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赤嶺 朝子 韓国憲法裁判所、統合進歩党の解散決定について
中島 嘉尚 リニア新幹線問題について団内関係者による検討会を
後藤 富士子 「DV」が「離婚原因」とされるとき
―「破綻させ主義」への転換(二)
菅野 昭夫 国際問題委員会創立二〇年に寄せて(中)
永尾 廣久 事務所ニュース新春号を読んで・・・
大江 智子 集団的自衛権シール投票
竪 十萌子 憲法ママカフェ盛況です
谷脇 和仁 高知「くらしあったか村 なんでも相談会」村長報告
神原 元 *追 悼*
阪田勝彦さんへ
宮坂 浩 ソウルの「水曜デモ」への参加のお誘い



韓国憲法裁判所、統合進歩党の解散決定について

沖縄支部  赤 嶺 朝 子

一 民主主義を破壊する政党解散決定
 韓国の憲法裁判所は、去る一二月一九日、韓国政府が申し立てた統合進歩党の解散請求に関し、同政府の請求を認容し、同党の解散決定をした(提訴は二〇一三年一一月五日)。報道等によると、政党解散決定は即日効力を生じ、同じ名前を使うのはもちろん、類似した綱領を掲げる政党を結党することも禁止され、同党に所属する国会議員は同日付で失職し、同党の党費や預かり金等の金員も全て国庫に帰属されるという。
 二〇一四年一〇月の沖縄支部と民弁との交流会の中で、政党解散請求事件に関わるイ・ハンボン弁護士から報告がなされた。イ・ハンボン弁護士のレジュメを元に同事件の概要について報告する。
二 政党解散決定の根拠
大韓民国憲法八条には、政党設立の自由とともに、「政党の目的又は活動が、民主的基本秩序に違背するときは、政府は、憲法裁判所にその解散を提訴することができ、政党は、憲法裁判所の審判により解散される」という政党解散の規定がある。
今回の事件は、一九八八年に創設された憲法裁判所における歴史上最初の政党解散請求事件である。
三 統合進歩党
 統合進歩党は、二〇一一年一二月に民主労働党と他の二つの政党が合併し、結党されたものである。合併した後には一三名の国会議員が選出されている(その後党内分裂あり)。
 党員は一〇万人にも及ぶ(韓国・ハンギョレ新聞の記事(日本語版)二〇一四・一二・一九社説)。
四 韓国政府が主張する解散事由
 韓国政府は、同党の目的と活動が自由民主の基本秩序に違反したとして解散請求をし、統合進歩党のすべての進歩な活動を解散事由として主張し、党内分裂過程でさえ解散事由として主張する。同政府が主張した解散事由の一例を挙げると、(1)同党の綱領、大統領選挙での公約などは現体制を否定し、新しい国家(北朝鮮式社会主義国家)を建設しようといっていること、(2)統合進歩党が追求している「進歩的民主主義」は、一九四五年に金日成が主張した「進歩的民主主義」に由来し、進歩的民主主義や民衆主権主義は究極的には北朝鮮式社会主義を追求するものであること、(3)平和協定締結を主張していること、韓米合同軍事訓練に反対していることは、北朝鮮に追従するためであることなどである。
 また、韓国政府は、米軍装甲車による女子中学生死亡事件抗議行動(二〇〇二)、ピョンテク米軍基地拡張阻止闘争(二〇〇五〜二〇〇六)、韓米FTA反対闘争(二〇〇六〜二〇〇七)、狂牛病ろうそく集会及び反イ・ミョンバク闘争(二〇〇八)、チェジュ島海軍基地移転反対闘争(二〇一一)などと同じ民衆の自発的闘争などさえ、北朝鮮の統一戦線戦術によったものであり、北朝鮮の指令により成立したという主張までした。
 韓国政府の主張は「反米=北追従」というもので、全世界的な反米闘争の歴史をまったく考慮しない主張であった。
五 判決の概要
 交流会で本件事件の報告を聞いた時、正直耳を疑った。政党の是非は有権者である国民が選挙で判断すべきものであり、民主主義国家が政党の解散請求すること自体、民主主義の破壊であるし、憲法裁判所が認めるはずがないと考えていた。また、交流会に参加した弁護士の中には、交流会の翌日から統合進歩党の専従弁護士になる新人弁護士もおり、解散されたら仕事がなくなるねと冗談を言い合っていた。
 しかし、残念ながら、憲法裁判所は裁判官八対一の意見で政党解散決定を下した。判決の原文には当たっていないため、判決の概要は、二〇一四年一二月一九日、韓国・ハンギョレ新聞の記事(日本語版)のホームページから引用する。
 「裁判官の多数意見は“統合進歩党綱領の「進歩的民主主義」は韓国社会を植民地半封建社会と規定し人民民主主義革命を前面に掲げる「自主派」の理念であり、統合進歩党の主導勢力は過去に北朝鮮の主張に同調し北朝鮮と連係して活動してきた”と明らかにした。 さらに、統合進歩党の主導勢力が“自由民主主義体制を転覆しようとしている”、“イ・ソクキ議員の内乱陰謀主張にも積極的に参加してきた”と明らかにした。 したがって統合進歩党は“最終的には北朝鮮式社会主義体制を追求している”と評価されるとし、これは“民主的基本秩序”に反するので憲法に則り政党解散が必要だと明らかにした。」
 「反面、少数意見は“「進歩的民主主義」は暴力革命路線を意味するものではない”、“統合進歩党の主導勢力の主張が北朝鮮の主張と一定部分似ていても、北朝鮮に無条件に追従すると見ることはできない”と明らかにした。 少数意見は進歩党の理念や活動が「民主的基本秩序」に反するとは見難いので政党解散の理由はないと明らかにした。」
六 おわりに
 判決の詳細については、今年の交流会で報告がなされると思うが、韓国・ハンギョレ新聞の記事(日本語版)で本件事件に関する記事が掲載されているので、ご参照頂きたい。
 憲法裁判所が下した政党解散決定は民主主義を破壊するものであり、政府が少数政党を司法を利用して弾圧するに等しく、許されるものではない。沖縄支部の団員の多くは同決定が下される前に統合進歩党弾圧に反対する国際署名をし、また、沖縄支部は政党解散決定後には同決定に対する抗議声明を発表した。
 同決定は韓国が民主化で歩んできた道、これまでの人類が民主主義を勝ち取ってきた歴史に逆行するものであり、衝撃とその影響は計り知れない。しかし、憲法裁判所には反対意見を表明する裁判官が一名いたこと、韓国内の多くの憲法学者も批判的な見解を明らかにしていること、困難な状況下で同党の専従弁護士になった者がいたこと、必死で闘っている市民や弁護士がいることは民主主義にとって重要なことである。


リニア新幹線問題について団内関係者による検討会を

長野県支部  中 島 嘉 尚

 リニア新幹線については、報道・その他でご承知の方もいることと思います。東京・名古屋間を四〇分で結び、将来的には大阪まで延伸することを計画しているようです(その場合には約七〇分)。東京・名古屋間の通過自治体は、東京都・神奈川県・山梨県・長野県・岐阜県・愛知県にわたります(東京・名古屋間)。本文では「鉄道」ではなく「移動交通手段」と書きます。この移動交通手段は、従来の鉄道特有のレール方式とは全く異なる概念によるもので、磁力で車体を僅かに浮かせて地上すれすれに時速約五〇〇kmで走行する方式で、これを磁気浮上式と言います。東京・名古屋間の計画路線の約八〇%余がトンネル方式で、多くは地下四〇メートル以下となる予定のようです。
 この場合、想定される問題として指摘されているのが、(1)電磁波による人体被害(2)消費電力が在来新幹線に比し著しく多大(3)事故が起きた時の救助が困難ではないか(4)路線中の中央構造線・糸静線などの断層を通過する問題(5)多大な残土の処理、水源枯渇、その他自然環境・生活環境の破壊問題(6)岐阜県のウラン鉱脈問題(7)巨大プロジェクトにもかかわらずJR東海単独事業であるが、その需要見込みと採算性はどうか、結局税の投入になるのではないか(8)地方自治体の許認可事務やアクセス等関連出費問題(9)そもそも目的は何か、早ければ良いと言うだけか、その他です。
 これらの点について、国民や、地域の住民から疑問や不安が続出している状態です。しかし、国土交通省は、既に二〇一四年一〇月一七日にこの事業について認可をしております。地域住民の間ではこの移動交通手段つまりリニア問題についてネットワークが形成されつつあり、また、この認可に反対する審査請求が出されているところもあります。いずれ行政訴訟に発展することになるでしょう。しかし、これに対して、法律家からの関わり方は、必ずしも整っているとは言えません。計画が余りにも巨大であり、問題が多義にわたり、地域的にも問題の把握がそれぞれ異なることも考えられるなどから、全体的な取り組みの困難性があるのかもしれません。
 しかし、住民側から法律家側に対する法的対応についての要請が出てくることは間違いありません。勿論個々の法的対応を始めているところもあります。この際、リニア問題を研究し、情報交換を行い、団内でそれぞれの抱えている問題など意見を出し合い、全体的な対応を検討する機会が必要であると考えます。団員の皆さまの検討をお願いしたいと思います。
 蛇足ながら、私は大の鉄道ファンであり、個人的にJR東海に何の恨みを持っているわけではありません。むしろ斜陽と言われた鉄道を新幹線によって立て直した実績は買うものです。しかし、一事業体によるものであるとしても、リニアだけは、それによって生じてくる問題が余りにも大きく、様々な角度から見て、負の側面の影響は計り知れないと考えられ、これを看過することは出来ないと考えます。


「DV」が「離婚原因」とされるとき
―「破綻させ主義」への転換(二)

東京支部  後 藤 富 士 子

四 単独親権制の害毒の極大化
 ところで、民法七七〇条は、離婚訴訟を提起できる場合を定めています。これは、夫婦の合意によって離婚できない場合に、裁判所が離婚判決によって離婚を強制するので、「離婚事由」を法律で定めているのです。問題は、「破綻主義」を定めたとされる「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(一項五号)です。
 これを、「DV」が「離婚原因」とされる多くのケースで見ると、ある日突然に妻子が失踪するのですから、別居時に婚姻が破綻などしていません。朝仕事に出かけるのを妻子が見送り、帰宅したら「もぬけの殻」なのです。「連れ去り」「引き離し」「財産持ち出し」等々、残された夫は、経済的にも精神的にも追いつめられます。ちなみに、失踪五か月後に一回だけ接近禁止命令が出された事例では、失踪時に夫名義の預金を全部持ち出しているのですが、前記『相談の手引き』では、居所の手掛かりになるので夫名義の預金を持ち出してはいけないとしています。要するに、妻たちは、「DV防止法」の「被害者保護」とは別次元で、同法を悪用しているのです。しかし、居所も秘匿しているので、「修復の可能性」もなく、裁判所は、「破綻」を認定して離婚判決をします。
 すなわち、「破綻主義」ではなく、「破綻させ主義」になってしまっているのです。そのうえ、「破綻させた責任」として、慰謝料まで夫に命じます。これでは、全く無限定な「有責主義」ではありませんか!
 ところで、「DV夫」から逃げることが至上命題のはずの妻が、なぜ子どもを連れ去るのか、です。子どもがいれば、「子育て支援」の福祉給付を受けられますし、離婚後も養育費を父親から取れます。婚姻費用や養育費の強制執行は、一度申立てれば毎月取立ができますが、恐ろしいことに、差押えの範囲が拡大されているのです。実際の例では、賃金に強制執行されて、住宅ローンの返済もできず、夫は生活保護ラインを下回る生活を強いられます。こういう事情も審判で主張しますが、「ローンは財産分与の問題だから、婚姻費用について考慮しない」というのです。財産分与として妻がローンの半分を負担するわけでもなく、オーバーローンだというのに。つくづく裁判官って「霞を食べて生きてる人」と思います。
 そこで、もし離婚後も共同親権だったら・・と考えるのです。「DV」を「離婚原因」とする妻たちのしていることが、共同親権でもメリットがあるのか、疑問です。むしろ、居所も明らかにして、離婚後の新たな生活を堂々と築けばいい。そのほうが、双方に利益です。
五 法曹の責任
 民法八一八条三項は、「親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。」と定め、親権の効力として、監護および教育の権利義務(八二〇条)、居所の指定(八二一条)を定めています。
 しかるに、妻が子どもを連れ去り、居所を秘匿して引き離しを強行すると、夫は、未だ親権者でありながら、親権の行使どころか面会さえできない状況が何年も続きます。このような事態は、弁護士の関与なしに起きません。普通の市民である夫を「DV加害者」と、あたかも犯罪者のように指弾する妻の弁護士は、何様のつもりでしょうか?
 さらに問題なのは、連れ去り後ほどなくして面会交流調停を申し立てても、埒が明きません。つまり、日本は、法治国家というより「放置国家」の様相を示しているのです。その点では、憲法で身分保障された裁判官の責任が厳しく問われるべきでしょう。こういう目に遇っている父親は枚挙にいとまがなく、それは偏に裁判所が「連れ去り」「引き離し」を援護するからです。したがって、力が残っているうちに不正義が行われる裁判所と「縁を切る」ことによって、人生の立て直しを図らざるを得ないのも理解できます。「家裁に破防法を適用できないのか」と本気で問うた父親がいましたが、家庭裁判所がしていることは、家庭破壊にほかならないのです。
 いずれにせよ、日本の法曹は、法律の解釈適用についてあまりにもいい加減にすぎますし、紛争解決を創造するという点では殆ど無能といわれても仕方ありません。法曹なら、「プロフェッショナリズム」を発揮して、当事者の幸福に役立ちたいものです。

(二〇一四・一二・二)


国際問題委員会創立二〇年に寄せて(中)

石川県支部  菅 野 昭 夫

〈はじめに〉
 団通信一五一〇号で、国際問題委員会の創立(時一九九四年)委員長であった鈴木亜英団員が、委員会発足の経緯及び初期の活動について触れた。私は、鈴木さんが団の幹事長になったため一九九九年二月に委員長を引き継いだ。その後二〇〇九年に大阪支部の井上洋子団員が委員長となり今日に至っている。今回、鈴木さんの指示により、私が、委員会の活動について途中までの時期を報告したい。
〈NLGとの交流〉
 国際問題委員会は、アメリカの進歩的法律家団体であるナショナル・ロイヤーズ・ギルド(NLG)との交流を継続してきた。それは、鈴木さんが述べておられるように、NLGが、労働者、社会的弱者の利益を擁護して大資本や政府の抑圧、「合理化」と不屈に闘い、ヴェトナム戦争等のアメリカの覇権主義的政策に反対し、公民権運動等の民衆の運動の先頭に立ってきた、われわれと共通の歴史を有するからであった。アーサー・キノイ弁護士の「試練に立つ権利」を読んだ団員は、アメリカ社会の支配構造、闘いの歴史とNLG及びその構成員自らが受けた弾圧、反撃の戦略、法廷外の戦いを基本とする手法等が自由法曹団の歴史や戦略とあまりにも相似することに驚嘆した。結局、日米の「民衆の弁護士」は、場所は違っていても、日米の支配層がもたらす共通の課題に対し、共通の闘いを共通の戦略と手法で行ってきたことを知るにいたり、交流の必要性を知るに痛感したためである。
 アーサー・キノイ弁護士を一九九一年の団創立六〇周年記念総会に招待した以降、NLGとの交流は、まず、全米各地で毎年開催されるNLGの総会に毎年参加することにより継続した。私の手元の記録を参照してみると、団は、一九九二年には小島団長以下三四人がシカゴでの総会に、一九九五年には石川団長以下三〇人がポートランドでの総会に、一九九七年には豊田団長以下二七人がワシントン・DCで開かれたNLGの創立六〇周年記念総会に参加し、それぞれの総会の冒頭の全体集会で自由法曹団団長としてあいさつを行っている。これらのあいさつの中で、自由法曹団がNLGよりも古い歴史を持ち、侵略戦争に反対し、各種の闘いの先頭に立って歩んできていることと、全弁護士の約一割が加入していることを伝えると、一〇〇万近い法曹人口の中で少数者に過ぎないNLGの参加者は驚きの声を上げたことが印象的であった。それら大型代表団が参加した年を除いても、毎年数名が参加している。私や鈴木さんはすっかり常連となり、数多くのアメリカ人弁護士と友人になった。
 NLG総会への参加から学んだアメリカの情勢と進歩的法律家の闘いは、興味深いものであった。
 交流が始まってから二〇〇一年の同時多発テロまでは、主としてアメリカの対外的覇権主義や新自由主義の現状とそれらに対する民衆の抵抗にNLGがいかに深く関与しているかを知ることが出来た。アメリカが全世界に軍事基地を置き各国の主権を侵害して世界的な支配を追及していることによる矛盾、市場原理万能主義と規制緩和、大金持ち優遇の政策によって、弱者や労働者の権利が侵害され格差が拡大していくさまは、既に日本より二〇年以上先行していた。そうした矛盾から生ずる各種の闘いのあらゆる場面でNLGの弁護士が不屈の活動を続けていることには、まことに頭が下がる思いであった。また、そうした中で、弁護士自体も貧富の格差が拡大し、「借金を返しながらどう進歩的スタンスを維持するか」などという分科会が総会で行われていた。さらに、彼らが国際人権法に習熟し、各種の条約等を活用して法廷内外の運動を組織していることも、大いに参考になった。
 二〇〇一年九月一一日の同時多発テロが勃発するや、ブッシュ政権は、「テロとの闘い」を国政の優先課題に掲げ、愛国者法など反テロ対策に名を借りた警察国家体制、人身の自由の剥奪や拉致・拷問に代表される法の支配の否定、移民やムスリムなどに対する迫害、デモなどの大衆行動の抑圧など進歩的弁護士が直面する課題が一挙に浮上した。この時期は、デモ行進のリーガル・オブザーバーとして活動中の弁護士やムスリム聖職者の弁護をしていたリン・スチュアート弁護士などNLGの弁護士自身への刑事弾圧も続発するいう厳しい状況であった。NLGの総会はそれ以降の約一〇年間は、この愛国者法体制とどう闘うかを主なテーマとして大衆的な反撃のいかに組織し、また法的な手法を編み出すかについて討論していた。そうした課題は、日本でも想定されることであり、多くのことを学んだ。
 こうした、総会参加の中で、NLGの移民法弁護士から、イラク戦争などへ派遣されるアメリカの軍隊の構成員が戦争を忌避するために除隊の権利などを軍事法に従い行使することを法的に援助することを、日本の基地にいるアメリカ軍兵士のために取り組んでほしいとの要請を受けて、私たちは、アメリカの軍事法の講習を受けて、この要請にこたえる活動にも従事した。
 NLGとの交流の成果は、団がアメリカの現状と闘いを学んだことにとどまらず、アメリカの進歩的弁護士が日本の現状と闘いを知ったことでもある。特に、憲法九条を守る日本での行動については、団の代表団は、毎年ことあるごとに状況を語り、その国際的意義について訴えてきた。アメリカでは日本のことがニュースや話題になることは殆ど無く、当初一九九〇年代は、アメリカの弁護士は日本の憲法九条をめぐる状況については殆ど関心も知識も無かった。しかし、毎年彼らの耳にたこができるほど聴かされて、二〇〇〇年代には日本の九条をめぐる情勢は世界の平和を守る課題にとって重要であることを認識するようになり、その結果、NLGは、二〇〇一年のアリゾナでの総会では日本問題の分科会が持たれ、二〇〇七年のワシントン・DCでの総会では「九条を守る日本の運動に連帯し、二〇〇八年五月に開催される九条世界会議に代表を派遣する」決議が総会で採択されている。
〈韓国民弁との交流〉
 団が行った国際交流の中に、韓国民弁(民主社会のための弁護士集団)との交流がある。韓国民弁は、韓国の軍事支配を打倒し民主的政府を樹立する一九八七年の民主化大抗争の中で生まれ、民主的な権利擁護のための闘いを続けている韓国の進歩的弁護士集団である。
 民弁との交流はつとに沖縄支部が行ってきていたが、二〇〇一年七月に、団は、石川元団長を初め一八人の代表団を韓国に派遣し、民弁との交流を行った。ソウル市内において労働問題シンポジウムを開催し、日本と韓国で同じように進んでいるグローバリゼイションとその中での激しいリストラ攻撃について状況を交流し、今後連帯し取り組む必要性を確認しあった。訪問団は、ほかに民主的労組、参与連帯(市民組織)との交流、板門店、日本による植民地支配当時の刑務所などを訪問し、日本による野蛮な朝鮮半島支配の爪あとを確認した。
 その後、韓国民弁とは、沖縄支部が毎年のように交流を重ねていると共に、二〇〇一年の団創立八〇周年記念集会や、二〇〇四年の沖縄での総会、二〇〇六年和倉温泉での総会に、団は民弁を招待し、逆に二〇〇五年の民弁総会に団は代表団を派遣している。
〈中国の弁護士との交流〉
 二〇〇〇年六月九月に、団は中国対外人民友好協会の招きにより、豊田団長以下三〇名の団員・家族が中国を訪問し、中国の弁護士らと交流を行った。訪問団は、北京で、「日中司法改革シンポジウム」を開催し、日本と中国のそれぞれの司法制度の改革について討論を行った。その席で中国側の弁護士から語られた中国における司法制度の進展と法律家の役割、中国の改革開放政策が司法制度に及ぼす影響などは中国の社会主義を理解する上で興味深い内容であった。また、訪問団は、中国人民抗日戦争記念館を訪れ、盧溝橋事件とそれをきっかけとした日本軍の中国侵略戦争の全面展開とそれに対する中国人民の反撃の歴史に触れた。その後、訪問団はハルピンなどの北方コースと南京などの南方コースの二班に分かれたが、南方コース班は南京において、南京大虐殺記念館を訪れ、保存された遺体など日本軍の南京における暴虐の生々しい証拠を見聞すると共に、生存被害者からの聞き取り調査を行った。
 中国の法律家との交流は、石川元団長が故畑中団員らと長年取り組んできた課題であったが、そうした実績を基礎に今回の訪問が可能となった。今後も条件に応じて追求すべき課題である。
〈その他〉
 私が委員長であった時期に、国際問題委員会が取り組んだ課題は他にもいくつかあり、特に国連自由権規約(B規約)の政府報告書に対し、カウンター・レポートを作成し、国民救援会などの民主団体と共にジュネーブの国連人権委員会でロビー活動を行うことが、鈴木亜英団員を中心として取り組まれ、大きな成果を挙げたが、これらのことを含めて、次の原稿に譲ることにしたい。


事務所ニュース新春号を読んで・・・

福岡支部  永 尾 廣 久

事務所ニュースの表紙
 事務所ニュースに、美しい風景写真があるのは、読み手にとってとっつきやすくて、とてもいいことだと私は考えています。行ったことのある場所が出てくるとうれしいし、行ったことのない町には行ってみたくなります。
 ところが、巻頭言については相変わらず難しいコトバの羅列なのが残念です。安倍政権の暴走を止めましょうという呼びかけがいま大切だと思うのですが、あまりに生硬で堅苦しい漢語の羅列です。もっとソフトに、市民の心に柔らかく響くような訴えかけが出来ないものでしょうか・・・。
 集団的自衛権の危険性を訴えるときにも、同じことが言えます。単なるレジュメとしか思えない文章があります。しかし、それでは訴えかけが市民の心に浸透しないように思います。なんとなく安倍政権は怖いなと不安に思っている市民、それでも安倍政権に期待しようとしている市民に、頭をすっきり切り替えてもらう必要があります。お互いに、もっと表現を工夫したいものです。
事件開拓の工夫
 私の事務所は、前より改善されたとはいえ、依然として経営危機を脱することができていません。経営状況の改善の工夫の一つとして、郵便局にポスターを張り出したり、弁護士ドットコムに有料登録したりしています。
 私の事務所では、昔から、「暮らしと法律」連続講座を年に三回、三〇年以上も続けています。柳川支店では出前講座も始めました。
 全国的に見ても、市民向けの学習会を企画する法律事務所がいちだんと増えた気がします。これらの学習会はほとんど無料であり、無料相談会とセットになっていることが多いように思います。
 今回のニュース新春号で私の目を惹いたのは、土・日・夜間相談をする法律事務所が増えているということです。
 「土曜日午後も法律相談をはじめました」(松山・臼井)
 「夜間・土曜日の法律相談をはじめました。借金と労働者側の労働・労災相談は初回無料です」(千葉中央)
 「土曜日(第一・三・五)の午前中、水曜日か木曜日は夕方六時から九時まで」(あべの総合)
 「土曜日・平日夜間も相談枠をもうけています」(埼玉総合)
 「第一土曜日のみ、午後に相談受けます」(東京南部)
 「平日の金曜日は夜六時から七時まで、土曜日(第一・三)は午後一時から三時まで法律相談を受けます。平日の営業時間は夕方六時までに延長しました」(城北)
 「休日相談うけます。土曜日、日曜日、祝日も相談にのります。平日に事前予約をお願いします。FAXは二四時間受付です」(札幌・たかさき)
 「たかさき」事務所は、「即日相談」も「売り」にしています。「その日のうち、午後三時から夜七時まで、相談に応じます」。この「即日相談」は、かなり集客効果があるように思いますが、実情は、どうでしょうか・・・。
 川崎合同は、事務所ニュースの一部が切り取れるようになっています。「法律相談補助券」になっているのです。本来なら三〇分五四〇〇円のところを、この券を持参すると三〇分三〇〇〇円、一時間五〇〇〇円(いずれも税込)というのです。
 弁護士会の法律相談が激減しています。しかし、テレビでコマーシャルしている法律事務所にはそれなりの申込みがあっていると聞きます。福岡県弁護士会の三浦会長はアウトリーチを重視しています。要するに、出張して相談を受ける機会を増やそうということです。「憲法カフェ」と同じように、積極的に町へ出かけて行って市民からの法律相談を受ける機会を増やしたいものです。
 法律相談や事件依頼の需要がなくなった(減った)と嘆く前に、団事務所はもっともっとやるべきことがあるように思われてなりません。もっとも、今のところ、私の事務所では土・日・休日そして平日夜間の法律相談は考えていません。一斉地方選挙が始まりますので、市会議員とタイアップした出前相談はやりますが・・・。
ブラック企業を辞めたら訴えられた
 ブラック企業にいったん入社すると、なかなか辞めさせてもらえないという現実があります。ブラック企業の言い分は、いろいろあります。
 「お前の教育にどれだけ会社がお金をかけたと思っているんだ。それに、お前に辞められたら代わりの者を探さなければならない。やめるなら、それによる会社の損害を弁償してからにしろ」
 こう言われると、労働者の腰が引けてしまいがちです。そして、退職できずに過労から病気になったりするのです。
 しかし、従業員の教育や従業員の補充のための費用は、会社が当然に負担すべきコストであり、労働者に対して損害賠償請求しても認められるものではありません。
 これは、井上雄基団員(松山・臼井)の論稿です。
 私の娘も、外資系の旅行会社につとめていましたが、あまりの長時間・深夜勤務なのを知って、早々に辞めさせました。身体が一番ですから・・・。
 安部千春団員(黒崎合同)は、ブラック企業から違約金二〇万円を請求された労働者の代理人となって、逆に会社に一五万円を支払わせた事件をレポートしています。
 「月給二五万円以上」というふれこみで入社してマッサージの仕事をしていた労働者が、客の料金は約束どおり四五%もらえるものの、客が少なくて待機時間が長かったため、実際には月収一二万円でしかなかったことから辞めたところ、会社から一年内の途中解約は違約金二〇万円を支払うことになっている業務委託契約書にもとづいて請求されたのでした。
 しかし、このような違約金の約束は労働基準法一六条の賠償予定金に該当するので無効です。そして、客が来るのを待っている待機時間も労働時間なので、マッサージ料金の四五%とは別に、待ち時間についても最低賃金は支払われるべきだとして、未払い賃金一六万円を請求したのです。結局、会社に一五万円を支払わせることで和解が成立しました。もちろん、違約金二〇万円の支払はありません。
マンションの非居住者への追加負担金
 マンションに自ら居住しない区分所有者については、全員が等しく負担する一般管理費八五〇〇円、修繕積立金九〇〇〇円のほかに、月額二五〇〇円の居住活動協力金を負担すべきだとするマンション管理組合の総会決議は有効とされています(最高裁平成二二年一月二六日判決)。
 区分所有者が自分のマンションを貸しているなど、そのマンションに住んでいないときには理事をつとめないことが多く、理事としての労力を負担しないのがほとんどです。しかし、非居住の区分所有者が労力を負担せず、適切な管理による利益だけを得るのは不公平です。
 ところで、居住者であっても理事になることを拒絶したり、高齢のために理事になるのが不可能な人もいます。非居住者に一律に同額の負担金を課すのが公平かどうか検討すべき場合も考えられます。
 このケースでは、当初、居住活動協力金は月五〇〇〇円でしたが、控訴審で二五〇〇円とする和解が成立していました。最高裁は月二五〇〇円を前提として、管理規約の変更を有効と判断したのでした。
 脇田達也弁護士(太平洋)の論稿に教えられました。
性虐待と消滅時効
 幼少時に親族から性虐待をうけていた女性が、大人になって加害者を訴えたとき、一審の裁判所は二〇年の除斥期間が経過しているとして、請求を棄却してしまいました。ところが、札幌高裁は、除斥期間の起算点をずらして、加害者に対して三千万円の賠償を命じたのです。
 この札幌高裁判決は、これまでの最高裁判決と同じく、「当該不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の一部が発生したときが除斥期間の起算点となる」としつつ、被害女性について、PTSDとうつ病の発症時期が異なることに着目したのです。
 「それまでに発症していたPTSD・離人症性障害および摂食障害とうつ病による損害とは、質的に異なる別個の損害である。よって、うつ病が発症した平成一八年九月が除斥期間の起算点である」
 やはり、事案を見きわめ、救済されるべきものは知恵を絞って救済する必要があると思います。内田信也団員(北海道合同)の論稿です。
コンビニ窃盗事件についての無罪判決
 私も最近、コンビニ強盗事件の弁護人となりました。明け方五時すぎに、目出し帽をかぶって包丁をもってコンビニに押し入り、レジにあった現金一二万円を取ったという事件です。被害弁償はしましたが、実刑判決となってしまいました。
 平山正和団員(堺総合)は、コンビニ窃盗事件で起訴された二一歳の男性の無罪を勝ちとることができました。
 六月に起きた事件で二ヵ月後の八月に逮捕され、勾留は一〇ヵ月にも及び、裁判は二年かかって、ようやく無罪判決が出たのです。
 無罪の決め手となったのは、コンビニの防犯カメラ七台の映像を検察官に開示させ、母親が五日分の映像を必死で見つめて、ついに我が子がコンビニ出入り口のドアに手指をついている場面を発見したのです。事件の五日前の映像でした。それというのも、男性に疑いがかけられた根拠として、出入り口のドアから男性の指紋が検出されたことがあったのでした。
 このほか、コンビニ店員が面割写真で、犯人はこの男性に似ているとしたのですが、この面割は目だけでした。目だけを見て判定できるわけはありませんし、店員と男性は顔見知りでした。また、防犯カメラにうつった犯人の映像と男性とは、顔にヒゲがあるか、長袖だったか、身長は高いかどうかなどの違いがありました。しかも、映像の鑑定結果は、男性が犯人と同一であるとは言えないというものでした。
 さらに、男性には家族や交際中の女性の証言やケータイなどによるアリバイもありました。したがって、公判の最終段階では、担当検察官も無罪の論告を検討すると言っていたのに、結局、有罪の論告をしたのです。
 思い込みから間違った逮捕をすると、それが誤りであることに気づいても、あくまで有罪にしようとする警察と検察の体質は今なお変わっていないことを示しています。


集団的自衛権シール投票

京都支部  大 江 智 子

 「こんにちは〜」「シール貼っていきませんか〜」「集団的自衛権って知っていますか?」青空の下、午後三時の繁華街で京都法律事務所企画のシール投票を行いました。事務員、弁護士が総動員で、シール投票に参加。この日のためにおそろいのTシャツを作り、かわいいシールを貼った投票用ボードや宣伝用ボードを作成しました。拡声器で弁護士が街頭宣伝をしつつ、商店街に入るお客さんにキャッチ、集団的自衛権行使容認の是非を問いました。
 結果は…午後三時〜午後四時の一時間で二八五人が投票し、約七二%の二〇七人が反対、分からないが五〇人、賛成は二八人でした。
 修学旅行生や学校帰りの高校生もワイワイと投票してくれました。中には、「集団的自衛権ってテレビで良く流れているけど、良く分からない。」と、所員の手渡すリーフレットをわざわざ受け取りに来てくださった人や、投票をしながら自分の意見を言って下さる人もいました。
 投票中の市民の皆さんの声は、民意を良く反映しているなぁと感じました。
 まず、「メディアの情報を信用して良いのか分からないので、判断できない。」という意見がありました。もっともな意見です。メディアの情報がすでに歪曲されているために国民が正しい情報を入手し、判断できないようになっているのです。知る権利を持つ国民が国政について正しい情報を入手できない、判断の材料を与えられていないことが良く分かります。
 また、「私たちが何を言っても同じでしょう。」という意見もたくさんありました。確かに、集団的自衛権行使容認の閣議決定は、国会で決着がつかなかった問題を閣議決定という形で意思決定したものであり、国民の反対の声も無視されました。こんな政治の進め方をされれば、国民が意見を言っても同じだと思うのも無理ありません。
 しかし、どんな逆境の時代にあっても、市民の先頭に立って戦う事務所、それが自由法曹団の事務所です。市民一人一人にシールを貼るボードを傾けながらこれから反対の声を挙げていくことが大事だと説明し、集団的自衛権とは何か良く分からないという方にリーフレットを配って説明していると、これこそが憲法を市民に広げていく草の根の活動だと実感しました。
 「集団的自衛権ってテレビで良く流れているけど、良く分からない。」と言ってシール投票に参加してくださった人が、リーフレットを読んで興味を持ってくれていると信じて、これからも、外に出て市民に向けて発信し、草の根の運動を続ける事務所でありたいと思います。


憲法ママカフェ盛況です

埼玉支部  竪  十 萌 子

一 興味のない人に伝えたい 
 昨年、集団的自衛権を容認する閣議決定のニュースを、本当に怖い気持ちでヤキモキしながら見ていました。「集団的自衛権を認めてしまったら・・日本は今の子ども達が大人になる間に、戦争に加わることになってしまう!どうしよう!」と、子どもを想い、一人で悲鳴をあげていました。しかし・・私がもっと驚き怖いと思ったのは、身近な人達がこの集団的自衛権に興味がないこと、自分とは関係ないと思っていることでした。「今の時代に、戦争になってならないよ。」「中国怖いし、自衛隊員が戦って私たちを守ってくれるならいいんじゃない?」「集団的自衛権・・よく分からないよ。」という意見が多かったのです。
 集団的自衛権を認めるか否かは、まさに自分達の問題、特に自分達の大切な子ども達の問題なのに・・・。興味のないママ達に、まずは知ってもらい、自分の問題として考えてもらいたい、と強く思いました
二 憲法ママカフェを始めました
 そんな中、「あすわか」の弁護士が「憲法カフェ」を行っていることを知り、「あすわか」の弁護士に連絡を取り、私も早速やることにしました。
 ママ達に興味を持って考えて欲しかったので、興味のないママ達が参加してくれるようにするため、レジュメは一枚で〇×クイズ形式にしました。また、お子様連れもちろんOK、授乳しながら、ランチしながらワイワイとやりました。また、話の内容はあくまで事実を知ってもらい、自分自身で考えてもらうきっかけとなる会を目指し、結論等を押しつけないスタンスで行いました。
三 次々に広がる
 なお、政治的な話は、一般的に呼びかけても、多くの人が警戒するものです。
 しかし、仲の良い友人や家族等に声をかけられれば、「この人の声かけなら安心だから聞いてみようか」という気持ちになります。
 そのため、憲法ママカフェの目標は、憲法ママカフェに来てくれたママが、「次は私のコミュニティでやってみよう」と次の会を企画してもらい次につなげる、ことにしました。このように、身近な人達の小さなコミュニティを通じて小さく広げていくしかないと思いました。この目標は、予想を超えて、必ずと言っていいほど実現し、多くのママが、「他の人にも聞いて欲しい」と言って下さり、次の企画をしてくれました。憲法ママカフェに参加してくれた時は、「政治なんて全然興味ないんですが、〇〇さんに誘われたから・・」と言っていたママが、憲法ママカフェが終わると「私が企画します!」と言っていただける姿には毎回感動しました。この結果、憲法ママカフェは九月から始め、一二月には、すでに三〇回超えるペースとなり、週に三回は憲法カフェが入るほどの盛況ぶりになりました。
四 多様なコミュニティで広がる可能性
 この憲法ママカフェを通じて、弁護士が同じ境遇や同じ思いの方々に伝えることは大きな共感を得られ、運動の広がりを見せることを実感しました。
 パパに対してや男性の年配の方々に向けた憲法カフェも行いましたが、やはりママカフェほど、響かせることはできなかったと感じています。よって、パパや先輩男性の弁護士が思いをもってパパや年配の男性方に憲法カフェをすれば、それはまたパパや男性の中で大きな広がりを見せると思います。これは、たとえばスポーツ好きや猫好き等、何の分野でもいいと思います。
 是非、多くの弁護士の方々に、「このコミュニティに広げよう」という思いをもって頂き、多くの方々に知ってもらう会を開いてもらいたいと願ってやみません。私のレジュメ等もお渡しできますので、気軽に是非とも初めていただけますと嬉しいです。
 政治は無関心でいても無関係ではいられません。多くの方に政治を知ってもらい、より良い日本を作る一人一人になりたいと思います。


高知「くらしあったか村 なんでも相談会」村長報告

四国総支部(高知県) 谷 脇 和 仁

 二〇一四年一二月二〇日(土)、高知市の中心街・帯屋町で「くらしあったか村 なんでも相談会」が行われました。「クレサラ被害者の会」や労組・民主団体等で実行委員会をつくって二〇〇九年からはじめて、今年で六回目です。いつの間にか還暦になってしまった私が、去年から「村長」です。
 今年は、朝からの寒い雨で、相談件数は六件と少なくて残念でしたが、中には全く過去の記憶を無くしてしまったホームレスの方からの相談もありました。当座の住む場所・食べ物・身元の確認の方法等、その方がはじめに相談に行った警察や行政の窓口が対応しきれなかった内容について相談にのり、すぐに手を打ちました。弁護士だけでなく、ホームレス支援の団体や市会議員の方などがそろっていましたので、迅速・丁寧にできたのではないかと思います。
 今後も、年末のこういった取り組みだけではなく、日常的に連携して、「安倍悪政」の下で暮らしに不安を抱えて困っている人たちの相談にのっていきたいと思います。


*追 悼*

阪田勝彦さんへ

神奈川支部  神 原   元

 阪田さん。末期癌と分かって一月半。痛かったなぁ。辛かったなぁ。よく頑張った。立派だった。立派だったよ。もう大丈夫だ。もう。
 君が癌の告知を受けたのは、一〇月二四日だった。
 前日、君が三ヶ月休んでいないと聞いて、俺は君に怒った。君は珍しく怒って大阪弁で言い返してきて喧嘩になった。でも、すぐにいつもの君に戻ってさわやかに言った。「神原さん、分かった。もういいよ。」
 二四日の日、俺は何か胸騒ぎがして、検査を受けた君の携帯電話に電話をかけた。
 君は言った。「神原さん、レベル4だったよ。」
レベル4の意味が分からなかった俺は、君に聞いた。「少し長くかかるのかね。」
 君は、電話の向こうで、クスリと笑った。そして、さわやかに、本当にさわやかに、こう答えた。「いや、そういう意味では長くないと思うよ。」
 実際、そうなってしまったな。君はあのとき、自分の状態を全部理解して覚悟を決めていた。
 でも、君は取り乱したり、落ち込んだり、そんな様子は全くなかった。むしろ、何も知らない俺を、いつもの調子で笑いながら、からかっていたんだね。「神原さん、相変わらず何にも分かっちゃいないんだね」と。
 それから、君は癌のことを勉強した。すぐに、医者より癌に詳しくなってしまった。それは弁護士としての、君のいつものやり方だった。そして、君は、自分なりに、癌の克服方法をみつけ、それを実践することを決意した。
 君はいつでもそうだったな。刑事事件。労災事件。誰もが「もう駄目だ」と思う事件でも、君は最後の最後まで諦めなかった。自分で研究し、瞬く間に専門家より詳しくなってしまった。そうやって、君は無罪判決や画期的な判決の山をいくつも築いてきた。かっこよかったよ。本当にかっこよかった。
 君は俺に言った。「これで駄目なら、寿命だったんだよ。」まるで、判決を待つ弁護士みたいだった。君は判決前にやるべきことは全てやり尽くし、静かに判決を待つ男だった。「これで駄目なら、裁判官が悪いんだよ」。俺には、君の言い方が、いつもの君の仕事ぶりに重なってみえた。
 君は、死ぬことを決して恐れなかったな。でも、最後まで諦めなかった。最後まで治す努力を止めなかった。最後まで、自分のやり方を変えなかった。最後の最後まで、生きることを諦めなかった。それでいて、静かに泰然としていた。今やるべきことを静かに続けていた。立派だった。本当に立派だった。
 阪田さん、去年の一二月、国会正門前、覚えているか。俺は秘密保護法に反対するデモ隊の見守りをしていた。君は、重大案件をいくつも抱え、本当に忙しいのに、まるで新人弁護士みたいに、夜中まで国会前のデモの警護に付き合ってくれた。あのとき、警官隊との衝突で逮捕者が出たな。君は夜中の二時までかかって接見してくれた。そして、見事にデモ参加者を釈放させた。真面目で、仕事熱心で、仲間に優しくて、それでいて、本当に熱い奴だった。
 君はちっとも休まなかった。一月くらい温泉に行けよ。ハワイにでも行ってこいよ。俺は君に何度もそう言ったが、結局、かなわないままになってしまった。
 だから、阪田さん、今度こそ、今度こそ、ゆっくり休んでくれ。君が残した課題は、若い弁護士たちがやってくれる。天国で待っていてくれ。いつか、また、あっちで会おう。そのときは、また、色んな事件の話をしよう。それまで待っていてくれ。君は、本当に、本当に、最高の奴だったよ。
 今日、君の棺が俺の手からすり抜けていったとき、ああ、お別れが来たんだなと思った。涙が出た。でも、きっと、天国でまた会えるさ。
 さようなら。相棒よ。さようなら。
  二〇一四年一二月二〇日

弁護士 神原 元


ソウルの「水曜デモ」への参加のお誘い

東京支部  宮 坂   浩

 安倍政権は河野談話と村山談話を基本とする歴代内閣の歴史認識を、「全体として」引き継いでいるとする一方で、安倍内閣の大臣の八〜九割を歴史修正主義の日本会議議連と神道議連が占めるという異常ぶりを示しています。二〇一三年一二月二六日に安倍首相が日本の侵略戦争を肯定・美化する靖国神社を参拝したことや日本軍「慰安婦」強制性を否定する安倍政権の動きに対しては、韓国をはじめとするアジア諸国、さらには欧米諸国からも戦前日本への復古の危惧と結びつき、大きな懸念を呼んでいます。
 安倍政権が生み出すこうした矛盾を、韓国をはじめアジア諸国の市民運動と連携しながら顕在化させ、安倍政権を包囲する国際的な共同を作ってゆくことが今後重要となってきます。
 韓国のソウルでは、元日本軍「慰安婦」の女性や支援者たちが、日本政府からの公式謝罪および法的補償を要求するため、一九九二年から在韓日本大使館前で毎週水曜日に集会を開催しており、その集会への参加と韓国の植民地支配に関わる見学先の設定などを予定しています。
 具体的な日程は、二月一一日(水)を挟んだ、二月一〇日(火)〜一二日(木)の二泊三日で、羽田と関空発着で、ソウル金浦空港にて合流します。
 詳細は、日朝協会・宮垣事務局長(miya1922@jasmine.ocn.ne.jp)へお問い合わせください。