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河村 武信 最高裁 NTT西日本配転事件で会社に断
関本 立美
労働省通達を否定し同居の親族の労働者性を認めた判決(甲府地裁二〇一〇・一・一二)
秋元 理匡
再審えん罪布川事件・最高裁勝利決定報告
宮川 泰彦
〜日本が行った侵略と植民地支配の完全な精算と歴史認識を共有する運動のご案内〜
日韓併合一〇〇年にあたって
萩尾 健太 国鉄闘争二・一六 日比谷野音集会へご参加を!何としても解決を



最高裁 NTT西日本配転事件で会社に断

大阪支部  河  村  武  信

一 NTT西日本配転事件が最高裁で勝利

 昨年一二月八日、最高裁判所はNTT西日本配転事件をめぐって、上告を棄却し、これを受理しないと決定。NTT西日本に対し、通信労組組合員一七名全員に総額九〇〇万円の慰藉料を支払うよう命じた大阪高裁判決(平成二一年一月一五日、平成一九年(ネ)第一四〇一号配転無効確認等請求事件)が確定した。一一万人リストラに伴って一方的に強行された大阪(兵庫)から名古屋への遠隔地配転が、違法・無効であるとの判断が、ここに確定した。配転をめぐる近時の判決の中で、画期的な判断を示していた大阪高裁の判決が、最高裁によって維持され確定をみたことは、配転をめぐる問題に明るい一石を投じたものと評価することができると思う。(尚、訴訟の形態としては、会社が裁判の途中で一名を除く全原告に再配転を命じ、殆んど原職場近くに戻ったので、配転無効から損害賠償請求に変更している。)

二 事件の特質

 NTT一一万人リストラは、国鉄の分割民営化に次ぐ、労働者に最大の犠牲を押しつけて資本主義経済の部分的再生をはかる、資本による国家権力を用いたリストラ政策であった。運輸・通信という現代社会にとって不可欠な産業の国営から民営化という大きな流れのなかで、他方で労働戦線の右翼的再編による労働者の思想と団結を破壊することを伴いながら進められた。

 NTTの合理化攻撃の特徴は、最大利潤を追求するために実質的には企業の分社化をはかりながら、分社化をすすめる場合の法的規制をかいくぐるために、一〇〇%出資の子会社を作って、これに業務を移して外注し、NTTの従業員を退職させて、賃金をダウンして再雇用するという方式、そして他方で実質的には従業員を子会社へ出向させることになるのに、第二労務機関になり下がった多数派のNTT労組と結託して、出向協定による規制をかいくぐって、会社と個々人との間で、退職・再雇用の同意を強要して取付ける。これに抵抗して同意しない通信労組を中心とした、しっかりと権利意識をもった従業員に対して、NTTは長距離、無期限の、しかも特に創り出された無意義な「仕事」をさせるべく配転を命じたのである。その「仕事」は、国鉄が国労組合員に与えた草むしりや自学自習の「業務」と同質のものであった。人を社会的に廃人にしてしまう業務である。労働の価値は、社会的参加と自己形成にある── この創り出された「仕事」とは一体なにであったか。

三 判決の意義

 最高裁の判断は、会社の上告について、これを上告理由に当たらないとして棄却したもので、最高裁が自判したものでない点で、いささか物足りなさはあるが、大阪高裁の示した次の判断について、最高裁もこれを維持したことは評価することができる。すなわち、

(1)当然のことながら、大企業における企業再編に伴う大合理化の推進過程における組織的、集団的な配転であっても、個々の配転先において、その従業員を配転させる業務上の必要性が個別的に認定される必要のあること。

(2)配転に際し、従業員の蒙る不利益性に関し、育児、介護休業法二六条の趣旨をふまえて検討する必要のあることを明らかにした上で、(1)長時間の長距離通勤による肉体的、精神的、経済的負担を考慮し、それにより自宅で過ごす余暇や地域活動に充てる自由時間の減少、睡眠時間の減少を検討すべく、(2)単身赴任となるものについては、それに伴う精神的ストレス、日常生活のための自由時間の減少、二重生活及び帰省の必要による経済的負担を検討するべき必要を明らかにして、(3)何れの場合であっても、地域活動や社会的活動への支障、組合活動への支障をも、従業員の蒙る不利益として指摘していることを是認していると考えられる。

(3)そして、配転に関する適正手続についても、個別の配転の必要性、配転先での担当業務、復帰の時期について説明することが必要であり、また配転時に使用者が認識し、あるいは容易に認識できた事情をもとに不利益性を判断すべきである。

 との判断を最高裁もまた肯認したといえよう。

四 業務上の必要性を欠き、創出された業務

 これまで配転事件を取組んできたなかで、会社側の主張する業務上の必要性を打ち破ることは、極めて困難、殆んど不可能といって過言でなかった。とくに大企業が構えた配転事件にあっては、巧妙に業務上の必要性が装いを凝らして主張され、我々が立証を尽くしたと思っても、裁判所もまた遠慮して、それを看破できないふりをする。本件についてもNTT一一万人合理化計画上の不法・違法性について判決は一貫して目をつぶってきた。

 しかし、本件にあって大阪高裁判決は、大阪(兵庫)から名古屋への個別の配転については配転先の業務は、配転者用に創出されたものと認めざるを得ないもので、いずれも営業の成果を上げることが非常に困難で、単純で、機械的、一時的なもので、在名古屋の従業員の担当可能なもので、上述した不利益性との相関関係でとらえると、業務上の必要性は認められないと判示していた。最高裁も企業は配転者用の意味のない業務を創出してまで、リストラに協力しない従業員に対して、加虐的な配転をするものだとの認識をしたものの如くである(その根底に不当労働行為が横たわっていることも含めて)。

 ワーク・ライフ・バランス論が叫ばれて久しい。「仕事と生活の調和」を転勤問題に即して考える必要も説かれている。この判決も大きな意味で、このような時代の流れの中で、より発展的にとらえることが必要であろうと思う。

 私事ながら、配転事件でのリーディングケースとされている一九八六年の東亜ペイント事件の最高裁判決に関与して以来(同事件を担当した中心は西本徹弁護士であった)、二〇年余を経て、育児、介護、休業法の立法をみて、比較衡量の内容は豊かになったといえることはもとよりであるが、「余暇の活用」「地域活動」や「社会活動」、「組合活動」をも十分に展開できる労働者の生活が、全体的に衡量されるべき要素として判決の中に出現したことは感無量である(担当弁護団は出田健一、田窪五朗、横山精一、城塚健之、西晃、増田尚、中西基、井上耕史、成見暁子、大前治と私である)。



労働省通達を否定し同居の親族の労働者性を認めた判決(甲府地裁二〇一〇・一・一二)

山梨県支部  関 本 立 美

 甲府地裁(太田武聖裁判長)は、一月一二日、同居の親族の労働者性を認める判決を言い渡しました。以下紹介します。

【事案の概要】

 同居の実父が経営する左官業(個人)に勤務していた原告(当時二七歳)が二〇〇六(H一八)年九月二三日、二階から転落し腰椎粉砕骨折などで九五日入院の重傷を負った事故。療養給付と休業給付の支給を求めたが、二〇〇七(H一九)年三月八日、監督署、不支給決定、審査官、労働保険審査会いずれも棄却決定(二〇〇八(H二〇)年一一月二八日)。二〇〇九(H二一)年二月提訴。  

【争点は、原告(同居の親族)の労働者性】

 国の主張は、通達一五三号(昭和五四・四・二労働省労働基準局発)に基づき「同居の親族である、原告は原則として労働者ではない」するとともに、非同居の実兄と比較して優遇(実兄は日給月給、原告は月給制など)されているとして、労働者性を否定し、請求棄却を求めた。

 原告は、労働者は「使用従属性」「報酬の対償性」(労基法九条)が認められれば労働者であり、賃金支払い形態など多少の違いがあってもそれは合理的範囲内であって労働者性は認められるべきと主張した。

【判決の内容と評価】

 判決は「判断基準」の項目を立て、労基法九条と同一一六条二項について以下の通り明確にしました。

 判決は、労災保険法上の労働者は、労基法九条に規定する労働者と同義であるとし、「使用従属性」と「報酬の労働対償性」の二要件(使用従属性が基本、労働対償性は付随的に考慮すべきものとし)が満たされれば同居の親族であっても原則労働者であると判示した。

 この判決は、労基法第一一六条二項の適用除外規定について、「同項は、同居の親族のみを使用する事業を労働基準法上の事業から除外する規定であり、同居の親族を除外する規定でないことはいうまでもなく、さらに、同居の親族の労務の提供実態は様々であるから、実質的に使用従属性等の有無を判断するのが相当であり、原則として労働者性を否定するという被告(国)の解釈は採用できない」とした。

 そして、判決は、この解釈の上に立って、原告の勤労実態、使用従属性、報酬の対償性など具体的、総合的に判断して原告の労働者性を認め、「不支給処分の取り消し」を命じました。

 この判決は、上記通達一五三号について、「違法」という表現こそしていませんが実質的に否定したものと評価出来ると思います。 国の労働者保護に逆行する「通達」を実質的に否定し、労基法、労災保険法の正しい解釈を示した意義ある判決と思います。この判決が確定すれば、多数存在する家族営業、家族労働の実情から見て、少なからず影響を与える判決になると思います。

 国は、期限の二六日までに、控訴せず確定しました。二七日、監督署が原告本人に「全額支払います」と連絡して来ました。当然のことですが歓迎したいと思います。国が、上記「通達」を根本的に見直すことを求めます。(一月二七日)



再審えん罪布川事件・最高裁勝利決定報告

千葉支部  秋 元 理 匡

一 長い長い闘い

 〇九年一二月一五日付けで、最高裁判所第二小法廷(竹内行夫裁判長)は、布川事件(一九六七年八月に茨城県利根町布川で起きた強盗殺人事件。櫻井昌司・杉山卓男両氏が逮捕・勾留・起訴され有罪・無期懲役判決をにより服役した。九六年に仮出獄。)について、再審開始決定に対する検察官の特別抗告を棄却し、同事件について今年、再審公判が始まることとなった。

 〇五年九月二一日の水戸地裁土浦支部によるが再審開始決定については、当弁護団団長であり確定二審以来四〇年にわたって弁護活動を継続している柴田五郎団員の報告(団通信一一八二号)を参照されたい。検察官の即時抗告は、〇八年七月一四日に東京高裁第四刑事部(門野博裁判長)が棄却した(判例タイムズ一二九〇号七三頁以下)。

 土浦支部の決定も東京高裁の決定も、再審弁護活動を行う者たちが依拠する白鳥決定と財田川決定の趣旨に忠実に、旧証拠の全てと再審請求段階で提出した新規証拠を総合評価して、信用性のない自白のみに依拠した確定判決の有罪認定に合理的疑いが残るとするものであった。

 これに対し、〇八年七月二二日、検察官は性懲りもなく特別抗告をした。こうして、免田事件以来二五年ぶりに再審開始決定に対する特別抗告が争われることになった。

二 最高裁での攻防

 検察官の特別抗告理由は、判例違反と重大な事実誤認だった。

 判例違反とは、再審開始の要件である、証拠の新規・明白性(刑訴法四三五条六号)についてのもの。

 ここでは紙幅の都合上明白性にのみ触れるが、検察官は、白鳥決定・財田川決定・名張事件第五次再審請求に対する九七年最高裁決定等を引用し、新証拠の立証命題との関係で証拠価値が乏しいため確定判決の事実認定を覆すに足りる蓋然性がない場合には新旧証拠の総合評価に入るべきではなく、旧証拠の総合評価が認められる場合でも新証拠の立証命題と無関係に旧証拠を洗いざらい評価し直して自らの心証を形成すべきでないとする、いわゆる限定的再評価説に立って東京高裁決定を批判するものだった。重大な事実誤認の主張は、内容的には判例違反と重複する。

 これに対し、弁護団は、原決定の判断が正当であり、二人の請求人を救済した判断こそ、最高裁判例の趣旨に沿うものであることを展開し、検察官の主張を徹底的に論破した。

 布川事件の特徴は、新規証拠の中に約四〇年ぶりに開示された証拠が多く含まれていることにある。検察官の証拠隠しが長年にわたって真相究明を妨げていたのである。弁護団は最高裁でも証拠開示に取り組んだ。最高裁段階での証拠開示はなかったが、検察官の活動が公正に対応していれば、請求人らの人生が狂わされることはなかったことをアピールしたことは重要だったと思う。

 第二次再審請求の前、検察官は段ボール九箱分の未開示記録があると述べていた。今までせいぜい一〜二箱分しか開示されていない。これらが全て開示されれば、きっと請求人らの無実と検察官の不正義は一層明らかになったことだろう。

 こうして迎えた最高裁決定は、極めて簡潔なもので、「新規性に関する判例違反の主張は、事案を異にする判例を引用するもの」、「その余は、判例違反をいう点を含めて、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張」であると一蹴した。そして、「本件各再審請求をいずれも認容すべきものとした原々決定を正当とした原判断に誤りがあるとは認められない。」と、東京高裁の事実認定を是認した。

 なお、検事出身の古田祐紀裁判官は、法廷意見に同調しつつ、「原決定は、旧証拠に関し、新証拠と離れてまず自らが信用性を評価しているように理解される余地がある」との補足意見を述べている。どの部分を指しているのか不明である上、検事出身の裁判官も結局は再審開始の結論を支持していること、しかも古田裁判官の意見が法廷意見とならなかったことが重要である。法廷意見は古田意見に与することなく、東京高裁決定の判断手法を多数意見で是認したのである。

 再審の「逆流現象」がいわれて久しいが、布川事件の最高裁決定は、えん罪に苦しむ人たちへの光明となることを確信する。

三 最高裁決定を受けて

 布川事件は、別件逮捕で始まり、二人を犯人視する犯罪報道、代用監獄、証拠不開示、違法不当な取調べ、検察官の証拠隠しによる公判維持と、現在も続き国際的に非難されている日本の刑事司法の病理が集中している。我々は、えん罪防止と誤判救済のため、布川事件から多くの教訓を学ばなければならない。勾留期間の見直し(ひいては別件逮捕の禁止)・代用監獄廃止・取調べの全面的可視化・全面的証拠開示は必須メニューだ。

 昨年は、足利事件でも再審開始決定が出、再審公判が始まった。再審や誤判も撃ノついてこれほど社会が注目したことは久しぶりではないか。この火を絶やしてはならない。

 報道によると、検察官は再審公判でも有罪立証するという。最高裁まで再審開始を争い、いまだに証拠開示を拒み続ける検察官がそのようなことを言うのは厚顔無恥というものだ。弁護団は、検察官の抵抗をはね返し、一日も早く再審無罪判決を勝ちとり、櫻井・杉山両氏の雪冤の闘いを終わられる決意である。

 それにしても、誤判は罪深い。六七年当時二〇歳・二一歳だった「被告人」らは今や還暦を超えた。二〇代以降、人生のいちばん輝く時期を奪われた。この時間は帰ってこない。今も、推定無罪の「被告人」でありながら仮釈放中の受刑者として保護司のもとに通う。最高裁の勝利も、決して手放しで喜べる話ではない。

 こうして、えん罪防止・誤判救済のため、我々のたたかいは続く。各位の益々のご理解・ご支援をお願いするや切である。



〜日本が行った侵略と植民地支配の完全な精算と歴史認識を共有する運動のご案内〜
日韓併合一〇〇年にあたって

東京支部  宮 川 泰 彦

【日韓併合条約と植民地支配の内容】

 一九一〇年八月二九日、「韓国併合に関する条約」が公布された。同条約の第一条は「韓国皇帝陛下ハ韓国全部ニ関スル一切ノ統治権ヲ完全且永久ニ日本国皇帝閣下ニ譲与スル」とされている。

 日本の完全な韓国支配=朝鮮半島の植民地支配を目的とする条約であることは一見して明白である。

 では、日本は朝鮮の人々に何をしたのか。簡単にまとめると、

○土地と米の取り上げ、

○強制連行・強制労働、

○「皇国臣民の誓詞」、神社参拝の強制、「創始改名」などによる 皇民化、

○一九二三年関東大震災の際の六〇〇〇人虐殺、

○一九四四年四月朝鮮でも「徴兵制度」をとり約二〇万人を戦場に送り込んだ、などである。

【日韓併合に対する朝鮮の人々の戦いがあった。それを韓国では風化させない。】

 しかし、朝鮮の人々は韓国併合に無抵抗、不服従だったのでない。ましてや日本の植民地支配を迎え入れたものではない。東方学農民を主力とする反日闘争などが展開された歴史がある。初代韓国統監だった伊藤博文を安重根が射殺してから一〇〇年を迎えた昨年一〇月二七日、韓国では一〇〇周年記念式典が開かれ、韓国首相が出席している。韓国では、伊藤暗殺は「義挙」とされ、安重根は「義子」と呼ばれている。それらのことを知らない日本人は多い。

【歴史認識と日本国憲法・アジアの安全保障】

 日本が戦後新たな出発をするには、侵略戦争と非人間的支配を犯した事実を見つめ、それらを可能にした日本人の皇国史観及びアジアの国と人々を蔑視するアジア観を真摯に反省して除去することがアジアと世界から求められた。その求めに日本は応え、国際社会に復帰することになり、憲法九条が誕生した。日本国憲法の(諸国民の公正と信義に信頼して我らの安全と生存を保持しようと決意した)相互信頼による平和主義と九条は、アジアとの国際的な契約であるとも言える。同時に日本国憲法の平和主義と九条はアジアの国々にとっても自らの安全保障でもある。アジアと日本の信頼関係を作り上げるためには、過去の侵略戦争と植民地支配の事実と責任を覆い隠すことがあってはならない。

【改憲「運動」と歴史認識の捏造  附:NHK「坂の上の雲」】

 ところが、日本では「新しい教科書をつくる会」などに象徴されるように、過去の侵略事実や歴史認識を認めない動きが繰り返されている。田母神自衛隊空幕長は「日本は侵略国家だったのか」との論文を発表し、さらに「韓国併合は会社でいえば対等合併のようなもの」と言い放っている。過去の侵略の事実とそれを支えた皇国・臣民観、朝鮮・中国を蔑視したアジア観などを、いまさら反省して何になるんだと言いたいような「過去を振り返る必要はない。二一世紀にふさわし日本の憲法を」との動きである。

 ところで、NHKは、「現代日本人に勇気と示唆を与えるものにしたい」として司馬遼太郎の「坂の上の雲」をドラマ化して三年間放送する。司馬遼太郎は、帝国主義時代の領土拡大戦争という本質をもっていた日清・日露戦争を自国防衛のためとし、朝鮮半島支配もやむを得ないものとして描いている。朝鮮民衆の抗日運動とそれを日本軍が激しく弾圧・殺戮した事実には触れない。

 日本は朝鮮支配と同時並行して世界の列強入りした。明治の「栄光」は朝鮮の犠牲の上に成り立っている。

 ドラマ「坂の上の雲」は、日本が朝鮮でしてきた事実及び歴史を誤って理解させる危険性が指摘されている次第である。

【「植民地支配の完全な精算と歴史認識の共有をめざして」併合一〇〇年日本委員会(略称 併合一〇〇年日本委員会)の呼びかけ】

 日韓併合一〇〇年を迎えた今、日本が朝鮮半島を侵略し蹂躙してきた事実を率直に見つめ直し、アジアの人々と歴史認識を共有することが憲法九条をと平和主義を守り発展させる観点から重く求められてる。

 松井繁明前団長、菊池紘現団長はじめ、少なくない団員も呼びかけ人に名を連ねている「併合一〇〇年日本員会」は、

「○朝鮮半島との正常で友好な関係を目指し、植民地支配の完全な  精算と歴史認識を共有する、

 ○植民地支配と侵略戦争の痛切な反省の上にたって制定された日  本国憲法の改悪を許さず、とりわけ憲法九条を守る運動と結合  して推進する」ことを目的として活動を開始した。

 五月一五日(土)午後一時三〇分、在日韓国YMCAで開かれるメイン集会への参加を呼びかける。

 また、団支部や団員が活動している地域で同様な企画をもっていただきたい。日本と朝鮮に関する講師は手配できます。



国鉄闘争二・一六 日比谷野音集会へご参加を!何としても解決を

東京支部  萩 尾 健 太

一 政治解決への動き

 さる二〇〇九年一二月二五日には、与党三党が鉄道運輸機構に対して年度内解決を求めて「JR不採用問題の解決についての要請」を行いました。また、今年一月一九日の記者会見で、前原国土交通大臣は、一日も早い解決が望ましい、とコメントしました。

 JR不採用問題は今、解決へ向けて大きな局面を迎えています。既に、二〇〇八年七月、鉄建公団訴訟東京高裁控訴審で一七民事部の南裁判長は、解決に向けた当事者間の裁判外での話し合いを提案し、それを受けて当時の冬柴国土交通大臣は、この提案について「お受けしてその努力はすべきだ」と述べました。同様に金子国土交通大臣は、同控訴審結審日に「当事者それぞれがこの判決を真摯に受け止めて、誠心誠意、事に当たられることを期待いたします。」とコメントしました。

 こうした中、二〇〇九年三月二五日東京高裁第一七民事部は「不当労働行為」があったことを明確に認める等の判決を言い渡すと共に、南裁判長は「この判決を機に一〇四七名問題が早期に解決されることを望みます」との異例のコメントを付け加えました。二〇〇九年二月一六日、星陵会館で開催した集会で当時の民主党鳩山幹事長(現総理大臣)は「二三年が二四年とならないうちに、解決になれるように私どもとしても全力を尽くして参りたいと思います。」と述べました。

 また、二〇〇九年一一月二六日開催した「JR不採用問題の解決に向けた一一・二六集会」でも、民主党を始めとする政権与党の各代表者と、野党の出席を得て、「連立与党の一つの政党として、内閣・政権に対しても解決を図れるような状況を作り出すために尽力をして参りたい」「二三年が二四年にならないように各党力を合わせてやるべき」等との力強い決意を頂きました。

 ILO(国際労働機関)も、日本政府に対して「政治的・人道的見地の精神に立った話し合いを全ての関係当事者との間で推進するよう勧める」との「勧告・報告」を出しています。

 さらに、内閣総理大臣・国土交通大臣・厚生労働大臣等に対する「JR不採用事件の早期解決を求める地方議会の意見書」は、北海道議会・東京都議会・福岡県議会をはじめ、全国で八三一自治体、一二二七本(二〇一〇・一・一八現在)以上の地方議会で意見書が採択されています。

 この好機を逃さず、当事者の要求である「雇用・年金・解決金」を勝ち取り「路頭に迷わない解決」を実現するために、当事者および共闘の四者四団体は、二月一六日に日比谷野外音楽堂で「JR不採用問題 解決へ! 二・一六中央集会」を開催します。

二 解雇された者の現状

 一九八七年四月の国鉄の分割・民営化からまもなく二四年を迎えようとしています。それに先立つ同年二月一六日、組合差別の不当労働行為により、JRに不採用となり、国鉄清算事業団で三年間の飼殺しを経て解雇された国鉄労働者一〇四七名とその家族は、あまりにも長く厳しい生活と闘いを強いられてきました。すでに国労闘争団員の平均年齢は五六歳、全動労争議団員の平均年齢は六三歳になっています。また、解決を見ることなく他界した被解雇者は五九名(二〇一〇・一・二三現在)を数え、病床に臥せっている闘争団員・争議団員も多数います。それは、この闘争が精神的にも肉体的にも過酷なものであることを示しています。

 解雇された当時は、多くの被解雇者が子育ての最中でした。それから二四年たち、今は親の介護が問題となってきています。その間、闘争団にアルバイトなどの収入を入れて、そこから必要に応じて一〇数万円程度の分配を受ける苦しい生活をしてきました。

 離婚したり、子どもと別れたりという不幸を味わってきた者もいます。死別した親や祖父母の墓前に、勝利解決を報告したい、それが被解雇者の思いです。

 文字通り家族共々塗炭の苦しみにあえいでおり、この問題の解決は一刻の猶予も許されません。

三 裁判の現状

 国労組合員ら三〇四名による、国鉄清算事業団を承継した鉄建公団相手の解雇無効確認と損害賠償請求の訴訟(鉄建公団訴訟)を私が担当していますが、最高裁第三小法廷に係属しています。ほか、国労、全動労、動労千葉の三組合で五件の同種訴訟が東京地裁、東京高裁で闘われています。

 上記の鉄建公団訴訟は、地裁判決、高裁判決とも、国鉄による不当労働行為を認定したものの、解雇無効は否定し、JR不採用との因果関係を否定して賃金・退職金・年金相当損害を認めず、各原告につき慰謝料・弁護士費用五五〇万円の支払いを命じただけでした。

 各訴訟では、当事者の苦難の二四年に報いる判決を勝ち取るべく、学者などの援助も得ながら、奮闘しているところです。

四 働く者の生活と権利が保障される社会を取り戻すために

 国鉄分割民営化と、それによる組合潰しは、現在の新自由主義による雇用破壊と組合潰しの原点となったものです。

しかし、郵政民営化見直しなど、現在、新自由主義政策の見直しもなされています。

 新自由主義の根本的な是正は、この国鉄闘争の解決なくしてあり得ません。働く者の生活と権利が保障される社会を取り戻すためにも、多くの団員や事務員の皆さんの二・一六集会へのご参加をお願いいたします。


「JR不採用問題 解決へ! 二・一六中央集会」

日 時 二〇一〇年二月一六日(火) 一八時開場 一八時三〇分開会

場 所 日比谷野外音楽堂

     (丸ノ内線・千代田線・日比谷線 霞ヶ関駅徒歩三分)

主 催 四者・四団体

    国鉄労働組合、全日本建設交運一般労働組合、国鉄闘争支    援中央共闘会議、国鉄闘争に勝利する共闘会議

    国労闘争団全国連絡会議、鉄建公団訴訟原告団、鉄道運輸    機構訴訟原告団、全動労争議団鉄道運輸機構訴訟原告団