<<目次へ 団通信1307号(5月1日)
藤田 温久 | STOP!非正規切り 対「いすゞ」本訴始まる! |
辰巳 創史 | 「公金支出のあり方を問う!! 大阪府・堺市のシャープへの公金支出をただす住民監査請求」 |
笹本 潤 | 北朝鮮ロケット問題、ソマリア海賊問題に対するアジアのNGOの反応 |
中川 勝之 | 事務所挙げてソマリア派兵阻止へ―国会要請報告 |
秋元 理匡 | 「贅沢な勉強会ふなばし」の実践 |
神奈川支部 藤 田 温 久
一 解雇予告
いすゞ自動車は、昨年一一月一七日、米国初の金融不況による減産を理由として、期間社員五五三人(栃木工場一五五人、藤沢工場三九八人)に対し、一二月二六日付で解雇すると予告し、寮からの退去も求めた。他方、いすゞ自動車は、全派遣元会社との派遣契約を解約し、各派遣元会社は、いすゞによる「解約」を理由に派遣社員八一二人(栃木工場二六九人、藤沢工場五四三人)を一二月二六日で解雇する旨を予告した。いずれも、労働契約期間(概ね今年三月末〜四月初旬)途中の解雇であった。
二 支部結成・「期間社員」仮処分申立
この違法で非人間的な攻撃に対し、全日本金属情報機器労働組合(「JMIU」)に加盟しいすゞ自動車支部を結成した非正規労働者は、団交により解雇撤回を求めると共に、「期間社員」につき途中解雇の無効を原因とする「解雇予告の効力停止と賃金仮払い命令を求める仮処分」を宇都宮地裁栃木支部(一二月四日)と横浜地裁(一二月九日)に申し立て、その後も第三陣まで申立を重ねた。自由法曹団神奈川支部は、既報の通り、団支部幹事会で県下全域の非正規切りを止めさせる運動に参加する意思統一を行い「いすゞ弁護団」も結成した。
三 「期間社員」の解雇撤回と違法な休業命令
いすゞの労働者の闘いは、川崎工場閉鎖移転以来闘い続けてきた正規労働者が非正規労働者を組織することで、間髪を入れず開始され、テレビ・新聞・雑誌などマスコミでも連日大きく取り上げられた。運動と世論に追い詰められたいすゞ自動車は、一二月二四日「期間社員」全員の「解雇撤回」を表明した。それ自体は、近年の労働運動史に特筆すべき画期的な成果だった。しかし、同時に、会社は、同月二六日までに「退職に合意」するなら期間満了までの平均賃金の八五%を払うが、合意しないなら期間満了まで休業とし平均賃金の六〇%のみを支払い満期に雇い止めとすると宣言した。退職強要と労働者分断のみを目的とする攻撃だった。
四 「期間社員」仮処分申立の趣旨の変更
仮処分を申し立てた「期間社員」のうちからも合意退職に応じる人が出た(明日の生活費すらおぼつかいない状況からするとやむを得ない)が、合意退職を拒否した申立人らは申立の趣旨を、「休業命令によりカットされる四〇%の賃金の仮払い」に変更し、闘いを継続した。あからさまな、退職強要・労働者分断目的の「休業命令:四〇%の賃金カット」の違法性を問う闘いである。
五 「派遣社員」仮処分申立
他方、派遣社員に対する派遣元会社の解雇は撤回されず、「派遣社員」は、一二月二六日に横浜地裁で、派遣元会社四社を相手に、今年一月栃木支部で、派遣元三社を相手に、途中解雇の無効を原因とする「地位確認・賃金仮払い仮処分」を申し立てた。
六 仮処分の成果ー勝利命令一社、勝利和解五社
現在までに、派遣元五社と和解し、解雇撤回、解決金支払など大きな成果を上げることができた。また、派遣元一社に対し全面勝利命令を勝ち取った。更に、派遣元一社は、請求金額全額を派遣労働者の口座に振り込んできたことにより保全の必要性がなくなり取り下げた。このニュースが出る頃には、「いすゞ」に対しても勝利命令が出ていることを期待している。
七 「いすゞ」との本訴の開始
三月末から四月初旬にかけて、期間社員、派遣社員(解雇が撤回された者)ともに期間が満期となり、「雇い止め」が発令された。
そこで、いすゞ支部(藤沢工場、栃木工場)の組合員一二人は、四月二日、いすゞを被告として、東京地裁に訴訟(本訴)を提起した。(1)期間社員(四人)と、(2)派遣社員のうち「偽装請負」「違法派遣」等により直接雇用関係があるとみなすべき原告(三人)は、地位確認と賃金支払、及び慰謝料、(3)その余の派遣社員は、慰謝料のみを「いすゞ」に請求する。
(1)は、更新の繰り返しなどにより「期間の定めのない」労働契約と実質的に異ならない状態になっていたか「更新に合理的期待がある」と言える原告である。その結果、(1),(2)ともに、解雇権濫用法理・整理解雇の四要件が類推適用され、会社側の「売上激減」「当期赤字」などの「理由」だけで「雇い止め(解雇)」を合理化することはできない。圧倒的内部留保や、別会社から一〇〇人規模の応援を入れている現状ではこれ以上の人員削減の必要性がないこと、「増産」計画に応じいすゞの株価が二倍以上に上昇していること等々から、「雇い止め(解雇)」は無効になるものと確信している。
八 労働者は物ではない!非正規雇用から正規雇用への転換を!
昨年一二月の早朝職場門前ビラまき以来数回の早朝ビラまき、横浜地裁だけでも、期間社員、派遣社員合わせて五件の仮処分申立と準備、毎週数回の審尋、弁護団会議本訴準備のための休日会議等々、鷲見団長を先頭に弁護団(五〇期代中心)は多忙を極めてきた。
しかし、私たち弁護団員は、当事者、労組、支援と共に、「新自由主義改革」によってもたらされた労働者を物扱いする非正規労働の蔓延状況を、何がなんでも転換するための突破口として「いすゞ」の闘いを位置付け、勝利に向かって邁進する決意である。
全国を吹き荒れる米国初の金融危機を口実とした違法な「非正規切り」を止めさせる闘いを励ましてきた「いすゞの闘い」は、これからが正念場である。
大阪支部 辰 巳 創 史
一 大阪府、堺市の住民による住民監査請求
昨年からの世界的金融危機によって庶民の生活が逼迫する中、大阪府と堺市が、堺市堺浜にシャープを誘致するにあたって、多額の公金を支出している事実をご存じですか?
この点に怒りと疑問を持った堺市と大阪府の住民が中心となって、「シャープ立地への公金の支出をただす会」を設立し、四月二八日には、大阪府に対しては補助金の支出の差止め、堺市に対しては税の減免とシャープ門前までのLRT敷設の差止めを求めて、住民監査請求を行いました。大阪府は一〇〇名を超える住民が、堺市は六〇名を超える住民が監査請求人となり、弁護団も団員を中心に八名が組織されています。
以下、詳細を述べます。
二 シャープ堺浜工場の立地
二〇〇七年七月三一日、シャープ株式会社(以下、「シャープ」といいます。)は、堺浜(大阪府堺市)に新工場を建設すると公式に発表しました。
シャープ堺浜工場は、敷地面積一二七万平方メートルで、投資額は、土地代を含めて約三八〇〇億円です。二〇〇七年一一月に着工し、二〇一〇年三月の製造開始が目標とされました。
シャープ堺浜工場は、発表時点で世界最大の大型テレビ用液晶パネルの生産をおこない、同じく世界最大の太陽電池工場を併設し、同一敷地内に関連するインフラ施設や部材・装置メーカーの工場を「フルセット」で誘致する「二一世紀型コンビナート」と呼ばれる生産形態をとることとしています。
三 大阪府知事による補助金交付決定
シャープ工場の堺浜への誘致が俎上に上がった二〇〇七年四月に、大阪府議会は、大阪府企業立地促進条例を改正し、補助金の上限を一社につき三〇億円から一五〇億円に引き上げました。
シャープが堺浜に新工場を建設することが決定すると、大阪府知事は、上記条例に基づいて、シャープとその関連企業に対して、以下の補助金交付決定を行いました。
(1)二〇〇七年一二月 シャープ 一三六億円
(2)二〇〇八年 一月 コーニングジャパン株式会社 三五億円
大日本印刷株式会社 三七億円
(3)二〇〇八年 二月 凸版印刷株式会社 三六億円
計二四四億円
なお、交付決定金額は、現時点で内容が確定している投資金額に基づいたもので、シャープへの交付金額は、最終的に一五〇億円となる見込みです。
また、大阪府は、シャープ堺浜工場の関連では、総額三三〇億円の補助金枠を設けています。
四 堺市長によるシャープなど関連五社に対する減税措置
二〇〇八年四月、堺市長は、堺浜において展開されているコンビナートのうち、シャープなど関連五社を堺市企業立地促進条例の対象に認定しました。
上記条例の対象に認定されると、市税(固定資産税、都市計画税、事業所税)が軽減されます。
今回の認定では、減免の対象となる投資総額は約五五〇〇億円を見込んでおり、一〇年間の減免額合計は二四〇億円にも上ります。
五 LRTの敷設計画
LRT(ライトレールトランジット)は、次世代型路面電車とも呼ばれ、環境にやさしい公共交通として注目されています。
堺市では当初、市の東西を結ぶ公共交通機関が路線バスのみであったことから、地域の活性化を図るためとして、「堺東駅─堺駅間」のLRT路線が計画されていました。
その計画自体、堺市民の間で異論があるにもかかわらず、そこに堺駅からシャープ工場が立地する堺浜まで敷設する「堺駅─堺浜間」の路線が計画に加わりました。この計画によれば、二八〇億円の公金を支出することになります。
六 大阪府・堺市の公金支出の違法・不当性
地方自治体の交付する補助金等の交付に関しては、地方自治法二三二条の二に、「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」と規定されており、公益上必要性がある場合に限られています。
したがって、公益上の必要性が認められない補助金の交付は、違法であると評価されます。
1 交付の目的・趣旨に公益性がありません
大阪府・堺市のシャープに対する補助金交付の目的は、条例において、「企業立地を促進し、誘導すること」であるとされています。
しかし、企業の立地選択の重要な要素としては、補助金の交付はわずかな比重しかありません。シャープが堺浜に立地した動機は、シャープの本社機能と亀山工場などとの連携、関西空港や道路網など交通・搬送上の条件、労働者確保の条件などの経営、営業の諸条件を総合的に判断して、堺浜が適切であったからです。
したがって、補助金交付とシャープ立地との間には必ずしも因果関係がなく、交付の目的・趣旨に公益性は認められません。
2 公金支出と住民との利益との間の因果関係が明らかではありません
シャープ立地に際して、膨大な公金を支出する根拠は、シャープの進出が、「雇用機会および事業機会の拡大」「地域経済の活性化」をもたらすこと、つまり「波及効果」論です。
しかし、大阪府・堺市が公表している波及効果についての説明は趣旨や根拠が不明確で、シャープ立地によって、住民にいかなる経済的利益をもたらすのか具体的に明らかにされていません。
3 公金支出は、大阪府・堺市の財政規模、状況に照らして不適切であり、緊急の必要性もありません
大阪府は、現在五兆円もの借金をかかえて、財政再建をすると称して、府民の福祉、教育、文化、生活に関連する予算を、一一〇〇億円も削減しようとしている最中であり、今後もこのような削減が続けられようとしている状態です。具体的には、年間わずか二億円の負担である国際児童文学館(吹田市)を廃止したり、上方演芸資料館「ワッハ上方」、大阪センチュリー交響楽団、男女共同参画推進財団、非常勤講師などの予算を削減しました。
また、堺市の財政状態も決して良くはありません。具体的には、国民健康保険料、介護保険料は共に政令指定都市の中で一番高く、水道料金、下水道料金も全国で二番目の高さです。
このように住民に痛みを押し付ける一方で、莫大な利益をあげている世界的企業であるシャープに対して膨大な公金支出をすることは、財政的に相当性を欠いています。
以上のように、シャープ立地にともなう補助金に公益上の必要性は認められず、公金支出は違法・不当であることは明らかです。
七 まとめ
同じような問題は、三重県亀山市のシャープ工場への補助金に始まり、大分県のキヤノンに対する補助金、兵庫県姫路市及び尼崎市の松下電器産業に対する補助金など、全国に広がっています。
国民の生活を切り捨てる一方で、大企業には多額の公金を支出するという政治のあり方に歯止めをかけるべく、「公金支出をただす」運動を全国に展開する必要性が急務です。
全国の団員の皆様が、各地で同様の住民監査請求や住民訴訟を提起して、世論を動かしていきましょう。
【企業誘致補助金】
トップ一〇(〇七年度)
兵庫 上限なし
大阪 一五〇億円
和歌山 一〇〇億円
三重 九〇億円
神奈川 八〇億円
岐阜 七〇億円
岡山 七〇億円
新潟 五〇億円
千葉 五〇億円
富山 五〇億円
東京支部 笹 本 潤
四月一六日から一九日まで韓国・ソウルで、(1)「ミサイル防衛・軍拡競争に反対する国際NGO会議」と(2)「GPPAC(武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ)東北アジア会議・市民版六カ国協議」に参加してきました。
北朝鮮ロケット発射問題
「ミサイル防衛・軍備競争に反対する国際NGO会議」(主催・グローバルネットワークなどの平和NGO)は、一〇〇人以上が世界各国から集まり(日本から三〇人くらい)、北朝鮮のロケットに対するミサイル防衛や、ヨーロッパ、アメリカ、アジアなどのミサイル防衛や軍拡競争の報告がなされました。特にチェコがミサイル防衛に反対の意思表示をした例は、参加者に勇気を与えました。アメリカのMD戦略が各国に貫かれていることなどいくつかの点が確認されました。
国際的にも際だったのが、北朝鮮ロケットに対する日本の過剰なミサイル防衛体勢でした。日本海にはイージス艦が配備され、都市部にもPAC3ミサイルが配備され、さながら戦争が起こったかのような四月五日の日本の風景。この事態に対してなんとかできないのか、が今回日本やアジアから集まったNGOの共通した意識だったと思います。日本から約三〇人参加しましたが、地元の韓国を除き一番多かったと思います。このミサイル防衛反対の会議で採択された文書では、アジアのNGOの情勢の見方が表れています。
・北朝鮮のロケット問題をきっかけに、アメリカ、日本、オーストラリア、韓国のミサイル防衛が、ロシア、中国、北朝鮮との軍拡競争をもたらし、アジアの安全保障の鍵となる日本の憲法九条に対する危機をも引き起こしたこと
・北朝鮮のロケット発射は、朝鮮半島の分断とアジアの軍拡競争の副産物であるのに、このような見方が国際社会ではなされておらず、逆に、ミサイルの恐怖が誇張されたり、ミサイル防衛の正当性の議論が大きく取り上げられていること
・最も求められて緊急の課題は、東北アジア諸国が、相互に軍縮に向かうことと、お互いの信頼の構築や国交回復である。
などです。
ソマリア海賊問題
GPPAC東北アジアの会議には、七地域(北京・台湾・香港・ロシア・モンゴル・韓国・日本)のNGOメンバー約三〇人が参加し、北朝鮮のロケット発射の事態に対して、北朝鮮を巻き込んだ形で市民のネットワークを作っていくことの必要性が議論されました。北朝鮮の市民とつながりをどのように作っていくか、そして、北方領土問題などの領土問題もテーマになりました。
ソマリア海賊問題については、私の方から提案しました。「ソマリア問題は、日本の軍事大国化、九条突破の問題にとどまらず、中国、韓国も艦船を出しておりアジアの軍事化の問題でもあり、ソマリアの海賊問題を軍事によらないで解決を目指すという点では国際問題でもある」と問題提起して、各国NGOに興味をもってもらいました。議論では「非軍事的解決にはどのような方法があるのか」、や「各国の状況」も多少ですが交流できました。
また、「紛争予防に失敗すると、軍事的対応をせざるをえなくなる、という点で、ソマリア問題はGPPACが必要な典型的な例だ」、というGPPAC的(?)な意見が出たり、GPPACのネットワークには、国連が提唱したもので、アフリカ地域にもあるので、「GPPACアフリカ」にもソマリア問題の非軍事的解決方法についてコンタクトを取ってみることも、今回のソウルでの会議で確認されました。以上は、私の見た限りの情報にすぎませんが、ある程度今のアジアの平和活動家の雰囲気を反映していると思います。
このようなアジアの市民、NGOの動きと真っ正面から反対の動きをするのが、今の日本の政府、与党です。ソマリア問題の国会での議事録を見ても海賊対処法案の推進者は、日本には九条のなど全くないかのように議論を進めています。
それに対して、今回の韓国での会議では、わりと頻繁にアジアのNGOの口から「日本の九条」という言葉が出ていました。「九条」と軍拡、軍事化の動きは、が、一瞬すれ違って見えますが、真っ正面から衝突させなければなりません。「軍事力によらない解決」「武力によらない平和」という九条の価値観をしっかりと定着させて臨まなくてはと思います。
東京支部 中 川 勝 之
私の所属する東京法律事務所は、原則毎月九日に四ッ谷駅前で「九の日宣伝」を行い、事務局員と団員が情勢にあわせて団の恒久派兵法リーフや女性部リーフ等を配布しています。宣伝前には憲法委員会を開催し、事務所九条の会の運営や当面の運動等について話し合っています。四月九日は一年以上に渡って取り組んできた九条署名が八七三九筆集まったので、憲法記念日を前に国会に提出する予定でいました。
しかし、ソマリア派兵と「海賊」対処法が急浮上し、団として四月九日に院内集会及び国会要請を行うと聞いたので、所内に提起したところ、「こぞって行くべきだ」との声が上がり、「九の日宣伝」も中止して当日を迎えました。
当事務所からは団員五名と四月一日に入所したばかりの新人二名を含む事務局員七名の合計一二名が参加しました。
全体では労組等からの参加も含め総勢約五〇名でした。
院内集会で情勢に確信を深めて国会要請に打って出るというそれ自体よくある行動でしたが、特に今回は急きょ作成された六〇頁もの意見書についての田中隆団員のポイント解説で政府・与党の狙いがよく分かりました。
現代の戦争は正規軍を擁する国家と国家が対峙する「古典的戦争」から、米軍や多国籍軍が「反米勢力」や「テロリスト」と対峙する「非対称の戦争」へ移行している、という指摘はまさしくその通り!だと思いました。
なお、九条署名提出もその後行いました。八七九三筆は、事務所の会議室に常備して来所した依頼者にお願いしたり、事務所のたよりに同封したりして事務所全体で集めたものです。共産党の笠井議員が忙しい中ニッコリと受け取って下さいました。
新人事務局員の二人の感想は控えめですが、今後の活動が大いに期待できます。もちろん当事務所の団員も負けずに頑張ります。
大野結美子事務局員の感想
学習会では、ソマリアの情勢や今回の法案の問題点などがよく分かり、大変勉強になりました。国会要請は、お昼時ということもあって議員の方には会えませんでしたが、笠井議員(共産党)の秘書の方が、資料などをコピーして説明してくださり、民主党案についてもよくわかりました。今後も積極的に参加したいと思います。
金田健太郎事務局員の感想
四月九日の「ソマリア沖派兵と海賊対処法案」に反対する集会に参加させていただきました。各先生方から法案構造の問題点や海賊問題の解決に向けてお話を伺いました。この法案を廃案させ海外派兵恒久化の動きを止めていかねばならないと感じました。
千葉支部 秋 元 理 匡
一 私は、二年半ほど前、団通信一二二二号(〇六年一二月二一日号)で同年一〇月に千葉県船橋市内で発生した弾圧事件について報告した。今回は、それが機縁となって始めた地域レベルの勉強会の取り組みを紹介する。
その弾圧事件が起きたときも、折に触れて対策会議を開き、終わった後は支援者たちと酒を飲みながらよもやま話をしていた。そのとき、何となく、「日ごろ仕事や活動で忙しくて目の前の課題に追われてばかりいる」「次から次へと色んな問題が起きているけれど、落ち着いてものの見方を勉強している暇がない」「そういう勉強って、時間を決めないとやらないよね」という声が上がった。弾圧事件の支援をするというくらいだから、みんな純粋に仕事や活動の現場を整理する言語や理論を渇望していた。
酒席はすばらしい。ときとして酒の勢いで最初の一歩を踏み出してしまう。「それなら、勉強会を開けばいいじゃないか」
二 というわけで、地元の船橋第一法律事務所に事務局を引き受けていただき、企画を練った。年四回、土曜の午後、船橋市内で場所をとり、主に研究者を講師に招き、二時間程度お話を聴き、一時間程度フリー・ディスカッション。毎回の勉強会は何十人もにはしない。二〇〜三〇人程度の会員制(会費制にすることで運営の安定化を図る)。大学のゼミのような規模だ。
扱うテーマは、新自由主義を批判的に分析し、貧困と格差が拡大する現象をどう理解するかということが中心となった。それぞれの運動の糧にすることを求めるためだ。
勉強会の名前は、「贅沢な勉強会ふなばし」とした。「贅沢な」と冠することに違和感を覚えられることもあるが、土曜の午後いっぱい、このような規模でこのような時間を過ごせるのはやっぱり「贅沢」だ。会費の負担も決して安価とは言えないということもあるけれど…。
今まで講師をお願いしたのは、〇七年五月一九日の二宮厚美神戸大教授を皮切りに、後藤道夫都留文科大教授、暉峻淑子埼玉大学名誉教授、小田中聰樹東北大名誉教授、真嶋良孝農民連会長、五十嵐仁法政大大原社研所長という錚錚たる面々。複数回お越しいただくこともある。格差と貧困の拡大の向こうにある、資本の大暴走と社会保障の切り下げ、それらと相乗効果をなす労働者の地位の不安定化、そうした新自由主義の潮流の一翼としての刑事司法制度改革、また食糧問題。私たちが日々の活動の中で問題提起している事柄ばかりだが、自分たちが本当に理解して訴えているのか、大事なことを見落としていないか、と自問しながら毎回の勉強会を進めている。
今後、前田朗東京造形大教授、唐鎌直義専修大教授をお招きすることを予定している。
参加する人たちはみんな熱心で問題意識も的確である。私たちは、いわゆるズレた議論とは無縁の、有意義な時間を過ごしている。私も、このような活動を通じて、弁護士会の委員活動等のヒントを得たり、ここで知り合った縁で人権大会プレシンポの講師をお願いしたりしたこともある。
勉強会の間に二〜三回程度、事務局会議的な集まりをもって、企画や講師の人選をするが、ここで私たちなりに情勢分析をしたり目の前の課題の背景にある根本的問題について意見交換をしたりするので(こういう作業をしないとテーマを設定できない)、たいへんではあるが、明確な目的をもって自発的にやっていることなので、苦ではない。
三 私にとっては、弾圧の被害者を守る一点で集まる人たちとの出会い自体が貴重であった。そして、さらに展開した。
正直、会の運営は楽でないが、日頃さまざまな活動に邁進する人たちが、それに埋没することなく、明日の活動のエネルギーを注入する空間は非常に大切で、可能な限り続けていきたい。
ただ、これが方々でやられるようになると、何かと集中しがちな講師(候補者)のご負担は大変なものになるでしょう…。