<<目次へ 団通信1450号(4月21日)
山口県支部 内 山 新 吾
三月一三日、山口地裁がわき上がった。派遣切りにあった労働者を派遣先マツダの正社員(期間の定めなし)と認める判決が出たのだ。
この画期的な判決(後注(1))についての、正確な解説は別稿(後注(2))に譲る。私は、この判決文から聞こえてくる声を書きとめることにする。以下、判決くんの独白・・・。
* * *
「意外な判決だ」なんて、言わないで下さい。確信を持って書いたんですよ。労働弁護士のみなさん、もっと自信を持って下さい。そして、裁判官を見限らないで下さい。そういえば、内山弁護士は、最終弁論(なぜか、「しんぶん赤旗」に掲載された)で、「ヘビ年にふさわしいひと皮むけた判決を」と失礼なことを言ってましたね。そんな低レベルのシャレは気にしないで、私は、マツダ側が「手も足も出ない」ていねいな判決を書いてみました。
* * *
「マツダだから勝てた」なんて、言わないで下さい。たしかに、この事件の顔(マツダならではの汚いやり方)には切り込みましたよ。でも、よく読んで下さい。さまざまな違法な派遣に応用できる中身があちこちにありますよ。マツダのケースだけ勝たせることができる、というヤワな理屈じゃありませんよ。ヤワでない理由は、もう一つ。最高裁判決以降の労働者側を負かせた一連の下級審判決を、意識したつもりです。「負けた」数の分だけ、強いものになっているはずです。あの松下PDP大阪高裁判決より、ずっと。
* * *
わかりやすい判決でしょ。法律家じゃなく、労働者が読んでも理解できる内容になっているはずです。マツダでの「働かせ方」の実態を事実に即してていねいに認定しているからです。派遣元と派遣先が一体となった違法なシステム、その実態にしっかり向き合っているからです。そして、理屈が素直だからです。
* * *
決して、最高裁にさからっちゃいませんよ。ちゃんと、松下PDP判決の枠組みの中で判断しています。「特段の事情」があれば、派遣労働契約は無効になるんです。別に、「特段の事情」がない限り、「特段の事情」の有無の判断に踏み込んじゃいけない、というわけじゃないんです。普通の裁判官のプロ意識からすると、「特段の事情」という穴があったら、入りたくなるものです。「権利の濫用」論で、ていねいな職人芸を発揮して結論をひっくり返す、これ裁判官の醍醐味です。「解雇権濫用論」だって、あんなに豊かに広がっているじゃないですか。今度の判決では、「特段の事情」という穴へのはまり方を示したつもりです。これまで迷っていた裁判官も、これからは、はまりやすくなるはずですよ。
* * *
マツダの気持ちになって書きました。マツダは、決して、派遣労働者を「景気の調整弁」としてだけ、「モノのように紙切れ一枚で首を切る」ためだけに、使ったんじゃないんです。マツダの社是は「人は宝」ですからね。マツダが欲しかったのは、技術のある熟練労働者なんです。いい車をつくらないといけませんからね。そうしないと、企業間競争に負けちゃいます。その方が効率もいいですし。当然のことです。だから、マツダは、派遣労働者の「定着」を狙ったんです。でも、そこに無理がありました。派遣法の根幹には「常用雇用の代替防止」というのがあって、派遣はあくまでも「一時的臨時的」な労働力需給調整だということになっています。この肝心のところとマツダの思いとの間に、どうしても矛盾が生じてしまうのです。マツダが派遣受入期間について、「組織的かつ大々的な違法」を行ったことには、必然性があるのです。「人は宝」のマツダの立場に立つことによって、より矛盾が明らかになり、違法の重大性がうきぼりになるのです。なお、私は、マツダの気持ちがわかるあまり、その責任を断罪する言葉がきつくなってしまいました。御容赦下さい。くりかえして言います。マツダの気持ちになって考えよう。
* * *
裁判所の出番だと思いました。「形式」でなく「実質」で判断する。司法の力の見せ所だと思いました。制度の根本趣旨を大事にし、法改正の動きもふまえる。派遣法の根幹を堅持しつつ、派遣法の枠を越えたのです。どうすることが本当に派遣労働者を保護することになるのか、真正面からの理屈を展開した結果です。どうです、原告準備書面に負けないくらい迫力があるでしょ。
* * *
マツダの原告が一〇数名いたことは、それだけで重みがありました。人それぞれの事情がある中で、全体として、現場の状況もわかってくるし、数は力だと思いました。法廷に出てくるだけでも大変そうだ、ということも伝わってきました。体をこわした人もいるんでしょ。せっかくいい判決を書いたのですから、高裁でそう簡単に破られないはずですから、一日も早く全面解決をして下さい。原告を楽にしてあげて下さい。そして、この私も守って下さい。
* * *
蛇足ですが、原告代理人の中の、若い弁護士の活躍は見事でしたね。一読して、内山弁護士が書いたものではないことがわかる、緻密な準備書面。生真面目で優秀な私にぴったりでした。あっちこっちの同種の事件の弁護団と交流し学んだことをいかして、オリジナルなものをつくったようですね。この判決は、彼らと私との共同作品ともいえるものです。大賀一慶、横山詩土両弁護士は、精力的に裁判の準備と飲酒を重ねる中で、「プロフェッショナル」なんとかというNHKのテレビ番組に出るぞ、と語り合っていたようですね。それくらいの資格はあると思いますよ。でも、出演は、最終的な勝利を勝ちとってからですね。
* * *
(注(1))
クーリング期間を悪用した「サポート制度」(三ヶ月と一日だけの正社員期間をはさんで、派遣をくりかえすもの)によって、派遣受入期間制限を潜脱して派遣労働者を使い続けたマツダ。
これに対して、山口地裁(山本善彦裁判長、松永晋介裁判官、林風R莉子裁判官)は、三月一三日、派遣労働契約を無効とする「特段の事情」があると認めたうえで、派遣先マツダとの間の黙示の労働契約の成立を認め、一三名の原告について、マツダ正社員の地位を確認した。(なお、残り二名については、サポート期間を経ていなかったとして、棄却。)
この判決に対して、マツダは控訴した(こちらも、二人について控訴した)。マツダは、直ちには控訴しなかったが、結局、「他への影響」を考慮して控訴したようである。代理人は、事実上、更迭された。もう、マツダだけが相手の訴訟ではなくなった。
(注(2))
弁護団の要である大賀一慶弁護士が、団五月集会特別報告や労働弁護団の機関誌に書く報告を参照して下さい。判決の「正しい訳」がわかります。
ちなみに、私は、「弁護団長」とはいえ、記録・資料の読み込みすら不十分で、長い準備書面は書けず、途中で体調を崩して休んだりもしました。なので、私の書くものは、かなり、いい加減です。したがって、判決の正しい理解には、判決文そのものと、「正しい訳」を読んでいただくことが不可欠です。
(大事な補足)
弁護団が少々疲れてきたころ、仁比聰平団員が弁護団に加わりました。マツダの問題を国会で追及し、政府にその違法性を認めさせた当事者です。仁比団員の存在は、空気を変えました。原告も弁護団も傍聴者・支援者も励まされました。判決くんがつぶやいていました。「どうしても、国会議員に見えてしまう・・・」
千葉支部 秋 元 理 匡
一 スラップ訴訟
最近、スラップ訴訟(恫喝訴訟)と呼ばれるものが増えているといわれる。スラップ訴訟とは、相手に応訴の負担をおわせ、攻撃・圧迫することを目的として法的手続をとること、という位に定義できると思う。訴訟を起こされれば、裁判に対応し、弁護士にも相談し、そのための費用負担も発生し、原告の請求が認容されれば一定の負担が生じることを覚悟しなければならない点で、精神的・経済的負担・リスクは決して小さくない。
二 労働組合の結成と仮処分申立て
今回報告するのは、千葉県内の学校法人暁星国際学園(以下「学園」)が労働組合役員に対して起こした仮処分命令申立て事件である。
二〇一二年三月、学園はある教員に対して事務職への配転を命じたが、その教員は不当配転であると主張して労働審判を申し立て、それ自体は調停成立により解決した(後述の弁護団員ではない弁護士が担当した。)。しかし、申立人に協力した他の教員への圧迫があったので、教員らは健全な職場環境を獲得するため労働組合を結成し、千葉私教連にも加盟した。
すると、学園は、労働組合の中心的なメンバーに対し、賞与減額、配置転換などの不利益処分を課した。
さらに、一二月一〇日には、仮処分命令を申し立てた。その内容は、要旨、(1)組合は、学園がセクハラ、パワハラを行ったこと、違法なことを行ったと指摘することをしたり、千葉私教連をして行わしめたりしてはならない、(2)学園の周辺地域でビラ配布等の凱旋活動をしてはならないというものであった。申立ての理由としては、るる経緯が主張されていたが、要するに、組合設立趣意書を作成し学園側に交付した行為をもって、学園の業務遂行権が侵害されるという内容であった。労働組合というのは些細な違法・不当性を指摘しては金銭要求をする総会屋のようなものであり、組合が設立したからには様々な情宣活動によって学園の名誉が毀損され生徒も減り事業が立ちゆかなくなるというのである。仮処分申立書には、さらに、理事長ら個人が原告となる名誉毀損等の本案訴訟も予定していると記載されていた。
しかも、学園は、債務者となった労働組合役員三名を個別に呼び出し、学園役員と弁護士が組合役員に対し、そのような仮処分申立書の控えを交付した。その段階で千葉私教連を通じて弁護士に相談があった。
三 「申立て自体が不当労働行為」
数日後、千葉地裁木更津支部から、組合役員三名に申立書(かなりの部分が補正されていた)が送達され、組合側はただちに答弁書の作成に取りかかった。答弁書では、概ね次のような論陣を張った。(1)申立ての趣旨が抽象的である。(2)組合の設立により業務遂行権が侵害されるというのは、端的に組合敵視政策を宣言しているようなものである。(3)学園の主張する業務遂行権侵害の因果経過は被害妄想である。(4)そのようなことのために組合役員らに応訴の負担を負わせるのはスラップ訴訟であり、それ自体が不当労働行為である。
そして、学園は千葉私教連の活動も制約することを求めていたので、千葉私教連も補助参加した。
年も押し迫った一二月二八日に第一回審尋が開かれた。裁判所は学園に申立ての取下げを迫ったようであるが、学園はこれに応じなかった。裁判所は組合役員に対して「街頭宣伝はしない」といった約束はできないかなどと水を向けて取下げに向けた「条件整備」をはかったが、組合がそのような要求に応えられるわけがない。
四 仮処分事件の終了
年が明けて二〇一三年、本件は合議係に回付され、一月二四日に第二回審尋が開かれた。そこで申立て取下げが実現した。
黒津英明裁判長は非常に巧みな訴訟指揮をした。そこには、組合設立自体に敵意を剥き出しにし、裁判所に組合活動圧迫を命じさせようとしたことに対する怒りがあったのかもしれない。
組合側に対しては、これまで違法な活動はしていないし、これからも違法な活動をするつもりがないことを確認した。そのような当たり前のことを前提に、学園に対しては以後労働組合に対して誠実に対応すること、学園代理人弁護士に対しては学園の誠実な対応のために法的助言をすることを、それぞれ確認し、申立てを取下げるものとした。この内容は審尋調書に記載されている。
申立てをした学園側が、弁護士ともども、組合への対応を約束させられ、組合に武器をもたせた結果となった。
五 成果と課題
スラップ訴訟の対応には色んなパターンがあると思う。裁判所が裁判を受ける権利自体を否定することは相当ハードルが高いと思われるので、スラップ訴訟だと主張するだけで裁判所を説得しきれると確信をもつことはできない。請求原因事実が事実に反することを淡々と指摘するもの、理論的に成り立たないと主張するもの、申立て自体が違法不当と主張するもの等々。今回は、申立ての基礎となる事実が組合設立趣意書の作成・交付という、何ら問題のない行為であったこと、学園が組合敵視政策を極めてストレートに表現していたことから、組合役員側は、申立ての不当労働行為性を真っ向から主張した。裁判所がそれをしっかり受け止めてくれたのだと思う。
労働組合を結成すれば、それを敵視して圧迫する使用者は多い。しかし、働く者の要求と、それを実現するために組合を結成した志を掴んで離さず、戦いの正当性に確信をもつことの重要性を確認したものである。
とはいえ、これは場外戦である。売られた喧嘩なので買いはしたが、組合役員らに対する不利益処分の是正と健全な職場環境の獲得、そのための力関係の構築や団交ルールの確立こそが実現されなければならない。当該・上部組合とも連携してしかるべき活動を行う所存である。なお、組合役員の代理人は、中丸素明、島貫美穂子各団員と秋元である。
事務局次長 上 田 月 子
一 概要
平成二五年三月二三日、午後一時から五時まで、全労連会館二階ホールで、シンポジウム「首切り自由を許すな!!退職強要、解雇、雇止め、派遣切りとのたたかい」を開催した。二〇〇人定員の会場が、満員になった。
シンポジウムは二部構成のパネルディスカッションで行った。
二 パネルディスカッション
(1)第一部「退職強要・解雇とのたたかい」
第一部のパネラーは立正大学准教授の高橋賢司さん、全労連副議長・JMIU委員長の生熊茂実さん、今村幸次郎団員だった。
冒頭に、「現場からのたたかいの報告」を受けた。IBM解雇事件の当事者の松木さんは、IBMの解雇の手法を詳しく話した。
電機・情報ユニオンNEC分会分会長の小山さんは、電機リストラは今や一五万人に迫っている。NECでは、社員をA(残す)、B(残してもよい)、C(リストラする)にランク分けし、Cの人が退職するように追いつめている、と報告した。
これを受けて、パネラーが問題提起した。今村団員からは、日本経団連発表の二〇一三年版経営労働政策委員会報告の説明がなされた。第二次安倍政権における経済財政諮問会議、規制改革会議、産業競争力会議の内容も紹介された。「(労働者の)数量調整」とか、「人材の過剰在庫」などの表現が普通に使われており、労働者を人と思っていないことが良く分かった。
高橋さんは、以下のように語った。近時のリストラの特徴は、法律武装された巧妙なものである。また、整理解雇の形式を取っていても、会社にとって望ましくない者(組合員や中高年、傷病者など)を狙い撃ちしている。IBMのように退職強要時だけ成績を下げることは、公正評価義務に反している。JAL事件は、更生手続中の解雇後売上げが伸びるのが通常なのだから、路線拡張は見込まれており、人員が必要となることも見込まれていたのに人員削減の必要性があるかは疑問だ。また、EU法やアメリカ法では許されない中高年へのリストラが日本では容認されている。
生熊さんは、主にIBM解雇事件に言及した。IBMのイエッター社長はインタビューで、「リストラではなく労働者の新陳代謝」と言ったとのことだ。IBMと言えば、一目置かれる時代もあったのにと、当該解雇事件について元社員から会社の解雇の手法を嘆くメールが寄せられたとのことだった。
続いて、会場発言を四件いただいた。内二件は、JALの解雇事件の当事者からだった。パイロット団長の山口さんは、八二八人の大弁護団で、不当労働行為についてILO勧告も利用してたたかっていくと述べた。客室乗務員団の杉山さんは、東京地裁包囲行動についてや、原発・TPPに比べ全国的運動になりきれていない首切り自由を許すなとの思いを全国的運動にしたいと述べた。他に、電機労働者懇談会事務局長兼電機・情報ユニオン東京支部書記長の谷口さんからと、社保庁全厚生闘争団の伊藤さんから発言をいただいた。
第一部まとめの発言として、高橋さんは、金銭解決制度について、今までの数十年に渉る法曹関係者の努力全てを無にするものであり、労働審判やあっせんを通じて実現済みなのだから、導入の必要を感じないと述べた。
今村団員は、解雇をめぐる直近の事件について、裁判官は国策としてのリストラに迎合しがちであると述べた。
生熊さんは、「労働」は社会を変えるキーワードであり、ホワイトカラーエグゼンプションを上程すれば、参院選に負けると自民党は上程を諦めたのであり、派遣村をきっかけに麻生氏は下野したと述べた。
(2)第二部「雇い止め・派遣切りとのたたかい」
第二部のパネラーは第一部に引き続き立正大学准教授の高橋賢司さん、全労連の井上久さん、鷲見賢一郎団員だった。
第二部でも冒頭に、「現場からのたたかいの報告」を受けた。偽装請負で働いていた元教員の方からは、非常勤教員の厳しい現状が語られた。
ダイキン事件は、弁護団の井上団員から報告を受けた。ダイキンは偽装請負を有期雇用としたものの、二年六か月を更新限度とし、雇い止めした。
これを受けて、パネラーが問題提起した。高橋さんは、有期雇用との関係で、五年未満での雇い止めが横行する危険について話した。無期転換しない旨の労働者の念書・覚書をとることについては、権利濫用の疑いが強いと考えられると語った。
井上さんからは、マツダの山口地裁勝利判決を評価する発言があった。安倍政権のもとで狙われるホワイトカラー・エグゼンプションの復活やら労働者派遣の自由化、解雇規制の大幅な緩和がなされれば、あらゆる企業がブラック企業になってしまう。「雇用の質」を問うべきであると語った。
鷲見団員も、マツダ判決に言及し、特に、派遣法が労働者保護法の意味を有すると初めて述べた判決であることを高く評価した。改正労働者派遣法に関しては、使いにくいことは否めず、待遇の改善に関する条項についても、均等待遇を求めたのに、均衡に配慮するとのレベルに止まっていることが不十分だと述べた。
続いての会場発言は、時間の関係で発言できない方も出た。九件の発言通告が寄せられた。
いすゞ当事者の五戸さんと弁護団の小池団員は「人が余ったからと言って切って良いというのはいかん。金がない企業ではないのだから。」と述べた。
全印総連の橋場さんは、「ABCと中間業者が入り、給料を受け取る時には半分になっている。大日本印刷グループの不正を許さない。」と発言した。
金融労連金融ユニオンの浦野さんは、直雇にするが条件は今までと同じなど、三菱東京UFJや三井信託銀行の内幕を語った。
東京支部の松井団員は、「今はミニバブル。でも、実体経済回復に繋がらなければただのバブル。給料を上げなければいけない。」などと話した。
その他、JMIU日産関連支部の阿部さん、ホンダ弁護団の林団員、全国一般資生堂アンフィニ分会の池田さんと藤田団員から発言をいただいた。JAL雇止め事件の木谷さんと、首都圏大学非常勤組合の衣川さんについては司会が発言要旨の紹介をした。
第二部まとめの発言として、高橋さんは、「EUにおいては、一定期間で無期にするという規定と、そもそも極めて限定された局面でなければ有期雇用できないとの入口規制がセットとなっている。日本の有期法制は入口規制を導入しなかったから問題が起きている。」と述べた。
井上さんは、松井団員が言いたいことを代弁してくれたと述べた上で、「マツダにつづけ。力を集中して裁判に勝つ。そして、新しい裁判を起こす。麻生氏は、雇用問題のトラウマがあり、びくびくしている。」と述べた。
鷲見団員は、「派遣先は違法行為をしても何ら責任を取らなくてよいのか!」と述べ、「契約自由」論、「労使合意」論の克服について述べた。そして、東芝事件主任弁護士の行動として、「裁判官が理解していないと思ったら、理解するまで止められても話し続けた。当事者もそうした。勝つためには遠慮すべきではない。」と述べた。そして、「網の目のような、不当判決を許さないたたかいをしよう。」と結んだ。
最後に、今後の世論の喚起、運動についてのまとめの発言を五人の方からいただいた。
JMIU書記長三木さんは、「マツダ、やっと声が届いた。でも、政治家や裁判官に届くように心の底からもっと声をあげなければと思う。労働者はたたかってこそ生きていける。一つ一つの職場に労働組合を作りたい。」と感想を述べた。
東京地方争議団共闘会議の小関さんからは、「いすゞ、IBM、JALの四〇〜五〇名で配ると一〇〇〇枚のビラが一時間たたないでなくなる。」と行動の報告があった。
作家の田島さんは、「小説でいすゞのたたかいを書いた。昨年四月の敗訴に危機感を感じている。でも、マツダの判決に励まされた。潮目が変わって来ている。労働組合を全国民規模で支援していかなければ。全ての労働争議を支援するという大志を持って、救国の大運動を造ろう。」と発言した。
MIC事務局長兼映演労連委員長の金丸さん、映画監督の大澤さんからも発言をいただいた。
三 自由法曹団からの呼びかけ
伊須団員から、「労働者派遣法と改正労働契約法を学習し活用し、改悪を許さず、抜本的再改正のために奮闘しよう。」など四項目の呼びかけが行動提起としてなされた。
東京支部 菊 池 紘
三月一一日の福島はとても風が強かった。その中で、福島にとどまった人とともに、北海道から沖縄まで各地に避難している人まで、八〇〇名の原告のうち二〇〇名が福島地裁に集まり、訴状を出した。裁判を通じて国と東電に対し、事故前の福島への原状回復、被害の全体救済を求め、その先に脱原発を実現させるために。
翌日の各紙はいっせいにこれを報道した。なかで東京新聞は一面に提訴を伝え、その「筆洗」欄は「福島地裁に出された訴状にこうある。『ひとりで生きてきたものは一人としていない。その結びつきの場が、美しい福島であった。』『原告らが求めるものは、第一に、もとの美しい福島、ふるさとを返せ、という住民の叫びそのもの』・・・・・」と訴状の言葉を引用して、「国と東電は、かけがえのないものを奪われた人びとの訴えに、どう答えるのか」と結んでいる。訴状の内容への強い共感がうかがえる。
*
提訴後の集会で弁護団の共同代表として次のようなことを訴えた。(もうひとりの代表は安田純治さん。)
「今日ここに福島の弁護士とともに、ひろく東京、埼玉、神奈川から、そして遠く九州から、多くの弁護士が駆けつけている。それは、この裁判がなによりも福島の皆さんの裁判であるとともに、この私達の社会のありかたを問う裁判だから。また、この国の政治のあり方を問う裁判だから。
責任という言葉を知らない人々、あるいは責任という言葉を忘れたふりをしている人々が支配するこの国と社会のあり方を覆す。今回の事故に責任ある者にきちっと完全に被害を賠償させることが、この社会と政治のあり方を変えるのだ。
先日二月二〇日に、私たちは事故の全面賠償を求めて東京電力と政府相手の交渉に臨んだ。福島から沖縄まで被災した人々が参加した。そこでは子供にセシウム一三七が出ていることが問題とされ、希望する人全てに尿検査、甲状腺検査、血液検査等の費用と交通費の支払いを求めた。ところが東京電力を代表して交渉に臨んだ人は、答えた。『検査結果を拝見した。しかし健康に影響あるかどうか分からない』と。そして、健康被害が出るかもしれないと不安に思う気持ちは当然だとは思わないのかとの声に、『不安に思う気持ちが合理的かどうかということ』とうそぶいた。
こうしたことは、これ以上許してはならない。
私たちはたたかって、責任あるものに完全な賠償をさせる。それがその先の私たちの願いに結びつく。訴状に書き込まれた私たちの究極の願い――二度と原発事故をおこすな!すべての原子炉をすみやかに廃炉にせよ!――との願いに結びつくのだ。
そして小出裕章氏もいっているように、『原子力はこわい』だけでは原発は全廃できない。ほんとうに私たちは何を求めているのか。どういう社会を作りたいのか。原発に反対するだけでなく、原子力ムラなど原発で甘い汁を吸う人々が安住する社会システムそのものにノーを突きつけなければ、完全賠償も実現できないし、原発も生き延びてしまう。
この弁護団では安田先生や私など高齢者はごく少数。なによりも二〇代、三〇代の若い弁護士が広く駆けつけているのは、この裁判が未来に目を向けているからだ。希望を語りかけているからだ。
昨一〇日は東京で多くの人々が朝から夜まで、日比谷から霞ヶ関の広い一帯で『原発なくせ』の声を上げた。この一年、必ず毎週金曜日に官邸前と国会を包囲した行動の合言葉も『希望』だった。『子供を守れ』『未来を守れ』と声を合わせ、国会正門前で、福島の皆さんに思いを馳せて、『ふるさと』をみんなで歌ってきている。『うさぎ追いしかの山。こぶな釣りしかの川』と。
未来を見つめ、夢をもって、頑張ろう。そしてかならず勝利しよう。」
*
今、生活のため、家族の絆を大切にするため、福島にとどまっている人々がいる。そして、何よりも子供たちの健康のため、北海道から沖縄まで避難している人々がいる。各地で自由法法曹団員はこれらの人々の相談にのっている。こうした人びとの不安と、福島を取り戻したいとの思いを大切にしたい。人々の思いを踏まえ、それを全国的に一つの大きな動きにしよう。力強いうねりにしよう。
いま東電は、新たな被災地の線引きに連動して、補償打ち切り、被災者切り捨てを画策している。東電の逃げ切りを許さず、人々の損害を必ず償わせる。そして原子力ムラとたたかい、この社会と政治を抜本的に変えることにつなげたい。
東京支部 飯 田 美 弥 子
一 全面敗訴
これまでも折々報告していたUR高幡台団地七三号棟の立ち退き訴訟で、東京地裁立川支部は、本年三月二八日、明渡しに仮執行までつけるという、住民側に厳しい判決を言い渡した。
判決の骨子は、以下の六点に要約できる。
(1)民法の定める修繕義務は、「契約締結時に予定されていた目的物以上のものに改善することを賃借人に要求できる権利まで含むものではない。」
(2)「耐震改修をしない限り耐震性に問題があるところ、かかる場合に、どのような方法で耐震改修を行うべきかは、基本的に建物の所有者である賃貸人が決定すべき事項であり」、その結果、耐震改修を断念したとしても、「その判断過程に著しい誤びゅうや裁量の逸脱がなく、賃借人に対する相応の代償措置が取られている限りは、賃貸人の判断が尊重されてしかるべきである。」
(3)原告が、「本件号棟の全居住者が居住を継続できることを耐震改修方法の前提とするに至った判断過程に不合理な点は見出せない」
(4)「約七億五〇〇〇万円という工事費用等が過大なものであることがより一層認められる」
(5)「本件号棟において適合性のある本件耐震改修方法の費用対効果を総合考慮し、本件除却決定に至ったとの上記認定を左右するものではない。」
(6)賃借人らが主張する使用の必要性は、「立地条件の良さ、長年住み続けてきたことによる愛着など、主としていわば主観的な利益であって」、賃借人に「経済的合理性を欠く耐震改修を強いるべき理由には当たらない。」
基本的に、裁判所が、耐震強度が不足している建物に、提訴後二年も住み続けている住民らの行為は、公益に反し、けしからん、と思っていることは明らかである。
そうでなければ、八〇歳を超える一人暮らしの女性二人にまで、例外なく、立ち退きの仮執行を付すことなどできようはずがない。判決後、当事者の皆さんは、それぞれに、不安の余りろくろく眠れない日々を過ごしている。
二 全員控訴
(1)明日にも家を追い出されるかという仮執行の恐怖、仮執行を免れるための保証金の負担・・・住民の皆さんの衝撃の大きさは、想像に余りある。判決直後の報告集会のときは、弁護団として、申し訳なさでいっぱいであった。
(2)しかし、判決の内容を検討すればするほど、住民の皆さんも、こんなひどい判断に屈服することはできない、という気持ちに傾いていった。
判決の理屈では、賃借人は、賃借建物の耐震強度が不足だ、と判定されたら、強度不足の建物に住み続けるか、強度不足が怖いなら、他の物件に移転するか、二通りの選択肢しかないことになる。
賃貸人が耐震補強してみようか、と考えて、あれこれの補強方法を検討したところ、自分が思い描くような補強方法はないなあ、と思ったら、強度不足の建物を取り壊すのも自由裁量ということになる。
もとより、裁量は合理的でなければならず、代償措置も講じられなければならないけれど、代償措置さえ覚悟すれば、賃借人を追い出すことができることになる。
この理屈は、一体全体、どこから来たのか?
家屋の賃借人が、賃貸人の都合で、容易に追い出されるときは、生活の根拠を失い、賃借人にとって苛酷であるから、賃貸人の解約申し入れを制限しよう。正当事由がなければ解約は認めないことにしよう。
それが、継続的契約関係であり、生活の根拠にかかわる、不動産賃貸借契約における賃借人保護の要請ではなかったのか。
のみならず、本件では、
(1)賃貸人であるUR側には、自己使用の必要性がなく、自己使用するとも主張していないこと、
(2)除却(取り壊し)決定の一年前には「耐震改修してまいります」という広報を出し(現実に当該建物の一階部分には改修もし)たこと、
(3)一年も検討した結果は、居付き(住民が全員居住を継続したまま)での工事方法は居住性を著しく損なう、という、当該建物を一見すれば素人でもわかる結論であったこと、
(4)採用できないその工事の費用が七億五千万円と高額というが、その算定根拠も定かでなく、家賃収入とのバランスの検討もないこと、
(5)他のUR団地では住民の移転を伴う耐震改修を現に行っていること、
(6)住民説明会では情報が不十分なまま、改修方法はない、期限までに退去しないと援助はできない、という「説明」だけが横溢し、退去した人たちの中には、「今からでも可能なら戻りたい」と言っている人もいること、
といった数々の問題点を、全く無視している。
(原稿を書いているだけで、またしても、口惜しさが湧きあがってくる。)
(3)何度も話し合いを重ねた上、住民の皆さんは、控訴期限前日である今月一〇日に、全員が控訴した。同時に、執行停止申立をし、一二日午前一〇時に、裁判官面接。年金生活の四人の方が、判決後の心細い心情を裁判官に訴えた。その日の午後に保証金の額が決定された。
一四日日曜日には、団地集会所で報告集会を開催した。五〇名を超える参加者で、住民の皆さんは、自分達が孤立しているわけではないと感じることができ、大いに励まされた。
三 逆転のためには
控訴理由書の提出期限は、五月末である。
この判決の暴論に、どう立ち向かえばいいのか。転勤族の裁判官、耐震基準の強化を危険負担的に考えているかのような裁判官に、長年住み続けている賃借人の権利を実感させるには、どう伝えればいいのだろう。
皆さんの知恵、経験をお知らせいただきたい。
東京支部 藤 原 真 由 美
昨年末の団通信で、亡上田誠吉先生が二五年前、国家秘密法を廃案にすべく、渾身の力を込めて書かれた「ある北大生の受難」を、是非とも復刻したいこと、そのために、自由法曹団のみなさまの財政的援助をお願いしたいと訴えました。さっそく、全国の団員のみなさまから暖かい励ましの言葉や、カンパをお送りいただき、おかげさまで、本年四月一〇日、復刻版が出版されました。ありがとうございました。
この夏に予定されている参議院議員選挙後に、秘密保全法案が国会に上程されるとの報道がなされています。そして、安倍首相が熱望している憲法改正―その自民党憲法改正草案のなかには、「国防軍の保持」と一緒に、国防軍の「機密保持に関する法律を定める」ことが明記されているのですが―の動きもまた、加速してくることが予想されます。軍事大国化と国民の知る権利を制限しようとする流れに、ストップをかけるため、是非みなさまこの本をご活用ください。すでに二五年前にお読みになったベテラン弁護士のみなさまも、もう一度お読みいただき、事務所の若手弁護士に「国家秘密」の恐ろしさを伝えてください。
今回の復刻にあたっては、情報問題を専門とする上智大学教授の田島泰彦先生が「復刊に寄せて」を書いてくださいました。そして、最後の「解説」では、最初この事件の調査を渋っていた上田誠吉弁護士が、この事件にはまっていったいきさつと理由を、私が書いています。
現在、日弁連会長で、秘密保全法制対策本部長でもある山岸憲司先生は、「ある北大生の受難」をすでに二五年前に読んでくださっていました。復刻版を出版する話に、「おお、それはいいね。」と乗ってきてくださり、表紙の帯に、次のような推薦の言葉を書いてくださいました。「この戦慄すべき事件を知るときに、恣意的に指定がされかねない不明確な『特別秘密』の漏えいに厳罰で臨むという秘密保全法制が、いかに危険なものであるかがよくわかります。・・・秘密保全法を議論するに際して、是非ともお読みください。」
この本のお申し込みは、直接、出版社の花伝社にFAXでお願いいたします。一冊一七〇〇円+税ですが、一〇冊以上まとめてお申し込みいただければ、定価の一割引とさせていただきます。カンパをお送りくださった方には、一冊贈呈いたしますので、少々お待ちください。なお、カンパをお送りくださった方の中に、氏名の特定ができない方がいらっしゃいます。もし、しばらくたっても本が送られてこない場合には、大変お手数ですが、私までお電話いただきたく、お願い申し上げます。
注文先 花伝社 TEL 〇三―三二六三―三八一三
FAX 〇三―三二三九―八二七二
連絡先(東京合同法律事務所)藤原真由美
TEL 〇三―三五八六―三六五一
FAX 〇三―三五〇五―三九七六
神奈川支部 中 山 隆 弘
二〇一三年四月一日、当事務所では、東京法律事務所の坂本修先生をお招きして、
「今、憲法をめぐる“せめぎ合い”をどう語り合うか」というテーマで、意見交換を含めた事務所内勉強会を開催しました(坂本先生にとっては、奥様の坂本福子先生がお亡くなりになってから最初の勉強会でした。再出発のための新しいスタートという位置づけで、講演形式ではなく、対話集会の形で意見交換をすることになりました。)。
今回は、昨今の自民党改憲案の問題点を踏まえた上で、具体的にどうすれば「壊憲」阻止の運動を広げられるかについて語り合い、非常に充実した時間を過ごすことができました。
通常この手の学習会では、現在の改憲をめぐる情勢論から語られるのが一般的であるのに対し、坂本先生は、前提として憲法九条や二五条が成し遂げてきた実績等にもっときちんと誇りや確信を持つべきと語り、その上でそれらを破壊する自民党憲法草案の正体を語るという順序でお話をされており、そのような手法は大変分かりやすく参考になるものでした。
そして、我々は今、改憲勢力の新戦略が「二重の二段階作戦」であることをきちんと見抜くことが必要とのことでした。
具体的には、改憲勢力は、(1)解釈改憲、立法改憲を同時多発で先行させ、既成事実を積み上げることで改憲の扉を開こうとしていること、(2)明文改憲についても、まずは九六条改憲を先行させるという二段階作戦がとられていることが、これに当たります。
このような動きに対して、我々としては、改憲勢力の弱点((1)今回の自民党の大勝は、小選挙区制効果に基づく虚構の多数であること、(2)国民は改憲(勢力)を支持したのではなく、九条改憲反対は今も国民の多数派であること等)をつかみとれば、別段改憲勢力を過大視しておびえることもないのであって、具体的には次のような運動を展開していくべきとのことでした。
(1)改憲勢力による新たな攻撃の狙いと策動の手口を広く国民に宣伝すること。
(2)九六条改憲、解釈改憲、立法改憲に一つひとつ反撃することで、憲法全面明文改憲反対の運動に結び付けること。
(3)生活保護引き下げ反対運動等、新たに高揚し共同を広げている諸運動を大切にし、諸要求と憲法との関係を明らかにしていくこと。
最後に、坂本先生は、我々が講演等を行うときは、その場にいる(元々問題意識を持った)人達に話を聞いてもらうことだけで終わらせるのではなく、その話を他の人に広げさせるべきである、例えば運動と関係ない人を二人集めて三人で話をするという機会をどんどん作っていくことだけでも、運動はどんどん広げることができる、ということを強調しておられました。
今回の勉強会を通じて、「事実」を大切にし、戦略的な運動を展開すれば、「壊憲」阻止は実現可能であるということを、改めて確認することができました。
東京支部 青 龍 美 和 子
「明日の自由を守る若手弁護士の会」より、紙芝居のデータ配信開始のお知らせです。
最近ようやく、自民党改憲草案への批判がちらほらとメディアでも目に留まるようになりました。しかし立憲主義についての説明はまだまだ初心者ないし一般市民にとっては難解で、草案の危険性が市民にダイレクトに伝わっているかはまだ疑問が残ります。
当会では、法律家の専門家だからこそ、専門用語を使わずに立憲主義を説明しなければ、そして広く国民に問題意識をもってもらわなければ、という考えのもと、標題のとおり紙芝居を作りました。講演会や学習会でパワーポイントで披露することを想定しています。
そのあらすじは、こんな感じです。
*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*
絶対王政の王様に支配されている国民には、自由などありませんでした。王様を倒した新しい王様は、「ケンポー」という法律を作り、国民に自由を与えてやろうと宣言しました。国民は最初、それを喜びましたが…
*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*
当会のリーフ(絶賛発売中!)と同様にかわいい絵で彩られた、すてきな紙芝居です。
ご用命の方はどうぞ当会にご連絡下さい( peaceloving.lawyer@gmail.com )。パワーポイントのデータと台本データをメールでお送り致します。
このデータ配信は無料です。その代わり、制作費用がかかっている上、厳しい財政状況ですので、二〇〇〇円以上のカンパをお願い致しております。
団事務所では、学習会での講師派遣の依頼も増えていることと思われます。ぜひ紙芝居を飛び道具・スペシャルアイテムとしてご利用下さい。申し込みをお待ち申し上げます。
東京支部 神 田 高
安倍首相は、日本から沖縄を分断したサンフランシスコ条約発効日を(日本の)「独立の日」と称して、屈辱的な民族分断を隠蔽し、アメリカの支配への屈従を美化した。沖縄県民と本土国民の分断を美化する安倍首相の背信的な態度は後世にわたって県民を侮辱するものであり、到底許されるものではない。
よって、下記の声明文を公表する。
*
四・二八「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」に対して厳重に抗議し、式典の撤回を求める声明文
一九五二年四月二八日、沖縄は「サンフランシスコ条約」によって、日本国の主権から切り離され民族は分断された。安倍首相はこの日、「サンフランシスコ条約の発効」によって、日本の主権は「完全に回復した」と嘯くが、同日以降、沖縄は日本国の主権から截然として切り離され、県民にとって「屈辱の日」に他ならない。
沖縄は、第二次世界大戦の末期に天皇の「もう一度戦果をあげてから」との指図により、本土防衛の「捨て石」とされ、その中で二〇数万に昇る重大な犠牲を強いられた。壕に逃げ込んだ同胞、家族は日本軍らの威嚇による強いられた自死に追い込まれ、苦痛の余生を余儀なくされた者も多数である。
戦後も、新たなアジア支配の支柱として、アメリカは、沖縄で“銃剣とブルドーザー”により“生きるための土地”を強奪し、その中で建設された新たな米軍基地により、緑豊かな“美ら島”は破壊され、県民が先祖から引き継いだ“生きるための土地”は戦後七〇年余の現在にいたっても未だに奪われたままである。
しかも、安保条約の下で、沖縄は米軍の世界的な軍事行動の拠点となり、ベトナム戦争では、無辜のアジアの人々に重大な犠牲を強いた侵略の基地となり、“ヌチド宝”を信条とする県民の誇りは深く傷つけられている。
沖縄では、現在も、国際法規や“日本国憲法九条”、財産権の不可侵(憲法二九条)に違反した、土地強奪だけでなく、国際的にも不平等きわまりない、人権無視の地位協定によって、県民、就中女性などへの権利侵害は跡を絶たない。それどころか、日米政府は県民の一致した要求である、危険きわまりない「オスプレイ」配備反対の声を無視し、普天間基地だけでなく、沖縄を拠点に日本全土に侵略的な軍隊を配備しようとしている。
沖縄の総意である“命ド宝”、“美ラ島”を守れとの沖縄の声を真っ向から無視するアメリカの態度の原点が、日本国の主権から沖縄を放逐した「サンフランシスコ条約」の発効であったことは歴然としている。
私たちは、県民の総意を逆なでにする、虚構の「主権回復」「国際社会復帰を記念する式典」開催に厳重な抗議をするとともに、同式典開催の撤回を厳重に求めるものである。
二〇一三年四月 日
自由法曹団東京支部 神 田 高
東京支部 緒 方 蘭
内閣に設けられた法曹養成制度検討会議(以下「検討会議」という。)は、昨年八月から司法修習生の給費制を含めた法曹養成制度全般について議論をしてきました。そして、本年四月九日、検討会議は、これまでの議論をまとめた「中間的取りまとめ」(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300070017&Mode=0)を発表しました。しかし、その内容は、貸与制を前提とするものであり、また、給費制問題以外の部分に関しても、抽象的で、司法制度改革の失敗や弊害を真摯に受け止めようとしていないものでした。
この中間的取りまとめについて、検討会議は、現在、パブリックコメントを実施しています。この姿勢を転換させ、給費制復活の道を開くには多くの方々にパブリックコメントに協力していただくことが必要になります。
団の給費制対策本部は、少しでも多くのパブリックコメントを集めるために、要請文を各支部・県連絡先事務所にFAXをお送りしました。参考になるように、文例や記入用紙を添付してあります。
お手数ですが、各支部・県で団員や関連団体、学生の方々にパブリックコメントへの協力を呼びかけていただき、集めたパブリックコメントを法務省に郵送していただきますようお願い申し上げます。もちろん、団支部としてではなく、個人でパブリックコメントの収集にご協力いただくことも歓迎致します。個人で収集する場合は、メールでご一報いただけましたら、こちらから文例や記入用紙をお送りいたします(メールアドレスは、ogata@tokyo-godo.comです。)。
期限は五月一三日までですので、時間に限りがあります。また、パブリックコメントには字数制限がないため、記載はたった三行でも構いません。空いている時間を活用してぜひご協力お願いいたします。
パブリックコメントの提出方法は次の通りです(下記の要領は、給費制問題について投稿する場合を前提にしております。)。
a)郵送の場合、別紙の書式に意見を書き込んだうえで、下記の宛先に郵送してください。一枚につき一通でも、複数枚をまとめて一通で送るのでもかまいません。
〒一〇〇-八九七七 東京都千代田区霞が関一-一-一
法務省大臣官房司法法制部司法法制課 宛て
※封筒に赤字で「パブリックコメント(「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめ」について)」と記載してください。
b)FAXで送る場合、以下の要領でお願いします。
送付先 FAX番号:〇三-五五一一-七二〇五
(法務省大臣官房司法法制部司法法制課 宛て)
※ 冒頭に件名として「パブリックコメント(「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめ」について)」と記載してください
c)電子メールの場合、以下の要領でお願いします。
(1)送付先電子メールアドレス:housei19@moj.go.jp
(2)件名:「パブリックコメント(「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめ」について)」
(3)本文は、【テキスト形式】で、冒頭に、『私は、「第3の1(3)法曹養成課程における経済的支援」について、以下のとおり意見を述べます。』と入れたうえで、ご意見の【趣旨】と、【理由】をお書きください。
(4)末尾に、【ご氏名】、【住所】、【職業】をお書きください。
d)電子政府の意見提出フォームによることも可能です。
URL:https://search.e-gov.go.jp/servlet/Opinion
この場合、「本文」欄に、以下をご入力ください。
(1)タイトル「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめ」について)」
(2)本文冒頭に『私は、「第3の1(3)法曹養成課程における経済的支援」について、以下のとおり意見を述べます。』と入れる。
(3)意見の【趣旨】と【理由】
将来の法曹養成制度を左右する大切な問題ですので、ぜひ、支部の団員だけでなく、広く関連団体や学生の方々にも呼びかけていただきたく存じます。法曹界の将来のためにも、ぜひご協力よろしくお願い致します。
〈憲法特集〉
事務局長 泉 澤 章
安倍政権は今夏の参院選で改憲を争点にすると明言し、改憲へ向けた策動がいよいよ本格的になってきました。このような危機的状況を目の前にして、団員としてどのような運動に取り組んでいるのか、そして今後どう取り組むべきなのか。
今後の団としての活動をより強いものとしてゆくためにも、団員のみな様の活動報告やその成果、改憲対策へ向けた率直なご意見を募集したいと思います(お一人一〇〇〇〜三〇〇〇字目安)。ふるってご投稿ください!
事務局長 泉 澤 章
憲法改悪反対、九条改憲反対のメッセージを広く国民にうったえかけるリーフレットが、団も加盟する憲法改悪反対共同センターから出されました。
このリーフレットでは、九条改憲反対とともに、日本国憲法のすばらしさ、九六条改憲の意味、小選挙区制度の問題、徴兵制実施の危険性、そして憲法九条を生かした平和外交の必要性まで触れられています。さらに今回は、リーフの提言に賛同していただいた俳優の西田敏行さんの写真とメッセージも掲載されています!
憲法改悪反対、九条改憲反対の声を全国に広めるための宣伝ツールとして、ぜひご活用ください。
*注文用紙は各支部にお届けしております(改憲対策のメーリングリストでも流しております)。
団本部宛に直接FAX(〇三―三八一四―二六二三)でご注文ください。
*一枚二円、二五〇枚(一束)を一単位としてご注文をお願いします。
*郵送費は、着払いとさせていただきます。
*御注文の順に発送いたします。ぜひ、お早めに御注文ください。
たくさんのご注文をお待ちしています!!