<<目次へ 団通信1529号(7月1日)
改憲阻止対策本部 田 中 隆
一 短期突破のもくろみの破綻
六月二二日夜、政府・与党は第一八九通常国会の九五日間の延長を強行しました。言うまでもなく、戦争法制の成立を強行させるための延長です。議案審査は会期内に終えるのが原則、成立のための延長は、「勝つために土俵を広げる」に等しい暴挙です。
本来の閉会日だった六月二四日夜、国会周辺は廃案を求め、延長に抗議する三万余の市民で埋まりました。マリオン街宣では、「夜は国会に行くよ」「行きます」と声をかけられ、そこここで対話が生まれました。関心と批判は、確実に広がっています。
長期延長は、反対派や市民にとって以上に政府・与党にとって「想定外」でした。「審議時間は八十数時間。会期内に衆議院を突破」と豪語していた「短期突破のもくろみ」がわずかのうちに潰え、日を追うにつれて反対の声が強まるなかで、長期延長となりました。「苦しまぎれの暴挙」以外のなにものでもありません。
「もくろみ」をはばんだものを列挙します。
a 開き直りと驕慢
閣僚の答弁は、決められたとおりの「お経読み」を繰り返す木で鼻をくくったもので、法理や解釈の問いに政策や所見で答える「論点はずし」も随所に見られました。とりわけ安倍首相には、指名を受けずに割り込んで長広舌を繰り返し、質問者にやじを浴びせるなどの驕慢な姿勢が露骨でした。
こうした硬直した姿勢が、国民の不信と批判をかきたてるとともに、政府・与党を自縄自縛に追い込んでいることも見ておくべでしょう。
b 広範な反対・批判
反対声明(六月三日)、衆議院憲法審査会の違憲発言(四日)、立憲デモクラシーの会シンポ・基調講演での叱責(六日)と、反対・批判が続きました。その発言を「雑音」のように扱った政府・与党の発言が火に油を注いだかたちになり、広範な研究者や文化人などの反対・批判の表明が続いています。
「政府寄り」とされてきた研究者を含む広範な反対は、憲法をめぐる論争を通じて形成されてきた「戦後」を破壊する「アベの暴走」への国民的な不信や批判の代弁でもあり、それゆえに与えた衝撃には、広くかつ深いものがあります。
c 反対運動の地鳴り
「共同センター」「解釈で憲法を変えるな実行委」「一〇〇〇人委員会」の三つの運動体が合流した「総がかり」実行委は、国会攻めの主力となっており、結集は広がり続けています。
それぞれの地方・地域では、いっそう広範な団体・個人を巻き込んだ重層的な反対運動が構築され、弁護士会が中心的な役割を果たしています。
反対運動の地鳴りが、憲法研究者らの反対と共鳴・共振するかたちで、政府・与党と戦争法制を追いつめているところに、この間の攻防の特徴があります。
二 自由法曹団本部の活動
自由法曹団もまた、反対運動の一翼を担い続けてきました。対策本部の活動の一端をスケッチして報告にかえます。
a 理論
「戦争法制が生み出す国」(三月一一日)、「戦争法制を批判する」(四月二九日)、「逐条検討・戦争法制」(六月三日)と意見書を発表した。二度の国会要請で執行するとともに、学者・研究者、メディア、運動体、労働組合・民主団体等に送付しています。
論稿の依頼と公募を行なったのは、自由法曹団の総力を結集するためです。寄せられた論稿は四六本にのぼり、この間の海外派兵阻止闘争や基地闘争、人権擁護活動などを集約したものになっています。逐条解説を執筆した若手スタッフと論稿を寄せていただいた各位に、敬意と感謝をささげたいと思います。
委員会論戦の進行とともに、論点・問題点を抽出して国会論戦に反映させることが重要な課題となっています。担当スタッフを中心に意欲的な論戦MEMOを作成し、野党議員との懇談などで国会に投げ返し続けています。
b 教宣
リーフ「平和な戦後が終わる」は、戦争法制をわかりやすく宣伝するために論議を重ねた苦心作。その甲斐あって好評で、運動が広がるにつれて注文が殺到し、四〇万部に近づこうとしています。情勢の展開に伴って、「アベの暴走の危険性」に焦点をあてた「リーフ第二弾」を作成します。おおいに活用してください。
そのリーフの「QRコード」でアクセスできるのが、自由法曹団HPに掲載している「安倍政権の戦争法制 徹底解析Q&A」。Web上を「本籍」としており、論点の拡大や情勢の展開に応じて補正や追加は自由自在で、必要なときに印刷して国会等に持ち込めば、Q&A型の意見書に早変わりします。これまた自由法曹団としては新機軸です。
c 共闘
(1)法律家六団体(社文センター、青法協、国法協、反核法協、日民協、団)、(2)マスコミ・団四団体(Stop!秘密保護法を含む)、(3)「総がかり」実行委、共同センターなどの大衆運動、(4)日弁連との連携という「四つの線」を、並行して追及しています。
めざましい活動をしているのが法律家六団体((1))。会派や議員との懇談を踏まえて会派と運動と市民が交わる院内集会を企画し、主要メディア各社との懇談も続けています。詳細は、大江京子団員の論稿を参照ください(団通信六月二一日号)。
マスコミ関係との共同による街頭宣伝などが続いていること((2))、「総がかり」実行委等との連携を確立していること((3))、日弁連との直接・間接の共同を実現していること((4))も貴重です。
d 組織
本部側からは、メーリングリスト(改憲阻止ML)、Fax、HP掲載、資料郵送など、あらゆる方法を駆使して情報の発信を続けています。最大かつ最速の情報発信は改憲阻止MLであり、未登録の団員は最大限登録してください。
活動を共有するもっとも有効な方法は自由法曹団通信への投稿、Web上の情報伝達手段が発達したいまでも、「団内教宣力」では団通信にまさるものはありません。引き続き積極的な投稿を求めます。
これらの本部活動を担っているスタッフは十名余にすぎません。支部・法律事務所のいっそうのご協力をお願いする次第です。
三 戦争法制阻止の「七月決戦」へ
会期は九月二七日まで延びましたが、戦争法制の命運を決するのは七月のたたかいです。
政府・与党は、六月二六日に審議を再開した特別委員会で、七月中旬に衆議院を強行突破することを狙っています。衆議院再議決を可能にする「六〇日ルール」の活用や、八月上旬(七〇年目のヒロシマ、ナガサキ、八・一五)は審議が止まらざるを得ないことを考えれば、国会日程からも「ギリギリの期限」だからです。
他方、戦争法制の問題点に再浮上した違憲論が加わり、傲慢きわまる安倍政権や自民党議員の姿勢が相乗して、批判・反対はますます広がる趨勢にあります。戦争法制をさらに追いつめ、衆議院段階の七月で破綻に追い込むことは、決して不可能ではありません。
たたかいの要諦と思われる点を列挙しておきます。
a さらに知らせること
冒頭のマリオン街宣に見られるように、市民の関心は広がっており、知らせれば知らせるだけ反対・批判が広がる状況にあります。
市民の関心は、戦争法制の内容や問題点から、違憲性や安倍政権の暴走に移り、さらには「止めるためになにをすればいいか」に移ってきている感があります。宣伝の焦点や学習会の内容も対応させていく必要があるでしょう。
b 突き崩すこと
民主・共産・社民・生活各党ないしその支持層と「無党派層」の反対は固まっており、回を追うごとに市民層の行動参加が増えています。このうねりを維新・公明・自民の支持層に広げ、これら各党の議員を突き動かさねばなりません。
長期延長で議員は会期中に選挙区との往復を繰り返し、来年改選を迎える参議院議員の目はなおさら地元に向きます。地元での面談要請、地元事務所要請、地方議会決議など、「草の根」から足元を突き崩すことが焦眉の課題です。
c 国会に向けること
運動は広がっていますが、「国会攻め」のボルテージは秘密保護法の闘争には及んでおらず、議員会館から「Faxに悲鳴をあげている」とか「メールがものすごい」とかの声は、まだ聞こえてきません。国会と国会議員に「声」を叩きつけなければなりません。
国会行動の節目には地方・地域から上京団等を組んで参加する態勢をとるとともに、FaxやMailを特別委員や地元議員に集中する日常的な活動の積み上げが必要です。あらゆる機会を通じて、具体的な行動を提起し続けてください。
やるべきこと、やれることはすべてやり尽くして、この七月、戦争法制阻止のためにたたかいきることを、心から呼びかけます。
(二〇一五年 六月二六日脱稿)
改憲阻止対策本部 山 口 真 美
六月四日の衆議院憲法審査会において長谷部恭男早稲田大学教授、小林節慶応大学名誉教授、笹田栄司早稲田大学教授ら三人の憲法学者がそろって戦争法制を「違憲だ」と述べたことをきっかけに戦争法制は違憲だという声が各方面から吹き上がっています。砂川判決や一九七二年見解を持ち出す政府見解が破綻していることは明らかです。国会での開き直りとはぐらかしに満ちた安倍首相や閣僚の答弁は、国民の間に不信と怒りを呼び起こしています。共同通信の世論調査では、内閣の支持率が四九・九%から四七・四%に下がり、不支持率が三八%から四三%に上昇しています。法案が憲法違反であると思う人が五六・七%、安倍政権が法案について十分に説明していると思わないが八四%に及んでおり、世論は大きく動いています。
全国各地で行われている宣伝や署名活動、集会やパレードの広がりと国会論戦が結合し、安倍政権を追い込んでいます。
戦争法制の成立に固執する安倍政権は、通常国会では戦後最大幅の会期延長を強行し、七月中旬にも衆議院での強行採決を目論んでいるといわれています。七月の戦争法制阻止に向けたとりくみをどれだけ大きく広げるかが戦争法制を廃案に追い込む鍵を握っています。戦争法制に反対する国民の声をいっそう広げ、国会を戦争法制に反対する国民の声で包囲することが不可欠です。
そのためには、(1)戦争法制の危険性を国民に知らせ、広げるとりくみ、(2)国会に国民の声を届けるとりくみ、(3)戦争法制に反対する共同を広げるとりくみを急速に広げていくことが求められています。
今年は戦後七〇年の節目の年です。安倍政権が目指す戦争する国づくり・軍事大国化の道を歩むのではなく、平和憲法を守り活かし平和な世界を創る道を歩むために、全団をあげて戦争法制阻止のとりくみに立ち上がることを呼びかけます。
◇ 行動提起 ◇
一 戦争法制の危険性を明らかにする学習会や集会を開催し、街頭宣伝を行いましょう。
二 リーフレット「平和な戦後が終わる」の普及を訴えます。発行部数は約一ヶ月で三〇万部を突破しました。リーフレットを活用し、各地で宣伝を強めましょう。
三 日弁連や憲法会議の集団的自衛権行使容認反対の署名を急ぎ推進しましょう。
四 地方選出の国会議員への働きかけ(政党への要請、地元事務所・国会事務所への議員要請、FAX、メール、意見書や声明文の送付など)を集中的に行ないましょう。
自由法曹団のHPに、(1)FAX要請の雛型、(2)衆議院平和安全法制特別委員会の委員四五名の連絡先、衆議院議員全員の議員会館及び地元の連絡先をアップしますので、ぜひとも活用してください。
五 地方議会への働きかけを行いましょう。廃案を求める地方議会の意見書は一五〇を超えています。六月議会は終わりましたが、臨時議会の開催を訴え、戦争法制反対の意見書採択などを実現しましょう。
六 地元メディアへの働きかけを行いましょう。広く国民に戦争法制の危険性を明らかにする報道を急速に広めるよう求めましょう。
七 日弁連、弁護士会、そして各地の民主団体や市民団体との共同のとりくみを広げましょう。
八 中央での集会や行動を成功させるとともに、各地で連帯した集会や全国一斉行動を行いましょう。
九 各地方・各地域での戦争法制阻止の取り組みについて情報を共有しましょう。団通信、改憲阻止MLへの投稿を呼びかけます。
◇ 七月の行動予定 ◇
東京での行動予定をご紹介します。
全国各地で連帯したとりくみを広げてください。
●院内集会・議員要請
日時:七月三日(金) 一一時三〇分〜
場所:参議院議員会館B一〇四
主催:自由法曹団
●戦争法反対!日比谷集会
日時:七月一四日(火) 一八時三〇分〜一九時三〇分
終了後デモ行進
場所:日比谷野外音楽堂
主催:総がかり行動実行委員会
●とめよう!戦争法案 集まろう!国会へ 七・二六国会包囲行動
日時:七月二六日(日) 一四時〜一五時三〇分
場所:国会議事堂周辺
主催:総がかり行動実行委員会
●全国一斉街頭宣伝行動 (総がかり行動実行委員会)
日時:七月七日〜毎週火曜日
場所:東京の各主要駅付近
●国会前行動
日時:五月一二日〜毎週木曜日
場所:衆議院第二議員会館前
主催:総がかり行動実行委員会
事務局次長 藤 岡 拓 郎
一 六月十九日、参議院議員会館B一〇九にて、戦争法制を阻止するための全国活動者会議が開かれました。全国から四六名の参加があり、各地の運動状況の共有と今後の行動方針について、活発な議論がなされました。以下、概要を報告します。
二 まず会議前半では、団外から情勢や運動の報告がなされました。
仁比聡平参議院議員からは、憲法学者三人が違憲を表明した違憲ショックは国会でも政権与党に大きな動揺を与えていること、会期延長がなされても参議院が徹底した審議をしている中で否決とみなして衆議院で再議決など許してはならないことなど、熱い口調で報告がなされました。
次に、戦争をさせない・九条を壊すな!総がかり行動実行委員会高田健さんより、戦争法制の成否は、国会の中の力関係だけで決まるわけではなく、国会外の民衆の力、世論の力、これが国会を変えていく力になること、第一次安倍政権は、世論の力の前に自壊していったことを我々は二〇〇七年に経験し、そのような確信に基づいて運動していることなどの力強い言葉がありました。
そして、団員でもあり改憲問題対策法律家六団体連絡会事務局長の大江京子弁護士からは、法律家団体として共同であるがゆえの強み、影響力の大きさや、地域から包囲する重要性、自民党議員に法律家団体として意見を伝える必要があり、どれだけ彼らを切り崩せるかが鍵であることなどが語られました。
三 後半では、各支部からの活動報告です。次々とあがる報告はどれも力強く、各地の熱気を感じさせるものばかりでした。簡単に発言を紹介します。
(1)東京支部黒澤由紀子団員:事務所主催で半田滋氏による学習会、柳澤協二氏を講師に一五〇名の集会と四五〇名のピースパレード。出前学習会、憲法カフェを週一回ペースで実施。
(2)神奈川支部近藤ちとせ団員:月一回の駅頭宣伝、駅包囲宣伝運動、自公議員の地方事務所に議員要請、六月一六日から連日(!)街頭宣伝の実施。
(3)長野県支部毛利正道団員:地方議会への請願陳情の運動、七七自治体の五二自治体に陳情請願と一二の反対決議。
(4)埼玉支部柳重雄団員:オール埼玉集会一〇四〇〇人が参加。団が法律家団体の結集に大きく貢献。
(5)北海道支部斎藤耕団員:学習会を多数実施、弁護士会総会での圧倒的多数での戦争法制反対決議、札幌市内に事務所のある国会議員への要請。
(6)奈良支部佐藤真理団員:五、六月に各一〇カ所程度の学習会の開催、七月一日に支部で総決起集会、七月七日に一〇〇〇人規模の集会。
(7)兵庫県支部佐伯雄三団員:五月二日に八〇〇人集会の開催、六月二一日に兵庫県弁護士会主催で三〇〇〇人規模の集会とパレード。地方議会の反対決議への取組み。
(8)東京支部青龍美和子団員:事務所の活動として、毎月九の日宣伝、事務所依頼者への便りに団リーフだけでなくリーフの注文書もつけて送付。戦争立法の号外ニュース作成、依頼者からも署名集め。デモ申請をしない練り歩きなど。
(9)福井県支部吉川健司団員:学習会の実施、九の日宣伝、七月一日に弁護士有志の呼びかけによる集会、弁護士会で初めてのデモの予定。
(10)東京支部船尾遼団員:毎月憲法集会の実施、八〇〇人規模で井筒和幸監督の講演会、七月一九日孫崎享氏を講師に集会、練馬で集会とピースウォークの予定。
(11)宮城県支部小野寺義象団員:五月末日に一八〇〇人の集会、六月一三日に落合恵子氏を講師に集会とパレード開催。街頭宣伝は五四回実施、署名は七〇〇〇名超。六月二四日には九〜一八時まで街頭宣伝。同日一八時以降に集会とデモ。
(12)東京支部斉藤園生団員:四月から各事務所の憲法交流運動を開催、弁護士の腕章をつけての宣伝活動など。
他にも仁比議員から、団が弁護士会を基盤に大きな動きをつくりながらも独自の動きをしていく必要性についての指摘もなされました。なお、参加のない支部からも事前アンケートで多くの活動報告が寄せられていました。
四 今、団員として求められていることは何かを実感できる非常に意義のある会議となりました。各地の情報を共有することで刺激を受け、運動のヒントを得、次につなげる勇気と自信を得る。その勇気と自信が周囲に共感を与え、伝播し運動に広がりと厚みをもたせていく。まさに国会の中の力関係だけで決まるわけではなく、国会外の力が国会を変えていく力になるとの先の高田さんの発言は、こういうことなのだと感じました。これからも全国からどんどん団内外に発信していただきたいと思います。
奈良支部 佐 藤 真 理
六月四日の憲法審査会で三人の著名な憲法学者がそろって、戦争法案の違憲性を指摘したことは、国会内に激震を呼び、「潮目が変わった」と言われています。政府与党が、再び一九五九年一二月の砂川事件最高裁判決を持ち出さざるを得ないこと自体、彼らの合憲論の根拠が崩れたことを示しています。
しかし、国会内の力関係は不変であり、強行採決の可能性は常にあります。九月下旬までの約三ヶ月という異例の大幅会期延長は、憲法五九条四項の「六〇日ルール」適用をも視野に、安倍内閣が今国会での議決に執念を燃やしていることを示すものです。与党単独(ないし維新付き)の強行採決を阻止するためには、引き続き、否、これまで以上の院外での運動の昂揚が求められます。
六・一九全国活動者会議では、全国の進んだ取り組みに励まされ、多くのことを学びました。例えば、宮城県では、弁護士会が週二回、秘密保護法ネットワークが週一回、合計週三回の街頭宣伝を取り組んでおられる。「違憲の法案は廃案が当然。会期延長は許さない」と、会期末の六月二四日は、終日の行動を組み、朝八時から夕刻六時までのロングラン宣伝を団員弁護士が交代でマイクを握り、内、正午からの一時間は、弁護士会が、宣伝カーをレンタルして、会長経験者らがリレー宣伝を行う。午後六時からは、九条の会等が、県民集会とデモ行進を行うなど、終日の行動で燃えるように闘うとのこと。
長野県は、六月地方議会で二八自治体で意見書(廃案、慎重審議)を採択させた(六月一九日現在)という。毛利団員は、九月議会まで待てない。臨時議会の開催を要求し、意見書採択を積み上げていくと決意表明されました。
大幅会期延長は、政府与党が追い詰められている証拠です。暑い時期で大変ですが、手を緩めず、運動をいっそう盛り上げていきましょう。
お盆前後には、国会議員が地方に帰るので、地元での国会議員要請行動を強めようと議論が出されました。仁比議員からは、自民党は、一年生議員、二年生議員が多く、法案の内容をよく理解できていない議員が大半と思われる。週末の選挙区帰りを頻繁に繰り返しており、支持者からの相次ぐ疑問に頭を悩ましているはず。お盆の時期といわず、今から地元での国会議員要請行動を強めてほしいとの発言がありました。
七月中の衆議院の強行採決を阻止できるか否か、が当面の焦点であることは明らかです。今こそ、団の真価を発揮し、団員の心意気を示すときだと確信します。列島騒然の状況を作るために、決起しましょう。
「立ち上がった一人の人間の力は大きい。その力を合流すれば、とんでもない大きな力となる。」「一波は万波を呼ぶ。」「一滴の水は大河となる。」というのは、坂本修先生のことばです。
団の憲法メーリングリストで萩尾健太さんが披露された「弁護士は、護りに入るな、弁士になれ」の句に触発され、昨年の新宿区長選で奮闘された岸松江さんと同様、早朝の駅頭宣伝で演説することを決意しました。
週二回、三〇分の早朝駅頭宣伝を六月一〇日から開始し、当面七月末までの予定を入れました。候補者活動をしていた二〇〇三年以来、一二年ぶりのことです。(なお、候補者に復帰する意思はありません。大河原さん、頑張れ!)
二〇一五年六月二二日
兵庫県支部 佐 伯 雄 三
一 二〇一五年六月二一日(日)兵庫県弁護士会主催大集会・パレード
兵庫県弁護士会単独主催(日弁連、近弁連共催)の集団的自衛権行使容認&特定秘密保護法反対の集会・パレードが全県下から九〇〇〇人の市民を集めて大成功した(神戸新聞は一面で報道)。弁護士の参加は約一二〇名程度でやや少なかったが、団員は姫路、豊岡からは全員、未確認もあるが四〇名以上が参加した(支部団員六三名)。弁護士会主催ということで九条の会やその他の護憲グループを総結集できたが、今後の取組にも良い影響が期待される。来年五月三日は統一集会を、と協議している。
二 街頭宣伝活動
団支部と兵庫労連が中心となって特定秘密保護法反対の街頭宣伝行動を二〇一三年度から取組み、その後は集団的自衛権行使容認反対もテーマに加え、月一回の夕方からの街頭宣伝行動、昼休みパレードを交互に行ってきた(兵庫県弁護士会協賛)。そして、六月からは週一回の共同行動をしている(ただし、団員は執行部以外の参加は少ない)。団のリーフはいち早く二〇〇〇部注文し、街宣で活用している。
三 講師活動
弁護士九条の会や「あすわか」への要請がほとんどである。弁護士九条の会は、発足して一〇年になり、弁護士の過半数を目標にして発足したが、現在では、二五八名で逆に三分の一を割っている。特筆すべきは、維持会費を半年ごとにつのり、半年で一〇〇万円集めている。講師に行けば主催者からいただくものとは別に会から五〇〇〇円支給している。「あすわか」の活躍もめざましく、共同センターの地域集会にも講師として参加し、好評を博している。あすかわは、毎月一回「朝宣伝」をしている。また、「劇団あすかわ」が結成されており、吉田維一団員(団支部事務局次長、現在弁護士会の憲法委員会委員長でもある)が脚本を書き、九条の会などに呼ばれて公演をしている。この秋の一一月三日には、憲法会議主催の恒例の集会で新作を披露する予定となっている。
また、これも弁護士九条の会の取組であるが、各地で戦争法案反対の漫画が話題となっているおり、これも吉田団員の原案をもとにプロの漫画家に漫画を依頼し、四コマで五組の案を現在検討中であり、リーフ形式で発行する予定である。公害事件の患者団体から多額のカンパがあり、それを活用してのものである。
四 地元議員、地方議会への取組
弁護士会で地元議員要請はしたようだが、団支部としても早急に取り組みたい。特別委に兵庫選出の議員も複数いることでもある。地方議会への請願は、憲法会議が取組をはじめている。請願は、問題提起の意味も大いにあるとの意見もあり、取り組みたい。
二〇一五・六・二六
東京支部 舩 尾 遼
城北法律事務所は二〇一五年をもって創立五〇周年を迎えます。そこで、城北法律事務所では昨年末から憲法連続講座と題して毎月憲法問題の学習会を開催しています。特に第一回の講座は「憲法は平和を守る」と題して、集団的自衛権をとり上げ、菊池団員、田場団員がそれぞれの活動を題材にして、安倍政権が掲げる集団的自衛権行使について、九条の解釈改憲を批判しました。
七月一一日には、憲法連続講座の集大成として「戦後七〇年、今こそ平和憲法とともに立つ―私たちは海外戦争法に断固反対します―」と題し、井筒和幸監督を招き豊島公会堂で九〇〇人規模の集会を予定しています。
また、六月二五日、七月九日には池袋駅西口にて市民団体と共に街宣活動を予定しています。国会包囲行動にも六月一一日、六月二四日共に事務所として参加しています。
事務所に所属する団員も、地域事務所の一員として各地域の民主団体や労働組合の取り組みに参加し、戦争法制に反対の声を上げています。特に複数の若手団員は毎週憲法カフェや憲法学習会を主催して地域の声を大きくする新しい取り組みを行っています。また、事務所として憲法学習会に取り組むため、民主団体や主な顧問団体に、憲法学習会のお誘いのための文書を発送しました。これらの取り組みに加えて、大山団員は青法協として、法律家六団体の取り組みに参加して議員と懇談をし、戦争法制反対の要請活動を行っています。
練馬では、七月一日に高畑勲氏らの賛同を得て、練馬区労協・練馬全労連・練馬労連が主催して、「戦争法NO!ねりま集会&パレード」を開催する予定です。事務所からは、菊池団員、種田団員が実行委員会に参加し、全練馬的に集会を成功させるため奮闘しています。
板橋でも、各地区の九条の会が主体となり、七月一二日にピースウォークを企画し、七月一九日には孫先享氏を招き戦争法制反対の集会を開催する予定です。事務所からは、舩尾が実行委員会に参加しています。また、九条の会が主体となり、全会派の議員に戦争法制廃案の意見書を採択するよう議員要請を行いました。
九月二七日まで国会の会期が延長され、長期間のたたかいが見込まれます。各地区の取り組みも、七月だけではなく、八月、九月と継続して行い、戦争法制反対の国民世論を大きくしていく必要があります。平和憲法とともに歩んできた地域事務所である城北法律事務所は、戦争法制廃案を勝ち取るまで今後も様々な活動に取り組みます。
東京支部 大 住 広 太
教科書問題分科会では、今年七月から八月に控えた各地の中学校教科書採択に向け、いわゆるつくる会系の教科書である、育鵬社版の歴史・公民教科書の問題点と、各地の取り組み及び課題について、報告及び討議がなされた。
育鵬社版教科書の問題点については、いくつかの分野について報告がなされたが、全ての分野を通して感じられたのは、育鵬社の教科書は、安倍政権の目指す国づくりに賛同し、これに誘導しているものであるということである。例えば、明治憲法の賛美、平和主義の否定や愛国心の押し付け、基本的人権の軽視などである。また、日本国民の人権は諸外国で獲得されてきた人権とは別物であるかのような記載、権利よりもその制約や義務を強調する記載、時代に合わせて憲法を変えていかなければならないという記載などもあり、このような教科書で学ばされることに強い危機感を覚えた。
討議では、複数名の団員から、育鵬社版教科書の問題点が指摘された。例えば、国を支える国民を育成するために教育の義務が課されるとの記載や、特定の「愛国心」(国のために権利の制約を受忍するなど)を押し付けていることなどである。この様な教科書で、子どもたちに誤った知識・認識を植え込むことはあってはならないと感じた。地元広島県では、呉市や尾道市で育鵬社版教科書が採択されていること、呉では育鵬社が有利となるような基準が設定されていたことが報告された。東京の武蔵村山市では、前回の採択の際、教育委員会の休憩時間中に各委員の机上に提案用紙が配られ、そのまま採択されてしまったことなど、各地から報告がなされた。教科書自体の問題だけではなく、採択制度そのものや運用の在り方にも大きな問題がある。これらの点については、各地ごとに調査し、対策を講じる必要がある。
教科書問題分科会からの行動提起は、各地での学習会・宣伝行動の開催、六月以降各地で開催される教科書展示会への参加及び意見の投稿の呼びかけ、教育委員会の傍聴や各委員への要請、各地の活動についての教科書問題PTのメーリスへの投稿、である。
私は、教科書問題分科会に参加し、改めて育鵬社版教科書の危険性を認識することができた。中学生という年代は、たくさんの情報を吸収することができる一方で、与えられた情報を批判的に見ることはなかなか難しいのではないかと思う。そのため、このような教科書で歴史・公民を学習する子どもたちは、正に狙い通り、「愛国心」を持ち、国のために自らの権利が制限されることを当然のように考えるようになってしまうのではないか。教育を利用し、国民全体を戦争へと突き進ませた過去があることからも、政府の思うとおりの国民を育てる教育を許してはならない。私は、正確な歴史認識のもと、過去の反省から、今後日本がどのような役割を国際社会で果たしていくべきか、また自分たちが持つ権利の内容を正しく理解し行使できることを学ぶための教育をしていかなければならないと思う。
今年は、つくる会系教科書の採択を四%から一〇%に増やすことが目標として掲げられており、いずれの地域でも、相手は総力をかけて育鵬社の採択を目指すことが予想される。各地で、学習会、宣伝活動を行うとともに、教科書展示会の日程を調査し、展示会で意見を投稿をするなど、教科書問題に取り組んでいただきたい。
福岡支部 馬 場 彩
はじめまして、福岡支部の馬場と申します。今年一月に新規登録し、今回五月集会に初めて参加しました。私は新規登録後、避難者訴訟の九州弁護団に加入したのですが、まだまだ原発問題に関しての理解が不十分であるため、原発をめぐる問題状況を把握するべく、一日目の分科会は原発分科会を選びました。
脱原発と司法の役割
まず、二〇〇六年三月に当時裁判官として北陸電力志賀原発二号機の運転差止め判決を言い渡した井戸謙一先生のお話では、福島原発事故では最悪のシナリオとして福島第一原発から二五〇kmの範囲で避難を要する事態が予測されており、偶然が重なったためにこれを免れたに過ぎないことを冒頭で述べられ、福島原発事故以前の原発訴訟を退けた裁判官らから、専門家を信用したことへの反省などが出たことを紹介された上で、その後の裁判例における判断内容を検討していくと、立証責任や評価の点で不十分なものも多いものの、過酷事故は現実に起こるということが福島原発事故によって証明され、もはや専門家を手放しで信用することはできないこと、国策のレベルも低いことが明らかになったのであるから、世論の圧倒的な支持も支えにすれば、今後の司法が変わり得る条件は十分に揃っているし、司法が答えを出すしかないということでした。
元裁判官という立場から、裁判所が原発訴訟についてどのように考えているのかという点や、福島原発事故以前・以後の原発訴訟について分かりやすく解説されており、勉強になりましたし、最悪の事態を免れたのは奇跡にすぎないというのに、未だ十分な対策もないまま原発が稼働し続けているというのは、本当に恐ろしいことだと改めて思いました。
核不拡散条約(NPT)との関係
大久保賢一先生からは、集会時(本年五月一七日)に開催中であった核不拡散条約の再検討会議に触れつつ、福島原発事故を契機として、原発だけでなく核エネルギーそのものへの依存状態から脱却すべきであるという問題提起がありました。
残念ながら、今回の再検討会議においては最終文書の全会一致での採択ができず、各国の核への依存が浮き彫りになりましたが、次回会議までには、核への依存から脱却すべきであるという機運が日本国内で高まるよう、まずは今関わらせていただいている避難者訴訟の活動に力をいれなければと思いました。
生業弁護団からの報告
南雲芳夫先生からは、福島原発事故の被害は金銭賠償で回復できるものではない深刻なものであることを念頭に置いた上で、原賠法によって曖昧にされた東京電力の加害責任を明らかにし、また国をも訴えることで、地域の再生など広い意味での原状回復を実現し、原発推進政策から撤退させなければならないというお話がありました。
金銭賠償が損害賠償の原則とはいえ、福島原発事故では、地域社会が根底から破壊されてしまい、これによって回復困難な被害が生じていることを常に意識しなければならないと再認識させられるお話でした。今後避難者弁護団において、避難者の方から被害の聴き取りを行ったり、損害論を考えたりする上で、参考にさせていただきたいと思います。
このほか、質疑応答の時間にも、原発訴訟と避難者訴訟とでどのように連携していくべきかなど、考えさせられる問題提起が多く、何より、全国の先生方の熱気に触れられ、帰ってからまた頑張ろう、参加してよかったと思える分科会になりました。
神奈川支部 足 立 悠
一 私は、今年の五月集会で、貧困・社会保障分科会に参加した。テーマは「安心して住み続けられる住まいを目指して」であった。
二 まず、前半は、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事である、稲葉剛さんの「深刻化する住まいの貧困」というテーマの講演を拝聴した。
講演は、大きく(1)九〇年代から現在に至るまでの住まいの貧困を巡る経緯、(2)現在のハウジングプアの状況、(3)生活困窮者自立支援法の問題点の三つから構成されていた。
(1)の経緯では、九〇年代の新宿駅西口地下段ボール村、〇七年ネットカフェ難民、〇八年〜〇九年派遣村、そして一三年脱法ハウスを取り上げ、その当時の住まいの貧困を巡る問題とその背景にあった社会状況をご自身の活動に絡めて解説していただいた。これまで、その事象ごとにしか見ることができていなかったので、流れや背景がわかり、非常に勉強になった。ほかの問題を考えるときもこのように考えるべきだと思った。
(2)では、仕事の不安定化と住まいの不安定化が連動していることが示された。家が安定していないと仕事につきにくい、仕事につけなければどんどん悪い住環境に追いやられるということは以前から意識していたが、現在それが顕著になってきていることが分かった。また、「結婚できない」若者が増え、社会の持続可能性が危機的だということも知った。このことからすると、さらなる労働法制改悪は何としてでも防がなくてはならないと思った。
(3)では、生活困窮者自立支援法の問題点を解説していただいた。これまで、法律の内容を漠然と知っているに過ぎなかったので、その問題点には大変驚かされた。当該法律は、あくまで「再就職支援」であり「生活支援」ではないため、最初から就職できそうな人にしか住宅支援給付をしない、脱法ハウス入居者は利用できない等、セーフティネットとしては限界があることを知った。このことをいわゆる「水際作戦から沖合作戦」ということも理解した。
最後に稲葉さんは社会の持続可能性を確保するために、「住まいは人権」にもとづく住宅政策の確立を訴えていた。社会の持続可能性がなくなれば、「国」として維持できないことになる危険性を多くの人が理解すべきだと思った。
三 後半は、千葉支部田村陽平団員、藤盛夏子団員から、「千葉県銚子市の県営住宅母子心中事件についての要請行動報告」をうけた。
事件の詳細自体全く知らなかったので、何と悲しい事件で、なぜ防げなかったのかと悔しい気持ちなった。事件は、県営住宅に入居していた母子の母が、退去期日当日に娘の首を絞めて心中を図り、殺人容疑で逮捕されたものである。健康保険料滞納で訪れた保険年金課が隣の社会福祉課に適切に引き継いでいれば、社会福祉課がきちんと対応をしていたら、生活保護を受けて生活再建をできたかもしれない。家賃減免制度が知らされていたら、滞納にならず、裁判にならず、敗訴により強制退去とはならなかったかもしれない。どれをとっても、行政のシステム自体の問題や現場の対応の問題によってこの事件が引き起こされてしまったことがわかる。制度は必要な人がいるから作られるべきであるし、作っておしまいではなく、本当に必要としている人に周知し、活用されなければなんらの意味もなさないと思う。今後、生活保護の住宅扶助基準も引き下げられる中で、このような事件が二度と起こらないようにどうすればよいか考えたいと思った。
四 前半後半を通じて、住宅がいかに人々の生活にとって重要かを再認識した。生活の基盤である家がなければ、仕事もできないし生きていけない。銚子市の母の「家を失ったら生きていけない」という供述が物語っていると思った。さまざまな問題が密接に関連するなかで、自分には何ができるかを改めて考えたいと思った。
埼玉支部 上 田 月 子
一 はじめに
私は毎週土曜日、TOKYO MXという東京都を放送エリアとするローカルテレビ局の番組を二つ、自動的に録画している。一つは午前〇時三〇分から始まる『ジョジョの奇妙な冒険』、もう一つは午後五時から始まる『淳と隆の週刊リテラシー』だ。
この『淳と隆の週刊リテラシー』に田井次長が出る、しかも、労働者派遣法「改正」問題がテーマと知り、五月三〇日の放送が待ち遠しかった。田井次長が担当している労働法制改悪阻止対策本部(労働問題委員会)のメンバーならTOKYO MX圏外でなければみんな同じだろう。そう思ったのだが・・・。
放送直後は「見た」という声を誰からも聞かなかった。ついに六月三日、労働メンバーメーリスに田井次長が自分で貼ったYouTubeのリンクが流れた。http://youtu.be/oEyq5HtWXQQ
二 「労働者派遣法改正案は悪法か否か!?」
田井次長が出たのは、五時三〇分頃から始まる「言論クロスカウンター」というコーナーである。このコーナーでは、世間を騒がす問題について対立意見を持つ論客二人がお互いの意見を往復書簡のようにやりとりしながら討論する。往復書簡という言葉から分かるように、実際に対面している訳ではなく、それぞれ別録りしたものを交互に流し、討論している感じを出す。この日のテーマは、「労働者派遣法改正案は悪法か否か!?」。
改正賛成派の論客は、派遣法改正原案作成に携わった阿部正浩中央大学教授。田井次長は、反対派の論客として、労働者派遣法を担当する自由法曹団弁護士田井勝として登場した。試合に臨む格闘家のようだ。
三 改正案のメリット??
ゴングが鳴り、阿部教授が改正案のメリットについて話始めた。最大のメリットは、登録制もある現行法と異なり、派遣会社が全部許可制になるので、問題のある派遣会社が減ることだ。そして許可の条件として、派遣社員の教育訓練を派遣会社に義務付けていると言う。
また、その他のメリットとして、派遣会社の雇用安定措置を挙げた。派遣期間三年が経った時、派遣先に「正社員にして下さい」と言えたり、派遣元に「無期雇用にして下さい」と言えたり、新たな派遣先を紹介してもらえたりすると動画で説明がなされた。
四 「生涯派遣・正社員ゼロ法案」
これに対し田井次長は、「法案が通ると、今の派遣労働者がずっと派遣社員として働くことを余儀なくされる可能性が出てくる」と述べた。三年でAさんBさんCさんと次々入れ替わる動画が使われた。また、正社員が派遣社員に置き替わる動画もあり、ますます正社員が減っていくことも一目瞭然だった。改正案を「生涯派遣・正社員ゼロ法案」と呼んだ。
そして、派遣会社の雇用安定措置に対して、単なる努力義務だと述べた。派遣元が派遣先への直接雇用を一遍求めれば規定をクリアしたことになる。派遣先がNOと言えばそれで終わり。企業にとっては使い捨てができる。
五 対策が何も練られていない
阿部教授は、「派遣社員に対する教育訓練の義務というのが書かれている。正社員になりたい派遣社員ができるだけ正社員になれるようなキャリアアップを派遣会社は考えていくだろう」「非正規社員の待遇改善のために大事なことは、キャリアアップにつながるような教育訓練をどれだけできるかだと思う」と言う。
他方、田井次長は苦笑いしながら、「前よりは良くなると言うが、極端な話、一年に一回だけ訓練したらいいとか、そんな可能性もある」「派遣社員としてキャリアアップをして待遇を良くする方向で対策を打って行った方が幸せというが、対策がこの法案では何も練られていない」と反論。沈着冷静に的確に反論していた。この番組を見た人はみんな反対派になったと思う。
北海道支部 橋 本 祐 樹
いま、給費制の復活を求める活動はどうなっているの?給費の実現って給費制とどう違うの?修習手当って何ですの?という方、二分だけ時間を下さい。主に六月三日の「司法修習生への給費の実現と充実した司法修習に関する院内意見交換会」についての報告等をしますが、さっと読めますので。
一 情勢(国会)
六月三日に「司法修習生への給費の実現と充実した司法修習に関する院内意見交換会」が実施されました。国会議員四九人、議員秘書八九人の参加、参加者総数三九〇人と日弁連が主催する院内集会でも史上最大のものとなりました。
これまでの院内集会とは異なり、主要政党の要職者から各政党の給費についての意見を述べてもらう場を設けました。出席議員からは、「わが党含め超党派で、司法関係予算の充実も含め、この問題に取り組まなければならない」との発言や、「法曹志願者の減少が目立ち、日本の未来に危機感を抱かざるを得ない」「司法試験合格後の経済的負担感について、考える必要がある」というような、無給制の実質を有する「貸与制」の弊害を指摘し、司法修習生に対する給費の実現の必要性を訴える発言が全ての政党から相次ぎました。
国会の情勢がここまで盛り上がってきたのは、若手団員を中心として、各地の単位会で何度も何度も議員要請を繰り返し、国会議員の理解を得る努力をしてきたからだと言えます。
国会議員から集まった給費の実現に向けてのメッセージは二〇五通に及び、全国会議員に占める割合は三分の一に迫ろうとしています。これから、さらに一〇〇通、二〇〇通と国会議員からのメッセージを獲得できれば、裁判所法の改正も近づくのではないかと思います。
二 情勢(法曹養成制度改革推進会議)
このような追い風を受けてか、六月一一日に行われた法曹養成制度改革推進会議において、予想もしていなかった内容の同会議決定(案)が示されました。これまで同会議では、司法修習生への経済的支援について、「貸与制」を前提とした一部の運用改善についてのみ検討され、日弁連から一度「給費の実現を含む経済的支援の必要性」についてプレゼンをしたほかは、「貸与制」を前提としない経済的支援策についてのまともな議論はされていませんでした。
ところが今回の決定(案)においては、「貸与制」を前提とする留保が外され、「司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、必要と認められる範囲で司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする」との内容が盛り込まれたのでした。まだまだ油断はなりませんが、今後の運動の足がかりとなるのは間違いないでしょう。
三 今後の課題
日弁連や国会では、従来の「給費制復活」という言葉を使わずに、「給費の実現」と言ったり、「修習手当の創設」という言葉を用いています。「給費制復活」という表現のみで結果の獲得ができない状況から脱し、実を取りにいくためです。
とはいえ、修習生の生活保障には程遠い「修習手当」であってはなりませんし、給費制の理念が失われてもなりません。また、「修習手当」の創設で「はい、終わり」で、無給制で修習を行った新六五期〜六八期が置き去りのままになってもなりません。
「修習手当」の内容が骨抜きにされないように、充実した内容となるようにするには、引き続き団員の皆様からの日弁連、国会、世論への働きかけが重要となります。
この夏も、全国で市民集会が開催されます。東京、愛知、広島、福岡、札幌、熊本では給費制廃止違憲訴訟が係属しています。
皆様のご支援・ご協力をよろしくお願いします。
東京支部 塚 本 和 也
一 教科書PT
東京東部法律事務所では、二月頃から教科書PTを作り、自由法曹団の教科書PTや経験交流会に参加して情報収集などをするとともに、地域の各種団体が協力して作っている教科書問題を考える会などに参加し、月一回のペースで会議をするなど、教科書問題に取り組んでいます。
二 学習会
五月末には、墨田・江東・江戸川で教科書問題の学習会が行われました。教科書PT以外の弁護士・事務局も含めそれぞれ複数名が参加しました。全体の参加者はそれぞれ、三〇人・一二〇人・一〇〇人ほどでした。私も墨田と江東の学習会に参加しましたが、現役の社会科教員の方や教科書ネットの方の講演はとてもわかりやすかったです。経済的余裕のない家庭の子どもが仕方なく自衛隊に入ったという話や、防衛省が自衛隊のカレンダーを全国の中学・高校に配っているという話があり、安倍政権の政策はすべて戦争する国作りにつながっていると感じました。学習会のレジュメや感想はまとめて事務所のメーリングリストに流し、情報を共有しています。
三 展示会でのアンケート記入
展示会に行ってアンケートを書くことの重要性をどこの学習会でも学びました。そこで、所員一同が墨田・江東・江戸川・葛飾のうち一か所には行くことを目標にしました。行きやすいように、各自に行くことができる日を書いてもらい、展示会の日程・場所をまとめ、展示会では具体的な記述が重要であるため、問題の記述をピックアップした資料や記載例と合わせたものを配布しました。また、現在使用されている教科書との対比で書くことが有効なことから区ごとの使用教科書をチェックして告知しました(ちなみに、東京都の使用教科書のURLはhttp://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/buka/shidou/23chikubetsutext.htmです)。そして、展示会に行ったときには事務所のメーリングリストに報告をするようにしています。日程が合った人たちで展示会場を回るツアーも行われています。
近いうちに事務所のホームページにも展示会の情報を載せて、呼びかけをしようと考えています。また、私が戦争法制の学習会で講師をしたときに少し教科書問題の話をしたところ、終わった後に展示会について質問されたので、そのような学習会でも告知をすると良いと思いました。
四 今後の取り組み
今後は、地域の方々と協力しながら、採択の要項を取り寄せて分析したり、自由法曹団の意見書などを持って教育委員を訪問したり、教育委員会を傍聴したりしようと考えています。
東京支部 大 住 広 太
二〇一五年六月七日、大田区消費者生活センター大集会室に、老若男女二二〇名が詰めかけた。定員二〇〇人(椅子のみの利用時)の大集会室は超満員で、受付の机をずらし、他の部屋から椅子を持ってくるなど、運営側は想定以上の人の入りの対応に追われた。
この日は、「新しい中学校検定教科書を考えるつどい」の開催日である。子どもの教育や教科書、歴史問題に取り組んでいる大田区内の六団体が集まり、実行委員会を結成しての開催となった。このつどいでは、子どもと教科書全国ネット21の常任運営委員である石山久男さんをお招きして、いわゆる「つくる会」系の教科書の危険性を学び、真実を学べる教科書、自分たちの持つ権利を理解し正しい社会常識を身に付けることのできる教科書を渡すための呼びかけがなされた。
石山さんの学習会では、他社の教科書と比較しつつ、育鵬社版教科書の記載にどのような問題があるのか、分かりやすく解説していただいた。たとえば、朝鮮への侵略を確保するための戦争であった日露戦争について、あたかもロシアが日本への脅威のように記載して自衛戦争のごとく表現したり、他社では必ず取り上げられている反戦論などにまったく触れていないことなどである。私自身、既に歴史の勉強から遠ざかって久しいが、それでも常識として定着していた与謝野晶子、内村鑑三や、重税に苦しむ人々の図が触れられさえしないことには大きな衝撃を受けた。
公民教科書についても、他社が民主政治の原理から政治制度、国民の権利を開設し、その上で一定の制約が課されることを説明しているのに対し、育鵬社版は、「国民主権と天皇」という不可解な表題のもと、天皇についての記載が国民主権についての記載を上回り、権利の記述よりも権利の制約、義務についての記述の方が多いなど、到底考えられないものとなっている。
以上のように、他社の教科書と比べると育鵬社版教科書の異常さは際立つ。しかし、逆に言えば、きちんとした知識を持って、批判のできる目で読まなければ、違和感なく受け入れられてしまう可能性がある。
賛同団体からの報告では、前回採択の際の区民意見で育鵬社版を支持するものが六割を占めていたこと、どのような意見が教育委員会に届きやすいのか、など実践的な報告もなされた。
会場からの発言では、教育現場に携わる方から、育鵬社版教科書をできるだけ使わないようにしている方がいたり、子どもたちからも、育鵬社版の教科書は使いづらいとの苦情が出ていることも報告された。
大田区は、四年前に東京二三区で唯一育鵬社版教科書が採択された。一度採用された以上、これを覆すには大きな運動にしていく必要がある。今回のつどいは、その大きな一歩として、たくさんの人々に教科書問題に取り組む必要性を訴えることができたのではないかと思う。
東京南部法律事務所は、今回のつどいの賛同団体でもある「公正な教科書採択を求める大田区民の会」と「大田子どもの教育連絡会」に参加し、育鵬社版教科書を採択させない為の運動に取り組んで来た。区内の民主団体や労働組合への申し入れや、毎週土日は駅前や商店街など区内各所での宣伝・署名活動を行なってきた。さらに、ハンドマイクでの宣伝とチラシ配布だけではもったいないと、近隣へのポスティングも行った。
中学生は、これから様々な知識を習得し、社会を学び、日本社会を支えていく存在である。そのような子どもたちに、適切な教科書で学んでもらうことができるよう、これからも継続して取り組んでいきたい。
埼玉支部 小 林 善 亮
今年の七月から八月に行われる中学校教科書採択に向けて、育鵬社公民教科書の問題点を分かりやすく伝えるリーフが完成しました。
弁護士が、憲法の三原則がどのように扱われているか、育鵬社教科書と他の教科書を読み比べたという切り口で作られています。また、育鵬社教科書では不利になる試験問題も指摘して、育鵬社教科書は「使えない」ことを分かりやすく示しています。
教育委員会要請、学習会、宣伝行動等で是非ご活用ください。現在、採択対象となる教科書を市民に閲覧させる展示会が各地自体で行われています。展示会でアンケートを書く際の手軽な参考資料としてもおすすめです。
リーフは一部一〇円(送料別)。五〇部単位で団本部にご注文ください。
※団のホームページからFAX注文用紙をダウンロードできます。
労働法制改悪阻止対策本部
労働者派遣法「改正」案は、六月一九日、衆議院厚生労働委員会と本会議で相次いで強行採決され、参議院へ送付されました。この間、「生涯派遣・正社員ゼロ」法案の「改正」案に反対する声とともに、個人単位の三年の期間制限を利用した派遣労働者の首切り自由への反対の声が広がっています。
自由法曹団は、労働法制中央連絡会・全労連・東京地評と共同して、七月二日(木)午前一〇時〜午後八時に、「派遣労働者の声を国会へ!! 七・二派遣労働一一〇番」を行いました。院内集会七・八では、「派遣労働一一〇番」へ寄せられた派遣労働者の方々の声を紹介します。
団員、事務局の皆さんが全国から多数参加されることを呼びかけます。
派遣労働者の声を国会へ!!
「生涯派遣・正社員ゼロ」、「派遣切り自由化」法案に反対する院内集会七・八
○日時:二〇一五年七月八日(水) 午後一時三〇分〜三時三〇分 (院内集会終了後、国会議員要請を行います。)
○会場:参議院議員会館B一〇四会議室(地下一階)
○内容:(1)国会情勢報告
(2)「改正」案の「生涯派遣」と「派遣切り自由」の仕組み等
(3)派遣労働者の要求と声等
(4)全国の活動の経験交流と今後の活動についての意見交換
○主催:自由法曹団・労働法制中央連絡会・全労連・東京地評(※ 議員要請終了後、懇親会を予定しています。)