<<目次へ 団通信1208号(8月1日)
団 長 坂 本 修
暑中御見舞い申し上げます。
団長になって三年目。昨年、一昨年は間に合わず「残暑見舞い」になってしまったので、これが最初で最後の「団長公務」の暑中御見舞いです。
今までのところ「暑くて大変だ」というよりは、各地で豪雨が続き多大な被害が出ている異常な夏になっています。団員、御家族のみなさんは大丈夫だったでしょうか。被害のひどかった地にお住まいの団員には心から御見舞い申し上げます。
政治の季節としては、〇五年九月の選挙での小泉自民党の「突風的勝利」、同年一一月の同党「新憲法草案」の発表、そして本年五月の「改憲手続法」の国会提出と改憲に向けての風はさらに強まり、濁流は勢いを増しています。国会情勢は予断を許しません。改憲の先取りの教育基本法改悪法案、共謀罪法案が改憲手続法とともに継続審議になり、九月からの国会で成立が図られているのです。
前国会で圧倒的な議席差にもかかわらず、これら希代の悪法=E違憲立法≠フ成立を許さなかった大きな原因は、私たち国民の反対世論―それをつくりあげた運動―の力です。
だが、秋からの国会で改憲勢力はこれらの悪法の早期成立に全力をつくしてくるに違いありません。
真実を広げ、世論をおこし共同してたたかえば勝利への道を切り開くことはできる。だがそれには、私たち自身のなみなみならぬ努力がいる。しかも時機が大事です。国会が始まってから宣伝し行動を提起するというのでは、おそらく遅すぎるのではないでしょうか。とすれば、希代の悪法*レ白押しという特別の秋≠前にして、これに立ち向かう宣伝、運動を前倒しで進めるためには、この夏を 特別の夏≠ニして生きる必要がある―そう思えてならないのです。(とりわけ、壊憲≠フための不公正で違憲の「カラクリ立法」である改憲手続法の正体は多くの人々に知られていません。団はその解明と宣伝に特別に力をそそぐことを求められています。)
団は、九月一五日、教育基本法問題全国活動者会議、同月二六日、国民投票法案の成立を阻止し、改憲を許さないために―改憲阻止全国活動者会議を予定していますが、この二つの会議の前に、特別の夏≠ノふさわしい活動を各地で積み上げ、その成果を持ち寄りたいものです。
昨年も一昨年もせめぎ合いの中でも「張りつめた弓の弦は切れやすい」、「ゆっくり夏休みをとって家族ともどもリフレッシュを」と私は書いてきました。今年もその思いは変わりありません。でも、やはり団員生活四七年の中でも特別の夏≠セという思いを強くしています。それぞれの条件と得手を生かし特別の秋≠勝利で迎え、「もう一つの新しい日本」への道を切り開くという心楽しい活動のために力を合わせようではありませんか。
考え、語り合い、行動し、楽しく元気にこの夏をお過し下さい。
はじめに
ご存じの方も多いと思いますが、六月二一日、大阪地方裁判所で薬害C型肝炎の判決が言い渡され、国と製薬企業の責任が認められました。この結果は、皆さんのご支援のおかげだと思っています。ありがとうございました。
薬害C型肝炎訴訟の概要
薬害C型肝炎訴訟とは、昭和四六年から平成二年頃の医療行為で、フィブリノゲン製剤等を使用されたことによりC型肝炎ウイルスに感染したとして、国及び旧ミドリ十字等製薬企業を相手取って、平成一四年一〇月以降全国五地裁(東京・大阪・福岡・仙台・名古屋)で提起された損害賠償請求事件です。原告数は平成一八年六月二一日現在九六名、請求額は五八億六三〇〇万円です。
フィブリノゲン製剤(「フィブリノゲンーミドリ等」)とは昭和三九年に承認され、産科大量出血等の場合に使用されていましたが、現在では先天性フィブリノゲン血漿以外有効性がないということで、適用制限された薬です。なお、アメリカでは昭和五二年に承認が取り消されています。
大阪地方裁判所の判決の概要
今回の判決の対象となったのは原告一三人で、損害賠償が認められた原告に対し、一三二〇万円から三六三〇万円の支払いを命じました。
国に対しては、昭和六二年四月の時点で非加熱フィブリノゲン製剤の適応を限定しなかったこと及び加熱製剤の有用性が認められないのに製造承認したことについて違法とされ、同月以降にフィブリノゲン製剤の投与を受けた原告五人に対し、損害賠償責任が認められました。
製薬企業については、昭和六〇年八月にウイルス不活化処理方法を勝手に変更したことにつき、安全性確保義務に違反した過失があるとして、同月以降にフィブリノゲン製剤の投与を受けた原告九人に対し、損害賠償責任が認められました。
大阪判決で評価すべき点
まず、大阪判決では一九八七(昭和六二)年四月以降の国の責任が認められました。そのなかでも、適応限定しなかったという不作為(するべきことをしなかった)について「対応を迫られていた最中であ」ったとして違法と判断しました。また、薬の承認手続きの違法性についても「安全性確保に対する意識や配慮に著しく欠けていたと言わなければならない」と判断しました。それだけでなく、一九八七年以前の国の対応も「ずさんと評価すべき」「合理的理由は見いだしがたい」「医薬品の安全性を確保するという立場からは、ほど遠い、お粗末な面が認められ、その意識の欠如ぶりは非難されるべきである」「単に判断を先送りしていたにすぎない」など厳しい言葉で断罪しました。
次に、大量輸血の事例でもC型肝炎に感染した原因は、輸血ではなくフィブリノゲン製剤であることを認めました。
さらに、慢性肝炎、無症候キャリアになっていることについて、損害賠償金額を高く評価しました。これは、C型肝炎に感染したら、大きな損害が発生することを認めたものといえます。
大阪判決の問題点
まず、企業の責任が認められたのが、一九八五(昭和六〇)年と遅かったこと、第九因子製剤については、時期を問わず国・企業の責任を問わず否定した点が問題といえます。
その後の展開
国は不当にも原告の厚労大臣への面談要求を拒否し、原告の意見を聞くこともなく六月二九日控訴しました。製薬企業も原告の意見を聞かず控訴しました。原告も前述の問題があることなどから七月四日控訴しました。このため、今回判決を受けた一三人以外の人が地方裁判所、判決を受けた一三人の人が高等裁判所で裁判をうけることになりました。
また、今回の判決後、全国五カ所で緊急ホットラインを設置し、被害の聴き取りをしましたが、大阪では受話器を置くとすぐにベルが鳴るという状態で、大阪だけでも毎日二〇〇本近い相談がありました。その中には、早期に提訴可能な人が何人もおられました。
さいごに
薬害C型肝炎訴訟は民事訴訟制度の限界から損害賠償請求をしていますが、最終的な目的は検査態勢の確立、治療体制の確立をめざしています。このため、各政党や国会議員・厚生労働省などに働きかけもしています。(既に、民主党・自民党・公明党では肝炎対策プロジェクトチームができて恒久対策の検討が始まっています)。
今後も、皆さんのご支援をよろしくお願いします。
東京支部 水 口 洋 介
一 全国トンネルじん肺根絶訴訟とは
トンネル工事はダム、鉄道・新幹線、道路建設に不可欠な公共工事であり、国策として推進されてきた。このトンネル建設工事に従事したトンネル坑夫の中から、重篤なじん肺患者が多数発生している。改正じん肺法が施行された一九七八年から二〇〇四年まで、トンネルじん肺患者は全産業のじん肺患者のうち二四%(九〇四九人)を占めている。しかも、トンネル建設工事は現在も行われており、過去の問題ではない。
このトンネルじん肺患者たちが原告となり、二〇〇二年一一月、東京地裁に国を相手に損害賠償訴訟を提起した。これに続いて、仙台地裁、札幌地裁、新潟地裁、熊本地裁、長野地裁、徳島地裁、松山地裁、金沢地裁、松江地裁、広島地裁に、それぞれ国と元請ゼネコンを被告として提訴をした。これが全国トンネルじん肺根絶訴訟(第一陣)である。第一陣訴訟の原告数は七三二名(患者単位)。今年四月に第二陣訴訟を提訴し、この原告も加えると原告総数は九六四名の大型訴訟である。全国トンネルじん肺根絶訴訟弁護団(団長は小野寺利孝弁護士)には、団員を中心に全国で二六〇名を超える弁護士が結集している。
二 東京地裁、熊本地裁の国の責任を断罪する勝訴判決
本年七月七日、東京地裁は、国(労働大臣)は、遅くとも一九八六年末には、(1)トンネル工事の坑内の粉じん測定と結果の評価の義務づけること、(2)湿式さく岩機と防じんマスクの使用を重畳的に義務づけること、(3)ナトム工法の標準化・普及に伴いコンクリート吹き付け作業時にエアーラインマスクの使用を義務づけることを内容とする省令を制定するべきであったとして、国賠法一条一項の適用上違法であるとして、国に原告に対して損害賠償を支払うよう命じた。
また、七月一三日には、熊本地裁は、(1)一九六〇年四月には、トンネル工事坑内作業では散水措置、発破待避時間の確保を義務づけること、(2)一九七九年には、湿式さく岩機と防じんマスクの使用を重畳的に義務づけること、(3)一九八八年一月には、粉じん許容濃度の設定と定期的粉じん濃度測定を義務づけることを内容とする省令を制定すべきであるとして国に損害賠償の支払いを命じた。
二〇〇四年四月、最高裁は筑豊じん肺訴事件で国(通産大臣)の規制権限不行使の違法とする判決を下した。東京地裁、熊本地裁の両判決は、この筑豊じん肺のたたかいの成果を引き継ぐ画期的な判決である。
三 トンネルじん肺根絶訴訟の目的ーじん肺根絶の政策実現
根絶訴訟に先行して、ゼネコンのみを被告とする全国トンネルじん肺損害賠償求がたたかわれてきた。一九九七年五月、東京地裁への提訴から、全国二三の裁判所にてトンネルじん肺患者約一五〇〇名が原告となり、「あやまれ、つぐなえ、なくせ じん肺」の要求の下、ゼネコンとの間で次々と和解を成立させた。元請ゼネコンは、法的責任を認め謝罪した上で、原告に対して損害賠償金を支払う和解に応じた。その結果、ゼネコンとの関係では「あやまれ、つぐなえ」の要求を実現することができた。
しかし、ゼネコンとの和解が成立しても、トンネル建設工事でのじん肺防止対策は不十分のままであった。これでは「なくせ じん肺」の要求は実現できない。じん肺根絶のためには、国にトンネルじん肺防止のための対策を実施させなければならない。そう考えたトンネルじん肺患者たちは、規制監督権限不行使の責任、そしてトンネル建設工事の発注者としての安全配慮義務ないし民法七一六条ただし書の注文者責任を追及する訴訟を提起したのである。
原告らの目的は、原告の損害の回復だけでなく、国にトンネルじん肺予防ために抜本的にじん肺防止対策を改善させることである。東京地裁と熊本地裁は、この原告らの主張と要求を正面からとらえて、国の規制権限不行使の違法性を明確に認定した。両地裁判決は、規制権限不行使の違法性の時期や規制内容について異なる判断部分もあるが、じん肺予防のために、国が適時・適切に規制権限を行使すべきであったにもかかわらず、これを怠ったという点を厳しく断罪した点は共通である(発注者責任については個別立証がないとして認めなかった)。特に、両判決とも、粉じん濃度の測定及びその評価の義務づけるべきとした意義は大きい。
マスコミも、「原告患者たちは新幹線建設などに従事し、日本の高度経済成長を支えた。トンネル建設工事は現在も各地で行われている。トンネルじん肺訴訟で連敗した国は真摯に司法の指摘を受け止めることが求められる」(七月一三日「日本経済新聞」夕刊)との記事に代表されるように国の不作為の責任を厳しく批判した。また、原告・弁護団の要請を受けて、与党の公明党も含めて、民主党、共産党、社民党は、政府に対してトンネルじん肺防止の政策確立と控訴断念を求める談話や申し入れを行った。
四 国の控訴と仙台地裁の判決言渡日の指定
ところが、国は、世論を無視し、原告・弁護団との面会を拒否したまま、七月一九日に控訴をした。原告・弁護団は、これに対抗するために控訴手続をとった。しかし、根絶訴訟の目的はトンネルじん肺防止対策の確立である。国は、これ以上、控訴審で争うことなく、トンネルじん肺防止対策を確立するために原告団・弁護団との協議に応じるべきである。
そして、七月一八日、仙台地裁は東北根絶訴訟の判決言渡日を一〇月一二日と指定した。私たち原告・弁護団は、仙台地裁判決においても、三度、国の責任が断罪されることを確信している。原告・弁護団、そして原告を組織する建交労は、一〇月一二日の仙台地裁の勝利判決を梃子にして、全面解決を勝ちとるために全力で取り組む決意である。
熊本支部 板 井 優
勝利判決への拍手の中で
二〇〇六年七月一三日午前一〇時、熊本地裁民事第三部(永松健幹裁判長)は、トンネルじん肺根絶九州訴訟において、原告患者一六四人中一三〇人について国に二億五九三一万八六九三円の損害賠償責任を認める判決を下した。トンネルじん肺根絶訴訟は、現在全国一一の裁判所で闘われているが、熊本地裁は同月七日に出された東京地裁に引き続き国の責任をさらに厳しく断罪する判決を下した。
東京地裁判決が規制権限行使義務が発生する時期を一九八六年末ころと認めたが、熊本地裁判決はそれより二六年遡る一九六〇年とした。その意味で、判決は、国の怠慢の下でじん肺患者がいかに長く塗炭の苦しみにあえいだかを明らかにした画期的な内容であった。
判決後、傍聴席で原告らが拍手する中で三人の裁判官は法廷を後にした。
断罪された国の責任
熊本判決は、国(労働大臣)の規制権限行使(省令制定)義務違反として、次の点をあげている。
(1) 一九六〇年四月の時点で、防じん対策としての散水措置
(2) 一九六〇年四月の時点で、発破後、粉じんが相当薄められるまで退避時間を確保
(3) 一九七九年の時点で、衝撃式削岩機の湿式化に併せて防じんマスクの重畳的使用
(4) 遅くとも一九八八年一月までに粉じんの許容濃度を設定、定期的に粉じんを測定
熊本地裁判決は、じん肺を防ぐ方法として、(1)粉じんを出さない、(2)粉じんに近づかせない、(3)粉じんを吸わせない、(4)その前提として人体に危険な粉じん量を定め測定する、ことを上げている。
熊本判決は、戦後の労働安全衛生行政における最大の行政課題が、古くから金属鉱山労働者に多発して当時も甚大な被害を及ぼしていたけい肺の撲滅であり、トンネル建設工事従事者が行っていた掘削等においても労働者の粉じん作業は、金属鉱山労働者の作業内容と同じであったことなどを前提にしたものである。要するに、判決は、金属鉱山、炭鉱、トンネルと縦割行政でじん肺対策を行ってきたことを正面から批判したのである。
もっとも、熊本地裁は、東京地裁に引き続き、じん肺教育、粉じん作業時間を短縮するなどの義務付けを行っておらず、今後の課題となった。
国の不当な控訴を許すな
国の責任を断罪した東京地裁判決を受けて、川崎二郎厚生労働大臣は控訴するかどうかは「熊本地裁判決を待ちたい」と述べた。そして、熊本地裁判決後の一四日の産経新聞の社説ですら「控訴断念が救済の近道だ」との見出しで控訴を断念し、早急に患者救済に取り組むべきであると主張している。
原告患者らは、これまで「謝れ、償え、なくせじん肺」を合言葉に闘ってきた。そして、ゼネコンとの間での先行訴訟では和解で損害賠償を勝ち取ってきた。さらに、こうした闘いの中で二〇〇〇年一二月、労働省はトンネル工事の粉じん防止のガイドラインを通達せざるを得なかった。
しかし、二〇〇一年七月一九日に筑豊じん肺福岡高裁判決は石炭じん肺について国の責任を断罪する画期的な判決を下した。こうした中で、二〇〇二年一一月二二日、ゼンコンと勝利和解を勝ち取った原告らが東京地裁で国のみを被告とするトンネルじん肺根絶訴訟が提起された。原告たちは、お金が目的ではない、じん肺を根絶することが目的だ、として政策形成を裁判の目的として闘ってきた。
原告たちの思いは、じん肺の根絶はガイドラインという形での国の努力目標ではなく、法律上の義務であることを実現するところにある。これは原告だけの思いではなくまさに人類的な課題であり、国連(ILO・WHO)もじん肺根絶目標年を二〇一五年と定め各国にじん肺根絶プランの策定と実行を呼びかけた。わが国の衆参議員三一九人もじん肺根絶に向け賛同署名するに至っている。
にもかかわらず、七月一八日、国は不当にも控訴した。
じん肺根絶を目指して
私たちは、トンネルじん肺根絶訴訟の中で、規制権限を持つ厚生労働省だけではなく、トンネル工事の大半を発注している国交省、農水省、防衛施設庁の責任をも追及した。これに対し、国交省や農水省の証人たちはじん肺を防ぐ責任は第一に企業にあり、そうでなくとも厚生労働省にあり、自分たちの省庁にはないとしている。
しかし、仮に厚生労働省が省令を改正、例えば粉じん測定を実施し一定濃度以上の粉じんが測定された中での作業を禁止する場合には、ゼネコンと国交省などとの工事契約の中にこれを実現するための費用が組入れられることが必要である。
こうした裏付けなしに厚労省だけがゼネコン規制を求めるのは、腹をすかせた人に泥棒をするなというようなもので、じん肺を根絶するには国の総合行政が必要にして不可欠である。
今後、私たちは、国にじん肺根絶政策を総合行政として転換させるために、国民各位にさらにじん肺根絶の必要性を訴え、幅広い国民世論を形成していくことが求められている。今年八月末の仙台地裁の判決はその意味で重要な役割を果たすであろう。
宮城県支部 小 野 寺 義 象
七月七日に青森市で開催された東北弁護士会連合会大会で、「『憲法改正国民投票法案』に反対する決議」が採択されました。決議は、国民投票法の制定自体には様々な見解があることを前提にしつつ、現に国会で与党案・民主党案が審議されているという現実を踏まえてなされたもので、東北地方全体の弁護士会として、「国民投票は、主権者である国民が、国の最高法規である憲法のあり方について意思を表明するという国政上の重大問題」であり、「基本的人権尊重と国民主権の基本原則に立脚して、(1)できるだけ広範な意見が反映されること、(2)自由かつ十分な投票運動が保障されるとともに中立公正な情報提供がなされること、(3)投票結果に国民の意思が正確に反映されること、(4)投票に瑕疵がある場合、適切な司法的救済手続が確保されることが不可欠である」との見地から、法案の問題を指摘し、「当連合会は、重大な問題点を残した国民投票法案(与党案さらには民主党案もさす)に反対する意思を表明する」と明言した画期的なものです。
決議が指摘した問題点は、(1)未成年者の投票権の否定、(2)国民投票運動の広汎な制限禁止、(3)広報協議会や政党広告の偏頗性と情報操作の危険、(4)発議から投票までの期間の短さ、(5)国民の過半数を「有効投票の過半数」と緩やかにしたこと、(6)最低投票率すらないこと、(7)国民投票無効訴訟の提訴期間の短さ・東京高裁のみを管轄裁判所に限定したこと、の七点に及んでいます。採択後、この決議は、衆・参両議院の議長、各政党、東北選出の国会議員に送られました。
この決議案の提案者は仙台弁護士会なので、その活動も若干紹介させていただきます。
仙台弁護士会は、昨年四月に、有事法制問題対策本部を継承した憲法改正問題対策本部(本部長は会長)を設置しました。対策本部は、憲法改正手続や九条を中心とする改憲の内容、有事法制、自衛隊のイラク派遣等の問題の調査・研究・提言及び具体的な諸活動の企画・実行を行っています。現在は、三部会編成をとっており、一部会は今秋に五〇〇名規模の大きな市民集会を企画・準備中であり、二部会は仙台弁護士会の「会としての」改憲問題に対するスタンス・見解を年度内にまとめる作業を行っています。また、三部会は、憲法市民連続講座を三ヶ月毎に実施しています。講師は自前の弁護士が毎回三〜五名ずつ交代で担当し、日弁連人権大会のビデオレターも上映しました。この連続講座はこれまで五回開催しましたが、いずれも好評で毎回五〇名前後の市民が参加しています。戦争体験のある大先輩弁護士による「私と憲法」というエッセーも、近々弁護士会会報に連載が始まる予定です。
このように宮城県の弁護士会は活発に活動していますが、さらに、弁護士会の外には、弁護士登録一二年以内しか入れない「若手弁護士九条の会(若弁九条の会)」や「東北女性弁護士九条の会」もあり、九条を守る運動を強力に進めています。残念ながら、私は、「若手」でも、「女性」でもないので、これらの活動紹介は他の人(できれば「若い女性弁護士」・・などというと問題かも・・)にお願いしたいと思います。
なお、若くもなく、女性でもない私ども弁護士も入れる「みやぎ弁護士九条の会」の結成も進んでいるようですので、機会があれば、改めて報告したいと思います。
(茨城県) 谷 萩 陽 一
七月七日〜八日に、千葉市内で「第五二回関東地区高等学校PTA連合会大会」というものが開かれ、私も保護者の立場で出席した。
この関東大会というのは、東京都を除く関東地区の高等学校のPTA関係者が集まるもので、毎年三千人から四千人が参加する。記念講演を含む全体会と分科会が行われる。役員に限らず誰でも参加できる性格のもので、もちろん教員も参加している。
受付で配布された資料の中に、文科省の封筒があり、中には教基法改正案の解説文と、教基法の改正案と現行条文の対比表(いずれも文科省のHPに掲載)が入っていた。
午後〇時一〇分から「大会」の議事がはじまり、主催者あいさつ、来賓あいさつ、功労者表彰等々が行われ、二時から記念講演というのに、一時一〇分ころには大会の議事はほとんど終わってしまった。ここで議事次第の「文部科学省行政説明」ということで、大臣官房審議官 板東久美子氏が登場。このあと、延々と三〇分近くにわたって「教育基本法改正に皆さまの御理解を」という趣旨の説明を聞かされたのである。
板東氏は、マスコミ等では残念ながら一部の点だけがとりあげられて議論されている、といい、まず、教育基本法の改正がなぜ必要か、ということで、戦後の民主的な社会の形成に役割を果たしてきたが、六〇年間改正されないうちに、教育に様々な問題がでてきた、学力や学ぶ意欲の低下、体力、健康にも問題が出ている、子どもたちの基礎、土台からつくっていくことが必要になっている、あらためて教育の目標や理念を明らかにする必要がある、などと説明。また、家庭の機能が低下したために学校に様々な課題が持ち込まれて、学校の機能も低下してしまうので、家庭教育を重視する必要がある、などと全体的な説明をしてから、さらに条文ごとに説明。
特に、改正案第二条五号については、新聞等で一番取り上げられているが、と言って、伝統文化の尊重と、国や郷土を愛することと、他国を愛し、国際社会の平和と発展に寄与することを、全体としてとらえて規定しているものである、といった説明をした。
また、改正案第一六条については、これまで「不当な支配」というのは教育行政による支配も含むような解釈もあったが、昭和五一年の最高裁判決で、法に従った正当な教育行政は不当な支配にあたらないという判断が示されたので、これにしたがって、法に従ってきちんと行われる教育行政は不当な支配に該らないことを明確にしたもの、といった説明をしていた。
私はこれまでこの「関東大会」には二年前から出席しているから今年が三回目であるが、これまでこんな「行政説明」などはなかったし、文部科学省からは来賓あいさつも何もなかった。昨年は全国大会にも行ったが、同様であった。きわめて異例である。
おそらく関東だけでなく、全国の地区大会で同じようなことをやっているのであろう。全国の参加者総数では相当な数になるし、八月二四〜二五日には秋田で全国大会も開かれるので、そこでも同じようなことが予定されている可能性もある。また、小中のPTAも含めるともっと多くの数になる。文科省にしてみれば国民向けの絶好の宣伝の機会ではある。
しかし、マスコミの論調を意識したり、決して一般の人には理解しやすくはないと思われる「不当な支配」の解釈論まで展開するあたりは、反対意見の存在を相当に意識していることをうかがわせる。改正に向けた文科省の熱意と危機感は相当なものらしい。
この「説明」は文科省からの働きかけがなければありえないだろう。PTAといえば全員加盟の組織であり、当然ながら思想信条や政治的立場は様々な人がいるし、少なくとも、会員である教員の中には、組合員などを中心に反対意見は相当数いることは明らかである。文科省は「行政説明」と銘打っていたが、その内容は、現に行っている行政の説明ではない。文科省が提案したとしても,決めるのは国会である。国会にひとたび提案されれば政治問題となる。政治問題について一方的な説明をする機会を作らせるというのは、教育行政によるPTA活動への「不当な支配」というべきではないか、と感じた次第である。
事務局長 今 村 幸 次 郎
憲法改悪反対共同センター(全労連、全商連、新婦人、民医連、自由法曹団などが運営構成団体になっています)では、来る九月二日に、秋の臨時国会を前にして、国民投票法案を阻止するための決起集会を左記のとおり開催します。
先の通常国会に提出され継続審議となっている国民投票法案は、「『壊憲』のための不公正で違憲の『カラクリ立法』」(団長「暑中見舞い」参照)ですが、その正体は多くの人々に知られていません。 私たちは、この法案の反民主的な内容を告発するとともに、その狙いが9条改定と一体のものであることを広く明らかにして、廃案に追い込むために「特別の力をそそぐこと」が求められています。
本集会は、この時期における「改憲手続法案」阻止に焦点をあてた集会として重要な意義があるものと考えます。会場は九〇〇名規模のホールを確保しています(共同センター運営委員会では、「団から五〇名参加」と大見得を切ってしまいました)。
夏休み明けの多忙な時期、しかも土曜日という条件ではありますが、全国の団員・事務局の皆さんの多数のご参加をお願い申し上げます。
東京支部 村 田 智 子
教育基本法改悪阻止対策本部のメンバー八人で、教育基本法「改正」に関する通常国会の国会審議録を検討しました。その後、私自身も必要に迫られて、通して読みました。
審議の中では、自民、民主などの議員から、「教育基本法はGHQに押し付けられたもの」という見解や、教育勅語を礼賛する考えかたが出るわ出るわ、おまけにそういった意見に対して文部科学大臣がおもねるような答弁までしています。読み終わったあと、「いったい、どうなっているんでしょー」という文字が頭の中を駆け巡りました。
ますます自信を持って申し上げますが、こんな教育基本法「改正」法案は、絶対に通してはいけません。
さて、これから夏休みですが、秋の臨時国会前の、きわめて重要な時期です。
(1) 団作成の教育基本法リーフを、各地で行われる夏の平和集会等で配布してください。
憲法改悪反対の立場の方に、少しでも教育基本法改悪のことを知ってもらいたい。そのためには、各地で持ち込むのが一番です。
団のリーフは、使ったことのある人には大変好評です。街頭宣伝で配布してもとても反応がよいです。表紙の赤ちゃんたちの写真が、人の心をつかむようです。
文部科学省はPTA大会などで「改正」の「理由」や「メリット」を宣伝したりしているようです。私たちも打ってでましょう。
(2) 九・一五 全国活動者会議にご参加ください。
最新の情勢の報告、各地の運動の報告と運動を広げるための討議のほか、この日初お目見えの、「教育基本法講師マニュアル」の説明、検討を行います。このマニュアルは、教育基本法「改正」に関する諸問題をいくつかのQ&Aに分け、事実に即して反論するというもので、現在、ベテラン、若手ともに手分けをしながら鋭意執筆中です。
このマニュアルを受け取りに来ていただくだけでも「来てよかった」と思っていただけるようなものにする予定ですが、もちろん、皆様、会議にも参加してくださいね。
日 時 九月一五日(金) 午後一時から五時
場 所 団本部
*団員の国会審議の検討集は、七月常任幹事会で配布されました。下線を引いたところや、各日ごとのまとめだけでも十分ですので、ご覧ください。必要な方は、団本部までご連絡願います。