<<目次へ 団通信1366号(12月21日)
佐藤 誠一 | 日本航空で始まった大型解雇闘争 |
小林 明人 | ぎふ反貧困ネット総会の報告 |
山田 佳以 | 「命の雫」裁判 〜北海道における自衛官人権裁判〜(国賠訴訟) |
杉本 朗 | 団通信はみなさまの原稿をお待ちしております |
東京支部 佐 藤 誠 一
日本航空の企業再生・リストラ関連のニュースが連日のように報道されている。日本航空は、本年一月会社更生の申立を行い、一一月三〇日東京地裁は更生計画案を認可した。日本航空は倒産したのか?しかし皆さんの「マイレージ」は健在である。本年第1四半期の営業利益は二五〇億円を計画し、一〇九六億円の実績をあげた。これが倒産会社だろうか?
日本航空はこれまで全職種の労働者に対して早期退職・希望退職を募り、一〇月二二日までに削減目標一五〇〇名に対して一五二〇名の退職応募を受けた(なお一二月初めに一七〇六名に達した)。目標達成である。ところが日本航空はなお二五〇名もの人員削減が必要だと言ってはばからなかった。一一月一五日、二五〇名の削減目標に達しないときは整理解雇に踏み切ることが決定された。しかし解雇の必要性はもはやない。労組が提案するワークシェアリングなど日本航空は一切拒否している。退職強要も行われている。解雇回避努力はとうてい尽くされていない。これで整理解雇などおこがましい。
同時に日本航空は、一〇月以降、一部のパイロットにブランク(空白)スケジュール、一部の客室乗務員にS一〇、S一九という空白スケジュールを押しつけた。これはお前たちには乗務させない、とのサインである。同時にミーティングと称して会社は彼らを呼び出し、「あなたは整理解雇の対象者である」「新体制の日本航空にあなたの仕事はない」「他の会社での活躍を期待する」と恫喝して「早期退職への応募」を強要したのである。この退職強要に抗して八七名のパイロットが、一一月四日、退職強要の禁止を求め仮処分を申し立てた(その後二一名が追加申立している)。
他方でパイロットの組合あるいは客室乗務員の組合は、整理解雇や退職強要に反対する要求を掲げ、一一月、スト権を確立すべく投票を実施することとなった。ところが管財人代理らは、一一月一六日、これら組合との事務折衝で、スト権投票に不当に介入する発言を行った。日本航空は企業再生支援機構の支援を決定を受け、管財人には同機構とA弁護士が選任されていた。不当な介入発言を行ったのは、同機構の職員と管財人代理であった。彼らは、争議権が確立した場合、その撤回がない限り同機構は三五〇〇億円の出資を行わない(つまり日本航空の更生は失敗するぞ)と恫喝したのであった。
こうした情勢を受けて一一月二〇日、本部常任幹事会において、日本航空及び企業再生支援機構に対して、整理解雇及び乗務をさせないことを梃子とした退職強要、またスト権投票への不当な介入、これらを中止せよ、との決議をあげていただいた(なお、日本労働弁護団からも、一一月二九日、「整理解雇に対する緊急声明」、「支配介入に抗議する」声明を出していただいている)。
客室乗務員の組合は二二日、圧倒的多数の賛成票によってスト権を確立し、一二月二四日・二五日のストを予告した。他方でパイロットの組合は残念ながら投票を中止するに至った。両組合は一二月八日、この不当介入について都労委に救済申し立てを行った。
しかし翌九日、日本航空は、パイロット九四名、客室乗務員一〇八名について解雇通告を行うと関係組合に通知した。これまで関係組合、支援団体、弁護団は、一人の労働者に対しても解雇通告を出させないための取り組みに全力を尽くしてきたが、航空業界としては一五年前のスカンディナビア航空以来の大型解雇争議に突入することになった。
一一日、団やMICが呼びかけ、日本航空の不当な解雇に抗議する有楽町マリオン前の宣伝行動を実施していただいた。当該組合員も含めのべ八〇名の参加で二五〇〇枚のビラをまいた。通行人の関心も高かった。同日羽田空港のお膝元であるJR蒲田駅前でも地域の支援団体が同様の取り組みを行った。
日本航空では、労組と企業再生支援機構及び日本航空とが日々せめぎ合っている。数日で情勢も変わる。この文書も一二月一四日時点のものである。会社が、二〇二名の労働者に解雇通告したとしても、全員の解雇を貫徹するには幾多のハードルがある。われわれはそうしたハードルを高くまた多く積み上げて、一人の労働者の解雇も許さない。いっそうのご支援をお願いします。
岐阜支部 小 林 明 人
一 はじめに
一二月五日、岐阜市内にて「ぎふ反貧困ネットワーク」の総会が開かれました。今回の総会は、設立総会を含めて三回目となります。活動報告などの他、名古屋は笹島で三五年間、ホームレスや日雇労働者の支援活動をされてきた藤井克彦さんの講演もあり、総会は大盛況でした。本総会を期に、岐阜における反貧困活動の経過と現状などをご報告させていただきます。
二 ぎふ反貧困ネットワークの活動報告
ぎふ反貧困ネットワーク(以下「ぎふ反貧困ネット」)は、二〇〇八年八月に設立されました。それまでは、県内の既存の団体・個人が各自で反貧困活動をしていました。しかし、派遣切りの嵐が吹きすさぶようになると、助けを求める人が急増し、個々人がその都度対応する余裕がなくなってしまいました。そこで、反貧困を志す団体・個人が結集し、より迅速で質の高い援助活動をするために、ぎふ反貧困ネットは設立されました。
ぎふ反貧困ネットの主な活動内容は、全国・県内の反貧困活動や相談会への参加、学習会の実施、行政(岐阜市)への要望・交渉です。
主なものを挙げますと、反貧困フェスタや世直し大集会には毎年人員を派遣して、反貧困活動の全国的な盛り上がりに協力しました。特に、ぎふ反貧困ネットは、地方では全国初の反貧困ネットワークといわれており、後発の反貧困ネットからは関心を寄せていただいていると自負しています。
最近では、会員の多くが「第三〇回全国クレサラ・ヤミ金被害は交流集会in岐阜」の実行委員となり、参加者一五〇〇名といわれる大規模な会の企画運営に尽力しました。
三 「結」の活動報告
「結」(ぎふ派遣労働者サポートセンター・結)については、以前の団通信でもご報告させていただきました。ぎふ反貧困ネットが母体となってできた団体で、当初は「常設の派遣村」というコンセプトで、ホームレスや職を失った方たちなどの生活再建に助力してきました。県内の多数の弁護士による協力を得て、積極的に生活保護申請同行を行い、その結果、岐阜市の生活保護行政は大幅に改善しました。
もっとも、最近の「結」に援助を求める人たちの割合は、高齢者、刑務所から出所した人、知的な障害がある人など、より手厚いケアが必要な方々が増えてきました。対応に負われる職員の方々は、息も絶え絶えな毎日を送っています。これまでは広い事務所を無償で借りることができていたのですが、建物の取り壊しにより立ち退かざるを得なくなってしまいました。一時は存亡の危機を迎えていたのですが、幸い、一一月に別の場所を無償で借りることができました。しかし、慢性的な財政難には今も悩まされ続けています。
岐阜県がPS(パーソナル・サポート)の試験事業に名乗りを上げました。PSは、「結」の活動内容にかなり近いものがあります。「結」としては、ぜひPSの担い手となり活動を発展させていきたいと思っています。行政から業務委託金をもらうことができれば、財政問題に光が見えるかもしれません。PSの事業委託を受けるためには法人格が必要であるというのが県の見解ですので、目下、NPO法人化を急いでいます。
四 今後について
ぎふ反貧困ネットと「結」は、これまで多くの方々に救済の手を差し伸べてきましたし、行政の改善にも一定の成果を上げてきたと思います。しかし、我々が日々直面する貧困問題は、多様性と深刻さを増すばかりです。どのような視点で、どこに照準を合わせて活動していくのか、今の反貧困ネットは悩ましい選択を迫られています。
今回の総会でぎふ反貧困ネットの新事務局長になった私としては、活動の発展に尽力していきたいと思っています。
北海道支部 山 田 佳 以
一 事案の概要
平成一八年一一月二一日、当時二〇歳だった沖縄出身の自衛官亡島袋英吉が、初任地として赴任した陸上自衛隊真駒内基地内で、徒手格闘訓練中に死亡した。
自衛隊は、徒手格闘訓練中の事故(公務災害)として処理したが、原告ら遺族は矛盾に溢れた説明に疑問を抱き、繰り返し説明や情報公開を求めた。
しかし、自衛隊の返答は形式的で、開示資料は肝心な所が全て黒塗りとされていた。なぜ希望に溢れていた息子が命を落としたのか、真実を知りたい。遺族は、この想いを絶やさぬよう昨年一一月『命の雫』(文芸社)と題する書籍を出版した。
その後、遺族は、北海道の弁護士を探すなかで「自衛隊イラク派兵差止訴訟」や「女性自衛官人権裁判」(平成二二年七月二九日札幌地裁勝訴判決、同年八月一二日確定)を担当した北海道合同法律事務所の佐藤博文を知り、佐藤博文を弁護団長として弁護士五名で「命の雫」裁判弁護団を結成し、平成二二年八月三日に札幌地裁に国家賠償請求訴訟を提起した。
二 「徒手格闘」訓練とは
徒手格闘訓練とは、相手と素手で格闘して致命傷を与える訓練であり、生命・身体の損傷につながる危険性が極めて高いものであり、解説書によれば「地面という武器を活用」し、「綺麗に決まれば後頭部を地面に叩きつけることができるため、効果は大きい」などとも書かれている。
そうであるにもかかわらず、亡島袋英吉は、十分な受け身の訓練を受けず、攻撃から身を守る方法を知らないまま、繰り返し投げ技や当て身技を受けて死亡した。
徒手格闘訓練は、対テロ戦争、ゲリラ対策として、最近、強化されている一方で、事故が多発し、あるいは訓練に名を借りたイジメやしごきが行われていると言われている。広島県江田島市の海上自衛隊では、平成二〇年九月、一五名で暴行を加えて隊員を死に至らしめ、遺族が松山地裁に裁判を起こしている。
三 本裁判の争点について
亡島袋英吉の公務災害報告書では、最後の一回の投げ技により頭を強打して死亡したとされている。しかし、肋骨が三カ所折れ、肝臓などの内臓も損傷しているなど、とても頭の強打だけの事故とは思えない外傷を負っていた。裁判では、国の安全配慮義務違反のみならず、自衛官が訓練を隠れ蓑にして亡島袋英吉に暴行を加えて死に至らしめたのではないか、それを自衛隊が組織ぐるみで隠ぺいしたのではないかが争点となると考える。
四 関与当事者らの刑事責任の追及
本件に関与した当事者らは、それぞれ送検されたものの、亡島袋英吉に直接投げ技をかけた自衛官は起訴猶予処分、訓練に立ち会い安全管理の任を負っていた自衛官は不起訴処分(嫌疑不十分)、訓練を命じた自衛官は不処分として、いずれも刑事責任は問われなかった。
弁護団においては、真相解明とともに各当事者らの刑事責任を問い直すべく、告訴・検察審査会への審査申立てを行った。
五 軍事裁判所がない日本においては、本件裁判は普通裁判所で市民傍聴の下で行なわれる。自衛隊が「本格的に戦争する軍隊」にされていくとき、自衛隊員の人権は必然的に侵害されていく。この裁判は、市民レベルで、自衛隊に対してシビリアンコントロールを働かせるたたかいだと考えられる。
事務局長 杉 本 朗
自由法曹団では、自由法曹団通信(団通信)を、毎月一日、一一日及び二一日の月三回発行しています。
〆切は四のつく日です。
毎月四日までに届いたものは当月一一日号、一四日までに届いたものは当月二一日号、二四日までに届いたものは翌月一日号に、基本的に掲載するようにしています(進行の関係や、原稿の多寡によって多少前後することはあります)。
みなさまから届いた原稿は事務局専従(現在の担当は阿部さん)が、団通信の書式に流し込んで形を整えて版下を作ります。それを事務局長(私ですね)がざっと見ます。原稿の並び順を整えるのが主な目的ですが、見ていて表現や内容について気になるところがあったら、執筆者の方に連絡して、ちょっと直して貰ったりすることもあります(そのうち、一番多いのは字数についてです。もうちょっと短くなりませんか、とか失礼なお願いをしています)。そのあと、版下を印刷屋さんへ送り、印刷して団員に発送しています。
団通信は、自由法曹団と団員、団員と団員をつなぐ情報ツールです。広く団員に知って欲しい、呼びかけたい、そういった文章を載せることを目的にしています。その関係から、あまり長い原稿はちょっと困るな、と思っています。大体一五〇〇字を一つの目途として、お願いしたいところです。
昨年も書きましたが、団通信には、いつでも誰でも原稿を投稿することが出来ます。また、誹謗中傷とか根拠のない非難など、社会通念上許容できないものを除けば、特に内容に制約はありません。団通信は原稿を依頼された人が書くものだ、とか、団通信には社会的に意義のある問題を書かなければならない、とかお考えの方がいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。
もちろん、いろんな企画があったとき、団員の事件が報道されたとき。メーリングリスト上で興味深い投稿があったときなど、団本部から原稿依頼を出していますが、原稿依頼が来た人だけが原稿を書くなどと言うことは全くありません。
広く他の団員に知って欲しい、よびかけたい、ちょっとつぶやいてみたい・・・そんなことがあったとき、ぜひあなたの原稿を、団通信に送って下さい。
また、各支部やブロックで、おもしろそうなネタがあったら、ぜひ団通信に投稿するよう本人に勧めて下さい。
それだったらちょっと書いてみようかな、と思ったあなたのために、執筆要領をお教えします。
* *団通信執筆要領* *
テーマ:特にこれでなければというものはありません。
〆 切:これも特にありません。随時募集しております。(冒頭に 書きましたとおり、毎月四日までの原稿は当月一一日号、一四日までの原稿は当月二一日号、二四日までの原稿は翌月一日号、というサイクルになっています)
入稿方法:基本的にメールにファイルを添付する形でお願いします。ファイル形式は、一太郎、ワード又はテキストです。
送信先は、「jlaf@ca.mbn.or.jp」です。
字 数:一五〇〇字を一つの目途として下さい。ちなみに二四〇〇字で見開き二頁になります。原則として長い原稿の分裁は勘弁して下さい。
HP掲載:原則として、自由法曹団のホームページに転載させていただきます。内輪の団通信に載せるのは構わないが誰でも見られるホームページへの転載は嫌だという方は、その旨付記して原稿をお送り下さい。
さあ、あとは原稿を書くだけです。団通信はみなさまの原稿をお待ちしております。