<<目次へ 団通信1481号(3月1日)
東京支部 馬奈木厳太郎
一 二・一〇提訴
「六二〇人が三次提訴」(河北新報)、「三次合わせて二五七九人」(福島民報)、「原発事故に伴う被害救済を求めた全国一三裁判所に提訴された訴訟の原告約五千人のうち、同原告団が約半数を占めることになる」(福島民友)――二月一一日の朝刊各紙は、こうした見出しと内容で第三次提訴を報じました。
「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟第三次原告団六二〇名は、二〇一四年二月一〇日、国と東電を被告として、福島地方裁判所に提訴いたしました。原状回復と損害賠償を求める原告団は、第一次及び第二次原告とあわせて約二六〇〇名となりました。
提訴当日には、前日からの大雪の影響が残るなか、あぶくま法律事務所前に約一〇〇名の原告団・弁護団・支援者が集合し、新たに原告団事務局長に就任した服部浩幸さんの挨拶のあと、「生業を返せ、地域を返せ!」の横断幕を先頭に、急遽雪かきして開設した道を裁判所に向けて行進しました。記者会見には、原告となった斎藤富春(ふくしま復興共同センター代表委員)など数名の方が参加しました。
二 原告団について
第三次原告となった方々の特徴としては、農業・家畜・造園関係の方と医療従事者の方が増えたこと、地域としては南相馬市と二本松市で増え、南相馬市の方が約一割を占めていることなどが挙げられます。六二〇名のうち、いまも避難をしている方は約七〇名。事故時に、いわゆる避難区域内に居住していた方は約三〇名となっています。
今回の提訴により、福島県五九市町村のうち五〇市町村から参加する原告団となり、文字通り「オール福島」の原告団となりました(空白区は南会津郡などです)。また、福島のみならず、宮城、山形、茨城、栃木に事故時に居住していた原告、これらの事故時の居住地から県外に避難した方々が含まれる「オール被害者」の訴訟といえる原告団となりました。
原告団の内訳としては、中通り地方約一六五〇名、浜通り地方約五五〇名、会津地方約一五〇名、県外約二五〇名となっています。
三 第三次提訴の意義
第三次提訴は、原発事故から三年を迎える直前での訴訟提起となりました。これは、汚染水問題など今日も被害が続いているなか、国や東電などの対応や姿勢に甘んじることなく、現状を変えていくという声を三年という節目を迎える前に表したいとの想いによるものです。
また、今回の提訴は、経産省が原発を「重要な電源ベース」と位置づけた直後の訴訟提起という意味合いを有しており、本件訴訟との関係では、東電の過失を審理することになった直後というタイミングでもありました。あれほどの被害をもたらしたにもかかわらず、政府は、被害者を放置し、あたかももはや被害がないかのような振る舞いを続けています。そうしたなか、訴訟という場において、国のみならず東電の過失についても審理されることとなったことを受け、国や東電の責任追及を求める声がさらに広がっていることを示しえたのではないかと考えています。
四 さらに大きな原告団、より大きな取り組みへ
本年一月一九日の第二回原告団総会において、原告団は、年内に原告を五〇〇〇人規模とする方針を採択しました。この方針を受け、第三次提訴を行ったばかりですが、早くも今夏には第四次提訴を予定しています。さらに大きな原告団、より大きな取り組みを構築すべく、原告団も弁護団もすでに動き出しています。原状回復=E被害救済=E脱原発≠目指し、今後も全力を尽くしていく決意です。
東京支部 松 島 暁
一 かつて日米関係は「漂流」しているといわれた(船橋洋一『同盟票流』岩波書店)。漂流する日米関係を再構築すべく、日米同盟の「再定義」が実行され、一九九六年四月、橋本・クリントンの「日米安全保障共同宣言―21世紀に向けての同盟」に結実する。
共同宣言は、「日本と米国との間の堅固な同盟関係は、冷戦の期間中、アジア・太平洋地域の平和と安全の確保に役立った。我々の同盟関係は、この地域の力強い経済成長の土台であり続ける。両首脳は、日米両国の将来の安全と繁栄がアジア・太平洋地域の将来と密接に結びついていることで意見が一致した」とし、強固な同盟関係を強調した。この日米安保共同宣言を踏まえ、一九九七年に日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を見直し、九九年に朝鮮半島有事を想定した「周辺事態法」を制定し、自衛隊の米軍への戦争支援活動を法制化した。
また、九・一一後の二〇〇一年には「テロ特措法(平成一三年九月一一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法)」を、二〇〇三年には「イラク特措法(イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法)」を成立させ、並行して、武力攻撃事態法や国民保護法等の有事立法を制定し、アメリカとともに戦争する国造りに向け二人三脚の取り組みを実現してきた。
この「良好」だったはずの日米関係が、オバマ・安倍政権のもと、迷走し始めている。そのことを象徴するのが先日行われた日米外相会談である。
二 二月七日、ワシントンDCで行われた岸田外務大臣とケリー国務長官との日米外相会談の内容は、外務省にホームページにその概要が公表されている(http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page4_000372.html)。
冒頭、ケリー国務長官からの歓迎の辞の後、岸田大臣より「普天間移設問題の進展、TPP交渉の開始、日本のハーグ条約締結」等、「積極的平和主義に基づく日本の取組や安全保障分野での協力、北朝鮮への対応での連携、同盟強化の方策を確認したい」と述べたのに対し、ケリー国務長官は無言である。
また、今回の会談の最大の目的と思われる、オバマ大統領の国賓待遇での訪日について、岸田大臣が「オバマ大統領を国賓としてお迎えしたい、その際には、これまでの日米協力の成果も踏まえ、両首脳で力強い同盟を確認し、更なる具体的な協力を打ち出したい旨述べた」のに対し、ケリー長官はまったく応答していない。そればかりか一三日には、国賓待遇での訪日は実現しないことが正式に発表されている。
一方、「日韓関係の改善を大変重視して」いるとの内容が、数少ない公表されたケリー長官の発言である。
日米関係は、二人三脚の時代から、緊張と混迷の関係に移行したというべきである。韓国・中国との関係をいっこうに改善しようとしない安倍政権、中国に軸足を移行させつつあるオバマ政権、双方の不信は増幅しつつある。
三 緊張と混迷の日米関係のなか、安倍首相は、外交と安全保障の司令塔の役割を担う国家安全保障局の局長に、谷内正太郎元外務事務次官を指名した。
「明治維新以来、日本人には『自立への衝動』がありました。いまもある。しかし、戦後は、左右からの『自立の衝動』を抑えつけながら、『米国への依存心』と功利主義に立って生きてきた」「日米同盟に対して『いったい何のため、どれほど利益をもたらし役に立っているのか』という冷酷無比な計算尺を当て直し、これを秤量し直してみること」「日米同盟とはなにも神様が与えたもうた贈り物ではありません。日本国民が、主体的・自発的選択で選び取り、いまも日々選び取り続けている体制である」とする谷内氏を、局長のポストに据えた。
「アメリカとともに戦争する国」から、「自立して戦争する国」を、安倍政権は選択したのであろうか。
東京支部 金 井 克 仁
一 少し変わった観点からの改憲阻止の訴え
憲法問題の学習会などで憲法九条改正は「戦争をする国」にするためだと訴えてきました。昨年は憲法九六条先行改憲論及び集団的自衛権問題なども訴えました。ところで私が改憲問題で訴える観点に靖国神社問題があります。《靖国神社での戦没者への顕彰》は「戦争する国」において必要不可欠な仕組みであると考えるからです。
つきましては昨年末の安倍首相の靖国参拝と国会質問を受けて、靖国問題を「死者の差別」という視点から述べてみたいと思います。
二 世界の反発を受けた安倍首相の靖国神社参拝
昨年一二月二六日の安倍首相の靖国神社参拝は波紋を世界に広げました。中国・韓国の反発は当然として、アメリカは「失望」したと表明し、さらにロシアや欧州などからも反発がでました。国内の新聞の多くも批判的に報道しました(例えば「安倍首相靖国参拝 真の慰霊になったのか」東京新聞など)。
三 安倍談話などにみる靖国参拝正当化の論理
ところで今回の参拝で気になる点は安倍首相の次の談話箇所です。「御英霊に対して、哀悼の誠を捧げるとともに、尊崇の念を表し、御霊安らかなれとご冥福をお祈りしました。また、戦争で亡くなられ、靖国神社に合祀されない国内、及び諸外国の人々を慰霊する鎮霊社にも、参拝いたしました」。前半部分は「戦没者への追悼」を理由にするもので過去の首相参拝の理由とほぼ同様です。注目点は後半部分の「鎮霊社」への参拝です。ちなみに櫻井よしこ氏は週刊ダイヤモンド(一月一一日号)で鎮霊社に参拝したことで「安倍首相の祈りはすべての人々にささげられている」と言っています。
これまでA級戦犯が合祀された靖国への参拝を正当化するため、安倍首相はその著書「美しい国へ」などで、戦犯が合祀された靖国に参拝しても戦犯の行為に賛成したわけではない、奴隷制のために戦った南軍兵士が埋葬されているアーリントン墓地を参拝しても奴隷制を認めたことにならないことと同様であると言ってきました。ちなみに二〇〇一年七月に小泉首相(当時)はA級戦犯の合祀について「死者に対しそれほど選別しなければならないのか」と国会で答え、死者は平等との観点から問題にしないと言いました。
そして今回は鎮霊社への参拝を理由に、靖国神社に合祀されていない日本人だけでなく、諸外国の人々も含め全ての戦場で亡くなった人々の慰霊のためという新たな論理を展開してきました。
しかしこうした論理は屁理屈・詭弁に過ぎません。
四 A級戦犯合祀論などの論陣だけで良いのか
首相の靖国神社参拝が政教分離に反し違憲であり、ふさわしくないことは明白です。また靖国神社が戦争動員の精神的支柱であったこと、遊就館の存在等から先の大戦を正しい戦争と考えていること、A級戦犯が合祀されていることから、こうした性格の神社に首相が参拝することが許されないことも明らかです。私も全く同感です。
しかし私はこうした観点だけの批判では不十分であると考えています。特にA級戦犯合祀をメインに批判することは、その感を強くしています。なぜならA級戦犯の合祀が取り消されれば、問題点が解消されてしまうからです。なお、こうした危惧を表明するものに高橋哲哉「靖国問題」(ちくま新書)があります。
この点を考えるポイントは「戦没者(戦死者)を慰霊する」ことは当然なこととする感情や思いです。靖国参拝問題で靖国派や一部国民から「死者を追悼してどこが悪い」などとの反論があります。しかし問題は「死者への追悼」行為ではなく、「靖国神社での追悼」行為なのです。この区別が各種世論調査やマスコミ報道、さらには多くの国民の中にも明確にされていないと思います。
これに対する私の回答は《死者を差別する靖国神社で戦争被害者の追悼・慰霊はできない、ふさわしくない》というものです。実際、私はこれまで学習会などで、靖国神社が戦争動員の精神的支柱であった点などの外に、こうした観点で訴えてきました。
五 幾重にも死者を差別する靖国神社
十分に理解されていないことですが、靖国神社は死者を差別している神社です。明治二年の創建時から靖国神社は官軍(天皇側)の死亡兵士の魂を祭るものでした。そのため戊辰戦争の賊軍兵士(幕府や会津藩の兵など)、西南戦争での西郷隆盛及びその兵士は合祀されていません。太平洋戦争時には国民の鑑ともてはやされた白虎隊も祭られていません。また軍属などの特殊事例を除き民間人(空襲や原爆の被害者)も祭られていません。当然、外国との戦争での敵国兵は祭られていません。つまり、靖国神社に祭られている死者(祭神)は「戦争の死者から敵側の戦死者を排除し、さらに自国の戦死者から一般民間人の戦死者を排除した」(前掲高橋)ものです。さらに言えば、高杉晋作の奇兵隊をはじめ長州諸隊のうち被差別部落民からなっていた隊の隊士は一人も祭られていません(「『靖国』と日本の戦争」岩井忠雄・新日本出版)。
ところで昔から日本では戦死者を敵味方なく供養・追悼する施設があります(前掲高橋、大江)。外国にも同様の施設があります。その例は安倍首相も言うアーリントン墓地です。同墓地は南北戦争の北軍戦死者の墓地としてスタートしましたが、一九一四年の南部連合祈念碑が建立されるまでに四八二人の南軍兵士らが埋葬されました(「兵士はどこへ行った」原田敬一・有志舎)。
小泉氏は「死者は平等」との点からA級戦犯合祀を問題ないとしましたが、靖国神社は死者を差別しており成り立たない理屈です。アーリントン墓地の南軍兵士は「死者は平等」との思想や南北融和の観点から埋葬されました。そして安倍首相の著書の主張は、こうした思想が全くない靖国神社をアーリントン墓地に似たものと偽るものです。その主張は屁理屈に近いものがあります。
六 鎮霊社は付け足し神社である
次に安倍首相が今回持ち出した論理が「鎮霊社」への参拝です。鎮霊社について、靖国神社のHPは「戦争や事変で亡くなられ、靖国神社に合祀されない国内、及び諸外国の人々を慰霊するために、昭和四〇年(一九六五)に建てられました。」と説明してあります。 しかし鎮霊社の建立以降も、靖国神社の祭神は本殿にある霊璽簿(れいじぼ)と称される名簿に記載された約二五〇万柱であって、鎮霊社の霊は祭神には入っていません。つまり鎮霊社は靖国神社の本質的施設ではなく、空襲や原爆の被害者や敵国兵士などを祭りましたと言うための神社であり、形だけの付け足しの神社です。
ですから、鎮霊社に参拝したことをもって戦争被害者へ世界平和を誓えたと言える場所でもないのです。誓うなら他にもっとふさわし場所、例えば千鳥ヶ淵戦没者墓苑や平和の礎などがあります。
七 死者を差別する靖国神社は追悼の場にふさわしくない
これまで述べてきたように靖国神社は幾重にも死者を差別している神社です。こうした靖国神社は政教分離に反して違憲であるとか、戦争動員の精神的支柱であったからとか、A級戦犯が合祀されているからとの理由の前に死者を追悼したいという思いからみて追悼・慰霊する場所として全くふさわしくないのです。外国の首脳は敵兵も追悼するアーリントン墓地には献花しても、内外の敵兵を排除する靖国神社を参拝することはしないのです。にもかかわらず安倍首相らが幾重にも死者を差別している靖国神社の参拝に今なお、そしてこれまで以上に固執することは、復古派や靖国派と一緒になって右旋回するとともに「戦争する国」として来たるべき戦死者の追悼・顕彰の仕組みづくりに必死だからです。そして靖国神社が死者を差別し続けるのは、天皇のために戦闘で命を捨てた者の魂だけを「英霊」として、「追悼」や「慰霊」ではなく「顕彰」したいからです。
愛知支部 市 川 哲 宏
二月一二日、愛知県春日井市にて活動している市民団体が主催する時事講座勉強会にて、「秘密保護法と私たちのくらし」という題目で、秘密保護法に関する市民勉強会の講師活動を行いました。
昨年一二月六日、国会にて秘密保護法が強行採決されました。全国で法案成立反対運動が盛り上がり、成立の直前に行われていたエンゼル広場での反対デモに四〇〇〇人を超える県民が集まりました。その後、名古屋市の北隣に位置する春日井市において、秘密保護法の成立過程があまりにも無理矢理なのではないか、成立した秘密保護法にはどのような問題点があるのか、今後、どのような活動を続けていけば、秘密保護法の施行を食い止めることができるのか等の声がどんどん上がってきています。今回、春日井市の地域に密着する法律事務所に所属する新六五期弁護士である私にも、秘密保護法の勉強会の講師派遣の話が飛び込んできました。
勉強会の講師を担当するにあたり、主催の者から、次のような内容を盛り込んで欲しいと言われました。その内容とは、秘密保護法が問題のある内容であることについてテレビや新聞でよく見るが、具体的にどのような場面でどのような形で私達の生活に影響が出るのかを紹介してほしいということでした。この依頼を受け、私は、勉強会にて、成立した秘密保護法の条文に潜む問題点につき、条文を一つずつ取り上げて、その条文が持つ問題点としてどのようなものがあるのか、具体的にどのような場面で問題となるのかということを中心に講義をいたしました。
例えば、法二二条の規定では、第一項にて国民の知る権利、報道・取材の自由に配慮すること、第二項にて取材行為につき、正当業務行為であることを定めていることを挙げました。その上で、実際にマスコミの取材行為の正当業務行為該当性は、検察官や裁判官が刑事裁判手続の中で判断することであって、その判断の前段階において、マスコミに秘密保護法違反の疑いがあれば、マスコミへの捜査当局の捜索差押えや、取材者の逮捕・勾留の危険が十分にあることをお話しました。特に、捜索差押えが入るということは、取材者のデスクやその周辺のパソコンやハードディスクを一切合切持っていかれるということで、その取材者や関連する係の者の他の事件の取材情報等も持っていかれ、マスコミの仕事自体がそもそも出来なくなってしまう状態になる恐れが生じます。そうすると、マスコミが萎縮して、特定秘密に関連しそうな話題については取材を避けるようになりかねず、私達が日常生活において目にする情報につき、国家の将来に関わる重要な情報は含まれないようになってしまいます。そして、最終的には、例えば尖閣諸島や竹島等で生じうるきな臭い出来事について、特定秘密だということで情報が統制され、市民の皆さんが全く知らない間に、政府が話を進めてしまう可能性がある旨をお話するなどしました。
結果として、勉強会に参加された市民の方々から、以下のような感想をいただきましたので、ご紹介いたします。
「今まで何となく秘密保護法に問題があると理解していましたが、具体的に法律のどの部分が問題で、どのように具体的に問題が生じるのかについては、今回の勉強会で理解ができたように思います。このような内容の法律だから、全国で反対運動が大きく盛り上がっていたのだと、合点がつきました。」この感想を受け、私は、まだまだ秘密保護法の何が問題なのかについて、きちんと把握されていない市民の方々がたくさんいらっしゃるということを感じました。 また、そういった市民の方々に、丁寧に一つずつ秘密保護法の問題点を説明すれば、秘密保護法への反対運動への理解と協力がきちんと得られることについても、手応えを感じました。そして、法律の問題点を指摘することに特化した講義だけで市民の方々の反響を得られるくらい、この秘密保護法は問題が多いものだということを、改めて感じました。
今回の勉強会において、私は、以下のように市民の方々に呼びかけました。今日の勉強会で、これは問題だと感じたことがあれば、是非ご家庭で、職場で、話をしてみてください。改めて、この法律はおかしいぞという認識を、身近な方々と共有してくださいと。今より多くの市民の方々が、一緒にこの法律に問題があることを正しく深く理解したとき、反対運動はもっと大きく盛り上がることと思います。そのための種を蒔くべく、これからも秘密保護法に関する講師活動を続けていきたいと思います。
神奈川支部 篠 原 義 仁
一 一二月六日、衆議院から法案の送付をうけた参議院は、わずか九日間の審議で、秘密保護法修正案を国民の多くが反対の声をあげるなかで強行採決した。「何が秘密、それは秘密」、国民の目、耳、口をふさいで憲法を実質的に骨抜きにする法案が、「秘密は戦争の始まり」という批判を押しのけて成立した。
秘密保護法は、「軍事立法」の性格を有し、民主主義圧殺の弾圧立法として改憲策動と連動して成立した。
団は、秘密保護法PTを立ちあげ、この法案が国会に提出されて以降、四〇日の間に、意見書「徹底解明 秘密保護法案」、「秘密保護法/日本版NSC 山積する問題」、「参議院での秘密保護法案廃案を求める」を発表し、法案の反憲法的、反民主主義的内容を批判的に解明した。
二 秘密保護法は
(1)「行政機関の長」が、防衛、外交、スパイ、テロに関わる広範な情報を特定秘密に指定し
(2)その指定秘密をメディア、市民はもとより国会、裁判所からも秘匿する一方で、取り扱う公務員、労働者や家族を「適性評価」による監視を行い、国民から分断し
(3)漏えいや「管理を害する方法」での取得、共謀、教唆、煽動を重罰に処し、さらには、過失犯をも処罰し、国民の萎縮効果を狙う
ものとなっている。
こうした視点から、団(PT)は前記意見書でこの法案の問題点を具体的事例に即して分析し、問題を提起したが、国会での審議は、こうした「問題」への本質的回答はなく、「疑問」解決の方策と称して、実効性のない第三者機関の設置、第三者たりえない総理大臣の関与(「第三者機関」的内閣総理大臣)、内閣官房内の「保全監視会議」、内閣府内の「独立公文書管理監」「情報保全監察室」の設置を附則で定めるところとなった。しかし、これら機関が「独立した公正な機関」とはなりえず、第三者機関の混迷はきわまっている。「特定秘密の提供を受ける国会」のあり方の検討も附則で定めたが、衆参両院規則や国会法の改正による対処は、秘密から排除されている国会との整合性をどうはかるのか、その矛盾に逢着している。
ともあれ、何ら疑問の解明のないまま強行的に成立した秘密保護法は、「欠陥法」の欠陥是正なしに一二月一三日に公布され、一部施行された部分は除き、基本的には、前記矛盾、疑問と向き合うなかで「一年以内」の施行が予定されている。
三 一方、国民運動は、各地での取り組みはもとより、首都圏規模の取り組みとしても一一・二一、一二・六の日比谷野音集会と国会要請行動、デモ行進は、一万人、そして一万五千人の参加で国会を包囲し、法案反対の国民の声を国会に届けた。
残念ながら、一二月六日には国家安全保障会議設置法につづき、秘密保護法も成立した。しかし、希代の悪法である秘密保護法に対し、国民運動は強行採決にひるむことなく反対の声をあげつづけ、今では秘密保護法の廃案と、法の執行の無力化を求めてひきつづく運動を展開している。
団も、この間、国民運動の一翼を担って奮闘してきたが、年明けには、マスコミ関係団体等と共同しての組織(「ストップ!秘密保護法」実行委員会)が企画した一・一四、一・二一銀座マリオン前行動、一・一六秘密保護法の廃止を求める院内集会を成功させた。また、原発問題やTPPに取り組む諸団体も含めて広範に結集している、法律の廃止を求める実行委員会も、国会開催日の一月二四日に照準をあてて国会包囲行動、院内集会を大規模に展開した。
そうした情勢のなかで、前記意見書に集約された見解、論考に関し、従前の出版が、いわゆる「持ち込み企画」であったのに対し、出版社(合同出版)から廃止を求める運動の観点から必須のものと評価され、その出版の要請を受けるところとなった。
団のPTは、その要請に応えて、短期間のうちに、先ごろの第一八五臨時国会の議事録を読みこなし、条文(修正案)はもとより、「宿題」として附則のなかに持ち込まれた前記「論点」も解明して「全条文徹底批判 これが秘密保護法だ」を緊急出版した。
きわめてスピーディに出版に至った本書は、他に類書を見ない極めて実践的な出版で、秘密保護法の廃止、無力化をめざす取り組みにとって格好な出版となっている。
「知を力に」。日常的な反対運動のなかで、本書を基礎に数多くの学習会が組織される必要があるし、その多くの学習会の講師依頼は、団の各支部に集中するものと思われる。本書は、講師活動のための必読書といってよい。
団の秘密保護法PTのこの間の精力的活動を知るものとして、実践の書である本書を推奨するものです。
四 一二月一七日、安倍内閣は、外交・安全保障の基本方針となる国家安全保障戦略(NSS)を初めて策定し、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画とともに閣議決定した。NSSは、外交・安保政策の司令塔である国家安全保障会議(日本版NSC)の行動指針となるもので、アメリカと情報を共有するなかで秘密保護法体制の整備で「秘密」の保持、管理を推進して、アメリカといっしょに「戦争する国」づくりに拍車をかけるものとなっている。
ここでは、従前の「専守防衛」の理念を捨て去って「積極的平和主義」の名の下に中国の軍事的台頭や北朝鮮、韓国等の周辺国に対抗するためと称して、集団的自衛権の行使を解釈改憲で実現しようとしている。
それとの関連で、日米同盟の強化と自衛隊の増強を揚げ、NSSに「我が国と郷土を愛する心を養う」として愛国心を明記するに至っている。第一次安倍内閣で教育基本法の改悪が行われたが、第二次安倍内閣で教育基本法の更なる改悪と教育制度の大改悪が画策されている。
四月からの消費税増税が、福祉に回ることがないのは、秘密保護法の強行採決と同じ日に成立した生活保護法改悪案等の諸立法からも明かで、防衛予算は昨年にひきつづき大幅に増額されている。
秘密保護法の成立後、よりタカ派的色彩を強めている安倍内閣の手による治安維持法下での政治の再現を許すことはできない。秘密保護法の廃止はもとより集団的自衛権に係る解釈改憲、国家安全保障基本法による立法改憲、そしてその先にある明文改憲も絶対に阻止する必要がある。
そのまず一歩として、秘密保護法の廃止と無力化のために力を尽くす必要があり、そのいみでも、本書を手元におき、活動する意義は大きいと確信する。
今、情勢が本書を要求している。
そんな思いを込めて、重ねて本書を推奨する次第である。
埼玉支部 黒 澤 瑞 希
「明日の自由を守る若手弁護士の会」が、集団的自衛権をテーマにリーフレット(A4 四つ折りサイズ)を作成いたしました!
タイトルは、その名も「二分で分かる!集団的自衛権 ほぼ AtoZ」。(当初は「五分で分かる!」だったのですが、「五分は長い!」という某氏の意見により二分になりました 笑)
第二次安倍政権が今年確実に狙ってくるであろう解釈改憲を前に、私たち法律家は全国民的反対世論の形成に向けて全力を注がなければなりません。
しかし、いまだ集団的自衛権の内容を正確に具体的に伝える報道は少なく、ただただ政府や自民党からの解釈改憲への主張を垂れ流すばかりで、国民の関心も低いままです(景気回復ばかりに気を取られているからこそ安倍政権が盤石なので、そういう意味では関心が低いのも当然なのですが)。それどころか、連日のように安倍首相が国会答弁で解釈改憲への執念を見せ、それへの的確な批判が質量共に不十分な今のままでは、秘密保護法の時のように、国民世論の形成が「手遅れ」になる可能性もあります。
特定秘密保護法の時に「目覚めた」主権者たちの怒りを確実に解釈改憲への怒りにつなげて、今度こそ反対の包囲網で政府を追い詰めるために、法律家だからこそできること、すなわち国民に正しい知識を武器として与える役割を果たさなければなりません。
そこで、政治にはなんとなく興味はあるけれども知識はあまり無い、という何千万人もの国民をターゲットに、まずは正しく知って欲しい、という趣旨で当リーフレットを作成いたしました。
集団的自衛権の基本的な知識と、解釈改憲について、今回もかわいいイラストでカラフルに仕上げています。政治や改憲の問題に関心を向けてもらえるきっかけになるものになるように、という願いを込めました。
学習会や街頭宣伝などで大いに活用していただければ幸いです!
●一部一五円(税込み)
●注文方法
(1)注文専用メールフォームでの申し込み(「明日の自由を守る若手弁護士の会」ホームページから進めます)
(2)FAXでの申し込み
書き必要事項をご記入の上、
〇三-三三五七-五七四二(青龍美和子 宛て)へ
FAXをお送り下さい。
・ 注文部数(ご注文は一〇部単位で受け付けます。)
・ ご氏名
・ 送付先住所
・ FAX番号
・ 電話番号
・いつまでに必要か(送付希望日)
*送付には時間がかかることもございますので、日数に余裕を持ってお申し込み下さい。
●送料
一〇〜三〇〇部までは三五〇円
三一〇部以上は着払い
自由法曹団女性部新人歓迎会
東京支部 長 谷 川 悠 美
一月三一日、横浜市開講記念館で、女性部の新人歓迎会を開いていただきました。
横浜市開講記念館はレトロで素敵な建物なので、そんなところで日本語の使い方を学べるなんて、まるで大正時代の女学生にでもなったかのような気分になって、会場に向かいました。
講師は、日本航空キャビンクルーユニオンの深田秀美さんです。深田さんは、現在もJALのキャビンアテンダントをされていて、JAL不当解雇裁判では証人として証言をされた方です。
とても勇気があるばかりでなく、美しい方で、柔らかいけれどもしっかりとした話し方と物腰をなさっていたので、女性部全員が、お会いしてすぐに虜になってしまったように思います。
講師が魅力的だと、生徒のモチベーションも上がります。
深井さんが仰るには、キャビンアテンダントは実は美しい日本語を使っているわけではないのだそうです。けれども、「キャビンアテンダントは言葉の使い方が美しい」と言われる機会が多いため、どうやらそう見えているようだということで、『実は美しい日本語を使っているわけではないけれども、美しい日本語を使っているように見えるコツ』を教えてくださいました。
ポイントはたったの五つです。
(1)第一印象でつかむ
キャビンアテンダントは、接客対応の研修では、とにかく姿勢と笑顔の練習を徹底的にするそうです。姿勢は、自分の限界まで胸を張ります。これによって、体が外に開き、受け入れてくれそうな印象を与えます。そして、笑顔により、上機嫌であるという印象を与えます。
(2)丁寧語で貫く
丁寧語を使うと、乱暴な言葉を防ぐ効果があります。キャビンアテンダントは、仲間内の会話も丁寧語でしているそうです。
(3)聞き取りやすく話す
はっきり、聞こえる声で話すことで、聞き手はストレスなく聞くことができます。
(4)相手のテンポに合わせて話す
話すテンポの速い人には、丁寧すぎず端的に対応し、子どもなどテンポがゆっくりな人には、ゆっくり丁寧に対応します。これにより、相手は心地よく会話ができるそうです。
(5)クレームには共感する
クレームには、謝るだけではなく、一言相手の気持ちに共感する言葉を入れることで、相手の怒りが早く収まり、こちらに怒りの矛先が向きにくくなります。
ただ、気持ちには共感しても、約束できないことはそう伝えることが大切です。
新人にとっては、依頼者や相手方代理人とのやりとり一つ一つが不安なため、これだけのことに気をつければ印象が変わるというお話で、気が楽になりました。
正しい敬語ではないとしても、丁寧な印象を与えられればいいのだと教えていただき、少しは自信をつけて、日々の電話や打ち合わせに臨んでいます。
先輩方が、私たち新人の悩みをくみ取って、このような企画を用意してくださったことを、とても有り難く思います。
講座の修了後は、山下公園付近をお散歩しました。大桟橋のあたりで、夕日がきれいに見えたので、全員で写真をパチリ。
その後は、川崎北合同の湯山先生おすすめのレストラン「ビストロデュポール銅羅」で、美味しいフレンチをいただきました。
手厚い歓迎を受けて、先輩方と私たち新人の距離もぐっと近づいたかと思います。
先輩方、六六期弁護士を、これからどうぞよろしくお願いいたします。
東京支部 今 泉 義 竜
来たる四月一二日(土)、六七期司法修習生を対象とした、自由法曹団、青法協、日民協、労働弁護団の東京以外の事務所による四団体合同事務所説明会が下記の通り開催されます。
六七期は、昨年一二月から一年の司法修習を行い、今年一二月末に登録をする予定の修習生です。六七期は、現在準備中の七月集会では、全体会のテーマをブラック企業問題として、学習会を開く等活発な活動をしています。
新人獲得を少しでも検討されている事務所には、是非参加していただきますようお願いします。多数の事務所のご参加をお待ちしております。ご参加頂ける事務所につきましては、メールまたは電話でのご連絡をお願いします。
なお、参加していただける事務所、また、参加は難しいが意欲のある新人を募集しているという事務所につきましても、事務所の紹介、募集要項をA4・一枚で添付メールにてお送り下さい。
☆当日のスケジュール
三時〜 事務所説明会開始(各事務所、島に分かれての説明)
六時〜 懇親会
○場所
TKPスター貸会議室 四谷 第二(三〇一)
(懇親会は近くの居酒屋を予定)
JR中央線・総武線「四ツ谷駅」四谷口徒歩二分
○参加費用
一事務所一万円
(懇親会については別途費用お一人一万円を頂戴します)
☆お問い合わせ
東京法律事務所
電 話 〇三−三三五五−〇六一一
FAX 〇三−三三五七−五七四二
弁護士 今泉義竜
mail: imaizumi@tokyolaw.gr.jp