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長尾 詩子 団総会の女性部企画にご参加を!
― 女性部を挙げて憲法改悪に取り組む
大山 勇一 COLAP4に参加しました
笹山 尚人 東京法律事務所・九条の会企画
「靖国神社見学ツアー」を開催
村田 智子 自由法曹団「広報宣伝部」




団総会の女性部企画にご参加を!

― 女性部を挙げて憲法改悪に取り組む

東京支部  長尾 詩子 (女性部運営委員)


 女性部は、一〇月二三日から始まる団総会の直前の二三日午前九時から「聞く人を元気にする憲法講座のノウハウ」と銘打った企画をしています。

 七月総会では、「女性ががんばらないと憲法改悪は止められない。多くの女性が立ち上がる牽引車に団女性部がなろう!」ということが確認されました。

 それとともに、各地の団員が憲法学習会を行う中で様々な工夫をしている経験を交流する中で、「もっともっと多くの団員の経験を交流したい。そうすれば各地の女性団員の憲法学習会をレベルアップすることができる。」という声があがり、今回の企画を行うこととなりました。

 現在、女性部では、この企画に先立ち、憲法運動についてのアンケートを行っています。「九条改悪により、身近な生活にも影響が出ることを話すようにしています。」、「学習会の講師をする時には、従軍慰安婦の方々の訴え等を使い、平和を望む感性に訴えるようにしています。」、「弁護士会の中で先輩会員より戦争体験や被曝大変を聞き和解会員と意見交換をしています。」、「憲法が、国民の義務を定めたものではなく、国民の人権を保障する規範であるという根本理念であるということを分かってもらうという工夫をしています。」等々参考になる意見が続々と寄せられています。

 参加すれば、憲法学習会がレベルアップして、聞いた人全てが元気になって一回り大きな運動を作る学習会、いもづる式に次の依頼が増える学習会が行えるようになること間違いなしです。

 是非多くの女性団員のみなさんの参加をお願いします。

 ただし、二二日からの泊まり参加でないと日程的にきびしいと思います。団本部の二二日のプレ企画ご参加に加えていらして下さい。

 なお、この女性部企画の参加のご返答は、左記において集約しておりますので、こちらへ電話にてご連絡をください。よろしくおねがいいたします。

参加の連絡先 ウェール法律事務所
中 野 和 子 宛(女性部事務局長)
電話 〇三ー三五一一ー九七九〇



COLAP4に参加しました

東京支部  大山 勇一


 九月一日から四日まで韓国ソウルに滞在し、第四回アジア太平洋法律家会議(COLAP4)に参加してきました。テーマは、「アジア太平洋地域における平和・人権・共存」というもので、日本からは、約一〇〇名の法律家や研究者らが参加しました。韓国からも一〇〇名参加し、そのほかには、中国、フィリピン、インド、バングラディシュ、USA、NZ、パキスタン、エジプトなどからも法律家が参加していました。

 韓国の「民主社会のための法律家の会」(民弁)はさすが政権に関わっているだけあって、法務部(法務省)の司法長官や国家人権委員会の委員長、国会議員が参加していました。また、裁判官も参加していました(そういえば、今年八月に、私が乗船した「ピースボート第五〇回クルーズ」には、韓国の元首相も乗船していましたっけ)。

 私は、休憩時間に、特別企画として、パワーポイント(プレゼンテーション用スライド)を使って、約四〇分にわたって、「靖国神社参拝問題」について報告しました。五〇名以上のご参加を得て、予想以上に関心を持ってもらったようで、一安心しています(韓国語の資料を用意しましたが、報告はもちろん日本語で行い、康由美弁護士に通訳してもらいました)。その一方で、海外では、靖国神社の基本的な性格や戦後の靖国国営化をめぐる経緯について知らない法律家がまだまだ多いのではないかと感じました。

 飛び入り企画にもかかわらず、準備と宣伝をしていただき(食堂で宣伝チラシをまきました!)、事務局にはたいへん感謝しております。

 韓国の徐勝さん(「獄中一九年」(岩波新書)の方)とお会いして、靖国神社をめぐる日本の右傾化について意見を交換しましたが、アジアだけではなく、欧米を巻き込んで批判を強めなければならないという点で認識が一致しました。全国六箇所で行われた靖国裁判は、福岡地裁を除いて控訴しましたが、現在相次いで結審、そして判決といった状況となっています。一見、負けが続いているようにも見えますが、どこの判決も「公式参拝は合憲」と認めたものはなく、私は冗談で「一勝(福岡)〇敗五引き分け」だと言っています。

 ところで、私が参加した第二分科会は、人権という観点からアジアを見るという分科会でした。鈴木亜英弁護士の司会のもと、治安維持法賠償問題(日本)↓国家保安法廃止問題(韓国)↓反テロ法案問題(韓国)↓反テロ人権立法(フィリピン)というように報告が続きました。フィリピンでは、昨年七名、今年六名の人権派弁護士が殺害されているそうです。アジア地域における人権抑圧が、歴史的にも地理的にも密接に影響しあっていること、それゆえに歴史認識を近づける努力と民衆の連帯が必要であることがたいへんよく理解できました。参加した建国大学の学生が、フィリピンの報告者に対して、「自分たちは今何ができるのか」と必死に質問をしていたのが印象的でした。笹本潤弁護士から、「韓国の法律家は、かつて軍事独裁時代に日本の法律家に支援をしてもらったことをよく覚えていて、感謝しているそうだよ。だからこそ、今の日本に対しても支援は惜しまないのだと思う」と聞き、韓国の人々の気持ちに感激しました。

 また、日本でのイラク派兵差止め訴訟の報告を受けて、韓国でもイラク派兵違憲訴訟が提起されたことを知りました。その中で、通常の裁判所では訴えの利益が認められず敗訴し、憲法裁判所では、統治行為論が採用されてやはり勝利できなかったということをきき、日本とほぼ同様の問題に直面していることも分かりました。

 残念だったのは、私の英語力・韓国語力(現在勉強中です)がいまひとつだったために、せっかくの機会にもかかわらず、率直な意見交換ができなかったことです。次回(いつなのか?)は、語学力を鍛え、今回の「靖国問題」のようなワークショップを担当したいと考えております。

 今回はもちろん学習だけではなく、アカスリ、あんま、サウナと体のリフレッシュも堪能し、心身ともに爽快でした。その反動か、まだ、なかなか仕事に身が入りません。



東京法律事務所・九条の会企画

「靖国神社見学ツアー」を開催

東京支部  笹山 尚人


一 靖国神社訪問

 事務所九条の会は、七月二七日、第一回の活動として、靖国神社の見学訪問ツアーを行いました。事務所の所員が九名、所員以外の方が三七名参加しました。

 新宿平和委員会の長谷川氏の手慣れたガイドに従い、神社の境内、それから「遊就館」という博物館を見学して、靖国神社が、いったいどんな神社なのかというのを、直に見学してきました。

 靖国問題は今、世間を賑わしています。小泉首相の靖国神社への訪問に対し、中韓の政府代表者レベルの反発が顕著になっていることから、外交問題を憂慮する声、内政干渉だ、他国にとやかく言われることではない、と反発する声が国内から沸き起こっています。

 現地を見学することで、靖国神社をめぐる問題とは何か、私たちは五感で感じとることができたと思います。

 靖国神社の境内が予想以上に広いこと。境内の中にも見所が多いこと。遊就館をまじめに見学していたら一時間やそこらはあっという間に立ってしまうこと。その展示の内容。意外にもりだくさんの内容に、参加者のみなさんは予想を超えて興味をそそられたと思います。

 そんなわけで、東京法律事務所・九条の会の企画としては成功したように思います。

二 世間の議論は本質からずれている

 そんなご報告だけではつまらないのですね。私は,小泉首相、石原都知事の靖国神社参拝についての違憲訴訟の原告側代理人を務めており、この訴訟を通じ、私は、靖国神社のことについては、ひととおり勉強したつもりですし、神社を訪れたことも一度や二度ではありません。だから私は、「靖国問題とは何か」、と言われれば、一家言あります。そこで靖国問題についてコメントしたいと思います。

 私がこの間、ニュース等を通じて流れる報道を見て思うのは、「本質からずれた議論をしている」ということです。靖国問題とは外交問題である、と認識している向きが強くなっていることを感じます。

 しかし、靖国問題の本質は、優れて政治的な問題で、かつ、憲法問題です。ここを取り間違えると、この問題はなかなか理解しにくくなると思います。

三 靖国神社とはどういう神社か

 靖国問題を語るには、その前提として、靖国神社がいかなる神社であるかを知る必要があります。


 七月二七日の現地見学で、私たちは、遊就館の展示には、日本がいかに正しい戦争に従事したか、軍がいかなる作戦を使って、敵を打ち破っていったか、従軍した軍人たちがいかに高潔な志で自らの身を国に捧げたか、がわかりやすく展示されているのを見ました。境内の展示も、狛犬などが戦果として飾られていたり、貢献した人間のほか犬や馬に至るまで、銅像が飾られ讃えられているのを見ました。

 靖国神社の考え方をわかりやすく言えば、「日本は,明治維新以降、天皇制国家の自立と繁栄のため、必要な戦争をたたかった。そこに従事した者は英雄である。彼らに感謝と敬意を捧げよう。」というものです。つまり、靖国神社は、皇軍の戦死者、それに準ずる国事殉難者を祀る神社です。実在の人物を、しかも身分の上下なく、人数も限りなく祀っている点に特徴があります。だから、靖国神社の本質をとらえるためには、次の二点を見ておく必要があります。 一つは、戦没者顕彰施設である、ということ。「顕彰」とは、褒め称えることです。今一つは、靖国神社自身、日本が行った対外戦争について肯定的な歴史観を持つ神社であるということです。

四 靖国神社参拝の意味

 靖国神社の本質をつかめば、そこへ小泉首相が参拝するということの意味はどういうことか見えてくると思います。それは、口でどう言おうと、日本が行った侵略戦争を正しい戦争としてとらえ、そこに従事した者に対し「よくやってくれました」と感謝を捧げることを意味します。中国や韓国が怒っていることの本質はこの点なのです。A級戦犯というのはその象徴に過ぎません。

 このような意味を持つから、靖国神社への参拝にこだわるということは、憲法問題に直結するのです。憲法は過去の侵略戦争への反省から、平和主義を定め(前文、九条)、また、国内の戦争体制作りに寄与し宗教弾圧をもたらした国家神道と靖国神社と国家との結びつきを切り離そうと政教分離原則を定めたのです(二〇条)。参拝の継続は、この憲法の規定をないがしろにすることに直結するのです。

 だから靖国問題とは、ある政治的意思をもって参拝を継続することによって、憲法の破壊が招かれるが、そのような政治的意思は重要なのか。私たちはその意思を是とするか非とするか、という問題なのです。

五 靖国参拝をすすめる政治的意思とは何か

 ひるがえってみれば、小泉首相は、首相就任以前に、このように語っていました。

 「それなしに(憲法第九条の改正なしに、ということ|引用者注)ただ政府の解釈で、世界平和のために国連で決議すれば、あるいは国連軍ができれば自衛隊を派遣してもいいよといったならば、私は出ていく自衛隊に失礼だ。(中略)自衛隊員というのは自らを顧みず任務に精励することを誓っている。そういう普通の人が嫌がること、嫌なこと、場合によると命を失うかもしれない自衛隊諸君が、海外に出る場合には多くの大多数の国民が、敬意と感謝をもって送り出すような環境を整えるのが政治ではないかと私は思います。」(小林良彰編、『日本政治の過去・現在・未来』、慶應義塾大学出版会株式会社、一九九九年、二六九頁)。

 ここで、靖国神社に参拝するときの小泉首相のおきまりの言葉、「敬意と感謝」が出てくることに注目したいと思います。「自衛隊が海外で活動できるために、彼らに敬意と感謝を捧げる」ことの一つの装置として、靖国神社への参拝を利用する。それこそが今問題になっている政治の意思なのです。

 靖国問題とは、この政治の意思をどう見るかの問題なのです。

 東京訴訟の判決は、この政治の意思の問題について、極めて不十分ながら、「原告らが危惧の念を持つことは理解できないではない。」と判示しました。このことは成果であったと思っております。

 なお、靖国問題については、私たちの訴訟でも証言していただいた高橋哲哉・東京大学教授が、まさにそのものずばりの「靖国問題」(ちくま新書)という著書をこの五月に発表されておられます。靖国問題を読み解くにはこれ以上のテキストはありません。ご一読をお勧めします。



自由法曹団「広報宣伝部」

東京支部  村田 智子


まずは、前置きから

 この題名を見て、「自由法曹団本部に『広報宣伝部』ができたんだ」と思った方がおられるかもしれないので、説明します。そんな部はありません。私自身の二〇〇五年の教科書闘争を振り返ると、自分の活動があまりにも「広報活動」と「宣伝活動」に偏っていたので、「まるで『広報宣伝部』にいたようだ」と感じているため、このような題名をつけたのです。

 私が、ここ数年、関わってきた団の活動において、「団内に広報する(=広くお知らせする)」、「団外に団の活動を宣伝する」ということも担当してきましたが、それは本体の活動に否応無しに付随してくるものに過ぎませんでした。でも、今回の教科書闘争においては、自分の活動の九〇%以上を、広報活動と宣伝活動に割く結果となりました。こんな経験は初めてです。誰も私にそのような役割を望んでなどいなかったのに、なぜかこのような結果になってしまい、振り返ると、闘争のおいしいところ、目立つところだけをつまみぐいしてしまったような気がしています。

 でも、「広報」も「宣伝」も、「対象となるものの近くにいながら、ちょっと離れたところから見る」というスタンスで行うものですので、私には、今回の教科書闘争における団の果たした役割がよく見えました。何が見えたのか、その一部だけでも紹介したいと思います。

団内の広報活動

 団内の広報活動は、主にFAXニュースの発刊でした。

FAXニュースの歩みは、団の、団員の、事務局の活動の歩みそのものです。

 団本部は、五月集会で、全国のすべての教育委員会に要請をする旨、決議し、六月からは各支部での要請活動が始まりました。FAXニュース第一号の発刊は六月一三日で、七月上旬までは、各地での要請活動の報告が中心でした。七月一〇日頃、私は、要請活動も一段落したので、しばらくニュースのネタもなくなるのではないかと思っていたのですが、七月中旬以降は各地区の危険情報や不採択情報を中心に、より一層、各地の団員・事務局からの情報提供は増え、発刊のペースが遅くなったり、間があいたりすることはありませんでした。

 ニュースの内容も多彩さでした。前述の教育委員会への要請活動や危険情報・不採択情報はもちろん、教科書展示会への参加の感想、「つくる会」の動きについての情報の提供、団本部の活動(『静ひつな環境』についての文科省交渉、日韓法律家の共同声明発表等)の紹介等、バラエティに富んでいました。これは、団が、この国の教科書闘争が歩んだ道を、そのまま歩んできたことの証です。

 団内での情報流通の速さにも驚かされました。私は、FAXニュース作成のため、ずっと教科書ネットML等には目を通してきましたが、教科書ネットMLに掲載される以前に団内のMLで各地の不採択(ないしは採択)の情報が提供されることが何度もありました。私は、「早い」ことだけがよいことだと思っているわけではありません。ただ、早く情報を取れるということは、団員もしくはその事務所が本気で教科書問題を追いかけ、かつ、各地の市民団体とも連携していなければできないことです。団内の情報流通の早さは、それだけ各地で団員・事務局が、本気で教科書闘争を闘ったことを意味しています。

 また、団内の情報は、地域的偏在が少なく、内容も正確で、非常に信頼できるものでした。全国に拠点を持つ団のすごさを実感しました。全国からの情報のうち、宮城県仙台市と愛知県名古屋市については、団員・事務局が提供する情報を、教科書ネットの事務局に提供させていただきました。教科書ネットML等で全く出ていなかったからです。特に仙台市については、教科書ネットの事務局長である俵さんから、「政令指定都市で不採択第一号」と紹介され、大変歓迎されました。

団外での宣伝活動

 宣伝活動といっても、たいしたものではなく、私が普段出席している教育基本法関係の会議に団が作成した意見書等を持っていくとか、対外的なMLで発表する、という程度のことしかしていません。

でも、私自身が意見書作成等に一切関与していなかったので、心はもう「自由法曹団・宣伝担当」でした。

 団の意見書等は、非常に評判がよく、宣伝担当としては鼻高々でした。

 特に印象に残っているのが、団本部が五月下旬に文科省に対して行った、「『静ひつな環境』についての要請行動」の「まとめ」を、ある教育基本法関係の会議に持っていったときのことです。あの要請活動において、団は、文科省から「市民が市庁舎等に出かけ、プラカードなどを掲げて、教科書の採択について意見を表明するなどの行為について、警察の介入は考えていない」旨の回答を引き出しました。このことを会議で報告した際に、参加者の中から「よくぞこのような回答を文科省から引き出してくれた。」といわれ、数名からは拍手までもらいました。

 何もしていないのに拍手をもらうのも役得のうちなのだろうとは思いますが、私だけがあのときの誇らしい気持ちを独占しているのはもったいないので、紹介しました。

教科書闘争とは?

 FAXニュースをつくる過程で、各地の不採択情報を拾い出しながら、一つ一つの不採択情報の裏に、どれだけの人々の熱意と努力があったのであろうかと、思いをはせずにはいられませんでした。こういった各地での地道な運動の積み重ねが、「つくる会教科書」のきわめて低い採択率(歴史教科書についてはは約〇・四、公民教科書については約〇・二)という結果になったのです。団は、本部も支部も、団員も事務局も、互いに繋がり、かつ、団外の人たちと繋がりながら、この地道な運動を進めました。その果たした役割は、本当に大きかったと思います。

 「広報宣伝部」の部員であった間、私は、団員であることが、とても誇らしかったです。

 この原稿が団通信に掲載される頃には、衆院選挙の結果も出ていて、皆さんも私も、ちょっとへこんでいるかもしれません。でも、地道な闘いでここまでやれたんです。ちょっと休んだら、自信を持って、これからの改憲阻止・教育基本法改悪阻止等の活動を進めていきましょう。

 最後に、私に好き勝手にやらせてくださった、団本部・東京支部共同の教科書プロジェクトチームの皆様、とりわけ、いつも、「いいよ。大丈夫だよ。思い切ってやりなよ」と励ましてくださった「広報宣伝部」の「部長」の瀬野俊之次長には、この場を借りまして、心から感謝申し上げます。