<<目次へ 団通信1398号(11月11日)
【自由法曹団九〇周年&東京・お台場総会特集】
福岡支部 永 尾 廣 久
情性に流されず、あきらめない
久々に心打つパネルディスカッションだった。
「これからの一〇年をどう取り組むか」という問いかけに対して、川口創団員が「一〇年後には日米安保条約のない日本になっているようにしたい」と言ったのを聞いて、はっと胸がうたれた。学生のとき以来、「アンポ反対」「アンポ粉砕」と叫んできたのに、近ごろは日米安保条約はあるのがあたりまえの気分になっていた。
沖縄の伊波洋一元市長も、アメリカと中国のはざまで日本が埋没しないためには、いつまでもアメリカ言いなりの日本であってはならないと強調した。戦後六〇年もたつのにアメリカの基地がいつまでも沖縄そして日本各地にあるなんて、本当に情けないことだ。
渡部容子団員の初々しい話に深く心を動かされた。横浜でずっと続いている憲法ミュージカル劇に一三歳のときから出演していたこと、そのなかで憲法大好き人間になって弁護士を目ざしたこと、広島・長崎にも出かけて現地を見てきたが、今、震災被災地が同じような状況になっていると実感したことなどが生き生きと語られた。そして、ビギナーズ・ネットの代表として給費制廃止反対の運動に取り組んでいる体験から、まずは声をあげること、あきらめないことだと強調した。あきらめないことの大切さがトークのキーワードになっていった。
村田浩治団員は働く者を大切にすることによって企業も伸びる、九九%を大切にする日本にしようと呼びかけた。正社員化をすすめ、社員を大切にすることによってこそ企業の持つ力は持続的に発揮されると私も思う。いま、多くの企業まで目先の経費削減の利益にばかり目を奪われ、長い目で企業の活力を維持し存続・発展させることが考えられていないのが残念でならない。
全労連代表はいつでも舌禍事件をひき起こしていると言いながら、弁護士への苦言が述べられた。弁護士が首を切られた労働者にまで高額の着手金を要求することがある。みんなお金がないのに・・・。そして、裁判の勝ち負けにこだわりすぎる。負ける裁判だって、ときには運動のために裁判をする意義があるのに、それを見ようとしない。
いずれも、まことにもっともな耳の痛い指摘であり、胸に手を当て我が身を振り返った。
懇親会の途中で演壇に上がった京都の中村和雄団員のさわやかな笑顔にいたく惹きつけられた。京都を変えようという確信に満ちた笑顔は、聞いている私の方が大いに励まされた。右手を大きく開いてかざし、「原発なくせ」の声を京都から上げていきたい、住民本位の福祉優先のあたたかい市政に変えたいという中村団員の訴えは聞いていて、ずんと心に響くものがあった。前回、わずか九〇〇票あまりで惜敗した中村団員には、今度こそ京都市長に当選してほしい。私の切なる願いだし、心から応援したい。
翌朝の団総会では、大阪の団員から梅田章二団員への支援の訴えがあった。
大阪では橋下知事(前)がやりたい放題、暴虐の限りを尽くしている。テレビで人気を取ったというだけで横紙破りの強権政治を推し進めてきた。同じ弁護士であることが恥ずかしい。ファシズムにならって、ハシズムという言葉まで生まれて評判になっているとのこと。その言動は狂気としか言いようがなく、許せないものであるが、恐ろしいことにテレビ映りがいいせいか、烽「人気のままである。
その幻想の実態を暴き、一刻も早く幻滅へ引きずり落とす必要がある。
えっ、総会が赤字
小部正治幹事長の報告のなかで、最近の五月集会・総会が赤字になっていて、その原因は参加者の減少、とりわけ事務局の参加が減っていることにあるというので驚いた。そう言えば、九〇周年も総会も参加者が少ないと思った。
交通の便が良いとかえって参加者が少ないとか、地方のほうが観光を兼ねることが出来るので参加者が多いというのは、これまでも聞いてきた。
しかし、それにしても東京(お台場)での九〇周年記念行事なのに、東京そして関連周辺の弁護士と事務局の参加が少ない気がした。東京の団員と立ち話すると、たしかに中堅団員の参加が少ないという。私は、以前から老舗の団事務所はメンバーが固定化し老齢化して若々しさを喪っていること、もっと新人・若手を採用しないと将来展望がないと叫んできたが、果たして今回の総会への東京そして関東の団員の参加者はどうだったのだろうか。
そして、これは同じことが大阪支部についても言える。大阪支部の総会議案書のなかで井上耕史団員が次のように書いている。
「五月時点での全国の団員は二〇〇九人。そのうち大阪支部は一八三人で、東京支部に次いでいる。ところが、五九〜六三期の新入団員数は全国で四〇九人だが、大阪支部の新人団員二二人というのは、愛知(四一人)、福岡(三四人)、埼玉(三二人)、神奈川(二八人)を下まわっている」
ここに東京の新入団員数が書かれていないのは残念だが、東京も既存団員数の割合ほどは増えていないのではないだろうか。それはともかくとして、大阪支部が五年間でわずか二二人増というのは悲惨というしかない。年に四人あまりしか増えていないというのは信じられない。この数字を前提として「合格者一〇〇〇人」という提言をするのは、私にはまったく納得しがたい。大阪支部は身内だけで小さく固まって、発想まで小さくなっているとしか思えない。でも、まだ間に合う。今からでも遅くはない。事務所を大胆に分割・再編して若手弁護士と一緒に新しい「営業」分野を開拓していくことを望みたい。
過払い事件が減るなかで事務所の財政状態が厳しくなっていることは私の事務所でも共通している。しかし、それをいかに打破するかが、真剣に問われているのだと思う。地道に信頼を獲得して「販路」を拡げていく活動とあわせて、大胆に打って出る新規開拓作戦も必要なのではないだろうか。その意味で、財政状態が厳しいから東京での団総会に事務員は代表参加にとどめるというのは悪循環ではないかと思う。
私の事務所も決して裕福な財政状態ではないけれど、弁護士四人(不参加二人)、事務職員七人(不参加二人)で参加した。なによりの研修になった(と確信している)。ホームページ、ケータイ、そして市民向け学習会の案内など、広告・宣伝に全力をあげている。座しているわけにはいかない。ロースクール出身の若手弁護士の活力に頼りつつ、「販路」を拡大して、生き延びていきたい。世間のリーガル・ニーズにこたえたい。そんな気持ちで頑張っている。
総会に参加するなかで情勢を身体でつかみ、所員が一丸となって積極的に社会へ打って出る姿勢と行動が今こそ求められているのではないだろうか。(続く)
東京支部 瀬 川 宏 貴
この度事務局次長に就任しました、東京支部の瀬川と申します。所属は東京合同法律事務所、仙台修習の新六〇期です。ロースクールを出て弁護士になった一期目にあたります。
弁護士になって間もなく四年が経ちますが、この二年ほどはB型肝炎訴訟に注力してきました。全国各地の原告・弁護士と国を相手に闘うことができ、得難い経験をさせていただきました。
団の活動にはこれまで五月集会や総会に行く程度でしたが、行く度に全国各地の団員がありとあらゆる人権課題に取り組んでいるのを目の当たりにして、自分に気合を入れ直していました。特に自分と同世代の若い団員が試行錯誤しながら問題に取り組んでいる姿には刺激を受けていました。これから二年間は全国各地ですばらしい活動をしている団員のお役に立てるよう尽力していきたいと思います。
趣味は読書で、司馬遼太郎、丸谷才一、井上ひさし、藤沢周平など大正末期から昭和初期生まれの作家を愛読しています。そのせいか、よく年齢より五歳ばかり年上に見られます。大学時代のあだ名が「局長」、ロースクール時代が「リーダー」、修習時代が「支店長」でした。これからは立派な「次長」として務めを果たしていきたいと思います。これからどうぞよろしくお願いします。
所属長・東京都による公災手続き拒否は出来ないことを確認
東京支部 萩 尾 健 太
さる九月一四日、東京高等裁判所第二三民事部は、一審被告地方公務員災害補償基金(公務員労災の審査機関、以下基金という)の責任を認めず一審被告東京都(以下東京都という)の責任のみを認め慰謝料等五〇万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
東京都の中学校教員であった一審原告早川由紀子(以下原告という)は、一九七三年に頚肩腕障害を発症し、校長らによる療養妨害によって症状が悪化していく中で、一九九二年に公務災害認定請求書(以下「請求書」という)を校長、東京都教育委員会を経由して基金に提出しようとしました。ところが、何度も突き返され、最終的には校長が請求書を保管したまま、本件訴訟の中で明らかになるまで一六年間も経過しました。その間、原告は不当な分限免職処分の憂き目にあい、公務災害認定請求権が侵害されたまま、病状悪化のもとで呻吟し続けてきたという事案です。
原告は、二〇〇六年八月一六日に、基金に対して、請求書を都教委に受理させなかった不作為の違法確認、東京都(都教委)に対して、請求書の受理と基金への送付、一審被告らに対して、長年にわたる請求書未送付の不作為についての損害賠償を求めて提訴しました。裁判所の訴訟指揮により、原判決前に、原告の請求書は都教委を経由して、初めて所属長の押印の無いままに基金のもとに送付され、原告の頸肩腕障害が公務に由来するものかどうかが、一八年の歳月を経て、ついに審査されることとなりました。そのため、原告は、不作為の違法確認及び義務付けの訴えを取り下げ、損害賠償請求のみとしました。ただし、基金は、原告の請求書について全く関知していなかったと主張しました。よって、本件の主たる争点は、
(1)校長や都教委職員の助力義務、協力義務違反が認められるか、
(2)損害賠償請求権が時効にかからないか、
(3)基金の責任が認められるか、の三点となりました。
これらの点につき、原判決は、
(1)所属部局長たる文京七中校長は、過失によって、原告が公務上外認定を受ける法的利益を侵害したと認定しました。
(2)そして、原告の請求書が長年、校長室のロッカーに保管されていたことから、請求書を預かり状態のまま放置したという不作為による義務違反があったと認定し、原告はそれを知らなかったため消滅時効は完成していないとして、損害賠償を命じました。
高裁判決がそれらを維持した点は高く評価できます。しかし、一方で、校長の故意と都教委職員の不法行為を認定せず、原告の損害額を弁護士費用分と併せても五〇万円と著しく低く認定したことは、都教委職員らが一八年以上にもわたり原告の頸肩腕障害の療養と回復の機会を奪い、病状回復を困難にさせたことを顧みなかった事実を不当に軽んじており、到底納得できません。
(3)高裁判決は、校長は公務災害認定請求手続きにおいては基金の「公権力の行使に当たる公務員」であるとした原判決を取り消して、基金の責任を否定しました。しかし、基金東京都支部は都庁にあり、支部長は都知事、職員は都職員であって基金支部と東京都との一体性は明らかであり、本来その責任が追及されねばなりません。
もっとも、この判示の論拠は「都教委や校長が第一審被告基金に替わって公務災害認定請求を受理するものと見ることはできない」というものです。これは、判決が、基金業務規程の定めから、所属部局長には、公務上外の判断権はなく、所属部局長による証明は、職務上把握している事項に対するものであり、被災職員自身による証明資料の収集を容易にするためであるとしたこと、都教委や校長の被災職員に対する人事管理権ないし監督権を前提として、校長の証明と都教委経由は必要な指導や教示をすることを可能とする手続であると位置づけたことによります。その結果、本事件のように、校長らが「労災ではない」と不受理にしたことを断罪し、都教委や所属部局長が証明できないとして不受理とすることが全く認められないことになります。これは実務に大きな影響を与える重要な判断です。
さらに、これまで所属部局長の証明がない場合には、都教委及び基金は、請求書の送付及び受領を一切行っていませんでしたが、原判決も、“所属部局長が違法に証明を拒む場合には、民間の労災申請手続きと同様、証明印がなくても申請を受け付けられると解釈すべき”と判示しており、高裁判決はこの判断を支持しました。このことは、原告だけでなく、証明が得られないばかりに公務災害認定請求手続を行うことができなかった大勢の公務員の公務災害認定に道を開くものです。
原告と訴訟団は、東京都がこの判決を受け入れ、上告をしないことを強く求めましたが、東京都は上告受理申立をしました。原告と訴訟団は、あくまで基金の責任を追及して、上告受理申立をしました。
これまでの各位のご支援に感謝するとともに、原告の公務災害の認定がなされ一審被告らが償うまで、引き続きご支援、ご協力をお願いする次第です。
なお、弁護団は、和久田修弁護士、増田智美弁護士と、私です。
東京支部 田 村 優 介
来る二〇一一年一一月二七日(日)、「さよなら原発東京北部ラリー&パレード」と銘打った企画を大々的に行います。
「ラリー」とは耳馴染みがないかと思いますが、「集会」のことです!ウォール街に端を発した“We are 99%”運動など特にアメリカで集会をやるときによく使われる用語でもあります。これから浸透させていきましょう。
城北法律事務所が呼びかけて、東京北部五区(豊島、板橋、練馬、文京、北)の労働組合、女性団体、市民団体などなど、東京北部地区にゆかりのあるメンバーを中心に構成された「さよなら原発 東京北部ラリー&パレード」実行委員会が主催です。
城北では、事務所一丸となって取り組んでおり、当日は弁護士、事務局だけでなく、その家族、一族郎党(!)が結集する予定です。
当日は、佐藤栄佐久元福島県知事にもお話を頂きます。
呼びかけ人、賛同人にも、菊池紘元団長のみならず、漫画家のちばてつやさん、映画監督の高畑勲さん、「さようなら原発一〇〇〇万人アクション」呼びかけ人の落合恵子さんなどなどなど、豪華メンバーが結集!山本太郎さんにも声をかけています。
当日は、市民集会&パレード、リレートーク(福島からの声、東京で子どもを育てる母親、福島を取材しているジャーナリストなど)、その他ミニコンサート、城北のガンジー大山弁護士によるバルーンアート教室などなど、いろいろな催しを行います。パレード用のいかしたコールも城北の小沢弁護士中心に検討中です。
場所は、我らが自由法曹団の本部・東京支部のお膝元、後楽園駅前の礫川公園(れきせんこうえん)です!後楽園駅から団に歩いて行く途中左手に見える、あの公園です。
一一月二七日は、ぜひお誘い合わせの上、後楽園に集合を!さよなら原発の声を上げるのは今です!
「さよなら原発 東京北部ラリー&パレード」
◇日時 二〇一一年一一月二七日(日)一四時〜
(開場一三時)ラリー終了後パレードをします。
◇会場 文京区・礫川公園 (れきせんこうえん)
◇雨天会場 文京区民センター・3A(三五〇人収容可)
(呼びかけ人)海老名香葉子(エッセイスト)、小林秀一(元ボクシング日本チャンピオン)、宝田明(俳優)、ちばてつや(漫画家)、菊池紘(弁護士・城北法律事務所)、広瀬憲義(北部春闘共闘会議議長)、小泉尚之(北部労働組合協議会議長)
(賛同人)落合恵子(作家・さようなら原発一〇〇〇万人アクション呼びかけ人)、鎌田慧(ルポライター・さようなら原発一〇〇〇万人アクション呼びかけ人)、高畑勲(映画監督)
ホームページ http://www.toshima.ne.jp/~hokubu_g/
京都支部 佐 藤 克 昭
(京都支部幹事長)
京都支部 毛 利 崇
(京都支部事務局長)
全国の団員のみなさん、京都では来年二月に京都市長選挙が行われます(来年一月二二日告示、二月五日投票の予測です)。先日の団本部九〇周年レセプションでもご挨拶をさせて頂きましたが、前回京都市長選挙に引き続き中村和雄団員(三七期)が他に先駆けて立候補を表明し、すでに活動を全面展開しています。
現職市長は、立候補の意向は表明していますが、正式に立候補表明をしているのは中村団員だけです。京都支部は、中村団員が立候補表明をした直後の支部八月例会を「中村団員を励ます会」として、中村市政誕生に向けて全力を挙げて奮闘することを確認しました。前回は九五一票という僅差で破れましたが、今回は現職市長が相手ということで厳しい戦いも予想されます。「もう善戦はいらない、勝利あるのみ!」という意気込みで総力を傾ける決意です。また、支部団員に限らず幅広い弁護士の力を結集する目的で、法律家の会が結成され、支部団員が会事務局の中心的役割を果たしています。今後、法律家の会独自の宣伝物の作成活用なども含め、中村団員勝利のためにやれるべきことは全て行うことを決意しています。各種団体や地域の活動に対する法的アドバイスを迅速に行うため、今年一二月二〇日から投票日まで法律家選対を開設し、団員が終日詰めることも既に決定されています。
前回の京都市長選挙を始め、かつて故吉田隆行団員や森川明団員が立候補した京都府知事選挙でも、全国の団員のみなさんには厚いご支援を頂きました。中村市政実現に向けて旺盛な活動を実施するために、今回の京都市長選挙におきましても、これまで以上の厚いご支援(カンパ)を賜りますよう、全国の団員のみなさんに心よりお願いする次第です。
【募金の送金先】
京都銀行 寺町二条支店 普通 三四四二七六二
自由法曹団京都支部 代表 森川明
東京支部 中 野 直 樹
もう一つの九〇周年のまとめ
過日、団創立九〇周年事業と総会が開催されました。この節目にあたり、この一〇年間に逝去された自由法曹団員を憶う文集を発行し、団員の皆さまにお届けします。八〇周年の年に一九九二年から二〇〇一年までの一〇年間に自由法曹団員として生涯を閉じられた六四名の追悼文集を発刊しました。今回は、本来ならそのときに掲載すべきであった二名の物故団員と二〇〇二年から二〇一〇年までの間に新たに旅立たれた七四名の方々を追想するものです。
編集者は、宇賀神直団員(大阪支部)、荒井新二団員(東京支部)、団専従事務局、そして私です。
一人一人の団員と歴史を大事にする気風
団は、毎年の活動を総括する総会議案書を作成するともに、「自由法曹団物語」を発行して、一九二一年の創立から今日までの団員と団の活動の歴史を編んでいます。同時に団は、毎年の総会に際し古稀を迎えられた団員の志と足跡を著す文集を作成し、総会参加者に配布しています。追悼文集も、人権と民主主義の発展のために自分の人生の一部を捧げてこられた個々の物故団員の存在の証の一つです。
人生を共有した方々との別れだからこそ
追悼文の性格上、お気楽に目を通してくださいと言えない重さがあります。特に同期・心友の死去を悼む文、早すぎる後輩の死に直面する執筆者の無念・悲しみが突き刺さります。そのようなつらさがあることは否めませんが、執筆者が物故者と共に生きた時代を回顧しながら精一杯の魂を込めて記した文章は、個性的でありながらも、社会的・具体的事実を基礎として完成度の高い叙述で、なるほど心打つ文章はこのように書くものかと学ばされることも多々あります。
私が弁護士の出発時に出会った日本共産党国際部長緒方さん宅電話盗聴事件で、一〇年間弁護団をご一緒した上田誠吉さんには、八〇周年の際の追悼文集の「発刊に寄せて」を書いていただきました。追悼文を素材に、戦前から現代に至る「民衆の弁護士の志操」という切り口で、数名の団員の生き様を取り上げて、歯切れよい文章でまとめておられます。上田さんは、この一〇年間亡くなられた団員二名の追悼文を団通信に寄稿されています。この上田さんご自身が今回の追悼文集の掲載対象者になられたことに、改めて寂寥感を深くしました。
「定年」前の他界
弁護士には定年はありませんが、通常定年とされる「六〇才」前の死去団員は二一名です。八〇周年のときも同数でした。三〇歳台、四〇歳台が、それぞれ三名おられ、三名が五〇期台であることを知り衝撃を受けました。
倒れる原因は圧倒的にガンです。突然死が二名。気になるのは、心の病から死を選んでしまったと考えられる方が一〇年前のときには一名であったのが、今回は三名になっていることです。
仲間をみつめて、記憶して、そして後の世代に引き継ぐ事業
入団される弁護士の活動の幅が広がり、団との接点がほとんどないという方も増えています。八〇周年のときの冊子の編集では、追悼文の多くが団通信に掲載されており(四五名)、その他支部ニュース、弁護士会会報、会派ニュース等でほとんどフォローでき、書き下ろしをお願いした方は六名でした。ところが、この一〇年間となると、団通信掲載文が二七に激減し、その他の掲載媒体の追求をするも、二八名の方について新たに書き下ろしをお願いすることとなりました。執筆を引き受けていただく団員を探し出すことも容易でなく、さまざまな伝手をたどっての成果となりました。お忙しい中、掲載詩誌の探索にあたっていただいた皆さま、執筆を引き受けていただいた団員の皆さま、そして仲介役を買っていただいた団員の皆さま、大変ありがとうございました。
追悼の作品群は、団員の絆の再認識・新発見をする場です。少し腹に力を入れる必要がありますが、ぜひお読みください。先立たれた方々の弁護士としての心と行動から私たちにリレーされている真髄といってもよいものが感じ取れるはずです。
最後に、創立から二〇一〇年一二月までに自由法曹団に在籍して亡くなられた方は合計で二六二名となります。
東京支部 今 泉 義 竜
一 四団体事務所説明会のご案内
またこの季節がやってきました。恒例の四団体(自由法曹団、青法協、日民協、労働弁護団)事務所説明会を、以下のとおり開催します。
日 時:一二月一〇日(土)、午後一時〜
場 所:主婦会館プラザエフ「カトレア」(JR四ツ谷駅から徒歩一分)
六五期は、今年一一月下旬から一年間の司法修習を行い、来年一二月登録予定の期です。青法協ロースクール生部会会員も複数名合格しており、すでに青法協新六五期修習生部会結成に向けた動きがあります。現在私たちに課せられた課題の果てしない大きさからすれば、少しでも多くの若い力をこの四団体に結集させる必要があることは自明です。一つでも多くの事務所が新しい力と出会える場になればと思います。
全国の団事務所におかれましては、六五期採用について全く検討する余地がないということでない限り、極力ご参加いただくようお願い申し上げます。
なお、都合により参加できない遠方の事務所で、是非新人をという事務所につきましては、メールまたはFAXにて、詳しい募集要項(事務所名、採用担当者、連絡先、採用予定人数、勤務条件、事務所の特色等)を送付下さい。当日参加した修習生に紹介致します。
二 当日の予定
一二時半会場
一三時開始(学習会)
六五期司法修習生を対象にした学習会で、震災・原発被害との闘いについて行う予定です(講師:久保木団員)。この時点では、事務所側は参加していただかなくても結構です。
一四時 事務所説明会開始←遅くともこの時間までにお越しください。
一七時半 懇親会
弁護士おひとりにつき説明会の参加費用として一万円を頂戴いたします。そして、懇親会には別途五千円をいただきます。
三 質問・参加受付
参加される事務所は、事務所名、参加者名をご記入の上、左記宛先までFAXまたはメールで一二月一〇日までに御連絡下さい。
東京法律事務所
電 話 〇三-三三五五-〇六一一
FAX 〇三-三三五七-五七四二
東京支部 西 田 穣
近年の司法試験合格者急増により、年々修習生の就職が厳しくなっていると言われています。その是非はともかく、自由法曹団としては、人権活動等に強い意欲を持つ将来の法曹にできるだけ多くの選択肢を用意する取り組みとして、昨年より、自由法曹団のホームページで単年ごとに更新する修習生向けの事務所紹介ページを用意しました。昨年は二〇以上の団員事務所から情報提供をいただき、多くの団員事務所と修習生のマッチングに寄与することができました。引き続き今年も事務所情報を募集したいと思います。
情報提供のルールは昨年と同じですが、簡潔に紹介します。なお、このシステムは、あくまで団員事務所からの情報提供のみを目的としており、採用方法、時期、基準等に本部は一切関与しません。
* ホームページ上で喚起する注意事項(要約)
・このホームページは、団員の求人活動及び司法修習生の求職活動を支援することを目的として設置する
・自由法曹団は、このホームページの情報提供によって生じる一切のトラブル等につき責任を負わない
・このホームページの情報は、情報提供者である各団員弁護士の情報を所定の形式にしてそのまま掲載するのを原則とし、自由法曹団はその情報の真実性(変更の有無等)について責任を負わない
・このホームページで提供される情報は、原則として、掲載開始の翌年に弁護士登録予定の司法修習中の方(今回は、原則として新六五期)を対象とする。
* ホームページの利用方法
(1)来年司法修習終了予定の修習生(新六五期)の採用予定がある団員事務所は、各事務所の情報を提供して下さい(自由法曹団のホームページにフォーマットがあります。手書きも可ですが、できればホームページから書式をダウンロードして、メールで本部まで下さい。手書きFAXも対応します)。二〇一一年一一月三〇日を〆切とします。
(2)費用は一年間で二〇〇〇円(書換料、削除料を含む)です。
申込後、振込先
ゆちょ銀行
口座番号 〇〇一一〇―四―一一〇五四一
加入者名 自由法曹団
に送金して下さい。
(3)採用を決めた場合は、情報の削除のため、電話で結構ですので本部まで連絡を下さい。その際、団本部ないし支部の企画等の情報を提供するため、その他団内の議論等のため、修習生の情報(氏名及び修習地程度)を提供して下さい。
(4)掲載期間は、一年間弱(一一ヶ月くらい)です。今回の情報は、二〇一一年一二月ころ(修習開始時期)から二〇一二年一一月ころまで掲載します。
このホームページの情報は、青法協修習生部会へ告知したり、青法協のプレ研修に参加した合格者を通じて広めてもらったり、四団体パンフレットとともに配布する等を行い周知していく予定です。
この情報提供は、特に四団体説明会に出席する労力等の負担が大きい各地域の個人もしくは少数団員事務所に積極的に求人情報を提供いただき、一人でも多くの団員事務所と修習生のマッチングを成功させたいという観点からの取り組みでもあります。是非、積極的にご利用下さい。
なお、このシステムは単年で更新を続けていきますので、昨年に提供された事務所情報(で抹消されていないもの)は、二〇一一年一二月には抹消させていただきます。引き続き今年度も情報提供いただける事務所は、お手数ですが、再度申し込みをいただけますようお願いします。
東京支部 西 田 穣
自由法曹団九〇周年企画の一つとして、一〇年の時を経て、「最新 くらしの法律相談ハンドブック」が改訂・刊行されました。皆さん、是非一冊購入されるとともに、法律相談を担当される団体や日常的な市民の相談を受けている議員などに、贈呈もしくは購入を勧めて下さい。通常の法律相談ではなかなか巡り合わないレアな市民生活の悩みなどまでカバーできる有用な書籍です。
今回改訂手続のお手伝いをさせていただきましたが、私自身も大変勉強になりました。改訂を行った中で、前回のハンドブック刊行時に弁護士になっていなかった者は私一人であり、ある種、一番新鮮な気持ちで改訂手続に取り掛かることができました。今まで知らなかった分野のみならず、すでに知っていた分野の相談も、原稿を見直す作業の中で新たな発見がありました。この発見の感動を、是非この一〇年の間に弁護士になった新人世代の団員にご購入いただき、共有していただきたいと思います。
なお、価格は団本部扱いであれば二割引の特別価格四二〇〇円(税込)で購入できます。また、一〇冊以上注文すると事務所名や弁護士名など外装に記入するサービスが受けられます。是非、ご利用下さい。
最後に、執筆にご協力いただいた全国三五〇人もの団員の皆様に心から感謝申し上げます。
◆自由法曹団結成九〇周年記念出版
最新 くらしの法律相談ハンドブック』の普及にご協力下さい。
★団員価格で購入できます。
自由法曹団本部あてにFAXでお願いします。
定価 五二五〇円(税込)→ 団員価格 四二〇〇円(税込)
★ 一〇冊以上のお申込みの場合、送料無料/請求書・振込払い
★ 九冊以下のお申込みの場合、送料実費/代金引換(その場で着払い)
★ ご希望ならば、無料で名入れもできます。(一〇冊以上の購入に限る)