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田中  隆 ネットカフェ規制条例が投げかけるもの
……弱者の排除と利用履歴の捕捉
藤木 邦顕 二〇一〇年NPT再検討会議に向け
加藤 健次 雇用と仕事を守って解決!
東京海上日動火災外勤制度廃止事件 東京高裁で和解成立
三嶋  健 ラディアホールディングス・整理解雇事件
渡辺 輝人 坂本修団員を講師に「衆議院比例定数削減問題を考える市民の集い」開催
「国会改革」・
衆院比例定数削減阻止対策本部
「国会法」改悪法案が提出される危険性が高まっています。
「国会改革」・衆院比例定数削減阻止の取り組みにご参加ください。



ネットカフェ規制条例が投げかけるもの
……弱者の排除と利用履歴の捕捉

東京支部  田 中   隆

一 「安全・安心戦略」の新展開とネットカフェ規制

 二月二四日開会の東京都議会第一定例会(三月都議会 三月三〇日まで)に、「インターネット端末利用営業の規制に関する条例」案が提出される。「インターネット端末利用営業」とはいわゆる「ネットカフェ」であり、警視庁が研究・検討を続けてきたネットカフェ規制条例が、都議会に登場することになる。

 ちなみに、〇九年の三月都議会には「繁華街でのパフォーマンス規制」の安全・安心まちづくり条例改正案(団通信第一三〇〇号、第一三〇六号)、本年三月都議会には「青少年とネット・ケイタイ」をめぐる青少年条例改正案と、このところ都議会では治安・警察条例の動きがかまびすしい。「全国一五か所の通学路にカメラを設置(国が予算をつけ、民間団体が管理)」や、街頭の監視カメラの実証的研究(川崎駅頭に設置)など、警察庁による監視カメラの「設置実験」も拡大している。

 新自由主義の破綻が白日のもとにさらされるもとで、「安全・安心」を掲げた治安戦略も、新たな展開をはじめつつある。ネットカフェ規制もその一環ということになるだろう。

 都市部を中心に拡大を続けるネットカフェは、現在のところいかなる法律の規制にも服していない。宿泊を目的としないので旅館業法は適用されず、酒食の提供や接待がないので風俗営業法や食品衛生法の適用も受けていない。

 警視庁によれば、このネットカフェで犯罪が頻発しており、一店舗あたりの発生数はカラオケボックスの三・四倍に達しているとのことである。また、窃盗・暴行等の一般犯罪も多いが、インターネットを利用した詐欺、脅迫、DVなどのネット犯罪が顕著で、ネットカフェからの通信の匿名性が土壌となっているという。

 ここから、「空白領域」のネットカフェと顧客の利用を警察の監視のもとにおき、犯罪を予防するとともに、ネット犯罪の摘発を容易にしようとする志向が生じ、ネットカフェ規制の「立法事実・立法理由」となっている。

二 ネットカフェ規制条例の構造と問題点

 ネットカフェ規制条例は、

(1)ネットカフェを警察(公安委員会)への届出制とし、

(2)ネットカフェに、身分証明書の提示による本人確認義務と、

(3)本人確認記録と通信端末特定記録等の作成義務および三年間の保 存義務を課し

(4)警察に立入調査権、報告要求・資料提出要求権を認め

(5)条例違反や立入拒否などに営業停止や罰則を課す

という構造をもつ。営業を警察管理のもとにおく風俗営業法などの行政警察法規に、事業者に顧客の本人確認義務を課す犯罪収益移転防止法(ゲートキーパー法)を接木した構造と考えていいだろう。

 主だった問題点を、順次摘示する。

a 届出(第三条)

 風俗営業などと異なって、ネット通信の「匿名性」を剥奪することが目的だから、端末の台数、種類、利用している回線、プロバイダなどネット犯罪の「逆探知」に必要な事項はすべて届出義務の対象にされるだろう。届出させた端末の利用状況確認のために、端末利用記録の作成と保存が義務づけられることにもなる。ネットカフェが通信システムごと警察の管理下に入ることになり、謙抑的であるべき行政警察権が著しく拡大されることになる。

b 本人確認(第四条)

 顧客は、運転免許証などの身分証明書の提示を求められる。確認義務はゲートキーパー法と同じだが、「有産者」の取引を想定したゲートキーパー法と、顧客に「無産者」が多いネットカフェでは意味するところが違ってこよう。

 顧客に提示義務はなく、「提示できない顧客を利用させてはならない」との規定はないが、提示できなければ排除される可能性が大きい。運転免許証を持たず、保険証を取り上げられ、住民登録を消去されたら・・提示しようにも身分証明書はない。そうした弱者はネットカフェからも放逐されて、おそらくは路上に戻っていくしかないだろう。それで治安が守れると、本当に考えているのだろうか。

c 記録の作成・保存(第五条、第六条)

 本人確認記録(第五条)は利用記録に身分証明書のコピーを添付しておくもので、ゲートキーパー法に実例がある(弁護士は免れたが、他の「士業」では実施されている)。

 問題は、「本邦初出」の通信端末特定記録等(第六条)。ネット犯罪が発生した際の「逆探知」は、受信側の履歴から送信側のIPアドレスを特定―IPアドレスから利用端末を特定―端末の利用記録から被疑者を特定という経路をたどると考えられる。

 となると、保存を要する記録とは、端末を使用した履歴だけでなく、端末から通信システムにアクセスした履歴におよぶ可能性がある(IPアドレスは端末固有ではなく、送信のつど取得されると思われるから)。そのとおりであれば、通信の秘密にかかわる通信履歴の保存が義務づけられることを意味している。

 通信端末特定記録等はおろか、本人確認記録であっても、プライバシーにかかわる情報であるが、漏洩防止を義務づける規定は条例にはない。個人情報保護法は、「個人情報取扱事業者」すなわち「個人情報データベース等を事業の用に供する者」に義務を課すものだから、ネットカフェに適用されるとは考えにくい(顧客データベースをもつ会員制カフェでもない限り)。となると、情報管理は店舗の姿勢次第ということになる。

d 警察の立入・検査権等(第一二条)

 行政警察法規の常例となっている立入・検査権等が明記され、拒否や忌避は直ちに犯罪とされている。「この条例の施行に必要な限度」が要件だから、条例の趣旨・解釈によって運用はどうにでもなりかねない。

 「最近おかしな外国人の出入りが多いようだから見せてくれ」「犯罪グループの『巣』になっているとの通報があったから、本人確認記録と通信端末特定記録等を三年分資料として提出しろ」・・これができれば、利用と通信の履歴は警察の掌中にあるに等しいことになる。これが、個人情報保護の理念やプライバシー、通信の秘密の保全と抵触することは明らかではないだろうか。

三 規制条例の全国展開

 ネットカフェ規制条例は、OA時代を背景に拡大を遂げ、「ネットカフェ難民」なる社会現象も生み出したあらたな業態に、本格的な警察規制を加えようとする条例であり、もっている意味は決して小さくない。規制や捕捉の対象が、物的店舗・施設の利用だけでなく、通信システムの利用に及ぼうとしていることも、重大である。こうした警察規制が可能になることの、波及影響も無視できないだろう。

 東京都の条例は「全国初」とのことであり、いまのところ他の道府県での条例化の話は聞かない。だが、本人確認の動きは各地に広がっており、同種の条例が全国展開する可能性は大きい。

 都議会の治安警察関係条例への対峙を続けてきた経験からすると、この条例は「久々に見るよく組み上げられた条例」で(内容を誉めているわけでは決してないが)、スケールの違いこそあれ、「でき具合」はかつての拡声機規制条例や安全・安心まちづくり条例に匹敵する。全国展開を遂げたこの二つの条例と同じく、警視庁のみならず、警察庁の手が加わっている可能性は大きく、この点でも全国に波及するおそれは大きいと言わねばならない。

 全国各支部での検討や地元議会のチェックを要望する。

(二〇一〇年 二月二二日脱稿)



二〇一〇年NPT再検討会議に向けて

大阪支部  藤 木 邦 顕

 昨年暮れころから、大阪でも原水協を中心に二〇一〇年五月はじめにニューヨークで開かれるNPT再検討会議にむけて、ニューヨークに行って平和集会に参加し、核廃絶の運動を盛り上げようという機運が盛り上がっています。そこへ埼玉の大久保賢一先生からの呼びかけがあり、かなり付和雷同的ですが、大阪の原爆症訴訟弁護団の若手弁護士たちとともに、私も参加することにしました。

 そこで、核廃絶問題がどうなっているのか改めて勉強してみました。二〇〇九年四月のオバマ大統領のプラハ演説が反響をよび、二〇〇九年九月には、国連安全保障理事会で核軍縮不拡散をテーマとして初の首脳級会合が開催され、核保有国を含む全会一致で、核兵器のない世界のための条件を築くことを決意するとの前文をもった決議が採択されました。オバマ演説の前駆となった動きは、実は二〇〇七年一月ころからありました。なんとキッシンジャー、ペリー、ジョージ・シュルツといったアメリカの外交・国防の中心を担った人たちが「核兵器のない世界」という論文を出しています。その後もこの人たちは、ウオールストリート・ジャーナルに核兵器のない世界をめざす論文を発表しており、この流れがオバマ演説につながったものです。さんざん勝手なことをやっておいて、今さら何やと怒るよりも、こんな立場の人たちも核兵器は不道徳だと訴えなければならなくなった情勢の進展があると見た方がいいと思います。そこへ、NPT(核不拡散条約)の再検討時期である二〇一〇年が到来しました。NPTは五年ごとに見直しされていますが、二〇〇五年については、実質事項に関する合意文書の採択ができずに終わっています。アメリカの指導者が核廃絶、正確に言えばNPTの誠実な実現に踏み出したこの時期こそ、核廃絶にむけた現実的プロセスが始まる可能性があり、今年のNPT再検討会議が重要になってきているのです。

 しかし、国際政治の常として各国のさまざまな利害が渦巻きますので、国家間の交渉だけでは二〇〇五年同様になる可能性もあります。NPTには、

(1)五大国の核兵器保有と非保有国への拡散防止、

(2)核軍縮交渉を進める義務、

(3)原子力の平和利用が各国の権利である

という三本柱があり、それぞれの柱をその時点でどう調和させるか(グランドバーゲンと呼ぶそうです)が問題となります。五大国の核兵器保有を認めつつ、核実験をしない(包括的核実験禁止条約 CTBT)とか、兵器用核物質の製造を禁止するとか(カットオフ条約)という部分的な核軍縮措置を進めることも結構ですが、根本的に核兵器をもたないようにしようという交渉が必要です。そこで、世界の市民が核兵器自体の廃絶を求めるという声をあげて各国に迫る運動が必要となります。

 法律家、とりわけ池田眞規先生をはじめ日本の法律家は、核廃絶問題で重要な役割を果たしてきました。その代表的成果が一九九六年七月の国際司法裁判所の勧告的意見であり、一九九七年四月のモデル核兵器禁止条約起草・発表です。今回の法律家代表団には、広島の佐々木猛也先生・長崎の中村尚達先生も参加されますが、多数の日本の市民とともに、ニューヨークで行動し、またNGOとしてNPT再検討会議自体にも参加できるように準備が進められています。ニューヨークに行かなくても、核廃絶にこころをよせる多くの団員のご支援をお願いいたします。



雇用と仕事を守って解決!
東京海上日動火災外勤制度廃止事件 東京高裁で和解成立

東京支部  加 藤 健 次

 二月三日、東京高裁第五民事部(小林克巳裁判長)において、東京海上日動火災の外勤社員制度廃止をめぐる訴訟で、和解が成立した。

 東京海上と日動火災が合併した直後の二〇〇五年一〇月、東京海上日動火災は、外勤社員制度の廃止を一方的に決定した。これに反対する全日本損害保険労働組合(全損保)日動火災外勤支部の組合員四六名は、二〇〇六年二月、外勤社員の地位の確認を求めて東京地裁に提訴した。

 当時、会社には、約一〇〇〇名の外勤社員が在籍し、専ら保険募集業務に従事していた。会社の決定は、退職して保険代理店になるか、退職しないのなら内勤社員になるか代理店に出向するかという理不尽な選択を迫るものであった。すなわち、「経費削減」のために、外勤社員の仕事を取り上げ、退職に追い込もうとするものであった。

 一審の東京地裁民事三六部(難波孝一裁判長)は、二〇〇七年三月二六日、同年七月の制度廃止実施を前に、同年七月以降も原告らが外勤社員の地位にあることを確認するという判決を言い渡した。判決は、原告らの労働契約が専ら保険募集業務を行うという職種限定契約であると認め、職種変更を命じるには「正当な理由があるとの特段の事情」が必要であるとした。そして、職種変更に伴う原告らの不利益が大きいから正当な理由はないとして、他職種への配転は認められないとした。この判決には、検討すべき論点がいくつかあるが、何よりも、大規模なリストラに対して、事前差し止めを認めた点で画期的な判決であった。

 会社は東京高裁に控訴したが、高裁での審理中は現状を維持するという姿勢を示した。高裁では、この間、約一年半にわたる交渉が行われ、和解成立に至った。

 和解の概要は、外勤制度廃止は認めるが、会社が専門代理店をつくり、外勤社員の組合員をこの代理店に出向させてこれまでと同じ保険募集業務に従事させるというものである。制度移行に伴う人事制度や賃金制度についても様々な問題があったが、実質的に不利益が生じないような手だてが講じられた。細目については今後労使で協議していくことになるが、東京海上日動火災という大企業の攻撃に対して、裁判内外のたたかいで雇用と仕事を守って解決したことは大きな成果である。合併直前の組合分裂に端を発する不当労働行為事件もあわせて解決した。

 この事件では、全損保が全力で取り組み、五〇〇万枚のビラ配布、本社前抗議行動、丸の内デモなどの様々な運動を繰り広げた。原告らも、ほぼ全員が毎回の弁論に出席し、外勤社員としてのやり甲斐と誇りを裁判所に訴えた。いま、非正規労働者に対する攻撃にとどまらず、正規労働者に対しても様々な攻撃がかけられている。「正社員も負けないぞ!」ということを示した事件でもあった。

 なお、小林裁判長は二月四日をもって定年退官されることになっており、和解が成立したのは最後の執務日の前日であった。

 この事件では、若手の弁護士が弁護団に加わり、事件に取り組む熱心な姿が先輩弁護士、当事者、組合を大きく励ましたことを付記しておきたい。

(弁護団 牛久保秀樹、加藤健次、平井哲史、宗藤泰而、板倉由実、今井史郎、富本和路、久保田恭章、浦城知子)



ラディアホールディングス・整理解雇事件

神奈川支部  三 嶋   健

一 シーテックとテクノプロエンジニアリング

 派遣大手であるシーテックとテクノプロエンジニアリング(以下「テクノプロ」と略す)の整理解雇事件に取り組んでいる。

 両社は、持ち株会社であるラディアホールディングスの子会社であり、同社が傘下におさめるラディアグループの双璧ともいうべき有力会社である。

 ラディアグループの旧称は、一昨年違法派遣で叩かれたグッドウィルグループであり、派遣法違反が摘発された後、危機に陥ったが、再建中であり、両社の売上が同グループの再建の柱となっている。

二 整理解雇撤回闘争

 両社は、昨年初頭から大規模な整理解雇を開始した。派遣契約が切れて待機中となった社員を一ヶ月の予告期間を経て、次々と解雇した。この整理解雇に対抗して、二人の労働者が立ち上がり、横浜地裁第七民事部に地位保全の仮処分を申し立てた。JMIU神奈川が二人を全面的に支援している。

 会社側の代理人は、両社とも石嵜法律事務所である。京都、埼玉で、シーテックあるいはテクノプロに対する裁判が闘われているが、いずれも会社側代理人は、同事務所の弁護士であり、同事務所が、ラディアグループの再建に深く関わっていることが伺えた。

三 両社の整理解雇の本質

 一方のテクノプロは、黒字であり、他方シーテックは赤字であり、当初、両社の整理解雇は異質のものと思えた。

 会社側の闘い方も対照的であり、テクノプロは、黒字の実体を隠すために、整理解雇であるにもかかわらず会社の計算書類を一切出さなかったし、また、本件は、現在は黒字でも、将来の危機を予防するために解雇を行う予防型整理解雇という主張を展開した。証拠を出さない理由として、ADR(再生計画)策定中であることをあてたが、計画が終了したはずの現時点でも出していない。

 他方、シーテックは、経営危機を強調するために、月次の損益計算書、シミュレーションなど大量の経営関係の書類を出してきた。ただ、不思議なことに通年の計算書類は一切出さなかった。

 ところが、シーテックが出してきた経営資料を子細に分析すると、営業利益、経常利益は、通年では、実は黒字であり、経営外で、多額の損失が計上され、結果として赤字になっていることがわかった。シーテックは、親会社に多額の利益を提供することにより、会社の経営危機を演出し、解雇や、賃金抑圧等の口実としていることが暴露されたのである。

 他方、テクノプロは、昨年末、仮処分の審理で会社側の不利が見え始めると、突然、親会社であるラディア及びラディアグループが危機なので、それらと不可分一体の関係にあるテクノプロも危機であり、この危機を乗り切るために、整理解雇は許されるという主張を始めた。また、テクノプロは、ADR計画では、テクノプロなどの収益が各事業会社の収益がラディアが負っている巨額の債務の返済原資に宛てられることになっているとも主張し始めた。

 当初は対照的に見えた両社の整理解雇は、ここにきて、親会社であるラディアに利益を提供するための方策であるという本質において共通することが見えてきた。

 テクノプロは、昨年末に仮処分は認められ、現在、本訴で闘われている。シーテックは、仮処分が大詰を迎えている。

四 負けられない闘い

 親会社のために、労働者が働かされ、その利益を吸い上げられ、そして解雇されるという論理が通れば、労働者側が被る打撃は計り知れない。その意味で、両社の裁判は負けられない闘いとなっている。

 神奈川の弁護団では、京都、長野、埼玉でラディアグループ傘下の派遣会社を相手に裁判闘争が闘われていることを知り、各地の先生方に呼びかけて、三月二一日(日)に意見交換会を開催することを予定している。

 この闘いに関心があり、意見交換会に参加してもいいという皆様がいらっしゃれば、私まで連絡を下さい。

【連絡先】 川崎合同法律事務所 
             電 話〇四四―二一一―〇一二一
             FAX〇四四―二一一―〇一二三です。



坂本修団員を講師に「衆議院比例定数削減問題を考える市民の集い」開催

京都支部  渡 辺 輝 人

一 概況

 京都では、二〇一〇年二月一三日(土)に「衆議院比例定数削減問題を考える市民の集い〜多様な意見の締め出し!?国会が危ない!〜」と題する集会が開催されました。開催主体は団京都支部、京都憲法会議、京都総評、新婦人京都府本部、京都共同センターの共催で、講師として元団長の坂本修団員をお招きしました。当日は六〇名の方が参加され、団員では京都支部団員のみならず奈良から佐藤真理団員にもご参加頂きました。現実的な比例定数削減の危険性と運動することの重要性、今後の運動の展望まで大いに議論され、極めて有意義な集会でした。

二 講演内容とそれを受けた展望

 坂本団員の講演は極めて多面的かつ充実しており、報告文書にまとめきれません。坂本団員の論考が近く「法と民主主義」に掲載されるので、詳細はそちらを参照下さい。集会の様子を若干ご報告すると以下の通りです。

 講演全体を通して強調されたのは、政権政党である民主党が比例定数削減をやると繰り返し表明しており、背後にある財界が単純小選挙区制導入を強力に推進しているのに、これを本気の策動と見ないのはおかしい、という点です。比例定数削減の策動は憲法を破壊して強権的な戦争をする国への道であること、この道を進もうとしている点は鳩山首相も、小沢一郎民主党幹事長も著書ではっきりと述べていること、民主党のツートップがはっきりと述べている以上民主党は本気と見るべきこと、財界も繰り返し単純小選挙区制の導入を提言していること、自民党もそう言っていること、この三者がやる、と言っている以上、夏の参議院選以降、この問題が動き出すことは明白かつ現実の問題だ、と報告されました。

 比例削減がなされた場合の効果については、共産党、社民党、公明党等の政党は壊滅的な打撃を受け、民主党、自民党で九五%以上の議席を独占する可能性があることも、データに基づいて指摘されました。

 運動の方向性については、安倍政権の改憲策動に対して団も立ち上がり、国民的な運動の中で安倍政権が参議院選挙で敗北、崩壊したように、確信を持ってこの問題に立ち向かうべきだ、とする一方で、この問題の本質が全く知られておらず、マスコミが真実を伝えない状況の下、団が「しゃかりきになって」、各方面でこの問題を語り、学習会の開催を各方面に積極的に働きかけ、運動を広げていく必要がある、と強調されました。ちなみに、坂本団員ご自身も、すでに三〇件の学習会講師を引き受けておられるそうです。

 参加者からは、坂本団員が報告した情勢に強い危機感を感じるとともに、今、運動することの重要性と決意が述べられた感想文が多く寄せられました。集会には各団体の活動家が数多く参加しており、今後、京都でこの問題に取り組む運動を作っていくための起点になる集会になったと思っています。

三 茶話会での話

 学習会終了後、京都の様々な団体の方と支部団員で坂本団員を囲む茶話会を行い、さらに突っ込んだ意見交換が行われました。若干ご紹介すると、国民に浸透しやすい無駄削減論や公務員削減論に対して有効な反論を行うための研究の必要性、この問題に取り組む上の切り口として「これ以上の死票は御免だ」「自民党と民主党だけの国会はろくなもんじゃない」というような国民の多数が賛同しうるものを提示していく必要性等が議論されました。

 さらに、最近、小選挙区制の母国と言われるイギリスで制度改革の議論が活発に行われ、下院では制度改正のための国民投票の実施が議決されている状況の下、学者、弁護士が合同でイギリスの実態調査をすることも提起されました。九四年の小選挙区制導入議論の際も、ドイツ、イギリス、アメリカ等に団員が赴き、詳細な報告書が作成され、運動の力になりました。このことについては京都支部が提起して二月の団常任幹事会でも議論され、早ければ三月にも調査団を派遣する方向で検討が始まったようです。京都支部としても調査団に支部団員を派遣する決意をしております。全国でも、是非、ご議論を頂き、積極的なご参加をよろしくお願いいたします。



「国会法」改悪法案が提出される危険性が高まっています。

「国会改革」・衆院比例定数削減阻止の取り組みにご参加ください。

「国会改革」・衆院比例定数削減阻止対策本部

 二月一七日、民主党政治改革推進本部の役員会が開かれ、「国会法」改悪法案を三月上旬に提出する方針を決めたと報じられています。「国会法」改悪は、官僚答弁の禁止、内閣法制局長官の答弁禁止を主な内容としています。官僚答弁を法律で禁止することにより、国会による行政監視機能を弱め、具体的な事実に基づいた法案審議を危うくする危険があります。また、内閣法制局長官の答弁禁止により、時々の内閣が自由に憲法解釈を行うことを目論んでいます。「強権的国家」と憲法九条の歯止めなき解釈改憲への策動が、いよいよ動き出す可能性がでてきました。

 自由法曹団は、全労連や憲法会議などとも協力をし、この策動を阻止するための行動を予定しています。全国の支部・法律事務所・団員の皆さんに、この闘いへの参加を呼びかけます。

 以下の行動が予定されています。是非ご参加ください。

◆議員面会所前集会・議員要請行動

 三月一七日(水)、四月七日(水)、四月二一日(水)
     いずれも一三時一五分〜衆議院議員面会所集合
  主催・・全労連・自由法曹団・憲法会議

◆「だれのため、なんのため、『国会改革』・『比例定数削減』」シンポジウム

 四月一〇日(土)一三時三〇分〜一六時三〇分
   場所・・文京区民センター3A(地下鉄後楽園駅または春日駅からすぐ)

  基調講演
   「民主党の国会・政治改革のねらいと議会制民主主義」
        小澤隆一氏(東京慈恵会医科大学教授)

   パネリスト 坂本修団員
          高見勝利氏(上智大学教授)
          丸山重威氏(関東学院大学教授)

   主催・・自由法曹団、MIC、JCJ、マスコミ九条の会

◆国会法改悪・「国会改革」反対集会
  ―衆院比例定数削減を許すな―

 四月二一日(水)一八時〜

   場所・・全教会館(エデュカス東京)七階ホール
   主催・・全労連・自由法曹団・憲法会議

 ※ この問題の危険性を早急に広げなければなりません。「『強権的国家』づくりをめざす民主党『国会改革』に反対する」意見書と、「衆院比例定数の削減に反対する」意見書の二通の意見書を団のホームページからダウンロードできます。是非ご活用いただき、各地で学習会を開催したり、民主団体へこの問題を広げてください。