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長澤  彰 二〇一三年 岩手・安比高原総会 特集
岩手・安比総会でお会いしましょう
横道 二三男 岩手・安比総会へのお誘い
小笠原 基也 半日旅行へのお誘い
佐々木 良博 一泊旅行へのお誘い
佐々木 良博 (10月19日(土)プレ企画)
プレシンポ「復興のために今なすべきことは何かー一日も早い人間復興の実現のために」(仮題)ご参加のお願い
神田  高 “オスプレイ”配備と米軍ヘリ墜落
西川 大史 この秋、集団的自衛権を絶対に許さない大きな運動を! 九条世界会議関西二〇一三への参加・協力のお願い
〈国際シンポ(一〇月一三日、関西大学千里山キャンパス)〉
〈記念イベント(一〇月一四日、大阪市中央体育館)〉



二〇一三年 岩手・安比高原総会 特集

岩手・安比総会でお会いしましょう

幹事長  長 澤   彰

 今年の団総会は、一〇月一九日(土)(プレ企画)〜一〇月二一日(月)、岩手県安比高原の「ホテル安比グランド(本館)」で開催します。岩手県での開催は、一九九六年五月集会・花巻温泉、以来となります。

 団総会では、この一年間の団活動を総括し、あらたな方針について分散会で討論を行います。この一年間の特徴は、一二年一二月の衆院総選挙で、民主党政権が崩壊し、安倍自公政権が誕生したことです。安倍首相は、就任早々、歴史認識問題で、「村山談話」「河野談話」の見直しを発言しました。そして、「憲法改正は私の歴史的使命」であるとして、改憲に向かって突き進んでいます。九六条先行改憲論は、参院選で「改憲勢力の三分の二」を確保することはできませんでしたが、集団的自衛権を容認するために内閣法制局長官の人事変更に踏み切り解釈改憲から明文改憲・国家安全保障基本法制定、秘密保全法と国家安全保障会議設置法(日本版NSC)の制定、軍事力を拡大するために防衛大綱と中期防衛力整備計画の見直しに踏み込み、日米ガイドライン見直し、辺野古新基地建設も進められています。改憲、軍事大国化、強権的国家体制つくり、日米軍事同盟の強化に暴走し、「戦争する国家」つくりを着々と進めています。

 安倍政権は、景気回復・デフレ脱却のためのアベノミクスに象徴される「異次元の金融緩和」、公共事業に金をばらまく「財政出動」、大企業本位の「成長戦略」では、給与は上昇せず国民の生活が向上ないだけでなく、輸入原材料の高騰でガソリン代、電気料金、食料品の値上げで国民生活は悪化しています。「成長戦略」として、限定正社員制度、労働時間制限を撤廃し過労死と残業代ゼロを実現し、解雇の自由化を図ろうとするなど、労働法制改悪が狙われています。生活保護法改悪、消費税増税、社会保障改悪など国民生活の破壊に突き進んでいます。

 原発問題では、汚染水貯蔵タンクから三〇〇トンもの汚染水流出事故が発生し、非常事態となっています。電力会社による原発再稼働の申請がなされ、安倍政権は原発輸出のトップセールスを行い、原発復活の様相です。また被害回復を求める裁判が全国で提起されています。

 教育問題では、自民党改憲草案の先取り的に教員の管理統制の強化、教育行政の中央集権化、教育内容の国家統制、教育委員会の機能と実質廃棄などが進められています。

 TPP交渉参加問題では、七月に交渉参加が認められましたが、「守秘義務条項」に署名し、情報が開示されないまま、「二〇一三年内に結論を出す」との共同声明が発表されています。

 他にも、警察問題、司法問題、構造改革問題、給費制復活問題などについて、分散会で討議を行います。

 一〇月一九日のプレ企画として、「復興のために今なすべきことは何か! 一日も早い人間復興の実現のために」を行います。岩手支部の企画により、パネルディスカッションとして、大槌町長の碇川豊氏などの参加で、岩手県の実情を明らかにし、これからの復興について討論します。是非ご参加ください。

 団総会では、古稀団員の表彰も行います。今年は、四四名の団員が古稀を迎えます。

 半日旅行は、世界遺産・平泉で、仏教思想(浄土思想)に基づき、現世に仏国土を作り上げようと統一的につくられた「考古学的遺跡群」を見学します。

 一泊旅行は、宮沢賢治記念館、「民話の里」遠野、大槌町で縄文遺跡や城跡、復旧・復興の現状、陸然高田で復旧・復興の現状と「奇跡の一本松」を見学します。

 盛りだくさんの企画を用意しました。岩手・安比高原で是非お会いしましょう。


岩手・安比総会へのお誘い

岩手支部  横 道 二三男

安比ってどこだ?

 総会が開かれる会場の安比グランドホテルは、スキーヤーの間では有名な安比高原スキー場の正面にあるリゾートホテルである。所在は、盛岡市や岩手山の北側に位置する八幡平市の南西部になり、東北自動車道を東京から北上し、盛岡を過ぎて松尾八幡平ICを降りてさらにしばらく北上すると安比高原スキー場に到着する。遠くからでも目立つ安比タワーが目印である。欠点は、バスか自家用車が交通手段であることだが、東京からはシーズンになるとスキーヤーを乗せた高速バスが運行しており、団員の中にも利用した経験のある人がいるかもしれない。

 もっとも、スキーヤーでなくとも古くから有名だったのは安比高原の南側にある八幡平であり、レストハウス駐車場から汗をかきながら山頂まで登った人も少なからずいると思う。こちらの方が団員には馴染みかもしれない。ともあれ総会会場は安比高原にある安比グランドホテルであり、岩手県北部の山の秋を堪能していただければ幸いである。

何故、岩手のそれも安比なのか?

 岩手は広い。四国四県よりも広い。その中で交通の便の悪い安比高原を選んだのは団本部である。岩手は震災前に五月集会を担当した。しばらくは大きな会議開催の声はかからないものと考えていたが甘かった。しかし声がかかってもすぐには承諾できなかった。なにしろ、津波による被災後まだ二年足らずで、総会開催にエネルギーを割く余裕はないし、団員の高齢化が進行し機能不全を起こしそうであったからである。

 しかし、岩手はまだ総会を一度も開いていないしお膳立ては団本部がするからとの甘い言葉に逆らえずに引き受ける羽目になってしまった。沿岸部の復興が遅々として進んでいない現状を知ってもらう良い機会でもあると言われれば断りようがない。しかしそれなら沿岸部で総会の声が出なかったのが不思議である。何故沿岸部を選ばなかったのかと疑問に思われる団員も少なからずいると思う。残念ながら沿岸部の宿泊施設は復興特需ともいうべき状況で工事関係者で満室状態であり、わが団の総会が入り込む余地はない。それを見越しての内陸部の安比高原であるとすると、団本部もなかなかの眼力である。

 それにしても、よりによって半日旅行や一泊旅行を企画するにしてもなんとも不便な安比高原を選択したのか。秋の安比高原も一見の価値はあるとは思うが、地理的な状況を理解しての安比高原の選択なのか・・・。沿岸部に出るにも岩手の著名な観光地に行くにもなんとも不便なところである。

総会に期待するもの?

 参議院選挙で与党である自公が圧勝した。安倍首相は、憲法九条の改正を強く打ち出さず、いわゆるアベノミクスを全面に押し出して選挙戦を戦い多数を獲得した。日本共産党も議席を増やし、第三の躍進の時期到来と意気軒高ではあるが、与党の数の前にはなんとも心細い限りである。この間の世論調査の結果、憲法九六条が定める国会の発議要件を緩和して憲法九条を改正するという思惑が支持を受けていないと見るや、安倍首相は、集団的自衛権に関する憲法解釈を変更して憲法改正によらないで戦争への道を突き進もうとしている。内閣法制局長官の後任に、積極論者を選んだのもその布石であろう。

 したがって、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使の容認問題が、極めて大きなテーマとして議論されることと思われる。勿論、そのほかにも原発、労働法制、TPP、消費税率アップ・・・など議論されるであろう問題は多岐にわたっている。ただ、被災地を抱える弁護士としては、遅々として進まない復興をどのようにしたらスピードアップできるのか、予算化された復興予算のかなりの部分が使われずに残ってしまった現状をどのように変えていったらよいのか・・・など復興促進のための諸問題を議論し提言していただきたいというのが切実な願いであり期待である。

 是非、被災地の復興にかかわる問題も大いに議論していただき、国政にも提言していただくことをお願いしたい。

復興はどこまで進んだか?

 総会は、一〇月半ば、秋の真っただ中である。総会後に観光に行く予定のない団員は、スキー場のゴンドラに乗って前森山の頂上に登るのもいい。自家用車で来ているなら、久慈市まで足を延ばして「あまちゃん」の舞台の小袖漁港に行くのもいい・・・ただし実演の時期は過ぎているが。八幡平の駐車場から八幡平山頂に登るのもいい・・・紅葉の真っ盛りであろう。また、県南部に下って平泉の中尊寺や毛越寺を巡って世界遺産に触れるのもありである。

 しかし、できれば被災地の現状を見ていただければ幸いである。H二三・三・一一から二年半、陸前高田市、大船渡、大槌町、山田町、宮古市田老町などかつての住宅街や商店街が今もって雑草に覆われたままになっている。家を失い仮設住宅に住んでいる被災者は、いつ新しい住宅に住めるのか分からないまま不安のまま時を過ごしている。田老では、高台移転の工事が進まないことにしびれを切らして、宮古市中心部に近いところに新居を求めた被災者が相当数いる。三陸漁場を抱える水産業も完全には回復していない。防潮堤の工事も進んでいない。

 大変でしょうが、時間が許せば沿岸部にも足を延ばして現状を見ていただきたい。それが岩手・安比総会の狙いでもあると思っている。復興の現状を直接見聞きし、復興のスピードアップのために何が必要かを全国的に考えていただく機会になれば幸いである。

 そのためにも一人でも多くの団員が参加されることを期待しています。


半日旅行へのお誘い

岩手支部  小笠原 基 也

 岩手総会の半日旅行は、「世界遺産・平泉」です。

 平泉が世界遺産なのは、中尊寺・金色堂の金ピカが「黄金の国ジパング」の象徴として評価されてのこと、ではありません。平泉が世界遺産として評価されたのは、正式名称の「平泉−仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」が示すとおり、インド・中国・朝鮮半島を経由して日本で独自に花開いた仏教思想(浄土思想)に基づき、現世に仏国土を作り上げようとの意思で統一的に作られたからです。

 平泉を興した藤原清衡は、前九年の役で父と叔父を殺され、母は、敵の妻となり、後三年の役では、実の弟に妻子を殺され、自らも弟や義兄家族を殺さなければならないという、戦争の辛酸を嫌というほど舐め尽くした人でした。(詳しくは高橋克彦著「炎立つ」を参照下さい。)また、奥州の地では、それ以前にも、幾度となく大和朝廷の侵略戦争により、あまたの人たちが犠牲となってきました。

 清衡は、罪なく奪われた命を極楽浄土に導くために、また、戦争のない平和で豊かな国(仏国土)を現世において作るために、浄土思想という理念で国づくりにあたってきました。それは、単に大堂伽藍を建てるだけでなく、大和朝廷、中国沿海州から宋・朝鮮王朝まで、広く平和的な交易を行うことで、実現されました。

 しかし、それも、源平合戦という対岸の火事にちょっと首を突っ込んでしまったがゆえに、滅亡の途を歩んでしまい、「兵共の夢のあと」となりました。

 いま日本は、戦争の惨禍から、軍隊のない平和な国を作るとして、日本国憲法という崇高な理念を掲げたことを忘れ、対岸の火事に首を突っ込むために、憲法改正や憲法解釈の変更をしようとしています。

 「日本国憲法は現実離れしている」との声に立ち向かうためにも、是非、理想を現実のものにして国づくりをした藤原三代の足跡を尋ねていただければと思います。


一泊旅行へのお誘い

岩手支部  佐々木 良 博

 横道二三男岩手支部長が「岩手・安比総会へのお誘い」の中で述べておりますように、「復興の現状を直接見聞きし、復興のスピードアップのために何が必要かを全国的に考えていただく機会にしてほしい」との思いから、総会後の一泊旅行は、被災地を巡る旅を企画しました。

 総会終了後、まず花巻市にある宮沢賢治記念館に向かいます。ここで、しばしの時間を、詩、童話、教育、農業、科学と多彩な活動を繰り広げた賢治の世界に親しんでいただきたいと思います。宮沢賢治は、三・一一以降、一層注目を集めるようになってきています。それはグスコーブドリ(「グスコーブドリの伝記」)、よだか(「よだかの星」)、猟師の小十郎(「なめとこ山の熊」)など、賢治が描き出してきた童話の主人公の生き方や死に立ち向かう姿が震災によって多大の犠牲と被害を受けた被災者の心に沁み入り力を与えてくれているというだけでなく、被災者以外の国民にとっても震災後の生き方を考える上で重要な示唆を与えてくれているからなのではないかと思います。

 賢治記念館を見学した後、「民話の里」遠野を経て釜石市に向かいます。宿泊する宿は、白砂青松の美しい浜辺であった根浜海岸に臨む宿「宝来舘」です。宝来舘も津波によって被災しましたが、使用できる部屋を一時的な避難所として提供し、その後、地域の復旧・復興に寄与しなければならないという使命感から再建を果たした宿です。おいしい地酒ととともに海の幸をふんだんに味わっていただき、潮騒に耳を傾けながらゆっくりお休みいただけるものと思います。なお、夕食時には「宝来舘」の女将である岩崎昭子さんからお話をしていただくことになっています。岩崎さんは、津波の発生時に多くの方を高台に移動させ、被災後は被災者の支援のために活動し、その後も地域の復旧・復興のためにパワフルな活動を行い続けてきている方です。必ずや被災の状況や復旧復興に向けての取り組みなど経験に基づく貴重なお話しを伺えるのではないかと思います。

 翌日は、少し早起きをして、水平線から昇る雄大にして神秘的な朝日を是非ご覧いただきたいと思います。

 そして、朝食の後、大槌町に向かいます。大槌町は、縄文遺跡や大槌氏の城跡のある歴史と文化の町というだけでなく、「ひょっこりひょうたん島」のモデルとなった「蓬莱島」や「吉里吉里人」の舞台となった吉里吉里町など作家の井上ひさしさんにゆかりのあるロマンにあふれた町でした。しかし、中心地全てが津波と火災によって破壊されただけでなく、死者・行方不明者が人口の八・五%も占めるという重大な被害を被ってしまいました。また町役場が全壊しただけでなく町長を含め四分の一もの職員が津波で帰らぬ人となったため、復旧・復興への取り組みが特に困難であった町でもありました。大槌町では、地元の方からの説明を受けながら仮設住宅の状況や復旧・復興の現状をご覧いただきたいと思います。また、「蓬莱島」や大槌氏の城跡である「城山」の見学も楽しみにしていただきたいと思います。

 その後、釜石市、旧三陸町、大船渡市の復興の状況をご覧いただきながら陸前高田市に向かいます。陸前高田市は「奇跡の一本松」で全国的に有名になっておりますが、ここも大槌町と同様、中心地全てが津波によって破壊され、死者・行方不明者が人口の七・七%を占め、市役所が全壊するとともに四分の一もの職員の命が奪われるという重大な被害を受けた地域です。不眠不休で復旧・復興に取り組んできた共産党の市議の方から説明を受けながら現在の状況をご覧いただきたいと思います。また、高齢者施設の職員との交流も予定していますし、「奇跡の一本松」もご覧ただけるものと思います。

 その後、バスで一路一ノ関駅に向かい、午後五時五〇分ころ一関駅前で解散する予定です。

 限られた時間の中で、四国に匹敵する面積を持つ岩手県内を半周する旅程となっているため、駆け足で巡る旅になるかもしれません。しかし、最初に述べましたように、復興のために今後私たちは何をすべきか考えていただくためにも、できるだけたくさんの団員に被災地を直接見ていただきたいと考えています。

 「今一番の願いは何ですか」と聞かれたとき、ほとんどの被災者は「被災地のことを、被災した私たちのことを忘れないでいて欲しい」と答えます。しかし、三・一一から二年半が経過した今、被災地以外の地域の国民にとって三・一一は既に過去のことになってしまっているのではないと思われてなりません。被災地を訪れ、被災者と交流することはそれだけで被災した方々を勇気づけることになります。たくさんの団員の参加を心から期待いたします。

 なお、一泊旅行に参加なされる方は、是非一〇月一九日に開催されるプレシンポにも参加いただければと思います。旅行で訪れる大槌町の碇川町長がパネラーとして参加し、大槌町の被災の状況や復旧・復興に向けた取組についてお話ししてくれることになっておりますし、他のパネラーからも復旧・復興の現状と今後の課題等について意見をうかがうことになっておりますので、シンポジウムの議論を聞いた上で被災地を視察することによって、旅行はより一層深く意義のあるものとなるのではないかと思われるからです。


(10月19日(土)プレ企画)

プレシンポ「復興のために今なすべきことは何かー一日も早い人間復興の実現のために」(仮題)ご参加のお願い

岩手支部  佐々木 良 博

 三・一一からはや二年半が経過しました。被災者は避難所から仮設住宅に移り、被災地から瓦礫はほぼ消え去っています。

 しかし、公営住宅の建設、高台への移転、区画整理、防潮堤の建設など住まいの再建やまちづくりはほとんど進んでいないように見えますし、生業(なりわい)や就労を確保するために必要な事業の再建もさほど進んでいるようには思われません。

 こうした復興の遅れは、予算の執行状況からも明らかです。先日、二〇一二年度の復興予算の執行状況が公表されましたが、九兆七〇〇〇億円の復興予算のうち、何と三五・二%に当たる三兆四〇〇〇億円もが未執行となっています。予算はあるのに事業を行うことができないままお金が眠ってしまっているのです。その理由として、(1)用地の取得ができない、住民合意が取れない、(2)人手不足や資材不足による入札不調、(3)被災地の必要性と予算執行ルールとのミスマッチなどが指摘されています。

 岩手県は、今年の二月から三月かけて「復興に関する意識調査」を実施していますが、復旧・復興が「やや遅れている」「遅れている」と感じている県民は七二・二%に達し、しかも二〇一二年の調査よりも一二・六%も増加しています。そして、この調査によると、被災者は切実な要求として、「被災者が安心して暮らせる新たな住宅や住宅地の供給」「震災による離職者の再就職に向けて取り組み」そして「被災した医療機関や社会福祉施設などの機能回復」を挙げており、被災者にとって住まいと生業(なりわい)の再生、そして医療や社会福祉施設の整備による安心した生活の実現が喫緊の課題となっていることが示されています。

 そして、こうした復興の遅れ、特に住まいと生業(なりわい)の再生の遅れから、被災者の中には将来に対する見通しを持つことができず、地元での生活をあきらめて他の地に移住したり移住を検討せざるを得ない状況が生まれてきています。大槌町では、二〇一一年一二月と今年(二〇一三年)一月に、住宅に関するアンケート(「自力で自宅を再建するか震災公営住宅を希望するか」)を行っていますが、今年一月のアンケートでは、自力再建を希望する被災者と公営住宅への入居を希望する被災者のいずれもが減少し、「大槌町以外の地域に転居する」、「現時点では自力再建か公営住宅の入居かいずれとも決定することができない」という回答が増大しました。ここに、復興が進まない中で将来への見通しを持つことができないまま仮設での生活を余儀なくされている被災者の苦しい状況が如実に示されているように思います。つまり、自力再建することを決断するためには資力や収入がありかつ建設すべき土地を確保できる見通しがあることが必要となります。また、公営住宅への入居を決断するためには、少なくとも大槌町で収入を得て生活していく見通しを持つことができることが必要となります。そうした見通しを持つことができない被災者はほかの地域への移住を決意するか、決断できないまま迷い続ける日々を送らざるを得ないことになります。先ほどのアンケートの結果は、将来への見通しを持つことのできない被災者が増大していることを示しているということができます。

 そうした中で、仮設住宅に住む被災者からは「生きている間に仮設を出ることができないのではないか」、「代々住み続けてきた町や集落を見捨てて出ていかなければならないのではないか」という諦めにも似た声が聞かれるようになっていますし、「被災地以外の人達は、もう被災地や被災者のことを忘れてしまっているではないか」という不安の声も出てきています。

 他方で、復旧・復興事業の担い手である自治体職員は、精神的にも肉体的にも過酷な状況の中で懸命に職務を行ってきています。津波で多数の職員が死亡し、職員の補充も思うようには進んでおりません。自ら自宅や大切な家族を失っている職員も多数います。復旧・復興のための作業は、多くの職員にとってこれまで経験したことない新しい職務です。被災者や住民からは、多様で切実な要求が出され、また復旧・復興の遅れに対する批判も突き付けられることになります。こうした状況の中で、健康を害したり精神的に失調をきたしたり、不幸にも自ら命を絶つ職員も出てきています。

 さらには、NPOを巡るトラブルも発生してきています。震災後、被災地では被災者支援を目的として多数のNPOが活動してきました。その中には、被災者支援は名目に過ぎず、営利その他の目的をもって活動しているNPOも存在しており、山田町では、町から緊急雇用創出事業の委託を受けたNPOが杜撰かつ乱脈な運営を行った結果、破産宣告を受けて事業を廃止してしまったため、岩手県が山田町に対して平成二四年度の事業費七億九〇〇〇万円のうち五億円の返還を請求する事態が発生しています。

 岩手支部では、岩手で団総会を開催する機会を与えていただいたことに感謝し(決して、「この忙しいときに、なんてことをしてくれるのだ」などとは思ってもおりません)、まず私たち自身が震災復興の状況と今後の課題をきちんと見つめなおすための機会とし、併せて全国の団員に被災の状況と復興の現状を理解していただくとともに今後の課題を解決していくための方策を検討していただく機会としたいと考え、下記のとおりプレシンポを企画しました。是非多数の団員のご参加をお願いいたします。


日時 一〇月一九日(土)午後一時三〇分〜午後五時

 プログラム

  基調講演(予定)
   演題 「大槌町の被災状況と復興への取り組み」(仮題)
   講演者 大槌町長碇川豊 
     基調講演は演題、講演者ともに変更の可能性があります

  パネルディスカッション
  (司会)佐々木良博
  (パネリスト)
(1)碇川豊(大槌町長)
(2)金野耕治(東日本大震災津波救援・復興岩手県民会議代表世話人、いわて労連議長)
(3)井上博夫(岩手大学教授、岩手県復興研究センター)
(4)佐々木道夫(大船渡市国民健康保険越喜来診療所長・医師、大船渡市産業医)

 碇川町長は、震災後極めて重大な被害を受けた大槌町の町長として、住民本位の復旧・復興の理念のもと正に不眠不休で大槌町の復旧・復興に取り組んできました。行政(首長)の立場から、復旧・復興への取り組みとその理念、今後の課題等について発言していただきます。

 金野耕治さんからは、東日本大震災津波救援・復興岩手県民会議のこれまでの取り組の状況とその取り組みを通して被災者を主人公とする人間復興の実現のために、どのような課題があり、その解決のために何が求められているのか等について発言していただきます。

 井上博夫さんは、岩手県復興研究センターのメンバーとして大槌町の全仮設で被災者アンケートに取り組みその結果に基づいて提言等を行ってきたほか、大槌町の委員として復興基本計画の策定にも関与してきました。また、地方財政学の研究者の立場から復興予算等について発言を行ってきています。こうした活動を通して、現在の復興の現状とその問題点等について発言していただきます。

 佐々木道夫さんは、被災した三陸町国民健康保険越喜来診療所(現在は大船渡市国民健康保険越喜来診療所)の所長であり、震災後被災者の診療等に従事するとともに、大船渡市の産業医として、「復興の担い手である自治体職員の健康が維持されなければ復興はあり得ない」との理念に基づいて職員の健康管理を行うとともにプロパー職員及び他の自治体からの派遣職員の健康や労働実態に関する調査を行いその結果に基づいて首長に対し提言等を行ってきました。被災地における災害医療や過疎地の医療体制の在り方、自治体職員の健康問題及び派遣職員の自殺問題等について発言していただきます。


“オスプレイ”配備と米軍ヘリ墜落

東京支部  神 田   高

 今年一月につづき、オスプレイの強行配備が再開された八月一四日に妻の大城美幸さんと一緒に普天間基地第二ゲート前と鉄柵フェンス越しにオスプレイの監視行動をしてきました。普天間基地の海兵隊ヘリが沖国大に墜落炎上した九年前の八月一三日、東シナ海に沈んでいく真っ赤な夕日が今でも思い出されます。

 九年前、夕方にヘリ墜落のニュースを聞き、妻の運転する車で墜落現場に駆けつけましたが、黒焦げに焼けた建物は異臭を放ち、MPが管理する現場には日本の警察も手も足も出ませんでした。道路を挟んだ大学の反対側にはマンションが密集、墜落したヘリのローターを見て、人命を無視した米軍の対応に怒りを禁じえませんでした。

 ところが、県民挙げてのオスプレイ配備反対への強い意志表示がなされている中で、八月五日宜野座村の海兵隊基地のキャンプ・ハンセンで、嘉手納基地所属の救難ヘリが墜落炎上し、乗員の海兵隊員が死亡しました。県民挙げての強い反対を押し切って、日米政府がオスプレイを追加配備しようとしているさなかでした。

 琉球新報八月六日社説は、「県民の犠牲の恐れがあってもオスプレイ配備を撤回せず、ヘリ基地の県内移設押しつけもやめようとしない。沖縄の人には生命を脅かされずに暮らす権利さえ無いと言わんばかりの、この国はいったい何なのか。」。『理不尽は終わりにしたい』と結んでいます。

 復帰後四五年間に四五件の墜落事故があり、復帰前の、小学生ら一八人が犠牲になった『宮森小ジェット機墜落事故』(恩納村に隣接する旧石川市)では、黒焦げになった児童に手をさしのべることもできなかったとのことです。

 しかし、米軍は「未亡人製造機」と揶揄されるオスプレイを県民の総意に反し、二〇数機もの強行配備をしました。これに負けじと八月一四日に普天間基地のフェンス周辺に張り込み、大きなローターを回転させ、試験整備しているオスプレイを撮影し、監視行動をしてきました。

 しかし、我が夫婦が昼をとりながら過ごしていると、普天間基地から飛び立った小型ヘリが、なんと我々に向けて写真撮影用の強烈なフラッシュを放ってきました。思わず「写真を撮りやがったな」と拳をあげました。

 普天間のあとには、北部の東村(パイナップルが有名)で海兵隊用の「ヘリパッド」建設の状況を現地の人々(統一連など)から話しを伺いましたが、「ヘリパッド」というからコンクリートで地べたを張っているのかと思っていたら、現地でヘリ訓練をして着地しているところが「ヘリパッド」だとのことで、要するに、海兵隊ヘリ(オスプレイを含む)の離着陸場が「ヘリパッド」でいわば『全土基地方式』(訓練次第でどこをつかってもよい)そのものとの実感を受けました。

 また、東村の監視テント上空からもわれわれを「監視している」のを見ると、米軍・海兵隊が“オスプレイ配備”“ヘリ墜落事故”による県民の反発、抵抗に神経をとがらせてるなとの印象を強く受けました。嘉手納基地所属のヘリ墜落死亡事故を機に、沖縄県民はオスプレイ強行に「ワジワジー」の限界をこえて怒っています。

 できれば現地で、少しでも私たちが監視行動、基地反対の意思表示をすることは大変大事だと思いました。これからも、力を合わせて、オスプレイをはじめ、米軍基地撤去まで頑張りましょう。

 なお、八月二二日宜野座村では、米軍ヘリ墜落事故に抗議する村民大会に一一〇〇名が、抗議の意志を表明する真っ赤なハチマキを巻いて参加しました。他方、米軍は同日夕方事故機と同型のヘリを会場上空に飛行させていました。

 ☆なお、『宮森小ジェット機墜落事故』をテーマにした映画“ひまわり”の上演運動が全国で行われています。NHK朝ドラ“あまちゃん”役の能年玲奈さんが出演しています。

☆東京では、一〇月二日(水)“三鷹市公会堂 光のホール”で上映されます(一〇時三〇分 一四時〇〇分 一八時三〇分。

前売り一〇〇〇円。連絡先 大城〇九〇―一六五六―六二九五)


この秋、集団的自衛権を絶対に許さない大きな運動を! 九条世界会議関西二〇一三への参加・協力のお願い

〈国際シンポ(一〇月一三日、関西大学千里山キャンパス)〉
〈記念イベント(一〇月一四日、大阪市中央体育館)〉

大阪支部  西 川 大 史

大阪で九条世界会議を開催します。

 九条世界会議は、二〇〇八年に東京で行われました。あれから五年、再び、九条の危機が訪れています。でも、今度は前回よりも深刻な危機です。

 昨年の衆議院選挙や七月の参議院選挙の結果を受けて、本格的な懐憲策動に対する反撃の第一歩として位置付けています。主催は現在約五〇の団体が加わる実行委員会ですが、これまでの共同の輪を超えたもっとも広い共同の運動に発展しています。自由法曹団大阪支部もこの実行委員会に参加しています。

 また、九条世界会議関西二〇一三は、二〇〇八年の九条世界会議を継承する全国的な取り組みです。今回の大阪での取り組みは、全国的意義をもつとして、前回の共同代表の池田香代子さん(翻訳家)、新倉修さん(青山学院大学教授)、吉岡達也さん(ピースボート代表)にも加わっていただいています。また、集会成功に向けて全国から五五人、関西からは六四人の著名な方に呼びかけ人となっていただいています(七月二七日現在)。

国際シンポ(一〇月一三日、関西大学千里山キャンパス)

 海外からは、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界各地から、平和運動に取り組んでいる第一線の市民活動家や研究者・法律家など約二〇人のゲストを招待する予定です。また、国内ゲストとしては、現在のところ、伊藤真さん(伊藤塾塾長・弁護士)、ロニー・アレキサンダーさん(神戸大学大学院教授)、高遠菜穂子さん(イラク支援ボランティア)が決まっています。

 午前は全体会、午後は三つの分科会に分かれて議論します。

 第一テーマは、「戦争のない世界」です。一九九九年にオランダのハーグで開催された世界平和市民会議や二〇〇六年カナダのバンクーバーで開催された世界平和フォーラムでは、九条を世界に広げようという呼びかけがされました。九条には条文で書かれたこと以上に平和へのメッセージが豊富に含まれています。核兵器など大量破壊兵器の廃絶、紛争地域への武器輸出の禁止、戦争の経済から平和の経済へ、平和の文化、平和教育など平和を築くメカニズムが九条に含まれています。九条の持つ普遍性を具体化する議論をします。二一世紀の人類と地球がめざす大きな平和構想を議論します。

 第二のテーマは、「アジアのなかの九条」です。アジア、特に北東アジアでは、朝鮮半島の核・ミサイル、島嶼部の領土問題、歴史認識などに起因する「不信と対立」がますます深刻化しています。「不信と対立」から「信頼と協調」というオルタナティブをいま真剣に議論しなければなりません。九条は、アジア太平洋戦争の反省の上に、日本が平和国家として再出発したときのアジアや世界に対するに約束でした。また、九条は、東アジアにおける地域的な平和と安全の基礎となってきました。九条はアジアの平和にどのように貢献できるのかを議論します。

 第三のテーマは、「平和への権利」です。これまでは「平和」は、国連安保理などで取り上げられる問題だと考えられていました。しかし、いま国連の人権理事会で、「平和」を個人の人権として位置づけ、そこから、たとえば兵役拒否の権利を認めようという議論がされています。これは、日本国憲法前文の「平和的生存権」と通じるところがあります。

一万人のイベント(一〇月一四日、大阪市中央体育館)

 午前の部では、「戦争のない世界へ」、「アジアのなかの九条」、「若者によるワークショップ」の三つのワークショップをします。

 午後の部では、海外・国内のゲストのスピーチ(海外ゲストからはアメリカ・韓国・チュニジアなど、国内ゲストからは、沖縄から高里鈴代さん、福島から武藤類子さん、脱原発を発信している藤波心さん)、また、文化行事としては、上條恒彦さんの出演、一〇〇〇人の合唱団など盛りだくさんの企画が準備されています。UAさん、オリバーストーン監督などからのビデオメッセージも予定しています。

成功させる弁護士の取組み

 自由法曹団大阪支部の弁護士も加わり、二九人の弁護士の呼びかけで、九条世界会議関西二〇一三を成功させる法律家の会を結成して、取り組んでいます。七月一日の結成総会では、ロニー・アレキサンダーさん(神戸大学教授)をお招きして、「平和に暮らす」という意味について討論しました。そして、八月一九日には、弁護士で元芦屋市長の北村春江さんを囲んで、戦争体験世代から、「戦争につながる道に一歩でも踏み込んだら、後は泥沼」というテーマでお話をいただく予定です。この企画は、九条世界会議関西実行委員会と共催で、全体のプレ企画という位置づけで取り組んでいます。

 この秋は、まさに、集団的自衛権の行使容認という、憲法九条への正面からの挑戦を受けて立ち、熱い闘いとなります。大阪だけではなく、関西の二府四県の九条の会などが結束して、成功のために取り組んでいますし、また、東京や神奈川、山形などの自由法曹団の団員のみなさんからの協力の声も届いています。是非とも大きく成功させたいと思います。

 これだけの規模の取組みですから、相当な運営費が必要となりますので、カンパの協力もお願いしています。全国の団員のみなさまにおかれましては、是非ご参加とカンパの協力をお願いします。

送金先

三井住友銀行 南森町支店 普通預金 口座番号一八九七八〇二

口座名義「九条世界会議in関西(きゅうじょうせかいかいぎいんかんさい)を成功(せいこう)させる法律家(ほうりつか)の会(かい) 会計(かいけい) 中西基(なかにしかなめ)」

詳しい情報は、http://9jou-kansai.com/をご覧ください