を予定しています。パネルディスカッションについては、労働、教育、市民の各分野から一名ずつパネラーを出してもらい、グローバリズムや「構造改革」は各分野でどのような問題を惹起しているか、これに対してどのように闘っていけばいいのか等について討論していただきます。パネラーは大阪の城塚団員(労働)、東京の小笠原団員(教育)、榎本団員(市民)にお願いしています。その後の討論は、グローバリズムや新自由主義をどうみるか、現場ではどのような問題が生じているか、それぞれの問題に対してどのように取り組んでいるか(裁判闘争、住民闘争、悪法阻止闘争、弁護士会での取り組みなど)、これからどう闘っていけばいいのか(運動の広がり、闘いの共同をどう作るか)について、自由に討論していだきます。

 二日目については、一日目の議論を受けて、各地・各分野における具体的な闘いや成果についての報告をいただきたいと考えています(約一一〇分)。各分野では、困難な闘いの中から様々な成果が生まれています。これらの成果を確認し合いながら、今後の闘いの方向性を探ります。

3 結びにかえて

 できるだけ難しい話にならないよう運営には工夫いたします。是非とも多数のご参加をいただき勇気と元気のでる分科会にしたいと思っています。

 現在、わが国では、財界の方針が、政治寄付と二大保守政党制という仕組みを通じて、そっくりそのまま政策や法律に反映される形になってしまっています。私たちは、何としても、このやり方を変えさせなければなりません。そのためには、少しずつでも、社会のあり方を変えていく必要があります。

 各分野における弱者対強者、市民対国、労働者対企業の闘いに民衆の側が勝利する、そのことが人々に勇気をもたらし、人々の生活や権利を大切する立場が多数となり、社会のあり方が変わっていく、そしてその先に、平和と民主主義を大切にする私たちの国がある、そんなことをみんなで展望する、そういう分科会になればと思います。

【担当事務局次長 飯田美弥子・今村幸次郎】


第三分科会にぜひご参加下さい!

担当次長  泉 澤  章

 事前に告知されている分科会別のテーマでは、第三分科会は「戦争と治安」がテーマということになっています。ただ、ここで取り上げられる問題は、せまい意味で「戦争」と関連する「治安」(たとえば典型的な弾圧事件)問題だけではありません。もちろん、九・一一後のアメリカのように、テロ防止の号令のもと、弁護士が何十年もの懲役をくらうような事件の発生は、戦時下国民のヒステリー状態を利用した治安対策が原因であって、ある意味でこれからの日本も同じ状況におかれる危険性は無視できないものがあります。と同時に、現在は戦争やテロ以外でも、「治安悪化」を理由に、しかも「国民多数の声」に応えると称して進行している「柔らかなファシズム」体制の危険性を看過してはならないでしょう。言論行為であるビラ配りが市民の通報で刑事事件になり、町内会をあげて警察と連携して夜回りをする世の中は、果たして私たちの望む社会といえるのでしょうか?国際的な問題から、日常の様々な場面での疑問まで、取り扱う内容はかなり幅広いのですが、参加される皆さんの問題意識をぜひ分科会で共有したいと思っています。

 そこで具体的な分科会の進め方ですが、まず一日目は、九・一一後のアメリカを典型例とする戦時下の抑圧体制と、現在日本で進んでいる治安戦略について、それぞれパネラーに発言をしていただき、加えて会場からの発言なども入れて討議をします。そして二日目は、一日目の討論を受けて、更に様々な現場からの報告などをしていただきたいと考えています。

 「戦争と治安」に直接関係することだけでなく、いま日本国中にはびこる日常の「不安感」に対して、私たち法律家がどのような対案を示し、どのように実戦的にしてゆけるのかを、皆さんで話し合いたいと思っています。多数の団員の参加をお願いします。

【担当事務局次長 大崎潤一・泉澤章】


労働組合のビラへの不当攻撃裁判で勝訴判決

東京支部  笹 山 尚 人

1、AIGスター生命の不当攻撃を跳ね返す

 生保業界の大企業・AIGスター生命保険(以下、「AIG」という。)が、労働組合のビラ配布等について,これを名誉・信用毀損として労働組合を訴えるという不当攻撃を行ったことに対し、東京地裁民事三六部(難波孝一裁判長)は、三月二八日、AIGの請求を全面的に棄却する勝訴判決を言い渡した。労働組合の団結権の一環としての組合のビラ配布の自由を再確認したきわめて意義の高い判決である。この勝利は、労働組合とその支援の輪が、AIGという大企業の不当な攻撃を跳ね返し、労働組合の団結と闘争の基盤を守ったものであった。

2、事案の概要

 平成一五年八月から九月にかけて、AIGは、四人の嘱託社員に対し、契約期間満了を理由に次々と雇い止めを行った。AIGは、この四名に対し、正社員同様の業務を担当させた上、「六〇歳まで働ける」等と契約期間が形式的なものであることを繰り返し明らかにして終身の雇用を保障する旨を明らかにし,現に四名は八回〜一〇回の契約更新を重ねていた。四名が、雇い止めになる前に、銀行業界の一般労働組合である銀行産業労働組合(以下「銀産労」という。)に加入したので、銀産労は、AIGとの間で団体交渉を持ったが、AIGは交渉の席上、終身雇用の説明をした事実を認めながら、雇い止めの理由の説明、復職させうる職場の調査などをまともに回答しない不誠実な団交に終始した。そこで銀産労は、東京都労働委員会に対し不当労働行為救済申し立てを行い、また、旺盛な宣伝活動を行うことで四名の復職を求めて運動を進めた。

 この中で、平成一六年四月、AIGは、銀産労を被告として、金五〇〇万円の支払い及び三大紙に謝罪広告の掲載を求めて提訴した。銀産労が同年一月から四月にかけて、AIGの本社前や東京の主要ターミナル駅前等の一一カ所で配布をし、組合のホームページ上で掲示したビラが、AIGの名誉及び信用を毀損するというのである。

3、ビラの内容

 問題のビラは、次のようなものであった。

 表に「AIGスター生命(旧千代田生命)が嘱託事務員を不当解雇」「約束を守らない保険会社にいざという時の『安心』をまかせられますか?」の見出しのもと、AIGが「期間は形式的で更新して定年六〇歳まで働けます」「本社なら統合もないしズーッと働けますヨ」と労働者たちに言いながら、「契約期間満了で退職です」と「解雇」を通告した事実を紹介し、「AIGスター生命は『何が起こるかわからない世の中だから』『あなたに大きな安心をお届けしたい』とCMをTV放映しています。しかし、約束を守らず、使うだけ使い、必要がなくなれば従業員をポイ捨てするような保険会社に、いざという時の『安心』を任せて大丈夫でしょうか?」との説明文章が掲げられていた。更に、AIGが開設するホームページに掲載されていたテレビコマーシャル映像の1コマ及びAIGの広告・宣伝文句である「何が起こるかわからない世の中だからあなたに大きな安心をお届けしたい。」という文章が掲載され、その文章の下に、「と宣伝していますが、従業員が安心して働けないような保険会社に、『大きな安心をお届けしたい』などという資格があるのでしょうか?」という記載がなされていた。

4、判決の概要

 判決は、ビラが形式的には名誉・信用毀損に該当することを認定した上で、ビラが、組合の団結権の一内容として作成・配布・公衆送信された正当なものあるかについて、「本件ビラで摘示された事実が真実か否か、真実と信じるについて相当な理由があるか否か、表現自体は相当であるか否か、表現活動の目的、態様、影響はどうかなど一切の事情を総合し、正当な組合活動として社会通念上許容される範囲内のものであると判断される場合には違法性が阻却される」という基準をたてた上で、この基準への該当性いかんを詳細に判断した。

 すなわち、判決は、団交の議事録や、これまでの労働委員会をも含む交渉の事実経過、その過程で配布された従前のビラにおいて同様の主張がなされており、それに対してAIGが異議を唱えた事実がないことなどを踏まえて、AIGが終身雇用を保障する旨の発言をした事実について、少なくとも銀産労がそれを真実と信じるにつき相当な理由があったと認定した。また、「従業員をポイ捨て」「不当解雇」といった評価を含んだ表現方法の相当性については、「評価の根拠となった基礎事実との間にどの程度の乖離があるのか、換言すれば、基礎事実から当該見解ないし評価を通常導くことができるのか否か、また、基礎事実の真実性の程度等によって判断する」として、AIGが終身雇用を保障する旨の発言をした事実について、少なくとも銀産労がそれを真実と信じるにつき相当な理由があったこと、嘱託社員が正社員と概ね同様の職務を担当した事実、労働契約の更新が八回ないし一〇回繰り返されている事実から、雇用継続の合理的期待があったと認められることから、「ポイ捨て」「不当解雇」との評価は、「基礎事実と…評価との間に乖離はほとんどな」い,と判示した。さらにAIGのコマーシャルを引用した表現方法についても、これはAIGの労務政策の批判と、銀産労に対する支援を公衆に求めることに主眼があり、AIGの保険商品の信頼性の欠如を述べるものではないこと、AIGが終身雇用を保障する旨の発言をした事実について、少なくとも銀産労がそれを真実と信じるにつき相当な理由があったこと、団体交渉におけるAIGの不誠実な交渉態度からして、なお組合活動の相当性を逸脱したものとまではいえない、とした。そして、本件ビラの作成目的を、四名の組合員の「解雇」撤回のために支援にあったと認定し、一一カ所におけるビラの配布や、ホームページ上の掲示は、「通常労働組合が情宣活動として行う態様を逸脱するものとはいえず」「インターネットが普及した今日においては、…目新しいものではない」から、社会通念上許容される範囲内のものであると判断した。これらの事情に鑑みるとき、本件のビラの作成・配布・公衆送信は、組合の団結権の一内容として行われた正当なものであるから違法性を欠くとして、判決は、AIGの訴えを全て棄却したのである。

5、本判決の意義

 近時、表現活動による名誉・信用毀損の訴訟では、多く表現活動に対する規制を命じる決定、判決が出されている。私の見るところ、それは、表現方法が過剰で、かつ無用にプライヴァシーに踏む込むゴシップ好きの巨大マスコミの横暴に対する警告として発せられる事例が多いと考えられる。

 しかし、これを一般化して、十分な表現手段を持たない市民や団体の表現に対する過剰な抑制になるのは行き過ぎであり、かえって大きな弊害を招く。

 労働組合が要求実現の活動をするときも、それを組合の内外に知らしめようとしてビラを配布して、その情報をホームページ上に掲示することは必要不可欠といえる。

 裁判例の流れにのって,労働組合の情宣活動に対し,企業側が名誉,信用毀損を訴える事例も増加傾向にあるのではないかと思われる。労働組合や争議団の活動に対する重大な攻撃であり,この攻撃の不当性を暴露し,労働組合の表現情宣活動の意義を再確認した点で,本件判決の意義は極めて高い。

 本件判決は、理論的には,これまでの判例法理を踏まえ、労働組合の表現行動を団結権の一環としてとらえ、その意義を正当に評価,再確認したもので、この意味でも高く評価できる。私は、とりわけ、労働組合の表現活動として、現代におけるホームページ上の掲示を「インターネットが普及した今日おいて目新しいものではない」と認定した点は、きわめて大きいと思う。

 本件の解決という意味に置いては、AIGが終身雇用を保障する内容の言動を行った点を正しく認定したことが、「解雇」された労働者の復職にむけて大きな足がかりになる。

6、雑感

 本件の勝利は、本当に労働者の団結による勝利だという実感である。判決の根拠となった事実も、全て労働者たちが足跡を残してきたことである。尋問にたった二人の労働者の証言も、見事なものであった。法廷の傍聴、支援の運動も大きく広がった。判決前の二月一七日には、大規模な宣伝行動がなされた。

 こういった地道な努力を重ねた労働者の団結の力が、不当判決が多いとされる東京地裁民事三六部から、驚くほど詳細な事実認定と正当な判断を勝ち取る原動力になったと思う。

 大規模な組合事件で、勝利判決に酔いしれるというのは、私にとって初めての経験だった。こんなにうれしいものだとは、予想した以上だった。労働弁護士になって本当に良かった。

(弁護団…上条貞夫、笹山尚人)


企業再編リストラとのたたかい

長野県労委 親会社富士通へ団交応諾を命ずる

東京支部  鷲 見 賢 一 郎

一 事業再建策=信州工場閉鎖、子会社への転社、希望退職の強行

 「開発・生産の効率化」という富士通鰍フ経営方針のもと、轄lゥ澤電機製作所は、平成十一年三月三十日、全日本金属情報機器労働組合(JMIU)長野地方本部高見沢電機支部に対して、事業再建策を提案してきました。

 この事業再建策の骨子は、信州工場を高見澤電機から分離し、高見澤電機の子会社である千曲通信に統合し、同時に信州工場の従業員は千曲通信に転社するか希望退職をするというものです。そして、転社後の千曲通信の労働条件は、月例賃金が平均約二十五%下がり、年間所定内労働時間約二〇〇時間増加し、昇給、賞与については会社の査定が入るというものです。

 高見澤電機は、不誠実団交を繰り返しながら、組合との合意もないまま、平成十一年六月、希望退職及び千曲通信への転社の募集を強行しました。この希望退職に応募した従業員は五十八名、転社に応募した従業員は一八三名で、どちらにも応募せず信州工場に残った従業員は一〇〇名にのぼり、そのうち九十九名がJMIU組合員でした。この結果、高見澤電機は信州工場の一部を千曲通信に譲渡し、残りはそのまま高見澤電機の信州工場として残ることになりました。

 この間、富士通は、当事者ではないなどとして団交に応ずることを一切拒否しました。

 JMIU本部、同長野地本、同高見沢電機支部(以下「組合」という)は、平成十一年十一月三十日、長野地労委に、上記高見澤電機の不誠実団交や富士通の団交拒否等について不当労働行為救済申立をしました(長地労委平成十一年(不)第二号事件)。そして、その救済命令がこの三月三十一日に出されたのです。

二 長野県労委、親会社富士通へ団交応諾を命ずる

 平成十一年(不)第二号事件についての長野県労委命令は、「高見澤電機は、申立人より高見澤電機信州工場の従業員の労働条件について団体交渉の申入れがあった場合には、誠実に団体交渉に応じなければならない。」、「富士通は、JMIU高見沢電機支部より平成十一年五月十二日に申し入れられた高見澤電機信州工場の事業再建策に関する団体交渉について、誠実に団体交渉に応じなければならない。」と命令しています(なお、それぞれについてポスト・ノーティスもあります。)。

 長野県労委が富士通に団交応諾を命じた理由は、次のとおりです。

(1)「一方、団体交渉に関しては、富士通は、高見澤の過半数株主としてはもちろん、派遣取締役を通じての支配・影響力、F&T(富士通高見澤コンポーネント梶jを通しての取引関係上の支配力を有しており、本件事業再建策の中止や変更を行うことができる立場にある。したがって、富士通は、高見澤の再編に伴う雇用の継続や退職・転社など基盤的労働条件について団体交渉に応じ、実効ある交渉を行うことができるものということができる。
 また、このような大規模な会社組織の再編に伴う基盤的労働条件に関する団体交渉上の使用者たる地位の判断に際しては、親会社の個別具体的な指示命令行為の立証までは必要なく、親会社の子会社に対する企業組織の再編に対する明示又は黙示の承認を間接的であっても認めることができれば足りるものと判断する。」

(2)「なお、親子会社又はグループ会社におけるグループ経営においては、迅速に大規模な会社組織やグループ組織の再編が行われており、このような組織の再編は、通常、親会社が主導して行い、子会社等には実質的な計画・決定の権利は存在しないとみることができる。会社組織再編に伴い労働条件の変更が行われる場合、団体交渉上の使用者性が子会社に限定され、親会社に使用者性が認められないとするならば、会社組織再編に伴う基盤的労働条件に関する団体交渉は形骸化し、極めて小さな効果しか生み出さないとともに、団体交渉の実効は著しく狭められ、団体交渉権の保障は後退してしまうことになる。
 よって、本件において、富士通に団体交渉応諾義務を認めないとすると、申立人に基盤的労働条件に関する十分な団体交渉を行う機会を与えることにならないこととなるため、富士通に団体交渉上の使用者性を認め、被申立人としての適格性を認めることを相当と判断する。」
 親子会社関係やグループ経営の実態や、企業再編リストラの持つ問題性を的確に把握した命令です。

三 高見澤電機とF&Tによる持株会社の設立と統括業務部門の営業譲渡

 高見澤電機は、平成十三年二月二十五日、JMIU高見沢電機支部に対して、「高見澤電機とF&Tの両社で、持株会社を設立する。その後両社は、持株会社にグループ全体を統括する管理・営業・技術開発部門の移管及び統合を行う」と提案してきました。そして、高見澤電機は、不誠実団交を繰り返しながら、平成十三年九月十七日、持株会社FCL(富士通コンポーネント梶jを設立し、十月一日、FCLへ統括業務部門を営業譲渡してしまいました。このようにして、高見澤電機は、東京証券取引所第二部上場のリレー製造の総合メーカーから、非上場の信州工場でのリレー製造のみの製造子会社にされてしまいました。

 富士通は、持株会社設立と統括業務部門の営業譲渡の問題についても、当事者ではないなどとして団交に応ずることを一切拒否しました。

 組合は、平成十三年六月十三日、長野地労委に、富士通と高見澤電機を被申立人として、「持株会社設立と統括業務部門の移管が高見澤電機信州工場の労働者の雇用と労働条件に与える悪影響の回避措置、救済措置」等についての誠実団交を求める不当労働行為救済申立をしました(長地労委平成十三年(不)第三号事件)。

 また、組合は、平成十四年一月十日、長野地労委に、富士通、FCL、高見澤電機の三社を被申立人として、「高見澤電機信州工場の労働者の雇用の確保と労働条件の維持・向上のための方策」等についての誠実団交等を求める不当労働行為救済申立をしました(長地労委平成十四年(不)第一号事件)。

四 長野県労委、持株会社設立と統括業務部門の営業譲渡についても富士通の団交応諾義務を認める

 平成十三年(不)第三号事件についての長野県労委命令は、次のように述べて、持株会社設立と統括業務部門の営業譲渡についても富士通の団交応諾義務を認めました。

(1)「確かに、持株会社を設立して管理・開発・営業部門を営業譲渡することは、高見澤が、自らの経営をコントロールするうえで中枢部門を無くすることになり、そのままの状態では不採算部門である信州工場のみになることから、たとい直ちに労働条件に変更がなかったとしても、将来的に何らかの労働条件の切り下げが必要になる可能性は否定できない。」

「よって、持株会社の設立等は、申立人の労働条件の基盤をなすものに影響し、労働条件に影響を与える可能性があるものであり、その限りにおいて義務的団体交渉事項となり得る。」

(2)「本件持株会社設立等は、富士通のグループ会社再編の一環として、富士通の指示又はその承認のもとに富士通の支配・影響力を受けて、実行されているものといわざるを得ない。」

 「団体交渉に関しては、富士通は、高見澤電機の過半数株主としてはもちろん、派遣取締役を通じての支配・影響力、F&Tを通しての取引関係上の支配力を有しており、本件持株会社設立等の中止や変更を行うことができる立場にある。したがって、富士通は、高見澤の再編に伴う雇用への影響など基盤的労働条件について団体交渉に応じ実効ある交渉を行うことができるものということができる。したがって、富士通は、本件持株会社設立等に関し、団体交渉応諾義務があるものと認められる。」

 平成十三年(不)第三号事件についての長野県労委命令は、「高見澤の団体交渉における態度は不誠実であったとまではいえない。」、「親会社に団体交渉応諾義務が存在する場合でも、この義務は、子会社が誠実に団体交渉を行えなかった場合に、初めて現実的・具体的に発生するものであるといえる。」として不当労働行為救済申立自体は棄却しましたが、持株会社設立と統括業務部門の営業譲渡について親会社富士通の団交応諾義務を認めた上記認定は、大きな意義を有するものです。

五 続く信州工場の存続・発展と雇用の確保を求めるたたかい

 今後、平成十四年(不)第一号事件についての長野県労委命令が出される予定です。

 平成十一年六月の事業再建策の強行以来、信州工場はJMIUの隔離職場にされ、閉鎖の危機にさらされています。この間の定年退職により労働者数が減少しましたが、現在、信州工場には七十六名の労働者(うちJMIU組合員七十五名)が働いています。高見澤電機は、組合壊滅を図り、JMIU組合員らに対して、賃上げについては平成十四年賃上げから〇回答を続け、一時金については平成十五年夏季一時金から〇回答を続けています。年間、一人あたり数十万円から一〇〇万円前後の減収で、共稼ぎの世帯の場合ほぼその倍額の減収になります。

 これからも、富士通、富士通コンポーネント、高見澤電機の組合攻撃に抗して、高見澤電機信州工場の存続・発展と雇用の確保を求めるたたかいは続きます。

 なお、弁護団は、鍛治利秀(東京支部)、岩下智和(長野県支部)、滝沢修一(長野県支部)、私の四名です。


「憲法CAFFE」の取り組み

埼玉  伊 須 慎 一 郎

 埼玉総合法律事務所(弁護士一四名、司法書士一名、事務局一六名)では、事務所内における改憲阻止運動を積極的に展開する足がかりとして、毎月一回のペースでニュースを発行し、相談者や依頼者等に配布するという取り組みをしているので報告します。

 昨年秋、改憲阻止についての議論が高まる中、これまでの活動に加えて事務所内でも何か取り組めないかという意見が出され、所員六名(弁護士三名、事務局三名)による所内改憲阻止プロジェクトを立ち上げました。そこでの議論で、情報を集約することや集会等への参加呼びかけだけではなく、改憲阻止に関する様々な情報をニュースにして発信してはどうかということになり、原稿を集め、昨年一二月末に「(仮称)WE LOVE 憲法」第一号を発行しました。A4裏表一枚で記事は三本くらいしか掲載できませんが、事務所内の各相談室に備え置いたり、依頼者への報告書に同封したりしています。プロジェクトでは月一回の発行をめざしており、現在、何とか第四号まで発行することができました。

 記事の内容ですが、あまり固いものではなく、相談者や依頼者が憲法問題に興味を持つことができるような内容を心がけています。例えば、最近読んだ本の書評であるとか、展覧会の感想、事務局の子供の作文など、比較的身近なものにするとともに、素朴な疑問に答えるため「憲法Q&A」や「憲法豆知識」などのシリーズも始めました。

 他方、このニュースは事務所内全員の改憲阻止についての意識を高め、活動を活性化することも目的としており、ニュースの名称も所内で公募・投票のうえ「憲法CAFFE」と決めました。何でもイタリア語だとか。提案者(事務局)によると、「忙しい日常業務に負われてなかなか憲法問題を考える余裕がないが、今、立ち止まって憲法について考えてみたい。」といった気持ちを表しているとのことです。この「憲法CAFFE」により、事務所内での改憲阻止運動のモチベーションが少しずつあがってきたように思われます。なお、事務所のホームページにもすべての号をアップする予定になっています。

 この「憲法CAFFE」を発行するに当たり、どんなことができるか、果たして効果があるか、などの点がプロジェクトで議論されましたが、重要なのはできるところから始めること、まず、第一歩を踏み出すことが改憲阻止運動には大切であると思います。

 目新しい取り組みではないかもしれませんが、今後、事務所外に展開していく可能性もあることから、ご報告させていただきました。