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<<目次へ 団通信1396号(10月21日)


坂井 興一 「希望の一本松」 創立九〇周年に寄せて
沢井 功雄 岩手県大槌町仮設住宅調査
川口  創 保育制度を根こそぎ破壊する『子ども子育て新システム』を許すな
小野原 聡史 台風一二号による和歌山の被害について
蒲生 路子 準社員一名に対する整理解雇事件の勝訴判決を得て
飯田  昭 「市原野ごみ焼却場談合住民訴訟」の「弁護士費用請求訴訟」最高裁判決について
平澤 卓人 非正規労働者の権利実現全国会議・札幌集会を開催しました
斉藤 耕平 裁判闘争勝利と派遣法抜本改正・有期保護法制確立を目指す第六回全国会議が開催されました
黒澤 いつき 今一度ビギナーズ・ネットへのカンパのお願い
〜最大の山場・給費制一〇〇〇人パレードの成功に向けて〜
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杉本  朗 最新くらしの法律相談ハンドブック刊行!!



「希望の一本松」 創立九〇周年に寄せて

東京支部  坂 井 興 一

 九〇年おめでとうございます。ご案内のポスターを見て驚きました。被災後おそるおそる眺めていた高田松原の「希望と絆の一本松」が、立って、そこにあったからです。七月常幹調査行で団長・幹事長始めバス二台でご覧頂いた全国各地の団員のみなさまのご苦労と御支援のことを思えば、この図もありと思うものの、節目の行事用のものですから感慨が尽きません。その折、陸前高田や大槌で骨折って頂いた自治体関係者の方々は繰り延べとなった夏の選挙で好成績を収め、みなさまもご安堵なされたかと思います。 (被災から七ヶ月)が過ぎ、普段は平静でも、身許判明者の知らせや関連記事に接する折々、不覚の涙が絶えることがありません。希望の松を枯れさせないため必死に取り組むふるさとの人たち、成田山新勝寺の薪の行事風景がありました。そして、大勢の死者を出した県立病院の上から撮った広田湾の幅いっぱいに盛り上がって押し寄せる濁流に呑み込まれた、まさにその運命の時の様相。そこは、かって、「ふと絶えし鉄路の音の伝えしか/海しらしらとわが母は逝く」とつぶやいた母の終焉の病院と、在りし日の高田松原の風景でした。あの日以来、津波被災地復興の前に立ちはだかる原発被害。まさに原発はわがふるさとの仇!そう思って、目にする行事に参加してきました。 (折々に)日民協総会で接した柳田邦男氏の命をかけた事故調の日々、地産地消エネルギーによる雇用確保策を強調される吉井議員、狩り集め労働者の無防護就労を慫慂する東電経営者の刑事告訴を言われる鎌田慧氏のお話。そして、会場に近付けない程に溢れた人人人に、団の旗は一体何処!?と懸命に探した超々満員の明治公園さえ圧する山本太郎(君)の熱誠コール等、憑かれたように聞き廻る日々でした。東京都慰霊堂での御霊ショックから参加した空襲訴訟の高裁結審に向けての作業も大詰めを迎えています。この間、折々訴えていた東京関係での津波警告にも、ハザードマップ改訂や「外から駆け込めるヒューマンプラットホーム」建設を!の答えがやっと出てきました。直下型地震は勿論、房総沖からの迂回津波でも多摩川遡上があるというのに、「慌てるな・離れるな、逃げるなら六郷河川敷!」なんてポスターが貼りっぱなし。これでは避難所指定で痛恨の思いを残したまま亡くなられた中里前陸前高田市長に泣かれてしまうからです。 (入団四〇年)が過ぎ、同期の仲間に古希表彰者が出るようになり、もう進行形の情勢話しは勘弁しての頃になっての、チョッピリは時代と同行する思いの日々。私の同行者は、三・一〇大空襲(と九・一関東大震災)そして三・一一被災関連の方々かなと思います。力尽き・力弱きが故に発信できない方々の無念の思いを、幾らかでも背負えと云うのが、私が団員であり続ける意味なのか。そんなとつおいつをしながら、こぼれないように付いて行く積もりです。「生き残り何して老いるこの日々を/迷いなくある有り難きかな」。


岩手県大槌町仮設住宅調査

神奈川支部  沢 井 功 雄

 二〇一一年九月一六日(金)から一八日(日)までの三日間、岩手支部の佐々木良博団員、小笠原基也団員が所属する岩手震災復興研究センター主催の岩手県上閉伊郡大槌町仮設住宅訪問調査に、東京支部の久保田明人団員、馬奈木厳太郎団員とともに参加してきた。同調査は、岩手県上閉伊郡大槌町の全仮設住宅(二〇一四世帯(全五五地区)に四六九七人(人口の約三分の一)が入居)を回り、アンケート用紙を配布して、用紙を返却して貰い、震災後の生活状況の実態を知り、復興政策への提言をすることが目的である。

 岩手震災復興研究センターは、神戸の兵庫県震災復興研究センターをモデルとして、岩手支部の団員と岩手大学の教員を構成員として設立されている。今回調査対象としたのは岩手県の中でも、最も震災による被害が大きい自治体の一つである大槌町である。今後、同センターとしては、三年間継続して大槌町の調査を行う予定であり、今回の調査がファーストステップである。なお、同センターは、陸前高田市でも、継続調査を予定している。

 初日は暑く、二日目は台風の影響でいつ降るかわからない雨(配布作業が終了し、宿泊先である海岸沿いの民宿に参加者全員が帰宿した夕方ころから降り出した)の影響で、体力勝負、急ぎあせりながらの作業であった。半数程度の仮設住宅は、住民が不在であった。配布が慣れるにつれて、時間的な余裕が出てきたこともあり、立ち話しながら、被災世帯の具体的な生活状況を具体的に聞いたり、お宅に上がらせてもらって、法律相談を行うようにしていた。久保田団員も同様のことをしていたようである。各種給付金(災害弔慰金、義援金、生活再建支援金)等の制度については、もうすでに皆知っており、相続、遺産分割の具体的方法等の個別・具体的な相談が多かった。勝手な印象であるが、大槌町では、一次受け入れ施設である避難所が八月には閉鎖したようであるが、三月の震災後、避難所生活が長引き、ストレスがたまり、避難所生活の終盤には、人に話しかけられることの億劫さ、苛立ちのようなものが、被災者に話かけた際に感じられたが、二次受け入れ施設である仮設住宅に入居してから、一か月以上が経過して、共同生活を行わなくてよいというストレス解放の面がある一方、いわゆる一人の時間を持てるようになったための寂しさからか、話しかければ、積極的に話をしたがってくるというようなものを感じた。

 一日目と二日目の配布作業終了後のミーティングでは、今後、アンケート調査の結果を集計しての活用方法が、議論になった。仮設住宅の問題点(仮設地区に熊が出る、仮設住宅内に杜撰な工事による欠陥住宅が散見される、バリアフリー対策が十分でない、交通手段(車)がない方への移動手段のケアが必要である、郵便ポストがない仮設地区が多い、防災無線が聞こえない、単身世帯、高齢者世帯の福祉、メンタルケアが問題である)については、アンケート集計前に、早急にまとめた上で、自治体に提言することの確認が行われた。さらに、久保田団員が、大学教員に対して、調査、提言をして、言い放しでは、被災者のためにはならないのであり、被災者自身にもアンケート結果を配布することや、被災者の要求を実現化すること、被災者のための運動を行うことが最も重要である。うち(久保田団員の所属する事務所)のような事務所では、伝統的にデモや座り込みや請願などをして、要求を実現させていくのであると、学生らがポカンとしている中、力説していた。ミーティング終了後、大学院生が、「大学の教員も動きの遅さには、正直イライラさせられることもあり、先生の話は大変勉強になりました。早速学長あてに、調査提言だけにとどまらないような対応をするよう、要請書を書きます。」と起案を始めていた。力説には、意味があったようである。

 大槌町訪問は、七月の団本部での訪問以来、二回目であるが、復旧(片付け)が進んでいるのは事実である。しかし、復興(まちづくり)のデザインなどは、他の自治体が復興計画を続々と出す中で、碇川新町長が、他の自治体の動きに乗り遅れまいと一二月までには計画発表すると急いでいるよう(飲食店などは全く開店しておらず、未だに買い物できるのはローソンやスーパー等だけである、あるいは車で隣の釜石市まで買い物しにいかなければならない)であり、特に建築関係については、東京のコンサルタント会社に発注しているとのことである。しかし、地元の実態をどこまで知っているかわからないコンサルタント会社の提案に、地域住民の声を具体的に反映させていけるような制度化の構築が極めて重要である。自宅を津波で流された被災者が、今後どこに住宅を建設するかについては、高台に移転したいという意見があるかと思いきや、意識して被災者に聞いていたところ、どうせ一〇〇〇年は、同じような津波はこないのだからといい、元の場所に自宅を建てたいという意見が圧倒的に多数であった。生活再建のお金は、加算し年金の二〇〇万円に義援金を加えただけでは、いくらあっても足りないであろう。雇用創出のためには、産業復興が、急務ではあるが、地元の商店街、漁業、観光業(宿泊した民宿は岩手県民にとっては有名な海水浴場があるが、地盤沈下のため砂浜つまり海水浴場は消滅してしまっている)の復興には幾年かかるであろうか。大槌町は、釜石市のベットタウンの機能を果たしてもいるが、釜石市も被災しており、釜石市自体の復興の問題は当然容易ではない。住まい、お金、仕事、被災者に現実にのしかかかる現実は極めて重いとひしひしと感じた。


保育制度を根こそぎ破壊する『子ども子育て新システム』を許すな

愛知支部  川 口   創

第一 今の保育制度が根こそぎ破壊される

 今、政府内で法案化が進められている「子ども・子育て新システム」をご存じでしょうか。去年六月に概要が示され(わずか一〇頁)、現在もワーキンググループで議論が進んでおり、ワーキングチームの「中間報告」がこの七月に出されました。そこでは、一二年中に法律を作り、一三年に実行に移すという拙速なスケジュールが示されました。

 この制度は「待機児童をなくすため」というのが表向きの理由ですが、この「新システム」の本質は、行政の保育責任の放棄です。この法案が通れば、待機児童解消どころか、「保育制度」そのものが破壊されてしまいます。

 まず、保育園に対しては、一定の基準をクリアすれば「指定」がなされ、企業立保育園なども積極的に「指定」をしていき、保育園の市場化を進めます。

 また、保護者と保育園との直接契約になり、行政は親の保育時間の認定をするだけで、子どもを保育園に入れる責任を放棄します。この結果、理論上行政に「待機児童解消」の責任自体がなくなります。 

行政は保育園に直接財政の支出をしません。保護者へ子ども手当の上乗せの金銭給付がなされますが(金額も割合も決まっていません)、その給付も含めた保護者からの保育料だけで、保育園は園の経営を成り立たせなければならなくなります。

 このため、保育園の経営は不安定になり、保育園の多くは廃園を余儀なくされると心配されています。

保育料については、親の収入に応じた応能負担から、保育時間に応じて一律に決める応益負担に変えます。これは子どもの貧困が問題となっているさなか、さらに追い打ちをかけることになります。長時間預ければ、当然費用は高くなります。その結果、子どもを預けることが出来ない親が増えてしまいかねません。共働きをせざるを得ない貧困家庭が増えている中で、「応益負担」に変えること自体、「待機児童をなくす」という目的に反しています。

第二 さらなる問題

 新システムでは、三歳未満と三歳以上とで制度分けます。自分で食べたりすることもできない〇歳児一歳児などの保育を責任もって行うためには、人手がどうしても必要です。

 本来は、三歳児未満が待機児童が多いのですから、ここを手厚く、という方向に進むべきですが、新システムでは、そういう方向に進みません。

 三歳未満については、園での保育ではなく、マンションの一室などでの「保育ママ」制度を積極的に導入します。

 この「保育ママ」は、保育士の資格はいりません。介護保険同様、一定の研修を受ければ資格が取得できることになります。

 これは、保育を、素人による「託児」化、「パート」化していくことを意味します。

 小さい子どもを預けなくてはいけない親は、プロの保育士さんがちゃんと子どもを見てくれる、保育園で子どもらしい生活が保障されている、と思うから安心して預けることが出来るのです。ただ預かってさえくれればいい、というわけではありません。

 保育事故が増加することが強く懸念されます。

 さらに、企業参入促進のため、「使途制限」を撤廃します。

 現在は、企業参入を認めている自治体でも、保育料で得たお金は保育に使用するように制限がかかっています。これを、新制度では取っ払います。

 例えば、レストランチェーンが保育に参入し、保育で稼いだお金を、本体のレストランの利益に回すことも可能になります。厚労省はこれを売りにして、企業に参入を促しています。

 しかし、もともと保育は「儲かる」「業界」ではあり得ません。

 それを「儲ける」のためには、人件費などを減らし、利益に回していくかが重要な関心事になってしまいます。「コスト削減」として人件費が削減され、職場は非正規職員ばかりにせざるを得ません。保育の質が低下していくことが目に見えています。

 保育を産業にすることで、子どもたちの命が犠牲になりかねません。

第三 新システムの制度はどこから来たのか。

 この新システムの議論はもともと、「経済成長戦略」の中で出てきた議論です。保育、幼児教育の「規制緩和」を図ることで、新たな市場が生まれ、雇用が生まれる、という発想から出発しています。ですから、この制度の狙いは、もともと企業の「新規参入」を容易にすることにあります。

 さらに、厚労省側の要求として、「介護保険」や「障がい者自立支援法」と同様、「行政は直接市民と関わらず、現場を民間任せにする」という制度に一体化したいという要求があります。同時に、財務省の「財政支出の抑制を容易にしたい」という要求も加わります。

第四 保育園はつぶれていく

 新システムでは保育園はどうなっていくでしょうか。

 これまで見てきたように、新システムによって保育の質は低下していくでしょう。

 また、保育料が応能負担から応益負担に変わるために、保育園(こども園)に預けることが出来ない親が増えてしまいかねません。

 また、基本的に保育園(こども園)は親からの保育料だけで経営をしなければならなくなり不安定な経営を余儀なくされます。残るのは、高い保育料が必要な「ブランド園」と、非正規雇用ばかり雇っている企業園、そして、マンションの一室で行う「保育ママ」チェーンということになりかねません。

二 この七月の中間報告

 特に、この七月の中間報告で、既存の幼稚園制度も残し、三歳児未満の受け入れ義務を入れないことになりました。

 もともと、このシステムの必要性の建前として、待機児童の解消と幼保一体化の必要性がいわれていました。

 しかし、中間報告では既存の幼稚園を残す選択肢も残したため、結局幼保一体の建前自体がどこかに行ってしまいました。

 もともと、幼稚園と保育園が別々だから不便だ、などという親からの不満はありません。

 この議論の建前の一つである幼保一体化の必要性は全くなかったのです。

 制度としても幼保一体化をしないのであれば、新システムの建前の一つが崩れています。

 さらに待機児童の点ですが、確かに、待機児童問題が緊急であることは言うまでもありません。

 しかし、中間報告では、待機児童が問題となる三歳未満の子どもの受け入れ義務を導入しないとしました。最も待機児童が多いのは三歳未満児です。ここの拡大をしようとしないのでは、待機児童の解消にはなりません。

 「新システム」の建前はすでに崩壊しています。

 本当に待機児童を解消しようと思えば、「新システム」などという制度破壊をしている暇はないはずです。今の制度で十分対応出来るし、すべきなのです。

第五 最後に

 子どもは、〇歳でも個性ある存在です。この制度は、子ども達を個性ある存在としてとらえず、「サービスの対象物」として扱うに等しいものです。

 この制度に関するワーキングチームの議事録を見ても、子どもに軸をおいた議論がされていません。

「子ども・子育て新システム」の下では、保育事故が増え、子どもの貧困が固定化し、少子化に拍車がかかりかねません。個人の尊厳を柱とする日本国憲法の理念と相反する機械的な「保育」が広がるでしょう。

 こんな制度が現実になれば、本当に取り返しのつかないことになります。

 来年の法案提出を何としても阻止していくことが大事です。そのため、署名などを積極的に取り組んでいきたいと思います。ご協力よろしくお願いいたします。


台風一二号による和歌山の被害について

和歌山支部  小 野 原 聡 史

 今回の台風一二号によって、和歌山県では新宮市、那智勝浦町、田辺市などを始め広範なところで被害を受けましたが、その原因が、八月三〇日以来九月四日まで降り続いた豪雨により、降り始めからの雨量が一〇〇〇ミリメートルを超えるところが続出したため、土砂崩れや川の氾濫による被害が生じたということで、ほとんどが川沿いの被害だというのが特徴です。

 和歌山県と三重県の県境を流れる熊野川とその支流の氾濫で新宮市中心部やその上流域の旧熊野川町(現新宮市)、旧本宮町(現田辺市)が被害を受け、那智勝浦町では那智川沿いと太田川沿いの地域で氾濫や土砂崩れによる被害、田辺市では旧大塔村の古座川の支流で堰止め湖ができるなど大きな被害が出ました。

 また日高川沿いの牧場から牛数百頭が流される被害も出ました。

 県内の死者は一〇月四日現在で五〇名、行方不明者五名と全国の約半数にあたる人的被害を受けていますが、中でも那智勝浦町の死者、行方不明者は県内の半分を占めています。

 私の従兄弟も那智川沿いの井関という所に住んでいて、人的被害はありませんでしたが、床上浸水の被害に遭いました。

 従兄弟に救援物資を届けるべく事前に聞くと、ドコモが通じないのでauがほしいとの話でしたので、auを契約し、その他に台車、ペットボトルの水、ポリタンク、カセットコンロ、ガスボンベ、軍手を用意し、妻が米、古着、古タオル、レトルト食品、化粧水、果物、お菓子を用意し出発しました。

 古着、古タオルは妻が仕事をしている新婦人の仲間を通じて用意したもので、大きなビニール袋に三袋ほど用意していました。

 化粧水などを含め女性ならではの気遣いと感心したものです。

 果物は、東日本大震災と違って被災地が限られている今回の被災者はおにぎりやラーメンなどは入手できるだろう、甘くておいしい物、口当たりのいい物と考えて用意しようとしたものです。

 一一日に届けに行ったのですが、井関を通って那智山へ行く県道は時間規制がされていますので、その時間に合わせて県道に入りましたが、すぐに対面通行となり、止められました。

 しばらく待った後、対面通行のところに入ると、橋のすぐ上流で県道の川の方の基礎部分が水で削り取られており、さらにその先では中央線より先まで基礎が流出しており、県道の東側の畑か何かに土を入れて道路として通れるようにしていました。

 橋が架かっているところでは流木などが引っかかり、水が渦を巻いて県道の基礎を削り取ったようです。

 途中には県道から押し流されたと思われる自動車が田んぼの中に落ちていたり、川の方にある歩道の柵にいろいろな漂着物が巻き付いているなど、濁流が県道の上を流れていったことを示す痕跡が様々な場所で見られました。

 従兄弟の家はこの県道を左折して一〇メートルくらいのところにあるのですが、聞いたとおりその道はなくなっており、その先の道路に入り従兄弟の家に到着しました。

 被害から一週間好天気が続いていたこともあって一階は相当片づけられていましたが、一階は床上一メートルあたりまで壁に泥水の跡形が残っており、畳を上げた後の床板も一部破損しており、床までガラスとなっている掃き出しの引き戸はガラスがほとんど割れてなくなっているなどその破壊力の強さをまざまざと見せつけられました。

 幸い建物の基礎には影響がなく、二階では生活できる状態で、停電は解消されていたが、一階にあった台所が使えないことと断水は続いているので、庭に置かれた木の机の上にカセットコンロやペットボトルの水などが置かれており、幸い好天に恵まれたことからここで食事などをしているようでした。

 但し、従兄弟の長男の自動車は水没で使用不能、奥さんの車は流されたということでした。

 従兄弟は消防署に勤めていますので、当日は役所に詰めていて自動車は無事でした。

 家の周囲を見ると、上流側には三段くらいのブロック塀があるのですが、そこに後輪を乗り上げた自動車がそのままになっていたり、反対側の川の方向を見ると、住宅街より低くなったところに田や畑があるのですが、そこには人の頭くらいの大きさと思われる石が流れてきて、ごろごろ転がっていました。

 勝浦で従兄弟と会い、被災や救援の話を聞きましたが、中でも山間の集落に自衛隊の人たちと一緒に入ったときのこと、自衛隊員たちが本来任務の他に見かねて一人住まいの年配女性宅の泥出しなどを行ったところ「兵隊さんありがとう」と言われたとの話には笑いました。

 当の自衛隊員はどう受け止めたのでしょうか。

 さて私は、一一日に行く前から車を手配しようと考えており、最初は自分の名前で買えばよいと軽く考えていたのですが、和歌山市では軽自動車でも車庫証明が必要ということに気づき、軽自動車の車庫証明が不要な那智勝浦町の従兄弟の名義にするためには、登録事項変更申請書に譲受人の署名押印が必要であり、住民票が必要となるので、それらの段取りをして契約をし、一八日に届けました。

 一八日に行くと、ゴミなどを運び出すボランティアの車もやってきましたが、この車が来るとゴミの分別のためにゴミ置き場に集まるということで、このときにはプラスティックだけを積んでいました。

 このような招集が日に何度とあるため、家の片づけがなかなか進まないと従兄弟の奥さんはぼやいていました。

 その後の台風一五号では那智川はさほど被害が出ませんでしたが、熊野川では再び被害が出たようで、堰止め湖もそのままであり、まだまだ台風シーズンが続くので心配が続きます。


準社員一名に対する整理解雇事件の勝訴判決を得て

長野県支部  蒲 生 路 子

 本年九月二九日、松村文夫団員を弁護団長として、団員の先輩弁護士らと弁護団を組んで闘ってきた整理解雇事件について、整理解雇の四要件全てについて判断を加え、解雇無効を訴える原告の主張をほぼ全面的に認める内容の勝訴判決を得ましたので、ご報告いたします。

 本件解雇事件の特徴として、原告が準社員という身分であり、被告会社には原告の他に準社員はいなかったこと、解雇予告前に被告会社は三〇名の希望退職者を募集し、解雇予告の約二週間前に希望退職者が募集人員に達していたにもかかわらず、原告ただ一人が解雇されたことが挙げられます。

 被告会社は、関連企業の債務引受等により従前から厳しい経営状況であったところ、リーマンショックにより更に減収減益となり、不採算部署(原告の所属部署)を廃止する等の経営合理化策を実施したが及ばず、人員削減に踏み切らなければならなかった、原告は所属部署の廃止により剰員となったが、原告に配転可能な部署は2箇所しかなく、その二箇所も原告によって配転を拒否された、等と主張しました。

 昨今の不況の深刻さは論をまたないところであり、実際に被告会社の提出した決算書類からは、本件解雇の約四月前の決算期には売上が前年比約六割にまで減少し、多額の損失を計上していた事実が明らかになっていました。また、原告は準社員であり、しかも小学生の子を持つ女性であることから、夜勤ができないという事情がありました。

 しかし、他方で、被告会社は、売上が激減したとする本件解雇日の約四月前の決算期においても、約四億三〇〇〇万円の利益剰余金を計上しており、本件解雇当時は、高額の機械の受注が回復しつつありました。また、被告会社は、本件解雇通告の僅か六日後から派遣社員ないし請負会社の従業員の受け入れを開始し、その人数は解雇日までの間に二二名に達しており、本件解雇後も増加する受注に対応すべく、受け入れを継続しておりました。

 原告が準社員であったことについても、被告会社の就業規則では、準社員は退職金を除き、定年、退職、解雇等、全て正社員の規定を適用すると記載されております。また、被告会社の役員の尋問の結果、被告会社の主張とは異なり、同社は原告に対し、原告に勤務可能な条件での配転の提示をしていないことが明らかとなりました。

 判決は、①人員削減の必要性については、本件解雇当時、被告会社の経営状態が相当程度に悪化していたものの、本件解雇の前後を通じて被告会社の受注状況がある程度改善傾向にあったこと、本件解雇の前の決算期は営業損益がマイナスであったのに対し、本件解雇時を含む決算期にはプラスに転じていたこと、本件解雇の前後を通じて派遣社員ないし請負会社の従業員を相当数受け入れていたこと等を認定し、原告唯一人を解雇すべき切迫した人員削減の必要性があったとまで認めることはできないとしました。また、被告会社の実施した正規社員から非正規社員への入れ替えについて、本件解雇を有効たらしめるための要素としての人員削減の必要性の有無という観点からみた場合(判決は、整理解雇の四要件を、四要素と記載しています)、かかる実態を安易に容認することはできないとしました。

 その外、②解雇回避努力についても、原告の主張どおり、これを果たしていないことを認め、③人選の合理性についても、被告会社における準社員という地位は、パートタイマー等の雇用調整の容易な労働者とは終身雇用制の下で雇用されている点で本質的に異なり、会社との結びつきの面でも正社員に準じた密接な関係にあると解され、解雇の相当性判断に際しては、正社員と同様に判断するのが相当であるとしました。④手続の相当性については、原告に対し被告会社の主張を前提とする説明を一定程度実施しており、直ちにこれを欠くような事情までは認められないとしましたが、他の要素を満たしていないことから、解雇は無効であると結論づけました。

 数日前に、被告会社が控訴したとの連絡を受けました。控訴審でも頑張ります。


「市原野ごみ焼却場談合住民訴訟」の「弁護士費用請求訴訟」最高裁判決について

京都支部  飯 田   昭

一 最高裁判決

 二〇一一年九月一日、最高裁判所は「市原野ごみ焼却場談合住民訴訟」の「弁護士費用請求訴訟」において京都市の上告を不受理とし、住民側の上告(「一億円支払え」)を受理したうえ、九月八日に「上告棄却」の判決を言い渡しました。これにより、「京都市は住民訴訟の弁護士費用として五〇〇〇万円を支払え」との大阪高裁判決(二〇〇九年四月二二日。判時二〇四四号五八頁)が確定しました(遅延損害金を含めると約六〇九〇万円)。

 高裁判決の評価については、団通信一三〇九号の拙稿「住民訴訟の活性化につながる判決」をご参照ください。

二 最高裁判決の意義

 住民側の上告が受理されたのは、京都市が国に返還した国庫補助金(約八億)を住民訴訟による回収金(約二四億。元本一八億三一二〇万円と遅延損害金)から控除して京都市の「受けた利益」を計算するという原審判断を否定し、あくまで回収金を基準にすべきと判断したためです。

 この点についての判示は下記の通りです。これまで住民訴訟の弁護士報酬事案では自治体側の同種主張が下級審で認められることが大半であったことから、大きな意義があるため、住民声明では要旨「もし住民訴訟が提起されていなかったとしたら京都市は談合による約一八億円もの税金を放棄していたのです。他方、住民訴訟の結果、京都市に約二四億円の返還がなされました。住民訴訟への正当な弁護士報酬額の確保は住民訴訟の活性化のために必要不可欠であるのもかかわらず、その形骸化を図った京都市の姿勢が司法により断罪されたものとして高く評価」しています。

 「旧四号住民訴訟を提起した住民が勝訴した場合に上記『相当と認められる額』の支払を普通地方公共団体に請求することができるとされているのは、当該勝訴判決により当該普通地方公共団体が現に経済的利益を確保することになるという事情が考慮されたことによるものと解される。そして、当該普通地方公共団体は、当該勝訴判決で認められた損害賠償等の請求権を行使することにより本来その認容額の全額を回収しうる地位に立つのである。他方、本件のような国庫補助金相当額の返還は上記請求権の行使とは別の財務会計行為によるものであるから、その返還に係る国庫補助金相当額が最終的には当該普通地方公共団体の利得とならないとしても、当該勝訴判決の結果現に回収された金員が、当該弁護士の訴訟活動によって当該普通地方公共団体が確保した経済的利益に当たるものというべきである。そうすると、国の補助事業における入札談合によって普通地方公共団体の被った損害の賠償を求める旧四号住民訴訟において住民が勝訴した場合の上記「相当と認められる額」の認定に当たり、勝訴により確保された経済的利益の額として判決の結果当該普通地方公共団体が回収した額を考慮する際には、その額は、現に回収された額とすべきであり、現に回収された額からその回収に伴い国に返還されることとなる国庫補助金相当額を控除した額とすべきものではないと解するのが相当である。したがって、原判決中、別件訴訟に関する上記「相当と認められる額」の認定に当たって、本件回収額から本件国庫補助金返還額を控除した額を別件訴訟の一部勝訴により確保された経済的利益の額とした部分は、相当ではないものといわざるを得ない」。

三 最高裁判決の不十分点と克服への展望

 しかしながら、最高裁判決は、上記判断をしたのにもかかわらず、次の通り述べて、高裁判決を変更しないで、上告を棄却してしまいました。

 「しかしながら、原審の適法に確定した事実関係等を踏まえ、別件訴訟における事案の難易、上告人らから訴訟委任を受けた弁護士らが要した労力の程度及び時間、別件訴訟の判決で認容された額、同判決の結果被上告人が回収した額、住民訴訟の性格その他諸般の事情を総合的に勘案すると、別件訴訟に関する上記「相当と認められる額」を五〇〇〇万円と認定した原審の判断は、結論において是認することができるというべきである。」

 本事件の高裁判決時点ではこれまでで最高の認容額でしたが、その後、神戸地裁二〇一〇年九月一六日判決(元本認容額一六億三七七〇万円。報酬認容額七〇〇〇万円。確定)、横浜地裁二〇一一年三月二五日判決(元本認容額三〇億一七九〇万円。報酬認容額一億円。東京高裁係属中)と前進した判決が出されていることからすると、本最高裁判決が、「ブレーキ」に使われる懸念もあります。

 これは、二〇〇九年四月二三日最高裁判決に関する調査官解説(法曹時報六三巻一号二二六頁)が、「『相当額』の水準としては、普通地方公共団体が弁護士に委任し、自ら訴訟を提起した場合の弁護士報酬額がまず念頭に置かれるべきである」としていること、京都市の場合、代理人に支払う弁護士費用は、高額事件の場合一般の報酬規定よりかなり低額であることが影響していると思われます。また、「相当と認める金額」についての事実審の判断の裁量範囲を最高裁が破棄するのは極端な場合に限られるとの判断もあると思われます。従って、後行の住民訴訟での報酬を抑える行政側主張として、本最高裁判決を利用することは、少なくとも上記理由から失当です。

 克服の方向としては、少なくとも談合による不法行為の場合、弁護士費用は損害として業者から回収できるものであり、現に、本件高裁判決後の住民側申し入れを受けて京都市は既に川崎重工を被告として、「五〇〇〇万円を支払え」との裁判を提起しているところです。また、二段階訴訟になった現在において、内容証明で支払わない場合、談合による不法行為と相当因果関係のある損害として弁護士費用一〇パーセントを加えて請求すれば認容される可能性が高いことからも、不法行為訴訟による弁護士費用認容額割合を基準とするのが、むしろ自然であると思います。

(上記点については後行の同種訴訟において、克服していただきたいところです)


非正規労働者の権利実現全国会議・札幌集会を開催しました

北海道支部  平 澤 卓 人

 二〇一一年九月一七日、北海道大学クラーク会館講堂におきまして、非正規労働者の権利実現全国会議・札幌集会「まっとうなワークルールと元気な労働組合 なくそう!ワーキングプア」(実行委員長 伊藤誠一弁護士)を開催しました。

 同集会は、北海学園大学で労働政策、労働経済がご専門の川村雅則准教授(以下「川村准教授」といいます。)、札幌の労働組合の方々に加え、札幌弁護士会の貧困と人権対策本部や日本労働弁護団北海道ブロック、自由法曹団北海道支部の弁護士らで実行委員会を作り、準備を進めてきたものです。

 司会は、自由法曹団北海道支部の神保大地弁護士と労働組合の女性の方が務めました。

 集会では、まず川村准教授から「北海道における非正規労働者の実態」と題する報告を行いました。報告では、北海道の建設労働者が、季節雇用が多く、社会保障制度を利用できない状況になっていること、タクシー労働者の営業収入が減り、賃金が最低賃金割れすらあること、トラック運転者が長時間の拘束を受けるにもかかわらず低い収入水準であること、北海道大学の非正規労働者が正規職員と同様の仕事をしているにもかかわらず年収は二〇〇万円程度であること、保育労働において期間雇用が増加する一方で八割以上の労働者が翌日に疲労を持ちこすような苛酷な労働に従事していること等が報告されました。

 次に、札幌市財政局の方から、現在札幌市で準備中の公契約条例についての報告を頂きました。公契約条例とは、公契約の相手方に規定水準以上の賃金の支払を義務付けて、労働者の労働条件の安定と仕事の質の確保を目的とするものです。先行して公契約条例を制定した川崎市、野田市と比較しながら、現在の議論状況についてお話頂きました。

 さらに、北海道大学の道幸哲也名誉教授から「雇用終了をめぐる法律問題」と題する講演を頂き、解雇、雇止め、退職の法律的な問題についてお話を頂きました。

 そして、札幌地域労組の鈴木一書記長から「こうやって、労働組合で職場を変えよう」との特別報告を頂きました。市立病院の請負スタッフについて、団体交渉で、雇用期間の延長、社会保険の完備を勝ち取り、さらに、解雇や雇止めにする際には「協議の上労使合意で行う」ことを明記した労働協約を調印できたという事案などが紹介されました。

 最後に、自由法曹団北海道支部事務局長の渡辺達生弁護士がコーディネーターを務め、川村准教授、道幸哲也名誉教授、鈴木一書記長に京都弁護士会の中村和雄弁護士を加えてパネルディスカッションを行いました。パネルディスカッションにおいては、一人でも入れる労働組合「札幌ローカルユニオン結」に加入して、現在闘っている労働者の方々から発言を頂きました。さらに、仙台で派遣労働をしていた女性で、雇止めにされ、現在仙台地方裁判所で訴訟を行っている原告の方からもご発言を頂くことができました。

 集会には、およそ三〇〇人の方に参加して頂くことができました。また、懇親会にも、労働組合の方々や実際に裁判をしている当事者の方、研究者や全国の弁護士にご参加頂き、非正規労働の問題に団結して取り組んでいく決意を新たにすることができたと思います。お越し頂いた皆さまにこの場を借りてお礼申し上げます。

 なお、本集会にあたって作成した「非正規労働者白書」につきましてはWEB公開を予定しております。川村准教授が作成した北海道の労働の現状や、北海道における労働組合・弁護士の取組みを紹介していますので、ご覧頂ければ幸いです。


裁判闘争勝利と派遣法抜本改正・

有期保護法制確立を目指す第六回全国会議が開催されました

事務局次長  斉 藤 耕 平

 去る一〇月八日(土)、団本部にて、標記会議が開催されましたので、報告いたします。

 連休初日にもかかわらず、遠方からは宮城、滋賀、京都、大阪、兵庫の団員にご参加いただいたほか、全労連、共産党、全印総連など諸団体からもご参加をいただき総勢三六名での開催となりました。

 会議では、非正規労働者に関する裁判事件、正規労働者に関する裁判事件、労働者派遣法改正問題と有期労働契約法制に関する情勢のそれぞれについて、報告と検討・意見交換が行われました。

 各地からの報告では、派遣に関し、日本トムソン(兵庫)、NTT三重(京都)、ソニー、仙台コロナ等(宮城)、日産自動車、資生堂アンフィニ(神奈川)、日本電気硝子(滋賀)、大日本印刷(埼玉)、横河電機(東京)、福井パナソニック、ダイキン工業(大阪)の各事件について、有期に関し、いすゞ、ホンダの各事件について、団員からご報告をいただきました(大日本印刷事件からは、原告の方にもお越しいただきました)。会議前半の主な関心は、やはり、パナソニックPDP事件最高裁判決以降、引き続き厳しい情勢にある非正規切り裁判闘争において、状況をどのように打開するかという点に集まりました。

 本年九月に入り、パナソニック福井事件地裁判決、日本トムソン事件大阪高裁判決と、パナソニックPDP事件最高裁判決に追随して、非正規労働者の就労実態を十分に顧みない不当な判決が相次ぎました。これらの判決は、①偽装請負も労働者派遣に該当し、労働者供給に該当せず、中間搾取の問題は生じない、②労働者派遣法は取締法規であり、派遣労働者に何らかの権利・権限を認めるものではなく、間接的に派遣労働者の権利利益を守ろうとしているにとどまる、③労働者派遣法が守ろうとしている派遣労働者の利益は、不法行為法上、法的保護に値する利益とまでは評価できないなどといった、極めて硬直的な理屈を踏襲し、判断のよりどころとしています。

 会議では、派遣・期間従業員の就労状態の実態や、派遣先・派遣元の悪質性をより詳細に主張し、最高裁判決の言う「特段の事情」に結び付けることはできないか、派遣先ではなく、派遣元との関係にスポットを当てることで、状況の打開を導けるのではないか、といった有益な意見が交わされました。「偽装請負は派遣法違反だが労働者派遣である」とする最高裁判決の論旨がおかしいことは明らかですし、取締法規に違反している大企業になんら社会的制裁が科されない現在の運用が著しく不当な結果をもたらしていることはもはや明白です。今後もねばり強く裁判闘争を続けていくことで、最高裁判決に対する理論的な批判を強めていくことが重要と考えます。

 もっとも、派遣元の解雇を争って勝利した神奈川のラディア・ホールディングス事件の報告や、派遣先との団交権について各地の労働委員会で救済されているとの大阪からの報告は、裁判闘争勝利に向けた道筋を示すものとして、非常に有益な示唆を得たと考えています。

三 正規労働者の分野では、JAL整理解雇事件について報告がなされ、会議時点でほぼ証拠調べ終了の段階に至り、人員削減の必要性に関する会社側の主張が、実際の売上高・営業利益・更生計画との比較において数字上の裏付けに乏しいものであることが明らかとなりました。

 また、労働者派遣法改正問題では、非正規雇用労働者が全労働者の三八・七%と過去最高に至った実態や、非正規雇用を首切り自由の「景気の調整弁」として「活用」することをもくろむ日本経団連が、今年九月に「経団連成長戦略二〇一一」を発表し、「近年、労働者派遣法の改正法案の国会への上程に加え、有期労働契約及び高齢者雇用の規制強化に向けた議論や、最低賃金の大幅な引き上げなどがなされている。このような過度な労働規制強化は、国内事業をさらに悪化させ、雇用の減少につながるおそれが強い。」などとして、規制強化反対、さらなる規制緩和を主張していることなどが報告されました。財界の主張は、結局のところ、人件費の削減と使い捨て雇用を正当化するための詭弁です。現在の派遣法を派遣労働者の権利を保護するものに抜本的に改正し、登録型派遣・製造業派遣の全面禁止、派遣労働者と正社員の均等待遇等を実現することの必要性が再確認されました。

 今回の会議では、非正規裁判闘争だけでなく、その原告団を支える全労連・共産党からご参加をいただくとともに、ご発言をいただきました。そこでは、震災以降業界団体の巻き返しが根強くなっている一方、被災地の雇用問題が極めて深刻に陥っている状況(それにもかかわらず、計画停電の際も正規従業員は一〇〇%雇用が保障されていたとの報告もありました)や、職業訓練の予算はついているが、雇用の安定を図る施策等については予算が削減されているといった、現場の生の事実をご報告いただきました。このような現場の声と連帯し、さらに裁判闘争を強めていくことも重要です。

 会議の最後には、非正規労働者の権利利益を守るべく、最高裁判決をはじめ各地の不当判決に対する批判を強め、これを広めるためのパンフレットの作成、一一月一六日に院内集会を実施し、非正規従業員の就労実態を国会議員に直接届けることなどが決定されました。

 非正規労働者が全労働者の約四割を占めるに至り、非人間的な労働が現に社会の基本にあることの深刻さを改めて認識するとともに、非正規従業員を取り巻く困難な情勢を打開し、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)の促進拡大をはかるために、団が一丸となって取り組む決意をいっそう固めた会議となりました。

 一一月一六日の院内集会、ぜひともご参加ください。

  労働者派遣法の早期抜本改正と派遣切り・期間切り裁判の勝利をめざす一一・一六院内集会

 ○日 時 二〇一一年一一月一六日(水)一三時〜一七時(一五時ころから国会議員要請を行います)

 ○場 所 衆議院第一議員会館 第一会議室

 ○内 容 (1)国会情勢報告

        (2)派遣切り・期間切り裁判の報告 など

 ○主 催 自由法曹団 全労連 労働法制中央連絡会


今一度ビギナーズ・ネットへのカンパのお願い

〜最大の山場・給費制一〇〇〇人パレードの成功に向けて〜

東京支部  黒 澤 い つ き

 すでに団通信やFAXニュース等でご案内のとおり、来るべき一〇月二七日には給費制存続を求める一〇〇〇人パレード(日比谷公園〜国会周辺)が開催されます。全国各地での団員をはじめとする法律家や若者達の奮闘の甲斐あり、政府の設置したフォーラムの「給費制廃止」の結論に対し、野党のみならず与党民主党内からも批判が相次ぎ、国会内の空気を徐々に給費制存続へと傾かせることができました。政府及び民主党に対し、給費制存続を願う国民の声を届け、今臨時国会での裁判所法改正を迫るための最大の山場が一〇〇〇人パレードです。平日昼間の開催のため、なかなか動員が難しいと予想されますが、法律家を目指す修習予定者やロースクール生達が全国各地から一丸となろうと意気込んでいます。

 とはいえ、先立つものがなければ東京には行けず、訴えを届けることができません。今まで先生方からいただいたカンパは、院内集会や議員会館前街宣に集結するために、有意義に使わせて頂きました。本団通信に同封されているチラシに、何枚か写真を載せましたので、ご覧ください!今一度カンパをお寄せ頂き、法曹を目指す若者が自ら民主的司法を勝ち取るたたかいに、ぜひお力添えください。よろしくお願いいたします!!

振 込 先:ゆうちょ銀行 〇二二一〇―七―一一七六八四

口座名義:ビギナーズ・ネット

★他行からのお振込は、以下の店名・口座番号(口座名義は同じ)

 店名(店番):二二九(ニニキュウ)


「最新 くらしの法律相談ハンドブック」は役に立ちますよ

東京支部  小 口 克 巳

 前回に続き改訂作業のお手伝いを担当しました。このたび最終校正も終わり、九〇周年の行事に間に合わせることができそうです。執筆者各位に感謝です。全国での活用を期待しています。

事務所の宣伝に

 一〇冊以上注文すると事務所名や弁護士名など外装に記入するサービスが受けられます。法律相談を担当している相談所や付き合いの深い団体、個人に贈呈するのに格好の書籍です。勿論、買っていただければいっそう結構。是非、ご活用ください。そして、「自由法曹団ここにあり」も示すことになることも当然です。各団員事務所が全国の仲間と連携して大きな仕事をしていることも自ずからわかるというものです。是非活用してください。

事務所に一冊と言わず

 机上に一冊あれば便利に使えること請け合いです。どの論稿も団員が考え抜いて書いたものです。法律問題についての対処をもれなく書いてあります。また、最新の情報もチェックして遺漏のない解説になっています。私事ながら、「校正」を担当して「自分だったらどう答えるだろう」と考えながら読みましたが、非常に勉強になりました。事件対処、法律相談対処でうっかりも含め、ミスをふせぐためにも常備して参照する文献として推奨します。事務所に一冊と言わず、机上など手の届くところにおいておく価値があると思います。事務所内でもそれぞれの弁護士が手元に置かれたらどうでしょうか。

 本書の活用を期待します。


最新くらしの法律相談ハンドブック刊行!!

事務局長  杉 本   朗

 『最新くらしの法律相談ハンドブック』は自由法曹団九〇周年企画の一つとして鋭意編集作業を進めてきましたが、ついに完成いたしました。執筆、編集作業にご協力をいただいた団員のみなさん、ありがとうございます。

 本書は、多くの団員の実体験を踏まえた内容となっており、きわめて実践的で実戦的な記述で、類書に例を見ないものとなっています。

 団通信の今号に、チラシを同封いたしましたので、ぜひお買い求め下さるとともに、団内外の各方面に広めて下さい。

 ご注文は、同封のチラシにご記入の上、団本部までFAXでお送り下さい。

 団本部扱いの場合のみ、二割引の特別価格四二〇〇円(税込み)となります。

 九部までご注文の場合は、送料(七〇〇円程度)をご負担いただき、代金引換便でお送りします。

 一〇部以上の場合は、送料は出版社負担で、代金は後日振り込みとなります。

 よろしくお願いいたします。