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杉本  朗 *愛媛・松山総会特集*
二〇一〇年愛媛・松山総会が開かれました
西田  穣 次長退任にあたって
中谷 雄二 労働事件の和解での口外禁止条項に警戒を
松岡  肇 労働時間について(前編)
佐藤 真理 日弁連人権擁護大会の「今こそ核兵器の廃絶を求める」宣言について
西田  穣 自由法曹団のホームページで新人弁護士採用情報を提供することになりました!
近藤 ちとせ 一一・一派遣法院内集会と意見書発表などのご報告
小林 善亮 二〇一〇年日本平和大会in佐世保のご案内



*愛媛・松山総会特集*

二〇一〇年愛媛・松山総会が開かれました

事務局長  杉 本   朗

 二〇一〇年一〇月二四、二五の両日、愛媛県の道後温泉で自由法曹団の二〇一〇年総会が開かれた。

全体会は、小部正治(東京支部)及び臼井満(四国総支部)の両団員が議長団となって進められた。菊池紘団長の開会挨拶、地元四国総支部(愛媛県)の東俊一団員からの歓迎挨拶に続き、全労連・根本隆副議長、日本国民救援会中央本部・鈴木猛事務局長、国鉄労働組合・小池敏哉業務部長、日本共産党・仁比聡平(現・日本共産党国民運動委員会副責任者・前参議院議員)から来賓のご挨拶をいただいた。その他全国から六〇本のメッセージが寄せられた。

 引き続き古稀団員の表彰が行われた。今年の古稀団員は三二名で、うち一三名が参加されました。古稀団員には菊池団長書き下ろしの表彰状と副賞が手渡され、それぞれの団員から、個性あふれるご挨拶をいただいた。

 続いて鷲見賢一郎幹事長から、本総会にあたっての議案の提案と問題提起がなされた。一〇月の参議院選挙で民主党に対する批判が明らかとなった中で、菅内閣の性格をどのように捉えるか、臨時国会の見通しなど、情勢に対する基本的な認識が語られた。それを前提に、安保改定五〇年と憲法・平和を守るたたかい、衆議院比例定数削減阻止のたたかい、労働と貧困・地域主権改革をめぐる問題、大量解雇阻止と労働者派遣法抜本改正、弾圧・えん罪とのたたかい、裁判員裁判の実践と制度改善などに積極的に取り組むこと、また、支部・県の活動の強化や団事務所の建設の問題にも積極的に取り組んでいくことが提起された。報告を通じて、私たちが変革の立場で諸課題に立ち向かっていくことが強調された。

 一日目の全体会終了後、四つの分散会に分かれて議案に対する討論が行われた。今年は、各分散会毎に、(1)憲法と平和・民主主義を守るたたかい、(2)労働と貧困・地域主権改革を巡る問題、(3)弾圧・えん罪とのたたかいと裁判員裁判、(4)団の将来問題についての問題提起者から報告を受け、議論を行った。この間の実践の報告を含めて、各分散会で活発な議論がなされた。

 二日目の全体会では、以下の発言がなされた。

○仲山忠克団員(沖縄支部)・・・沖縄知事選挙について

○小林徹也団員(大阪支部)・・・比例定数削減阻止に関する大阪の取組みとそこから見えてきた課題について

○松井繁明団員(東京支部)・・・国会改革・比例定数削減

○伊須慎一郎団員(埼玉支部)・・・派遣法抜本改正

○高木佳世子団員(福岡支部)・・・福岡生存権裁判高裁勝訴判決報告

○小部正治団員(東京支部)・・・B型肝炎訴訟の和解における国の提案の問題

○佐藤誠一団員(東京支部)・・・二つの国公法弾圧事件 堀越・世田谷事件報告

○神原元団員(神奈川支部)・・・取調の全面可視化と証拠の全面開示に向けた運動について

○村山晃団員(京都支部)・・・「国民のための司法をめざして」の議案に関連して

○黒澤いつき団員(東京支部)・・・司法修習生の給与制の問題

 なお、時間の関係で左記の団員の発言については、発言要旨の紹介のみを行った。

○庄司捷彦団員(宮城県支部)・・・映画「布施辰治」の上映運動について

○中村宏さん(埼玉総合法律事務所)・・・衆議院比例定数削減阻止で事務局に出来ること(坂本修団員の訴えに応えるために)

 討論の最後に鷲見幹事長がまとめの発言を行い、その後、議案、予算・決算が採決、承認された。続いて、以下の決議が採択された。

○沖縄県知事選挙の歴史的勝利をめざす決議

○民意切り捨てによる強権政治を狙う衆院比例定数削減に反対する決議

○証拠の全面開示と取調べの全面可視化の早期実現を求める決議

○早期・徹底審議のうえ労働者派遣法を抜本改正することを要求する決議

○有期労働契約の抜本的規制を求める決議

○国公法弾圧二事件の無罪を求める決議

○司法修習生に対する給費制の維持を要求し、貸与制への移行に反対する決議

 引き続き、選挙管理委員会から、幹事は信任投票で選出された旨の報告がなされた。団長は、前日に、無投票で選出された旨の報告がなされた。総会を一時中断して拡大幹事会を開催し、規約に基づき、新入団員四名の入団の承認、常任幹事、幹事長、事務局長、事務局次長の選任を行った。

 退任した役員は次のとおりであり、退任の挨拶があった。

   幹事長     鷲見賢一郎(東京支部)

   事務局次長  伊須慎一郎(埼玉支部)

   同        佐藤  生(東京支部)

   同        西田  穣(東京支部)

   同        福山 和人(京都支部)

新役員は次のとおりであり、代表して小部幹事長から挨拶がなされた。

   団長       菊池  紘(東京支部 再任)

   幹事長     小部 正治(東京支部 新任)

   事務局長    杉本  朗(神奈川支部 再任)

   事務所次長   愛須 勝也(大阪支部 再任)

   同        小林 善亮(東京支部 再任)

   同  坂本 雅弥(東京支部 再任)

   同        近藤ちとせ(神奈川支部 再任)

   同       久保木亮介(東京支部 新任)

   同       斉藤 耕平(埼玉支部 新任)

   同       芝田 佳宜(東京支部 新任)

   同       與那嶺慧理(東京支部 新任)

 閉会にあたって、二〇一一年五月集会(五月二二〜二三日、二一日にプレ企画を予定)開催地の島根県・岡崎由美子団員から歓迎のメッセージが紹介され、最後に、四国総支部の井上正美団員の閉会挨拶をもって総会を閉じた。

 総会前日の一〇月二三日に「警察の裏金問題を考える」と「団の事務所作りと新たな事務所展開」の二つのプレ企画が行われた。それぞれ、五〇名ほどの団員が参加した。

 多くの団員・事務局の皆さんの参加と協力によって無事総会を終えることができました。総会での議論を力に、新たな情勢の下で大いに実践に取り組みましょう。

 最後になりますが、総会成功のためにご尽力いただいた四国総支部(愛媛県)の団員、事務局の皆さん、関係者の方々に、この場を借りて改めてお礼申しあげます。ありがとうございました。


次長退任にあたって

東京支部  西 田   穣

 この度、二年間の本部事務局次長の任期を終え、無事退任することができました。これも多くの団員、事務局、そして本部専従事務局の方々に支えていただいたおかげです。改めてお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

 私は、葛飾ビラ配布弾圧事件の弁護団に入っていたということもあり、次長就任直後から治安警察委員会の担当となり、その後、裁判員裁判がらみで司法問題委員会、そして法曹人口、修習生就職問題への関心から将来問題委員会と、瞬く間に担当が確定し、二年間、変更は一切ありませんでした。この間、憲法問題では、憲法改悪・普天間基地移設・比例代表削減等々、労働問題では、非正規問題・派遣法改正等々といった、団が取り組むべき大きなテーマがいくつもあったにもかかわらず、こういった憲法・労働には関与せず偏った担当のままで任期を終えてしまいました。それが幸か不幸かは分かりませんが、少なくとも、自身の興味のある分野の最先端の議論に関われたことは今後の弁護士生活に大きくプラスになるものと思っています。

 今後も、治安警察委員会では事務局長として残ることになりました。また、修習生の就職問題については、引き続き新執行部と協力して取り組んでいきたいと思います(本団通信に掲載したホームページでの就職情報提供にご協力よろしくお願いします)。次長を退任したとはいえ、団の活動に積極的に関わっていきますので、今後ともよろしくお願いします。

 最後に、まだ次長を経験されていない若手の方々に次長就任のススメをしたいと思います。団の本部の次長というと、「大変」、「仕事・雑用に追われる」と危惧される方が多いと思います。・・・まあ、概ねそのとおりです。そこは否定しません。ただ、皆さん、別に次長をやらなくたって忙しいのではないのでしょうか?考えてみれば、皆さんの体は一つしかないのですから、「大変」に「大変」を、足しても、乗じても「大変」にしかなりません。つまり、次長をやってもやらなくても、何も変わりません。だったら、事務所の中で殻に籠もってないで、客観的に「大変」と噂される次長を経験される方がやりがいがあるとは思いませんか。団の執行部は、内部でまとまらないとやっていけませんから、一体感があり、合宿等は「大変」ながらも楽しいイベントです。鷲見前幹事長とともに就任し、二年の任期を終え今年退任する福山団員、伊須団員、私といった「sumi's children」は、合宿、総会の度に夜な夜な飲み歩き、鷲見前幹事長から外出禁止令が出されても、その目を盗んで抜けだし、朝まで飲んでいました。事務局合宿に参加していなければ、おそらく事務所で朝まで起案していたであろうことを考えると、どちらがよかったかは言うまでもありません。つまり、結論は次長をやってよかった、ということです。

 自分に限界を設けないで、是非、この次長という役職を経験してみて下さい。やらなきゃよかった、という感想を持つ人はおそらく一人もいないのではないか、と思うほどに充実した弁護士生活が送れると思います。頑張って下さい。


労働事件の和解での口外禁止条項に警戒を

愛知支部  中 谷 雄 二

一 和解での口外禁止条項の広がり

 最近、労働事件の和解で使用者側が口外禁止条項を要求することが増えてきているように思う。大企業を相手にした事件では必ずと言ってよいほど、和解条項として口外禁止を要求してくる。裁判所も口外禁止を当然のように押しつけてくる例もある。しかし、労働事件を扱う弁護士はこの点について警戒心をもってギリギリまで闘う必要があるのではないか。最近このように感じさせられた事例に出会った。労働委員会の団交拒否事件で、労働委員会の和解案文に口外禁止条項が入っていたのである。

 これまで裁判所での和解で口外禁止条項を入れるよう要求されたことはあるが、少なくとも労働委員会において集団的労働事件の和解で口外禁止を入れるように要求されたこともなければ、労働委員会案にそのような条項が入っていたこともない。ここまで広がってきたのかと危機感をいだいた。危機感を抱いた出来事の二つめは、一年ほど前には、口外禁止条項を入れることなどできないという組合側の意見を当然としていた裁判官が、突然、口外禁止を入れるのは普通に行われていることだろうという態度に変わったことがあった。相当数の労働審判、仮処分、本訴で和解を担当していた裁判官が口外禁止を入れるのは当然という感覚を持ったのである。

二 使用者側が口外禁止を要求する理由

 使用者側が口外禁止を入れるように言ってくるのは、「金を払うから、特別扱いをするから、他には黙っていてくれ」ということである。和解によって企業が違法行為をやっていたという印象をなくしたいというだけでなく、金銭を支払うことと引き替えに闘いの成果を当該企業と闘いの個人、組合だけに限定させるところに狙いがあるのだろう。できるだけ他に波及させたくないというわけである。

三 個人申し立ての事件における難しさ

 確かに市民的労働事件が増え、組合が関与しない労働事件が増えている。弁護士としては依頼者の利益を守ることが第一であり、口外禁止をのまなければ和解をしないという使用者側の態度を前に、依頼者の意向を無視して和解を決裂させることは難しい場合が多い。また、事件によっては内容を公表できないことによって解決の水準は下がり、成果としては小さくなるが、種々の情勢判断の中で口外禁止をのんででも和解を成立させなければならない場合もある。

四 ギリギリの闘いの必要性

 この問題について述べた東海労弁の高木輝雄団長は、オープンに出来ないことによって、(1)労働者側には歯切れの悪さ、後ろめたさが残る。(2)裁判闘争を支えてくれた多くの人たちに解決内容を一〇〇パーセント伝えることができない。(3)記者会見も中途半端にならざるをえない。(4)闘いの成果を次につなげることができない。(5)連帯が封殺される。以上の五点を問題点としてあげ、自分の反省も込めて「強く反対し、議論し、説得しようと思います。同時に、当然のごとくこの条項を受け入れる裁判所の姿勢も批判しなければいけません。そして、これはごく限られた弁護士だけがやっていたのではなかなか変わってはいきません。労弁がみな同様の問題意識をもって立ち向かうことが大切だと思います。」と述べている(東海労弁通信一三七号)。私たちは、個別の労働事件の和解で、このような問題意識をもってギリギリの説得をし使用者側とも裁判所、労働委員会とも対決しているだろうか。私自身もこれまで口外禁止条項の意味についてそれほど深く考えたことはなかったが、冒頭に挙げた例のように裁判官が変わったのは、労働事件を担当する弁護士(現状では労働弁護士が労働事件を担当しているとは限らないのは承知している)が、このような警戒心なく、むしろ、口外禁止を入れるのが和解の常識と思わせるような状況が数多くあったのではないかと推察させられた。

五 現状における口外禁止条項への警戒心の必要性

 派遣労働者の闘いが全国的に広がり、様々な違法派遣を追及し、直接雇用を求める闘いが進められてきている。これらは全派遣労働者に共通する事件である。一つの事件の結果、帰趨は全国の同種事件に直ちに波及することは、松下PDP事件最高裁判決の影響を見ても明らかである。このような事件やあるいは労働運動として重要な事件など、ギリギリまで闘いの成果を残し、広げる努力が必要である。そのためには、和解でも一つ一つの事件を担当する弁護士がその事件で追及できるギリギリの水準を追及する姿勢が重要ではないかと考える。その意味でも和解への口外禁止条項を入れることについてこだわっていきたいと思う。


労働時間について(前編)

東京支部  松 岡   肇

 私は福岡で二〇年近く銀行員をして、五〇歳を過ぎて弁護士になった。銀行員時代は労働運動に専心し、その中で厳しい差別も受けたが、同時に様々な貴重な経験もした。こうした経験を弁護士の仕事に生かしたいと思ったが中々思うようにはいかない。偶々松井先生から何か書いてみないかと言われてよい機会だと思った。

 以下はその一つとして労働時間についての経験や思い出でを書いたものである。ここで私は労働法や労働問題に関する理論や分析をするつもりはない。事実自体の重みを考えるからである。

 日本で長時間労働が問題にならない時はない。建前は八時間労働になっているが、実際その通りに運用されているかは疑問である。ここでの欧米との違いは大きいと思う。それには制度や文化の違いもあるが、その根底に労働者や経営者の労働時間に対する考え方の違いがあると思うことがしばしばあった。それを此処では書いて見たい。

 戦争が終わって間もなく、一九五〇年頃、学生時代にアルバイトをした時のことである。福岡の雁ノ巣飛行場を接収したアメリカ軍の飛行場の中で鉄条網を張る仕事があった。日本人労働者とアメリカ兵が一緒になってハンマーで杭を打ち鉄条網を張るのである。 ところで一二時のサイレンがなると、アメリカ兵は振り上げたハンマーを投げ捨てて休憩に入る。当然打ち終わらない杭はバタンと倒れる。あと二、三回打てば杭は打ち終わるという時でもそうである。

 ところが日本人はそれから二、三分でも杭を打ち終えてそれがちゃんと地面に立ったことを見定めてから休みに入る。私はそれを見て何故?と思ったことを覚えている。その時はこんなアメリカに日本は負けたのかと思ったのだ。今にして思えばそれがアメリカと日本の考え方の違いに接した最初だった。

 話は飛ぶが、私が弁護士になって「裁判の公開と秘密保護」に関する調査で一九九三年一二月に日弁連からアメリカに行った時のことである。最高裁の裁判官に面会を申し入れ、午後四時半に面会約束をとっていた。一行一〇名で時間に最高裁を訪れると一人の裁判官がこちらの質問事項に関する資料を準備して女性の秘書と一緒に待っていた。質問に応じて秘書が次々に資料を差し出し、裁判官が答える状態が続いた。ところが途中で突然秘書が立ち上がって頭を下げ、何か言うと部屋から出て行った。我々は驚いてあれはなんだと聞くと裁判官は少しも慌てず「彼女の労働時間は終わった」と言った。時計を見ると丁度五時だった。残業をしないとすれば確かに労働時間は終わったのだ。その二人の当たり前という態度に我々はただ唖然として声もない状態だった。日本の最高裁を外国の法律家たちが公式の調査で訪れたならば、恐らく秘書一人だけではなく、何人かの調査官や職員たちが時間が終わるまで待機していることだろう。時間が来たからといってさっさと先に帰るなど考えられない。我々との面会が終わると裁判官は自分で多くの資料を片付け、それを抱えて部屋を出て行った。労働時間に対する考え方の違いを見せつけられた思いであった。

 帰国の際も思いがけない事態に遭遇した。アメリカの空港を発って成田に向かう飛行機の中で病人が出たが誰か医者はいないかというアナウンスがあった。そのうち緊急に着陸すると言って午後二時頃アラスカのフエアバンクス空港に着陸した。外は薄暗く津々と粉雪が降っている。気温は零下何度だろうか。慌ただしく白衣の人が乗り込んできてなにやら忙しくしていた。その後数時間して間もなく離陸だというアナウンスがあって暫くすると、今度は乗務員が時間オーバーするので飛行に反対している。団体交渉をするので今暫く待ってというアナウンス。団体交渉の会社側は機長が勤めるという。一時間以上過ぎた頃、団体交渉が決裂したので今日のフライトは中止というアナウンス。ホテルを準備する。預かった荷物は降せないので酷く寒いが手荷物だけで行動するように。宿泊料と食事代及び国際電話一通分は会社が負担するが、飲み代は各自持ちということだった。思いがけず極寒のアラスカの雪の中で一泊する幸運?に恵まれたが、それにしても五〇〇人近い乗客の宿泊代等は幾らかかるのか?従業員一〇数名の数時間の時間オーバーがここまで争いになることに驚いた。労働者にとって労働時間とはかくも神聖にして重要なのだということだろうか。飛行機を降りるとき、従業員に何故と聞いたら「お客様の身の安全のためです」という答えが返ってきた。確かにそうだが、操縦するパイロットは飛ぶと言っているのだから益々混乱する。この争いと結論には評価が大いに異なると思う。現に翌日空港で損害賠償の署名を集めている乗客がいた。フライトが遅れたので予定が狂ったというのである。これを単純に労働時間の問題としてだけ見ることはできないだろうが、問題の根底に触れることは確かである。

 これに関連して私は四〇年位前(一九七〇年頃?)友人が話したことを思い出す。彼がK銀行のニューヨーク支店長をしていた時のアメリカの従業員についての話である。彼ら、彼女らは終業時間の五時になるとお金を数えている最中でも、帳簿を付けている途中でもさっさと立ち上がって帰り支度を始めるというのである。「仕事の途中で帰るな」と言うと、「労働契約で決まった約束の時間だから。予定の時間内に全て終わるように仕事の手順と人員配置をするのは管理者の役目だろう。我々は決まった時間だけ働くのが決まりだ」というのだそうだ。日本の銀行では考えられない事態である。しかし確かに理屈上はその通りだ。八時間労働とは、その時間だけ働くことであり、その時間内に仕事が終わるように手配りするのは経営者、管理者の仕事である。それがいい加減にされている日本の方がおかしいに違いない。それが当たり前として行動し、発言する労働者とそれを当然として受け入れる経営者、管理職のありようにひどく驚いたことを思い出す。

(次号に続く)


日弁連人権擁護大会の「今こそ核兵器の廃絶を求める」宣言について

奈良支部  佐 藤 真 理

 日弁連人権擁護大会(一〇月八日、盛岡)で「今こそ核兵器の廃絶を求める宣言」が圧倒的多数の賛成で採択された。本宣言の意義については、提案者の日弁連憲法委員会で積極的に取り組まれた永尾廣久さん、井上正信さん、大久保賢一さんらから報告があると思われるので、私は、大会当日の四人目の賛成討論の概要を、以下に報告する。――

 核廃絶という人類の悲願達成のためには、核抑止力論の克服、核抑止論からの脱却が必要だという議論には私も大賛成です。しかし、現時点で、そのことを日弁連人権擁護大会の宣言に盛り込めというのはいささか無理があり、相当性を欠く議論であり賛成できません。

 私は、法律専門家の強制加入団体である日弁連が宣言や決議を上げるには、少なくとも三つのことが要求されると思います。第一は、内容において、日弁連の基本的任務、役割に沿うものであることが必要です。第二に、広く国民、そして国会・政府に対し、議論の素材を提供し、一定の有効なインパクトを与えうる内容を持つことです。第三に、強固な会内合意に支えられるものであることが必要です。そのためには、日弁連及び単位会の議論状況、会員の意識状況を反映するものであることが必要です。つまり、一般会員から遊離してはならないということです。

 宣言に盛り込むには、核抑止力論の有害性あるいは欺瞞性について、調査、研究、議論を深め、相当数の単位会の決議ないし声明が上がるような状況が生まれることが前提です。要は、着実な積み上げが必要だということです。

 近年の自民党新憲法草案を初めとする改憲の動きに対抗して、日弁連は二〇〇五年人権擁護大会の鳥取宣言、二〇〇八年人権擁護大会の富山宣言において、憲法の平和原則について画期的宣言を積み上げました。直截に「日弁連は九条改憲に反対である」と明言すべきだとの意見がありましたが、会内の議論状況を踏まえて、二〇〇八年の富山宣言では、平和的生存権と憲法九条の今日的意義を確認するとの宣言を採択しました。そのことによって、現行憲法のこれらの規定を削除することには理由がないこと、これらの規定を擁護することに積極的必要性があることを宣言したのです。※

 本宣言案と核抑止力論の関係についても同様の取扱が妥当と考えます。

 一番大事なことは、宣言を実践することであります。本宣言案が呼びかける核廃絶に向けての活動に全国会員、オール日弁連で取り組んでいく決意を確認するため、本宣言案に賛成します。

※ 詳しくは、新垣勉さんの「『平和的生存権および日本国憲法九条の今日的意義を確認する宣言』が目指すもの」(自由と正義 二〇〇九年六月号)をご参照ください。


自由法曹団のホームページで新人弁護士採用情報を提供することになりました!

東京支部  西 田   穣

 近年、修習生の就職が厳しいといわれていますが、今年、将来問題委員会行ったアンケートによると、まだまだ各地に新人を求める声や修習生の情報提供を求める団員事務所があることが分かりました。従来、自由法曹団のホームページでも事務所紹介のページはありましたが、数年以上も更新されず、また、採用の有無は記載していませんでした。

 そこで、今回、自由法曹団のホームページで、翌年弁護士登録を控える修習生を対象とした新人弁護士採用情報提供ページを用意し、毎年更新をしていくことにしました。従来、四団体説明会や四団体事務所紹介パンフレット等で団員事務所の情報提供を行っていましたが、これらに加えて、簡便かつ安価な情報提供手段を用意することで、団員事務所の負担軽減と、できるだけ多くの団員事務所と就職希望の修習生のマッチングに貢献できればと考えています。

 なお、この新人採用情報ホームページは、あくまで団員事務所からの情報提供のみを目的としており、採用方法、時期、基準等に本部は一切関与しません。当然、紹介について責任も負いません。

 ホームページ上で注意喚起するルールと、このシステムの利用方法を簡略にお伝えします。

* ホームページ上で喚起する注意事項(要約)

・このホームページは、団員の求人活動及び司法修習生の求職活動を支援することを目的として設置する

・このホームページの情報提供によって生じる一切のトラブル等に対し、自由法曹団は責任を負わない

・このホームページの情報は、情報提供者である各団員弁護士の情報を所定の形式にしてそのまま掲載する。自由法曹団はその情報の真実性(変更の有無等)について責任を負わない

・このホームページで提供される情報は、原則として、掲載開始の翌年に弁護士登録予定の司法修習中の方(現在司法修習中の方、旧試験・新試験は問わない)を対象とする

・このホームページは、原則として、毎年一二月ころから掲載を開始しており、時間の関係で、募集が終了している場合もある

* ホームページの利用方法

(1)毎年、総会の前後に、各団員事務所に翌年就職予定の新人採用の情報提供を求めます(フォーマットあり―左頁下段参照、手書きも可ですが、できればホームページから書式をダウンロードして、メールで本部(dan@ca.mbn.or.jp)まで下さい。手書きFAXでも対応します)。〆切は一一月末とします。

(2)費用は一年間で二〇〇〇円(書換料、削除料を含む)です。

 【申込後の振込先】

  三菱東京UFJ銀行 春日町支店 普通 〇二一五一一〇

       名義 自由法曹団 代表者菊池紘(きくちひろし)に送金して下さい。

(3)採用を決めた場合は、情報の削除のため、電話で結構ですので連絡を下さい。その際、団本部ないし支部の企画等の情報を提供するため、その他団内の議論等のため、修習生の氏名及び修習地程度の情報を提供して下さい。

(4)掲載期間は、一年間弱(一一ヶ月くらい)です。目安としては、採用をする修習期に向けて、毎年一二月ころ(修習開始時期)から翌年一一月ころまで掲載し、翌年一二月ころからは次の修習期に向けた情報に切り替えます。例えば、新六四期(二〇一一年一二月登録予定)の場合、二〇一〇年一二月ころから二〇一一年一一月ころまで掲載します。

 このホームページの情報は、青法協修習生部会へ告知したり、青法協のプレ研修に参加した合格者を通じて広めてもらったり、四団体パンフレットとともに配布する等を行い周知していく予定です。

 この情報提供は、特に四団体説明会に出席する労力や費用に余裕のない各地域の個人もしくは少数団員事務所にも積極的に求人情報を提供いただき、一人でも多くの団員事務所と修習生のマッチングを成功させたいという観点からの取り組みです。是非、積極的にご利用下さい。


一一・一派遣法院内集会と意見書発表などのご報告

事務局次長  近 藤 ち と せ

 一一月一日、自由法曹団、全労連、労働法制中央連絡会の主催で、「早期・徹底審議のうえ労働者派遣法を抜本改正することを要求する院内集会」が行われました。院内集会では新たに発表したばかりの意見書等の説明もありました。労働問題委員会担当事務局次長として参加しましたので、院内集会の状況と合わせてご報告します。

一 院内集会の参加状況

 参加者は、全体で六七名でしたが、特に組合と、裁判の原告から多くの参加をいただきました。原告としては、日産自動車に事務系派遣として派遣されていた原告、アンフィニから資生堂へ派遣されていた原告、ホンダで長年期間工として働いてきた原告、いすゞ自動車から雇い止めにあった原告等多くの方が参加しました。

 原告の方々からは、「自分たちの状況は何も変わっていない」「政府の改正案では、自分たちの生活は改善されない」という訴えがあり、胸に響きました。

二 意見書の説明

 今回の院内集会では、今年の一〇月二七日に記者会見を行い発表したばかりの「早期・徹底審議のうえ労働者派遣法を抜本改正することを要求する意見書」の説明がありました。

 この意見書は、労働者派遣法の審議や議論を行う際に、派遣労働者の生活を守るために最低限どのように派遣法を改正しなければならないかという点を説得的に説明する資料として使ってほしいという目的から作られたものです。そのために、なるべく、客観的な数字や具体的な事例を示して、わかりやすく作成しようと心がけました。

 先日の総会では案として配布していたものでしたが、完成し自由法曹団のホームページにも掲載されています。各地の運動でも是非利用してください。

三 東京大学社会科学研究所調査プロジェクトのアンケート調査結 果概要への批判的検討(案)

 また、今回の院内集会では、東京大学社会科学研究所(東大社研)調査プロジェクトの実施した「請負社員・派遣社員の働き方とキャリアに関するアンケート調査結果概要―労働者派遣法改正の評価と今後のキャリア希望を中心に」に対する批判的検討(案)を発表し、このアンケートの問題点を指摘しました。

 このアンケートは、東大社研の人材フォーラムという組織が、今年の八月一九日から九月一日までの間実施したもので、「派遣社員では、製造派遣の禁止に『反対』が五五・三%と半数強を占め」る等と発表していたものです。このことを朝日新聞が一〇月一三日付の朝刊で報道していました。

 批判的検討(案)では、アンケート調査に協力した日本生産技能労務協会の性質や、アンケートの質問形式が恣意的であること、さらには朝日新聞による報道内容も不正確であった等の問題点が指揮されました。

 臨時国会での審理が混迷し、派遣法改正の審議も始まらない状況ですが、非正規切り・派遣切り事件を勝ち抜き、派遣労働者の生活を守るために、派遣会社側や権力側からの世論誘導に乗せられないように、私たちの力を尽くさなくてはならないと強く確認した集会でした。


二〇一〇年日本平和大会in佐世保のご案内

事務局次長 小 林 善 亮

 毎年、日本平和委員会などを中心に開催されている日本平和大会ですが、今年は「核兵器も基地も軍事同盟もない平和な日本とアジアを―いま、沖縄と心ひとつに」を合言葉に一二月二日〜五日にかけて長崎県佐世保市で開催されます。

 沖縄では、米軍新基地建設反対、普天間基地撤去の島ぐるみの取り組みがなされ、一一月二八日の沖縄県知事選に向け「基地のないのない平和な沖縄」をつくろうという願いが広がっています。

 沖縄をはじめとする全国の米軍基地をなくすためには、この願いを全国に広げることが急務です。

 今年の平和大会の開かれる佐世保にある米軍佐世保基地には、沖縄の海兵隊が出撃する際に前線まで兵士を運ぶ強襲揚陸艦が配備されています。この佐世保に、全国から集まり、米軍基地・日米軍事同盟のない平和な日本とアジアを実現するためにどうしたら良いのか、学び、交流しましょう。団は、一二月四日に開催される分科会で「なぜなくならない?米軍による事件・事故―米軍基地特権と地位協定問題を考える」という分科会を担当します。是非こちらにもご参加ください。

【日程・企画】

■一二月二日(木)

 国際シンポジウム

 「米軍基地・軍事同盟のない平和なアジアをの実現めざして」

   時 間 一四:〇〇〜一八:〇〇

   場 所 アルカス佐世保大会議室

   パネリスト

     ジョセフ・ガーソンさん

        (アメリカフレンズ奉仕委員会)

     イ・ジュンキュさん

        (韓国・労働者対案社会学習院講師)

     コラソン・ヴァルデス・ファブロスさん

         (フィリピン・外国軍事基地撤去国際ネットワーク)

     小澤隆一さん

        (東京慈恵会医科大学教授)

■一二月三日(金)

 基地調査行動(オプショナルツアー参加費四〇〇〇円)

   時 間 一四:〇〇〜一七:〇〇

   場 所 佐世保基地周辺をバスと船で見学

 全体集会 オープニング集会

   時 間 一八:三〇〜二〇:三〇

   場 所 アルカス佐世保大ホール

■一二月四日(土)

 分科会

「本当に米軍基地、日米安保は抑止力なのか?」等、一一のテーマで分科会が準備されています。団は「なぜなくならない?米軍による事件・事故―米軍の基地特権と地位協定問題を考える」を担当しています。

   時 間 一〇:三〇〜一五:〇〇

   場 所 佐世保市内各所

 全体集会II 全国と世界の運動の大交流集会

   時 間 一六:〇〇〜一八:三〇

   場 所 アルカス佐世保大ホール

■ 一二月五日(日)

 全体集会III もう基地はいらない!佐世保ピースパレード

   時 間 一〇:三〇〜一二:〇〇

   場 所 佐世保公園

【参加費】

・中央実行委員会納入分参加費

   一般八〇〇〇円、学生・被爆者・戦傷者・障害者五〇〇〇円、高校生三〇〇〇円

・国際シンポジウム五〇〇〇円(現地参加費三〇〇〇円)

 各都道府県の平和委員会が中心となり、平和大会実行委員会をつくっています。平和大会参加のためのパックツアーなども用意しているようですので、参加方法は各都道府県の平和委員会にお問い合わせください。