<<目次へ 団通信1262号(2月1日)
浅川 壽一 | 憲法劇とサポーター |
大坂 恭子 | 日本の人権法律家から 「みらいのビルマ法律家」へのご支援を! |
労働問題委員会 | 派遣法パンフ活用とシンポジウム「ワーキングプアと非正規労働者の雇用と権利を考える」参加のお願い |
渡辺 輝人 |
神奈川支部 浅 川 壽 一
横浜の憲法劇「がんばれッ!日本国憲法」は、二十年以上続いている市民ミュージカルです。市民が中心となって、時事問題や実際の事件を題材とし、毎年公演を重ねてきました。しかし、近年財政難に陥り、公演の続行すら危ぶまれる状況に追い込まれました。
小生は、昨年から実行委員会に参加しています。小生が気づいた根本的な問題は、資金不足でした。憲法劇の収入は、本公演のチケット販売に頼っています。しかし、チケット販売は近年伸び悩むどころか、前年度を割り込む状況が続いていました。チケット販売の落ち込み、収入不足、出演者及びスタッフの負担増、出演者及びスタッフの減少、公演の質の低下、これが次年度へのチケット販売の落ち込みへと悪循環が発生していたのです。まさに、経営難の会社が倒産していく様をみているようでした。神奈川支部の団員をはじめとして多くの弁護士にチケット販売を協力して頂き、カンパの形での応援も頂いていたものの、財政を改善するには至りませんでした。
この状況をなんとか打破するため、実行委員会で提案されたのが、「サポーター制度」です。カンパを制度化したものと考えていただけると、わかりやすいと思います。募集年度における憲法劇の活動を財政面で支えてくれるサポーター(応援者)を募り、一口三千円でサポータークラブに参加できるというものです。サポーターに加入していただいた方には、かわいいデザインのサポータークラブ会員証を配布、会員証を持参すれば公演一回分のチケット代(大人二千円)が無料、そのほかにも、公演の準備状況を知らせイベントの連絡を行うメールマガジンを送信するなど、特典をつけました。
このサポーター制度を導入したところ、二〇〇七年の本公演では、実に一二一名の方がサポーターに加入して下さりました。自由法曹団神奈川支部の団員にも、多数協力を頂きました。一口三千円という会費設定の妙もあり(?)、五千円札、あるいは一万円札を出してサポーターに加入して下さる方も多く(ある団員は二万円以上!)、三千円を超過した部分はカンパとして有り難く計上させていただいたのです。
そして、二〇〇七年本公演の会計収支報告。公演単体とみれば赤字であったものの、サポーター会費及びカンパを計上すると黒字に転換していました。憲法劇は、財政立て直しに成功したのです。
黒字になったことから、憲法劇は様々な活動が可能となりました。こども達を連れて靖国神社を見学に行くなどのフィールドワーク、ホームページの充実、憲法劇プロモーションビデオ作成等々。今後も、福竜丸関係者の話を聞くなどの活動を予定しております。二〇〇七年、憲法劇は息を吹き返しました。
憲法劇の実行委員会に参加していると、複数の弁護団に加入していると同等、またはそれを超える程の負担があります。しかし、それでも小生は実行委員会に今年も参加しました。その理由は、憲法劇に魅力があるからです。名も無き市民たちが一所懸命になって、力をあわせて平和と人権を護り育て伝えようとする姿に心打たれたのです。
憲法があぶない今だからこそ、「がんばれッ!日本国憲法」、そして、「がんばれッ!憲法劇」。市民たちの熱い想いを伝えるため、多くの団員の応援を賜りたくお願い申し上げます。
憲法劇のお問い合わせはこちらへ
横浜合同法律事務所 〇四五(六五一)二四三一 浅川まで
愛知支部 大 坂 恭 子
昨年は、ビルマ(ミャンマー)で僧侶が連日デモ行進を繰り返し、これをビルマ軍事政権が武力によって弾圧するという衝撃的なシーンが大きく報じられ、ビルマの軍事政権の姿が国際的にも露わになった年でした。 このたび、このような状況下の若者の教育を支援しようと、一昨年に東京の伊藤和子団員が中心となって立ち上げたNGOヒューマンライツ・ナウ(以下、「HRN」)が「みらいの法律家基金」を立ち上げることになりました。
私は、デモ行進が高揚した昨年九月は、弁護士登録をしたばかりでしたが、修習時代から参加していたHRNの一員として、伊藤団員、兵庫の石田真美団員とともにビルマ国境を訪問しました。目的は、ビルマでの人権侵害状況の視察と「ビルマ法律家協会」との交流です。そもそもこの「ビルマ法律家協会」とHRNとの出会いは、昨年三月に名古屋で行われた青法協主催のイベント「人権研究交流集会」の時に始まりました。「人権研究交流集会」は、全体会が「平和に生きる、地球に生きる〜国際化する人権に法律家はどう取り組むか。」というテーマで催され、そこにフィリピン、ビルマの各国からのゲストをパネリストとして迎えたのです。
その際、来日した「ビルマ法律家協会」の事務局長アウン・トゥー氏がこの協会が主催している「ピース・ロー・アカデミー」というロースクールを紹介されてその支援を要請されたので、その期待に応えようとまずは今回現地を視察に行ってきたのです。
「ピース・ロー・アカデミー」は、ロースクールと言っても、日本のように資格を取る前段階となる学校ではなく、二年コースで国際人権法、比較憲法、民主主義の理念等の教育を行っている機関です。そこでは、長年つづいている軍事政権下でまともに人権教育や民主主義教育を受けてこられなかった少数民族出身の若者たちが勉強しています。彼らの多くは、「法律」という言葉も「人権」という言葉もそこへ来るまでほとんど聞いたことがないというのです。私たちは、今回の訪問で実際の授業風景も見てきましたが、学生たちは「民主的なビルマをつくりたい」という強い想いをもっており、授業を受ける一人一人の眼差しにはきらきら輝くものがありました。彼らは、ここを卒業すれば人権活動家として、ビルマの民主化、新憲法の起草などに関わっていくまさにビルマの希望です。現状ではこの機関が同時期に受け入れられる生徒の数にもかなり限界があるため、多数の希望者の中からわずかな人数を選んで入学させている状態ですが、今後学生たちの数も教育内容も充実化することが求められていると思います。HRNは、今後も現地訪問をし、さらに支援策を具体化し、教育者の派遣等も予定しています。
ところが、この「ピース・ロー・アカデミー」は、これまでデンマーク政府やアメリカの大学教授からの資金援助を受け、運営をしてきましたが、現在は財政がひっ迫し、年間二八八〇〇〇バーツ(約一〇四万円)という家賃の支払も困難な状況となっており、今後の教育継続が危ぶまれています。日本国政府は、今まで資金援助をしてきたデンマークの約二〇倍の資金をビルマに送り込んでいますが、この資金が彼らのために流れることはありません。
そこでこのたび、HRNは、その存続を同じアジアの人権法律家として支援したいと「ビルマ・みらいの法律家基金」を設立しました。ビルマの民主化を本当に実現していくためには、将来を担う若者たちが一人でも多くまともな人権教育を受け、人権や民主主義の理解を深めて、法律家や民主化のための活動家に成長していくことが必要です。日本の人権法律家がビルマのみらいの人権法律家の育成に寄与することが求められているのです。
ここにご寄付いただいた資金は、ピース・ロー・アカデミーの家賃・光熱費等の運営費及び支援の具体化のためにHRNスタッフが現地調査に行く活動費のみあてられます。
新入団員の私が先輩の先生方に呼びかけるのは非常に僭越ですが、この事態にご理解を頂き、一人でも多くの団員の方のサポートを頂きたいと願っております。
「ビルマ・みらいの法律家基金」への寄付の方法
■お近くの郵便局よりお振込みください。
郵便振込口座 00120-2-705859
口座名 ヒューマンライツ・ナウ
※郵便局備え付けの払込取扱票の通信欄にお名前、ご住所、ご連絡先と、通信欄に「みらいの法律家基金」とお書き添えください。
■ 銀行からのお振込みをご希望の際はお手数ですが事務局までご連絡ください。
【連絡先】
電話 03-3835-2110
ファックス 03-3834-2406
メール info@ngo-hrn.org
☆詳しくは、ヒューマンライツ・ナウHPをご覧下さい。
労 働 問 題 委員会
このたび、自由法曹団では、パンフレット「これでいいのか?派遣法―なくそう!ワーキングプア―」を作成しました。団通信二月一日号と一緒に皆様にお届けしますので、ご活用下さい。また、パンフレットの原本は、PDFファイルにしたものを自由法曹団のホームページにアップしてありますので、各支部、各法律事務所で増し刷りして、学習会等にご活用下さい。
自由法曹団では、三月一日(土)に、シンポジウム「ワーキングプアと非正規労働者の雇用と権利を考える」をおこないます。昨年の団総会以降、全国各地で、ワーキングプアと非正規労働者の雇用と権利を守る取組が旺盛に行われています。また、日雇い派遣、二重派遣等の労働者派遣の違法な実態が明らかになるなかで、労働者派遣法抜本改正の要求が高まっています。いま、これらの点について、団内で討議と経験交流を強めることが重要です。全国から三・一シンポジウムに多数参加されることを呼びかけるものです。
シンポジウム 「ワーキングプアと非正規労働者の雇用と権利を考える」 | ||
日 時 |
三月一日(土)午後二時から五時三〇分まで |
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場 所 | 自由法曹団本部会議室 | |
内 容 | 第一部 |
ワーキングプアと労働者派遣を考える |
第二部 |
ワーキングプアと非正規労働者の雇用と権利を守るために |
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第三部 |
今後の権利擁護闘争の取組、労働者派遣法抜本改正の取組など、今後の取組の方針 |
京都支部 渡 辺 輝 人
私のような若輩者が自由法曹団の諸先輩方に公職選挙法について云々話をするのは釈迦に説法も新京極まで極まってしまうわけですが、この度、自由法曹団京都支部が総力を結集して改訂した『最新 自由に出来る選挙活動』が発刊されましたので、ご一報申し上げます。
言うまでもありませんが、公職選挙法は最低最悪の弾圧法規であり、私たちの運動の前進を阻む権力装置の一端を担っています。それもそのはず、この法律の原型は一九二五年に治安維持法と同時に作られた衆議院選挙法であり、治安維持法とセットになって日本国民の民主的な活動を弾圧してきたものです。このような法制は戦後の日本国憲法下では当然に廃止されるべきでしたが、公職選挙法という看板に掛け変えて復活し、その後も様々な弾圧的規制が付加されて現在に至っています。裁判所の条文解釈も戦前のものが引き継がれており、例えば法に規制文言として登場する「選挙運動」「戸別訪問」に関する最高裁判所の見解は絶対主義天皇制下の昭和初期から変わっていない、というとんでもない事態が続いているのです。私見を述べれば、公職選挙法は明治憲法下の法体系の残滓として位置づけ、駆逐されるべきだものと思っています。
と、理想論をぶち上げてみても、実際に公職選挙法を使って弾圧される人が後を絶たないのが現実です。そのような中、全国の運動とそれと結びついた法曹、学者の実践的法解釈の中で生まれたのが本書の前々書と前書です。本書は前書が発刊された一九九八年以降の法の改廃や各地の実践、判例の動向を踏まえて改訂されたものです。もちろん、マンションへのビラまきやインターネットを使った選挙活動など、現代的な課題にも見解を示しています。
本書の性格は明快です。「あれもだめ」「これもだめ」という権力側の「べからず選挙」観を排し、公職選挙法や公務員関係法を徹底的に分析して豊富な実戦経験も踏まえた上で「あれもできる」「これもできる」という観点を貫いていることです。一見、読めば読むほど何もできないように見える公職選挙法も、本書を読むと実はかなりの盲点があり、旺盛な選挙活動が可能なことが分かってくるのです。例えば、京都の首長選挙では告示後も候補者の氏名や写真が載った文書が街頭で配布されたり、全戸配布されたりします(何故できるのかは本書をご購入の上お読み頂ければ分かります)。告示後は厳しく規制されているはずの文書活動も、同じ公職選挙法の規定を利用して工夫すれば大胆に行うことが可能なのです。
私が前書を手にしたのは大学生だった二〇〇〇年ですが、すでに「べからず選挙」を体験していた私は同書を読んで衝撃を受け、あたかも悟りを開いたような心境にさえなりました。同書との出会いが元で、今では団京都支部に所属し、本書の編集に携わるようにさえなってしまいました。そう感じるのは私だけではないようで、昨年、国民投票法案に反対する議員要請のために某民主党議員の事務所を訪れたときは、対応した地元秘書が「国民投票法案はともかく、あの本を早く改訂してくれませんかね〜」と宣ったほどです。いまや、保守勢力にとっても本書なしには選挙が戦えない状況になっているのです(そのような状況を受け、現在、様々な保守的な勢力からも戸別訪問や文書活動の解禁を求める声が広がっているのは興味深いことです。詳しくは本書6章p111以下参照)。
もはや多言は要しません。みなさま、是非、パワーアップした本書を手に取って頂き、日本中で、自由闊達な選挙活動を展開して頂きたく存じます。