<<目次へ 団通信1351号(7月21日)
黒澤 いつき | 全団員による草の根運動を! 給費制維持へ短期決戦 |
石川 元也 | 団通信をより面白くしよう 団員外にも広めよう |
改憲阻止対策本部 | 「これさえ聞けば安保がわかる! 安保学習講座」を開催します |
東京支部 黒 澤 い つ き
一 はじめに
司法修習生の給費制維持に向けて、全国各地で集会や意見交換会が開かれている今日この頃ですが、なかなか全団員あげての運動になっていないのではないか、という一抹の不安がよぎるので、私の所属する事務所の取り組みの報告を含めて、さらなるご協力のお願いをさせていただきます。
二 当事務所の取り組み
(一)七月が勝負
今月の事務所会議で給費制の件が議題になり、事務所としてどう取り組むべきか議論がなされました。ありがたくも、運動ド素人の私を往復ビンタするかのように厳しい意見が飛び交いました。ちなみに私の所属する事務所は都民中央法律事務所です。
すなわち、事務所の取り組み方としては、懇意にしている諸団体に署名の協力要請をすることが第一であろう。国会情勢は混乱していて微妙だが、日弁連や各単位会がやる気を見せている、という点では勝てる公算がある。とはいえ、この運動は広がってはいるが「高さ」がない。一一月一日の施行を止める、というタイムリミット迫る現段階では、上部組織が引っ張りあげるのを待つのではなく、事務所なり個々人なりが各々「突出」して、割拠する形で全体の「高さ」を作っていくしかない。
その上で、九月の臨時国会までに署名を集めるという切羽詰まった状況では、一人一人にお願いする個人署名も大事だが、団体署名を集める方が断然効率的。選挙もあって、諸団体は疲れている(しかもガックリきている)。八月に入ったらみんな広島・長崎に行っちゃって、帰ってきたら「さぁ夏休み!」…ということは、厳しいようだが署名活動は七月いっぱいが勝負ではないか。
(二)運動は七割が信頼関係
何度も言われたのは、「特にこのような短期決戦は、ゲリラ的に行動するしかない」とのことでした。そして「ぶっちゃけて言ってしまえば、運動は三割意義・七割信頼関係と思え」。
いわく、長年地域に根ざしている事務所であれば、懇意にしている諸団体との信頼もそれなりに勝ち得ているのだから、現実的にはこちらが給費制ひいては我が国の法曹養成の制度の意義について熱く語ることもなく「○○事務所が言ってるんだから、きっと大事なんだろう」と署名に応じてくれることが多い。だからこそ、この短期決戦でそれを活かして草の根活動を展開すべし。
かくして、事務所とつながりのある約一〇〇の諸団体へ早急に団体署名と個人署名の協力、及び七月二八日の各界懇談会への参加をお願いすることになりました。
(三)要請グッズ
上記諸団体宛ての封筒に入れたのは(1)要請文、(2)団体署名用紙、(3)個人署名用紙、(4)返信用封筒、(5)日弁連作成のパンフレット、
(6)各界懇談会のチラシ。区労連にもお願いして同じものを送付してもらうことにしました。
(四)諸団体へ足を運ぶ
諸団体への郵送を前提として、区労連・民商・新婦人等へは直接出向いて説明とお願いに伺う予定です。
三 全ての団事務所での取り組みを!
(一)諸団体への呼びかけ
このような取り組みを団員の所属する全ての法律事務所で実行していただければ、当然、膨大な数の団体署名・個人署名が集まることになります。津波のように押し寄せる署名用紙を想像しただけでも興奮します。おそらく、事務所ニュースの夏号を編集している最中、あるいは暑中見舞いの準備をしている最中の事務所は多いのではないでしょうか。是非、(編集後記でもいいので)給費制について取り上げて頂き、署名用紙を同封していただければと思います。 ちなみに(1)の要請文や(2)(3)の署名用紙はいつでもデータで送信いたしますので、是非ご連絡下さい。
(二)そもそも全ての法律事務所で団体署名
標題の通りです。団員のいる全ての法律事務所が団体署名をしたら、いとも簡単にそれだけで相当な数にのぼります。何がなんでも、これだけは実行して頂きたいと思います。団本部から全事務所にデータあるいはFAXで団体署名用紙を送ることができないか、提案させていただきます。
四 給費制の価値(民主主義との絡みで)
七月三日に仙台で開催された市民集会で、新里先生や宇都宮日弁連会長は、私がここ数ヶ月悶々と抱えて表現できないでいた思いをすっきり整理してくださいました。それは、民主主義の維持発展との絡みで、給費制を考察することが大事ではないかということです。法曹三者の中で唯一、国家権力と対峙する地位にある弁護士ですら、国家は「法曹」として養成することを決意しているのです。司法権を担う法曹の養成は国家の使命である――この決断は、民主主義国家ならではの叡智であり、先進諸国に例が少ないのであれば、それは憲法九条にも似た「先駆け」の財産です。この誇るべき制度を、財力がモノを言う制度に貶めることは絶対に許されないことを、改めてご理解いただきたいと思います。
大阪支部 石 川 元 也
団通信をより面白く、より役に立つように
この四月から、団通信に、田中隆広報委員会委員長の団通信データベースの話、青森五月集会資料の分析、そして七月一日号の永尾廣久団員の「団通信は読まれているか」など、団通信を巡る論議が起こっていることはうれしい限りだ。わたしもその論議に加わって、一石を投じたい。
毎月三回、一四五〇号になる団通信は、団と団員を結ぶもっとも重要な絆である。それがどれだけ読まれているか。年代による差もかなりあるように思われる。大阪支部の五〇期代の団員に聞いてみた。余り読んでいない、面白くない、インターネットで多くの情報を得ている、というよう話であった。支部の活動を熱心にやってくれている人たちだけにショックだった。これは何とかしなくてはなるまいと思った次第だ。
永尾さんは、投稿する人に「読まれる工夫も必要」という。その通りだろうが、私は、広報委員会の充実・強化を訴えたい。今どういうメンバーで構成されているか知らないが、おそらく本部事務局を中心に構成されているだろう。この際、全国の支部から公募してもいいのでないか。支部の規模や各地域性、そして年代も考えて、全国の団員の活動ができるだけ反映するように。
委員会としては、団員からの投稿を待つだけでなく、編集方針を持って臨んでもいいのではないか。団員や支部の活動を書いてもらうように努める。支部ニュースや事務所ニュースにもアンテナを張り、これはというものは団通信に転載する。(紹介したいと思いながら、見送った例がいくつかあることを羞じる)
投稿されたものについても、あまりに長いものや、わかりにくいものには注文をつけて、本人に直してもらうこともあっていいと思う。
とりわけ、裁判、弁護活動の報告については、私には注文がある。判決の内容や意義は紹介されるが、とかく落ちているのが、裁判長や陪席裁判官の氏名(期も)の紹介、その裁判部の従来からの傾向とそれに対してどうたたかったか、その裁判での取り組みを、弁護団、当事者、支援活動(いわゆるモ・ベ・ヒの活動)なども是非ほしいものである。それらを補充してもらってから、掲載するとしてもいいのではないか。
そして、再構成された広報委員会のメンバーとは別に、全支部一名ぐらいのモニターも委嘱してはどうだろうか。半年ごとに、アンケートを寄せてもらうとか。
いずれにしても、委員会の集団的英知を結集してあたってほしいと願う。
団通信を団員外にも広げよう
今、団通信を定期的に送っている先がかなりある。友好団体で、相互に機関誌などの交換をしているもの、団で講師を務めた方への無償送付、そして有料購読者である。このリストなど、広報委員会の人でも知らないのではなかろうか。それを見てもらって検討してほしいことがある。
第一は、有料購読者を増やそうという提案である。団通信を面白いものして、自信と誇りを持って、これを団外の友人たちや団体に読んでもらおう。実は、もう一五年以上も前になるが、団長に選任されたとき祝意を表してくれた弁護士の友人や弁護士会の役員などと、交流のある労働組合、民主団体幹部などに有料購読をおすすめした。約三〇に近い数のうち、一〇数人が今も継続してくれている.これには感激した。
ただ、いま、これに取り組んでいくのに、年間一萬二〇〇〇円という購読料は高過ぎるのではないか。団報や意見書など、団員配布のものをつけるとしても、宅配便を利用すれば送料は安くなっている。年間八〇〇〇円ぐらいに値下げすることも検討してもらいたい。
団員を辞める人もときにはいるが、その人には、団通信の購読だけは続けてもらいたいといってきた。そのためにも、値段は安く。
第二は、無償提供している方の問題である。ずいぶん昔からの方に、惰性的に送られているように見える。かって、年に一回ぐらいは、通信の感想なり、自由な意見を寄せてくれませんかとお願いしたこともあったが、ほとんどお答えはなかったように思う。情報過多といわれる時勢、ただで送ってくるものにどれだけ眼を通してくれているかという気がしないでもない。これも、検討してもらいたい。
第三に、団通信を含め、団の刊行物はインターネットに掲載されている。そこにも読者がいるということを意識して、投稿、編集などしてほしいのである。
今でも、私のところに、「布施辰治のビデオがありますか、資料を送ってほしい」という注文が、ときにはソウルからもある。「布施辰治」で検索すると、「石川元也」が出てくる、出所は団通信ということである。もうありません、とことわるにしても、団通信の広がりを実感させられた。
団報の改善を
団通信に関連して、これも広報委員会の所管だろうと思って、提言する。
このところ、団報は、年二回、総会と五月集会の議事録の形で送られてきている。ところが、これは出席したものはわかっているからと読まない、出席しなかったものは、元々関心がないから読まない、ということになってはいないだろうか。
ときに、課題別の全国活動者会議の討議内容が団報に組まれることもあるが、それも多くはないようにみえる。
かって、一九五〇年代まで、団には、「人権のために」という季刊の理論雑誌があった。たしか一六号か一七号で終わったように記憶する。上田誠吉団長のもとで、幹事長をつとめていたとき「石川君、団の理論雑誌を復活させようよ。」と言われたが、私たちの年代では受け止めきれなかった。ただ、その代わりというわけではないが、団の大衆的裁判闘争の伝統を、各分野のたたかいにいっそう発展させようと、各委員会の活動も活発で、それらを団報として次々と発行してきた。思想信条差別問題をとりあげた「職場に自由と労働者の団結を」(七八・九臨時増刊号)、「公害における大衆的裁判闘争の発展のために」(団報八九号)や、弁護人抜き裁判法反対の中で、弁護活動を巡って弁護士自治のあり方が問われた時期に、団の先輩たちが受難した弁護士懲戒問題、東大闘争弁護団に対する懲戒問題などについて、活動者会議や弁護士自治研究集会などを開き、その成果は、団報八四、八五、九二、九九号として出している。これらは、当時のたたかいの役に立つものであったと思う。
今、団員が、日民協や労働弁護団などの誌上に論攷を寄せているが、総会報告などの団報のほか、年二、三回ぐらいは、研究の成果を団報として世に問うてもいいのではなかろうか。
当面する裁判員裁判の実践例は、初の無罪判決事例を含めて、団員の経験は貴重なものが多い。早急に、この実践と検討の成果を団報にまとめるならば、団内外の弁護士たちに活用してもらえるだろう(有料とするには、体裁なども工夫する必要があろうが)。
団通信は短かくとの志に反して、やや長文となったことをお詫びする。
改 憲 阻 止 対 策 本 部
今年は一九六〇年に安保条約の改定が強行されてから五〇年の節目の年です。そして、普天間基地をめぐる問題がクローズアップされるなか、在日米軍、そしてそれを基礎付ける安保条約とは何なのか、何のためにあるのかという根本的な疑問が国民の間でも話題となってきました。地域の民主団体から「安保五〇年」をテーマにした学習会の要請が来ている法律事務所も少なくありません。
ただ、団内でも中堅、若手団員は安保条約を理論的に学習した経験をもつ人は、まだそう多くないのではないでしょうか。
そこで、だれでも安保条約を語れるように、学習講座を企画しました。
講師は、砂川事件や長沼ナイキ訴訟などの弁護団として活躍された内藤功団員です。安保条約締結に至る経過、安保条約の変遷、安保条約と憲法、安保条約の運用の実態と基地問題、安保条約廃棄への展望など、安保条約の基礎的な知識から、最新の知見に基づく考察まで、幅広い内容をお話し頂きます。
講座の冒頭では日本平和委員会作成のDVD「どうするアンポ〜日米同盟とわたしたちの未来」を上映し、視覚的にも分かりやすい内容にしたいと考えています。
菅政権は「日米合意の尊重」を唱え、辺野古新基地建設を推進する立場にたっています。他方、沖縄では辺野古新基地建設反対は大多数の世論です。
今後、普天間基地撤去運動をさらにすすめ、安保条約の問題性を国民的に明らかにするためにも、極めて有意義な学習の機会です。 是非、奮ってご参加ください。
「これさえ聴けば安保がわかる!安保学習講座」
講 師:内藤 功 団員
日 時:二〇一〇年九月九日(木)午後四時〜(団本部にて)
※冒頭で日本平和委員会作成のDVD「どうするアンポ〜日米安保とわたしたちの未来」を上映する予定です。