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今村 幸次郎 *改憲・戦争法制阻止特集*
「戦争しないための法案」という「大きなウソ」とのたたかい
大森 夏織 八月二六日(水)一八時はこぞって日比谷野音へ!
「安保法案を廃案へ!立憲主義を守り抜く大集会&パレード〜法曹・学者・学生・市民総結集〜」
山口 真美 戦争法制を廃案に追い込むために八・三〇の一〇万人国会行動と全国一〇〇万人大行動を成功させよう
松井 繁明 自由法曹団員のための軍事知識(三)
吉田 竜一 姫路市が駅前広場での「政権批判」行事に中止命令 ―もはや謝罪ではすまないと国賠訴訟を提起―
萩尾 健太 戦争法制は戦争動員と切れ目無く繋がっている
野呂  圭 戦争法案についての仙台市議選立候補者に対するアンケート結果
漆原 由香 岐阜支部・弁護士会での戦争法制阻止のとりくみについて 「戦争だちかんさ!飛騨地区連絡会」
尾崎 彰俊 戦争法案反対!!ほぼ毎日街頭宣伝
田篭 亮博 戦争法案に対する福岡での取り組み
小池 振一郎 *盗聴法拡大阻止・治安警察*
鬼気迫る衆院本会議刑訴法案採決
長澤  彰 衆議院法務委員会での盗聴法拡大についての参考人陳述
佐藤 誠一 *教科書問題*
四年前の雪辱へ向けて「教科書採択」熱い東京大田 夏の戦い



*改憲・戦争法制阻止特集*

「戦争しないための法案」という「大きなウソ」とのたたかい

東京支部  今 村 幸 次 郎

 安倍首相や法案推進勢力は、安保関連法案について、「戦争しないための法案である」とか「戦争を未然に防ぐための法案である」との宣伝を繰り返しています。戦争法制反対の街頭宣伝をしていると、時々、「戦争になるはずがない、あなたたちは間違っている」といって、反論してくる市民の方がいます。そうした反応からすると、この宣伝には、一定の浸透があるものと思われます。
 しかし、この法案が「戦争しないための法案」ではなく、(1)集団的自衛権の行使容認、(2)他国軍隊への支援活動の拡大、(3)平和協力活動等での武器使用の拡大、などを企図するものであって、「日本が海外で戦争を行う」、「海外での戦争に参加する」ための法案であることは極めて明らかです。
 このことは、この法案成立後の自衛隊の活動内容等を記した内部資料(七月二九日小池議員質問、八月四日仁比議員質問、八月一一日小池議員質問)や、現に行われている日米共同の訓練内容(七月三〇日井上議員質問)に照らしても明らかです。また、日米新ガイドラインは、日本が海外で武力行使をすること、地球規模で米軍の支援活動を展開することを約束するものです。こうした新たな約束を米国としておきながら、その約束を実現する法案が「戦争しないための法律だ」などというのは、甚だしいデマ宣伝というべきです。
 この法案が成立すれば、日本は米国の要請により、海外での戦争や紛争地域での治安維持活動等に参加することになります。日本が米国の要請を断ることはありえません。自衛隊員は、中東やアフリカで、武装勢力や市民を殺し、また、相手方から殺されることになってしまいます。また、日本は、こうした作戦に参加・関与したことで、報復テロや反撃の標的になってしまいます。
 この法案が「戦争しないための法律である」というのは「大きなウソ」です。ナチス・ドイツの宣伝大臣ゲッベルスは、「十分に大きなウソを頻繁に繰り返せば、人々は最後にはそのウソを信じるだろう。ウソから生じる政治的、経済的、軍事的な結果を隠蔽するのに有効である限り、ウソを使うことができる。よって、反対意見の抑圧のために全力をあげることが国家にとって決定的に重要だ。真実はウソの不倶戴天の敵である。したがって、真実は国家の最大の敵である。」と語っていたそうです。
 安倍首相は「この法案は戦争を未然に防ぐためのものだ」などという「大きなウソ」を用いて、憲法九条を空文化し、日本を軍国主義的な強権国家に作り変えようとしています。絶対に許すことのできない暴挙です。
 私たちは、この法案が「戦争法」であることを事実と道理をもって、明確にわかりやすく論証し、広げ尽くさなければなりません。真実こそ、安倍政権の不倶戴天の敵であり、戦争法案廃案・安倍退陣に向けた最強の武器であると思います。


八月二六日(水)一八時はこぞって日比谷野音へ!
「安保法案を廃案へ!立憲主義を守り抜く大集会&パレード〜法曹・学者・学生・市民総結集〜」

東京支部  大 森 夏 織

 東京南部法律事務所の大森夏織です。日頃よりお世話になっております。今期、東京弁護士会副会長職を拝命している関係で、日弁連主催の標記大集会&パレードをご案内させていただきます。
 今夏、各地の弁護士会、法律事務所、弁護士さん事務局さんが一丸となって、それぞれの思いをそれぞれの形にして、立憲主義・恒久平和主義の危機に声をあげてこられたと存じます。あるいは所属法律事務所単位で、あるいは地域と連携して、あるいは居住地の一市民として、猛暑のなか、集会を企画し、パレードに参加し、幟をかかげ…。
 私の所属事務所も企画・街宣で地元東京都大田区の市民を結集してきましたし、東京弁護士会としても「女性弁護士一〇一人大集合!」企画や歴代全員会長声明公表、戦後七〇年会長談話公表(東京弁護士会HPに動画あり)などに取り組んでまいりました。
 私どものそのような思いを、ここに日弁連が結集し、立憲主義と平和主義を守り抜くために専門家の職務を果たそうと企画しました今回の大集会&パレードです。
 一二時から参議院院内集会、一六時から弁護士会館で記者会見も行いますが、下記にご参集くださるよう節にお願い申し上げます。
  一八時〜一九時 日比谷野音で大集会
  一九時〜 国会方面にパレード
 当日は多数の弁護士(全単位会から参加予定)、元裁判官、憲法学者、その他学者が登壇予定です。SEALDsやママの会はじめ、たくさんの団体からもご参加いただきます。
 ステージに近いところに弁護士数百名分の席を用意してございますので、一八時の集会開始よりかなり早い時間、できれば一七時半までに、渡されたパンフに記載のある弁護士席へお越しください。弁護士会としてでなくても自由法曹団、法律事務所、法律事務所職員としてでもOKです(集会開始後は「自由法曹団」「法律事務所」などをふくむすべての幟はいったんおろしていただくことになりますが)。
 ここでご注意申し上げたいのは、一八時集会開始とともに会場をいったん閉鎖し、入場が困難になる可能性がございますので、繰り返しで恐縮でございますが、一八時の集会開始よりかなり早い時間までにご参集いただければ幸いです。
 それでは日比谷野音でお待ちしております!


戦争法制を廃案に追い込むために八・三〇の一〇万人国会行動と全国一〇〇万人大行動を成功させよう

東京支部  山 口 真 美

 八月一四日に安倍首相が発表した戦後七〇年談話は、日本が植民地支配と侵略によって日本国民とアジア諸国民に多大な犠牲をもたらしたという村山談話に示された歴史認識を踏襲せず、安倍首相自らの言葉としては、何の反省もお詫びも示さないものでした。
 戦後七〇年の節目の年、日本は、戦争への道を選ぶか、平和への道を選ぶか、歴史的な岐路に立っています。日本国憲法が掲げた侵略戦争への反省と不戦の誓いを守り、世界の平和に貢献するためには、何としても安倍政権を退陣に追い込み、戦争法制を廃案にしなければなりません。戦争法制廃案を求める運動の高揚の中、数万人規模の国会前行動や国会包囲行動が展開されていますが、安倍政権退陣・戦争法制廃案を実現するためには、こうしたたたかいをこれまで以上に大きく広げ、かつてない規模のものにし、国会を軽視し、国民を無視する安倍政権に決定的な打撃を与える必要があります。
 総がかり行動実行委員会は、八月三〇日、「戦争法案廃案!安倍政権退陣!八・三〇国会一〇万人、全国一〇〇万人大行動」を呼びかけています。戦争法制阻止のために、この行動を必ず実現させ、成功させましょう。
 大行動は、八月三〇日一四時開始となります。国会前の行動への多数の団員の参加、そして全国各地・津々浦々での一斉行動を呼びかけます。


自由法曹団員のための軍事知識(三)

東京支部  松 井 繁 明

(5) 空中給油
 周辺事態法では禁じられていた「戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油・整備」が戦争法案(重要影響事態法案)では認められることになる。
 このような行為は、戦闘行為と「一体化」するものとして違憲というのが、内閣法制局の一貫した見解であった。給油・整備を受けた航空機はただちに戦場におもむき戦闘行動作戦を遂行する(他の行為はあり得ない)のだから、両者を「一体化」とみる見解には、高い合理性と説得力がある。
 これを許容することの違憲性を問われた安倍政権の答弁は、「給油・整備」行為と「戦闘作戦行動」との間には距離的・時間的な隔たりがある。というもののようである。こんな答弁にはなんら合理性もなく、詭弁のたぐいであろう。このことはしばらく措き、私が注目したのは、「発進準備中の航空機に対する給油」活動のなかに「空中給油」が含まれる、とする国会答弁である。
 アメリカ空軍には、対地(艦)攻撃(爆撃またはミサイル攻撃)ができるF15戦闘機がある。航続距離は二七〇〇キロメートル。通常の作戦行動は―基地を発進すると時速九〇〇キロで一時間進行し、戦闘空域で攻撃する。攻撃作戦を終えると、同じ要領で帰還する。これにたいし攻撃作戦では、最高速度(マッハ・2)で飛行し、ときにはアフターバーナーも使用するので燃料使用量は一〇倍になる。攻撃作戦はわずか六分間しかできないのである。たとえば攻撃作戦を一〇分もおこなえば、戦闘現場を離脱した戦闘機には帰還用の燃料がほとんど残っていない。そこで空油機から帰還用の空中給油を受けて帰還する―これが通常の空中給油の形態である。
 しかしこの形態の空中給油では「発進準備中の航空機にたいする給油」ではなく、帰還用の給油にしかすぎない。政府答弁はどのような状況を想定しているのであろうか。
 約九〇〇キロ飛行して約三分の一の燃料を消費してきたF15にたいし、戦闘空域に突入する直前に消費分を補給するために空中給油する。これ以外に考えられない。このような補給を受けたF15は、戦闘空域で一二分間まで飛行しても基地に帰還できる。−アメリカ空軍にとってこれほど有難い補給はないであろう。
 しかしこのような空中給油は、給油を受けたF15はその直後に戦闘空域に突入し爆撃やミサイル攻撃をおこなう。時間的にも距離的にも、いかなる隔たりも存在しないのである。このような空中給油が、どうして戦闘行為と「一体化」していない、憲法違反ではない、などといえるのであるか。
 参議院での審議における解明を待ちたい。
(6) 徴兵制
 戦争法案は徴兵制につながるという意見がある。安倍首相は「レッテル貼り」だと猛反発している。
 一般論としていえば、少子化傾向のもとで自衛隊も隊員が必要であり、志願制度で充足できなければ徴兵制を採らざるをえない。現在、徴兵制は憲法一八条の「その意に反する苦役」にあたり違憲とするのが通説である。安倍首相もそのことは認めている。しかし閣議決定で九条の解釈を変更してしまった安倍内閣の“実績”をみれば、一八条の解釈がいつまで維持されるのか、心もとない。現に石破茂大臣はかねてから徴兵制は「その意に反する苦役」にあたらない、と主張しているのだ。
 しかし世界の状況をみると、先進国で徴兵制を維持しているのはイスラエル、韓国など少数に限られ、おおくの国で志願制がおこなわれている。自衛隊も例外ではない。
 自衛隊も人材の確保には苦しんでいる。定員二四万七〇〇〇人にたいし実員は二二万六〇〇〇人しかいない。特に二士、一士、士長など下級の隊員は定員の七四%しか確保できていない。突撃の演習でも、腹の出た四〇歳代の陸曹がヨタヨタと走っているのが実情なのだ。
 自衛隊幹部にとっても、少子化傾向は頭痛の種である。かつては年間の出産数が約二〇〇万人あったのに今は約一〇〇万人しかない。自民党政治のもとでは、さらに少子化は進むだろう。本稿(2)で指摘したように新ガイドラインのもとでは防衛費の拡大が避けられない。同じことは人員についても言え、隊員数増強の圧力が高まるであろう。
 それでも自衛隊幹部が徴兵制の導入を考慮しているわけではない。自衛隊内部で徴兵制を検討している様子はうかがえないし、退役した元幹部らもそのような主張をしていない。石原慎太郎氏をはじめ極右政治家のほうが、徴兵制の主張はつよい。もっとも彼らの主張は「たるんでいる若い者を徴兵制で鍛えろ」などという精神論。冷静な軍事的合理性にもとづく議論ではない。
 軍事的合理性にてらして徴兵制を評価すると―
 なによりも徴兵制は、兵員確保の最も確実なシステムである。しかし国民の強力な反発は必至で、これを克服するのは容易ではない。そのうえ徴兵制には思わぬ弱点がある。反戦思考の青年を取込んでしまい、隊内で反戦活動をされる「危険」を排除できないのである。それにたいし志願制では、反戦思想の持主が兵役を「志願」してくるはずがないので、この制度そのものが絶妙なスクリーンとなるのである。
 戦争の性格が変わったということもある。いまでは、数万・数十万という軍隊が正面から激突する戦争は想定できない。また、歩兵部隊でも電子技術など高度の技術の持主が要請されるようになった。徴兵制ではこうした要請に応えることができない。
 ―というわけで、戦争法が成立すればただちに徴兵制に直結するわけではない。
 むしろ、いま心配しなければならないのは「経済的徴兵制」であろう。若者に貧困化を押しつけ、進学や就職できない青年に学費援助などを餌に入隊をすすめる制度のことである。
 アメリカではすでに「経済的徴兵制」が実現していると堤未果さんは指摘する。日本でも安倍政権は若者を貧困化に追込む政策を着々と進めている。自衛隊員募集業務をおこなっている神奈川地方協力隊川崎出張所。この組織がこの七月に配布したチラシが問題となった。防衛医大の学校案内に「苦学生求む!」のキャッチコピーをつけ、「金がなくて医者になれない者」を防衛医大に誘っていたのだ。これこそ「経済的徴兵制」そのものではないか、という批判が集中したのである。
 ―戦争法案が成立すれば、かりに直接の徴兵制にならないとしても、「経済的徴兵制」を拡大し、青年らを苦しめることは確実であろう。


姫路市が駅前広場での「政権批判」行事に中止命令
―もはや謝罪ではすまないと国賠訴訟を提起―

兵庫県支部  吉 田 竜 一

 兵庫労連傘下の西播労連は、JR姫路駅前にある姫路市が管理する姫路駅北にぎわい交流広場で姫路駅前文化祭と銘打った西播地域の文化団体の活動発表会を行うことについての使用許可を得て、七月二四日、予定通りに駅前文化祭が開始された。
 当日のプログラムは午後五時から午後八時までの三時間にわたって一一の団体、個人が演奏、合唱、絵本の朗読、踊り等を披露するというもので、途中、姫路市から広場の管理を委託された三セクの職員が、「アベ政治を許さない」のポスターを出演者が掲げようとするのを止めさせたりしながらも、予定された演目はプログラムどおりに進められていったのであるが、民族歌舞団「花こま」が演じた「面踊り/『沖縄』 辺野古の新基地反対! 戦争法案絶対反対!の巻」を見た三セクの職員は、「これは認められない。やめてくれ」と西播労連の責任者に迫り、責任者が、「演ずる内容に介入することは表現の自由にかかわるものでできない」と答えると、姫路市の担当者と連絡を取った末、広場の使用規約が申請の不許可事由として定めている「公序良俗に反すると認められる場合」に抵触することを理由に「使用許可が取り消された」旨を通告してきた。
そのため、西播労連は、午後七時頃、まだ約一時間のプログラムが残っている段階で、やむなく文化祭を打ち切った。
 中止命令に対しては、西播労連が、「混乱を避けるため打ち切るが、表現の自由を侵すもので断固抗議する」と告げるとともに、文化祭を見ていた少なからぬ市民からも、「こんなやり方は戦争中と同じではないか」との抗議の声が上がり、周囲は騒然となる中、姫路市の参事らがにぎわい広場にやってきたが、参事らは抗議の声に対し「条例、規則に基づく判断。理由は面踊り。安倍批判があったこと。個人を批判している」として中止命令を容認する発言に終始するだけであった。
 この事件は、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞だけでなく、共同通信の配信を通じて南は九州、沖縄から北は北海道まで多数の全国の地方紙にも報じられ、地域版ではあるがNHKや朝日放送のニュースでも報じられるところとなったが、朝日放送のニュースでは、姫路市の参事が、「批判的なことは全てだめ?」とのインタービューに、「そうです。好ましくないと判断します」と堂々と答える姿が映し出された。
 広場等のパブリック・フォーラムにおける集会の自由を制約する基準については、既に泉佐野市民会館事件・最高裁判決で詳細な基準が示されているところ、条例、規則がこの最高裁判決の判示に照らして解釈されなければならないことはいうまでもないが、この判決を引用するまでもなく、本件中止命令が正当な理由もなく集会の自由を不当に侵害するものであることは明々白々である。
 付言すれば、「花こま」の演じた面踊りの最後は、安倍首相の面をつけた主演者が辺野古基地新設と戦争法案の法制化を進めるために国民の声を封殺しようと、「え〜い! だまれ、だまれ!」と叫ぶのに対し、青年の面をつけなおした主演者が、「だまるもんか! 僕たちは戦争を絶対許さない! 戦争法案を廃案にするまで絶対あきらめない! 沖縄と一緒にオール日本の闘いをしよう! 辺野古の新基地建設、絶対反対! 戦争法案、絶対反対、安倍政権はNOだ!」と訴える、まさに権力を風刺する踊り、文化であり、また、金子兜太さんの書いたポスター「アベ政治を許さない」も戦争法案反対を訴えるスローガンである。安倍首相個人を非難するものでないことはいうまでもなく、これを「好ましくない」などといって集会途中でやめさせる姫路市の行為は、まさに戦前の治安維持法下の「弁士中止」のやり方と異なるところがない。
 西播労連は、直ちに国家賠償訴訟を提起する準備に取りかかったが、市民からの抗議の声が姫路市に殺到したからであろう。中止命令直後、市の担当者はマスコミに対し「安倍政権はノーだとの発言が認められたから中止させた」旨を述べていたのに、八月四日、突然、市長は定例会見で「中止になったことは申し訳なかった」として、西播労連に経緯を説明し、謝罪する方針を明らかにした。
 しかし、新聞記事を読む限り、そこでは原因究明も不十分で、姫路市が憲法の保障する集会の自由、表現の自由を侵害するという違憲の行為を行ったという認識はまったく示されていない。市長は「申請目的にない行為だったが、きつい言葉遣いで注意したことや説明が不十分だったことを陳謝する」と述べているようであるが、許可申請書には「集会で『アベ政治を許さない』とのポスターを掲げる」ことまで記載させなければ許可不許可の判断はできない、だから記載させてもよいと思っているのであろうか。また、優しい言葉で十分説明していれば本件の集会は中止させてよかったのだと思っているのであろうか。
 西播労連は、本件中止命令が違憲・違法の中止命令であったことを棚上げした形だけの謝罪はいらない、戦争法案が国民の世論によって廃案にできるか否か極めて緊迫した情勢の中で、責任の所在をおざなりにした解決をすることで、戦争法案反対の世論に萎縮効果を残したままにしておくことは、全国各地で戦争法案反対の声を上げている人たちに申し開きができないとの思いから、八月一一日、予定通りに姫路市に慰謝料等、総額二二〇万四〇〇〇円の賠償を求める訴訟を神戸地裁姫路支部に提起した(四〇〇〇円は姫路市に納めて無駄になった広場の使用料である)。
 そして、提訴と合わせて、姫路市に対し、(1)本件中止命令が憲法違反であることを認めた上での謝罪、(2)姫路市及び三セクの職員らに対して憲法教育の実施等の再発防止策を講じること、(3)姫路駅前文化祭をやり直す機会を与えること等を骨子とした申入れを行い、こうした要求に真摯に応えてもらえるのであれば、訴訟を取り下げ、金銭請求も放棄する旨の申入書を送付した。
 姫路市からの回答があれば、追ってご報告したい。


戦争法制は戦争動員と切れ目無く繋がっている

東京支部  萩 尾 健 太

一 はじめに
 「憲法違反の戦争法制を廃案にせよ!」との声は高まり、運動が盛り上がりを見せています。
 若者が、戦地に行きたくない、殺したり殺されたりしたくない、と声を上げ、運動に参加しています。
 ここで、戦争法制は、単に自衛隊を戦地に送るだけではないことを強調する必要があると思います。いったん戦争法制が発動されれば、自衛隊員以外の文民も戦地に行かされる事態が拡大し、戦地まで行かなくても戦争遂行に協力させられ、戦争国家体制に入るのです。
 ※すでにイラク戦争の時も、民間企業の技術者が船舶や航空機、さまざまな機材等の修理、整備のために派遣されていました。また、輸送のための運輸会社、さらにはチケット手配のために旅行社の従業員も派遣されていましたが、それが大規模に拡大されるでしょう。
二 日本はどのようにして戦争に入っていくのか
 詳細を述べる前に踏まえておくべきは、国会審議で明らかになった通り、集団的自衛権の行使として想定されている存立危機事態は、現在政府が説明する内容のものとしては生じないということです。イランとアメリカが核協議で合意をした今日、ホルムズ海峡が封鎖される事態は起こりません。
 では、どうして日本が戦争をすることになるのか。一つには、政府が存立危機事態を拡大解釈し、秘密保護法で情報を統制したもとで存立危機事態を認定してしまうことが考えられます。また、戦争法制によれば「国際社会の取り組みに寄与するため」(恒久派兵法=国際平和支援法)や重要影響事態(重要影響事態法)への対処、PKO活動として自衛隊が派兵され、非戦闘地域での活動と言う制限や武器使用の制限は緩和され、自衛隊が米軍の武器の輸送や防護、治安維持活動も行うことになります。そうすると、自衛隊は攻撃されて戦闘に入り、アメリカの戦争に巻き込まれ、存立危機事態が認定されるます。さらに、すぐにそれを通り越して武力攻撃予測事態が認定されることになりかねません。
三 「存立危機事態」がもたらすもの
 すでに二〇〇三年に、武力攻撃事態法が成立し自衛隊法が改悪されており、武力攻撃予測事態や武力攻撃事態(まとめて「武力攻撃事態等」と言います)における有事法制(国民総動員体制)が定められています。
 今回の戦争法制の中の武力攻撃事態法改悪案は、存立危機事態でも、地方公共団体や指定公共機関(民間企業)は、対処措置を実施しなければならないというものであり、有事法制が一部前倒しで実施されることになります。(なお、この事態では、国民の協力義務・国民保護法制の発動はありません。しかし、前述のように、戦争法制のもとで海外派兵された自衛隊が攻撃されて戦闘に入れば、すぐに武力攻撃予測事態となり、国民総動員体制となるのです。)
四 存立危機事態で地方公共団体や指定公共機関が採る措置
 武力攻撃事態法改悪案によれば「指定公共機関」とは「独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会その他の公共的機関及び電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人で、政令で定めるもの」です。政府のHPによれば、それは各電力会社、ガス会社、船舶、航空、JR、私鉄、バス、日本郵便、運輸、電話、テレビ、ラジオなど多くの企業が含まれます。
 存立危機事態になると、政府は対処基本方針が定め、これに基づき「指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関」は次に掲げる措置をとることとされています(二条八号ハ)。
「(1)「存立危機武力攻撃」を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動(※これは、自衛隊がアメリカの戦争に参戦するという意味です。)
 (2)(1)掲げる自衛隊の行動及び外国の軍隊が実施する自衛隊と協力して存立危機武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置
 (3)(1)及び(2)に掲げるもののほか、外交上の措置その他の措置
 ニ 存立危機武力攻撃による深刻かつ重大な影響から国民の生命、身体及び財産を保護するため、又は存立危機武力攻撃が国民生活及び国民経済に影響を及ぼす場合において当該影響が最小となるようにするために存立危機事態の推移に応じて実施する公共的な施設の保安の確保、生活関連物資等の安定供給その他の措置」
 そして、三条には「武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処に関する基本理念」が規定されています。「武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処においては、国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならない。」というものです。
 よって、存立危機事態の時点で、国立病院などの独立行政法人や日本赤十字社の医師・看護師は戦地に派遣され、船員やトラックなどの運転士は戦地への輸送のため「役務を提供」させられることも考えられます。国内でも、自治体労働者も公共的施設の保安の確保などのために協力させられます。鉄道も戦争準備のための輸送に協力させられるでしょう。ひいては、テレビ、ラジオも情報統制され、生活関連物資等の安定供給のために、自治体や物流関係の労働者が協力を余儀なくされ、物資の統制の可能性すらあります。
五 存立危機事態で指定公共機関と地方公共団体の責務が規定されていない意味
 四条には、「国の責務」が規定されています。
 「一項 国は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため、武力攻撃事態等及び存立危機事態において、我が国を防衛し、国土並びに国民の生命、身体及び財産を保護する固有の使命を有することから、前条の基本理念にのっとり、組織及び機能の全てを挙げて、武力攻撃事態等及び存立危機事態に対処するとともに、国全体として万全の措置が講じられるようにする責務を有する。」
 「二項 国は、前項の責務を果たすため、武力攻撃事態等及び存立危機事態への円滑かつ効果的な対処が可能となるよう、関係機関が行うこれらの事態への対処についての訓練その他の関係機関相互の緊密な連携協力の確保に資する施策を実施するものとする。(新設)」
 この新設される二項がミソです。五条では、地方公共団体の責務、六条には指定公共機関の責務、八条には国民の協力が定められておりますが、いずれも、武力攻撃事態等の場合とされており、存立危機事態の場合には責務は課されないように読めます。しかし、国の責務として、「関係機関相互の緊密な連携協力の確保に資する施策を実施する」というのですから、三条と併せてみれば、関係機関=地方公共団体及び指定公共機関が、国と相互に連携協力するして万全の措置を講じる責務を課されているのと同じです。
 政府は、反対が強まらないように、わざと責務を明記しないようにした目くらましとすら考えられます。他方で、前述の通り国民保護法は存立危機事態では発動されず、地方自治体や指定公共機関は国民保護計画を策定する必要はありません。これは、存立危機事態は、海外でのアメリカの戦争に参加するものであって、地方自治体や指定公共機関は協力させられるものの、国民保護のためではないことを示しています。どんな内容の協力なのかが不明な分、国民保護法制よりも不気味です。
 自治体の議会などで、この戦争法制に関する陳情などについて審議する際には、是非これらの点を踏まえて検討して頂きたいと思います。
六 業務従事命令の意味の変質
 もっとも、存立危機事態は、すぐに武力攻撃予測事態に移行してしまうことは、前述の通りです。
 武力攻撃予測事態では、日本はまだ武力攻撃されていませんが、現行法でも、自衛隊が防衛出動できるようになっています。
 その場合について、自衛隊法一〇三条には、(防衛出動時における物資の収用等)として、以下の通り規定されています。
 一項「自衛隊が出動を命ぜられ、当該自衛隊の行動に係る地域において自衛隊の任務遂行上必要があると認められる場合には、都道府県知事は、防衛大臣又は政令で定める者の要請に基づき、病院、診療所その他政令で定める施設(以下この条において「施設」という。)を管理し、土地、家屋若しくは物資(以下この条において「土地等」という。)を使用し、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対してその取り扱う物資の保管を命じ、又はこれらの物資を収用することができる。ただし、事態に照らし緊急を要すると認めるときは、防衛大臣又は政令で定める者は、都道府県知事に通知した上で、自らこれらの権限を行うことができる。
 この一項は日本で自衛隊が行動する場合を想定した規定です。
 二項「自衛隊が出動を命ぜられた場合においては、当該自衛隊の行動に係る地域以外の地域においても、都道府県知事は、防衛大臣又は政令で定める者の要請に基づき、自衛隊の任務遂行上特に必要があると認めるときは、防衛大臣が告示して定めた地域内に限り、施設の管理、土地等の使用若しくは物資の収用を行い、又は取扱物資の保管命令を発し、また、当該地域内にある医療、土木建築工事又は輸送を業とする者に対して、当該地域内においてこれらの者が現に従事している医療、土木建築工事又は輸送の業務と同種の業務で防衛大臣又は政令で定める者が指定したものに従事することを命ずることができる。
こらは、日本国内での医療、土木建築や輸送労働者の徴用を想定した規定でしたが、海外でのアメリカと共同の戦争を想定した戦争法制が成立したもとでは、海外での業務への従事命令を含んだ規定に変質することになるでしょう。
七 まとめと呼びかけ
 このように、戦争法制は、海外派兵から有事法制、国民戦争動員へとまさに切れ目無く繋がっているのです。
 違法な戦争に送られるのは、自衛隊員だけではありません。戦争に協力させられる危険の高い、国家公務員、地方公務員、電力、ガス、医療、船員、航空、鉄道、郵便、運輸、土建、電話、テレビ、ラジオなどの産業の労働者が、戦争法制反対にさらに大きく取り組むことを呼びかけます。


戦争法案についての仙台市議選立候補者に対するアンケート結果

宮城県支部  野 呂   圭

一 仙台市議選立候補者に対する戦争法案アンケートの実施
 自由法曹団宮城県支部では、二〇一五年八月二日に投開票のあった仙台市議会議員選挙の立候補者六六人に対し、戦争法案についての公開アンケートを実施しました。アンケートの質問事項は次の八問でした。
 現在、国会でいわゆる平和安全法制整備法案及び国際平和支援法案(以下あわせて「安全保障関連法案」と言います)が審議されておりますが、あなたはこの安全保障関連法案について関心がありますか?
(1)とても関心がある。 (2)ある程度関心がある。(3)あまり関心がない。 (4)ほとんど関心がない。〔ご意見など〕
 あなた自身は安全保障関連法案についてどの程度理解しているとお考えですか?
(1)とても理解している。 (2)ある程度理解している。 (3)あまり理解していない。 (4)ほとんど理解していない。〔ご意見など〕
 あなたは、安全保障関連法案の制定に賛成ですか?反対ですか?
  (1)賛成である。 (2)反対である。 〔ご意見など〕
 あなたは、安全保障関連法案は日本国憲法に違反していると考えますか?
  (1)憲法違反である。 (2)憲法違反の疑いがある。 (3)憲法違反ではない。 
〔ご意見など〕
 安全保障関連法案は本年七月一五日に衆議院の特別委員会で全野党が欠席するなか与党だけの出席で採決され、翌一六日に本会議で可決されました。
あなたはこの衆議院での審理・採決に問題があると考えますか?
(1)問題がある。 (2)問題はない。 〔ご意見など〕
 安倍政権は、安全保障関連法案を今国会で成立させたい方針です。この点について、あなたは、どのように考えますか?
(1)今国会で成立させるべきである。 (2)今国会での成立にこだわらずに審議を尽くすべきである。 (3)今国会で廃案にすべきである。 〔ご意見など〕
 安倍政権は、安全保障関連法案を成立させるために、いわゆる「六〇日ルール」を使って、衆議院の三分の二以上の再議決で成立させる方針だとの報道もあります。あなたは衆議院での再議決による成立について、どのように考えますか?
 (1)再議決は絶対に許されない。 (2)再議決も場合によっては許される。 (3)再議決は何の問題もない。 〔ご意見など〕
 その他、安全保障関連法案や安倍政権の法案審議などについて、有権者に伝えたいことがあれば、お書きください。
二 アンケートの回答率
 アンケートは告示日直前に実施したため回答期限は短くなってしまいましたが、安全保障関連法案が最重要法案であり市民の関心も高いこと、質問も比較的時間を費やさずに回答できるものにしたことから、回答する時間は十分に保障されていたと考えます。しかしながら、回答率は全体で二四.二%(六六人中一六人回答)でした。
 党派別の回答率を見ると、(1)自民〇%(〇人/一八人)、(2)民主二二・二%(二人/九人)、(3)公明一一・一%(一人/九人)、(4)共産一〇〇%(七人/七人)、(5)社民八三・三%(五人/六人)、(6)輝くまち三三・三%(一人/三人)、(7)維新〇%(〇人/一人)、(8)無所属〇%(〇人/一三人)でした。
 政権与党の自民、公明の立候補者(合計二七名)のうち、回答したのは一人(青葉区、公明)でした。政権与党の立候補者が戦争法案を選挙争点にしたくないと考えていたことは明らかでしょう。他方、国会でも反対の論陣を張っている共産、社民は高い回答率でした。
三 戦争法案に対する賛否
 安保関連法案(戦争法案)に対する賛否については、回答者一六人中、賛成が一人(公明)、反対が一四人(共産七、社民五、民主一、輝くまち一)、無回答が一人(民主)でした。
 仙台市議会では、本年六月二六日に、安保関連法案の徹底審議を求める請願を否決しています。この請願に賛成した立候補者の回答率は比較的高いですが、反対した立候補者で回答したのは二人のみでした(内一人はアンケートでは安保関連法案に反対の回答をしていました。)。市民の安全にもかかわる重要な法案についての請願について意思決定をした各議員にはその説明責任が求められますが、そのほとんどの現職立候補者がアンケートに回答しなかったことは、「市民への丁寧な説明」を放棄したものと言えます。
四 選挙結果
 自民は改選議席から二減、公明は一増ですが、全体的には得票数を減らしています。これに対して、共産は改選議席を維持し(立候補者数も改選議席数と同じ。)、しかも、五選挙区中三選挙区(泉区、宮城野区、若林区)でトップ当選を果たしており、七人全員が得票数・率ともに増加しました。この結果は、戦争法案に対する仙台市民の意思がある程度反映されたものと言えると思います。
五 次は県議選!
 本年一〇月二五日には宮城県議会議員選挙があります。戦争法案は憲法違反であるという意見が周知されてきていること、憲法を無視するような言動をする議員が続々出てきて市民の怒りや危機意識も広がっていること、私たち自身に対するリスク(テロの危険等)も認識されてきていることから、地方の声を県議選で示せれば良いと思います。


岐阜支部・弁護士会での戦争法制阻止のとりくみについて
「戦争だちかんさ!飛騨地区連絡会」

岐阜支部  漆 原 由 香

 私は平成二六年、夫の川津聡団員とともに、故郷である飛騨・高山市(岐阜地家裁高山支部管内)に登録替えし、飛騨地方で初めての自由法曹団の団員事務所を設立しました。
 飛騨地方は、岐阜の北半分の面積を有するものの、人口はあわせて二〇万人足らずで、岐阜県全体の一〇分の一。つまり、山ばっかりの田舎です。そんな飛騨も、戦争法制反対ではがんばっていますよ!
 飛騨では、平成二七年五月二九日に、当事務所も含め、九条の会、仏教青年会など八団体が中心となって「戦争だちかんさ!飛騨地区連絡会」を立ち上げました。だちかんさは、飛騨弁護士で「ダメ」の意味です。
 中心メンバーは二〇名ほど。「SEALs」のように若いエネルギー中心というわけにはいかないけれど、これまで何十年も市民運動に関わってきた年金者のオールドパワーが中心となって、泥臭く活動を広げています。
(1)六月一二日には、緊急集会と題して、川津団員が戦争法制の内容を講演したところ、会場に入りきらない一〇〇名以上の市民が集まりました。戦争法案というテーマに興味を持って、初めて足を運んでくれた方が何人もいました。
(2)六月二一日には、戦争法制反対の市内パレードを実施。一五〇名の参加を得ました。
(3)七月一一日は、昼間に岐阜県弁護士会が主催して、北海道・室蘭工大大学院清末愛砂准教授による学習会を開催したのですが、その清末准教授を高山にお連れして、夜は「だちかんさ!」主催の緊急集会第二弾を実施しました。
 清末准教授は、イラク戦争で自衛隊が室蘭港から出港していった事実や、政府が室蘭港を軍港化しようとしている状況を示して、戦争法案が成立すれば室蘭港が攻撃の対象となる可能性を指摘。被害者にも加害者にもなりたくないと訴えられました。
 また、戦禍のパレスティナで生活した実体験や、パキスタンに逃れてきたアフガン難民を支援しているご経験を踏まえて、戦争は何もない野原でやるのではない、ついさっきまで牛飼いが牛を追っていた道に、一〇分後に戦車がやってくるのだ、という現実を示されました。
 事前に市内のマスコミに知らせて、集会を市民に告知してほしいと依頼したのですが、「戦争法案反対」という内容だとわかると、どの新聞も掲載を拒否。そんな困難を乗り越え、七〇名の参加を得て、大成功に終わりました。
(4)JR高山駅前の街頭行動もすでに七回行っています。
 弁護士が中心となって、「安保関連法制って、なに?」というQ&Aリーフを作成し、街頭で配布しました。特に、選挙権年齢引き下げの影響からか、高校生がチラシを受け取ってくれたり、署名に応じてくれたりしました。一〇〇部用意したリーフがあっという間になくなりました。
 六月に街頭行動を始めたころに比べ、最近は、チラシを受け取ってくれる市民も増え、市民の反応が温かくなっている気がします。
幼い子どもの手を引いて若いお母さんが参加してくれたことも一度や二度ではありません。
(5)休日には、街宣カーが飛騨地区内をくまなく走り、戦争法制反対を訴えかけます。
(6)署名活動や地元選出議員へのハガキ要請行動、フェースブックでの情報発信もしています。
(7)今後も、街頭行動や、パレードの日程が決まっていますし、八月三〇日の国会包囲一〇万人行動には、飛騨からもバスで参加する予定です。
――地元に法学部を擁する大学がなかったり、関わる弁護士も私たちの事務所だけだったりと、理屈の面でのリーダシップが不在の中、市民が中心となって草の根運動を広げています。
 保守層の厚い飛騨地方ですが、戦争法制反対の声は着実に増えています。あと一ヶ月、「地方でも声をあげ続ける」ことの意義を体現していきたいと思います。


戦争法案反対!!ほぼ毎日街頭宣伝

京都支部  尾 崎 彰 俊

ほぼ毎日街頭宣伝
 京都支部では、強行採決前の七月一〇日から、大きな集会・デモがある日以外はほぼ毎日街頭宣伝を行っています。
 七月上旬から下旬までは、二グループにわかれて行いました。一つのグループは、NHK前で三〇分ほど行いそのあと自民党本部前で行いました。もう一つのグループは公明党本部前で行っていました。七月一五日、特別委員会で強行採決があった日には、共同センターにも呼びかけを行い夕方五〇人で街頭宣伝を行いました。
 八月に入ってからは、支部全体に街頭宣伝登録を呼びかけ、月曜日から金曜日まで、自民党本部前で三〇分街頭宣伝をした後NHK前に移動して三〇分程度街頭宣伝を行っています。
街宣の感想
 街頭宣伝を行ってみて、僕の街頭宣伝人生の中で一番受け取りと反応が良いと感じています。初めてNHK前で街頭宣伝をした七月一〇日には、市民の方が「なにやっているんですか」と話しかけてこられたので、「戦争法案反対の街頭宣伝をしています。旗をもちませんか」とこたえると、無言のまま「憲法違反」の旗を持ってくれました。そのあと、自民党本部前まで一緒に来ていただき、その日の街頭宣伝には最後まで参加していただきました。他にも学習会で呼びかけた方やFacebookやTwitterを見て街頭宣伝に参加してくれた方もいました。
 ビラの受け取り状況もとても良いです。自転車に乗っている人が、スピードを緩めるもしくは、自転車をとめて、ビラを受け取ってくれたり、二部欲しいという方がいたり、すれ違った後、戻ってきてビラを受け取ってくれる方もいたりしました。国民の関心の高さをとても実感しています。
 自民党本部前で行っていると、二階から自民党本部の職員が毎日のぞいてきたり、一階の受付から指をさしてくれたりととても注目してくれています。
 街頭宣伝を始めた当初は、とにかく外に出て知らせなければという思いで始めましたが、改めて街頭宣伝は重要だと感じています。
 これだけ多くの国民専門家が憲法違反だと言っている法案を強行採決し、成立を狙うなど絶対に許せません。戦争法案を止めるためには、全国各地で大きな運動をおこすことが大切だと思います。国会会期末まであと一か月全力で戦争法案を廃案にするために全力で頑張ります。


戦争法案に対する福岡での取り組み

福岡支部  田 篭 亮 博

 各地から取り組みの報告がなされていますので、福岡からも戦争法案に対する取り組みについて報告します。
二 支部としての活動
 支部としては、毎週木曜日お昼に福岡市の中心地で街宣を行っています。街宣活動には、団だけでなく救援会や新婦人の方も参加してくれています。北九州では二週間に、一度、金曜日の朝に駅前で街宣を行っています(弁護士と事務局が参加)。
 いずれの街宣でも団のリーフレット(「平和な戦後が終わる」「安倍首相!違憲です!こんな説明で強行採決ですか?」)を配布していますが、市民の間でも関心が高まってきているのか受け取りは良いです。また、団宛に戦争法案の勉強会をしたいとの依頼も多く、講師を派遣して勉強会を開催しています。
 支部独自の活動としては、以上のとおり、街宣・講師活動が中心ですが、次のとおり弁護士会が多くの集会を企画し、その中心として団員が担っています。
三 弁護士会の活動
 戦争法案に対して福岡県弁護士会は次々と大集会を開催し成功させています。
 六月一三日には、弁護士会主催で一七〇〇人規模の集会を行いました。講師として伊藤真弁護士をお呼びしました。会場がほぼ満席となる大集会となりました。
 七月二二日には、福岡市の公園にて「憲法違反の安保法制法案の廃案を求める市民集会」(リレートーク)を開催し、その後、パレードを行いました。同集会には小雨の降る中七〇〇人もの参加がありました。
 八月二日には「九条あっての国際貢献〜アフガニスタンでの医療協力三一年〜」としてアフガニスタンで国際貢献されているペシャワール会現地代表中村哲医師を講師としてお招きした市民集会(北九州で開催)は、会場を埋め尽くす八〇〇名もの人が参加しました。
 現在は、九月六日に福岡と北九州の各地で集会を企画しており、福岡は五〇〇〇以上、北九州は数千人規模の集会を目指しています。
四 その他
 各地でも同じだと思いますが、この戦争法案に対して大学生などの若者が自発的に立ち上がり集会を企画し大きな力になっていると感じます。また、若者企画のパレードでは、太鼓を使ったり、ノリの良いコールだったり楽しくパレードに参加できます。
 また、話題のyoutube「あかりちゃん 髭の隊長に教えてあげてみた」が高校生の中で話題になっているとも聞きました。今の高校生は当事者として関心が高いのだと思います。
 平和な日本を、たった一人の首相によって勝手に変えられたのではたまりません。この戦争法案はなんとしても廃案にしなければなりません。今後も取り組みを続けていきます。


*盗聴法拡大阻止・治安警察*

鬼気迫る衆院本会議刑訴法案採決

東京支部  小 池 振 一 郎

 八月七日衆議院本会議で、刑訴法等一部改定案の与党と民主党、維新の党などとの共同修正案が採決された。マスコミは、「取調べの可視化義務付け」法案可決などと報じた。
「可視化義務付け」法案か
 法案には、「記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができない」ときは可視化しなくていいといった「例外規定」がいくつもある。自白しそうになければ録音録画しなくていい、可視化しても自白するなら録音録画すると、取調官の裁量で仕分けするだけだから、原則義務化とは到底いえない。自白する場面だけを可視化する「いいとこと撮り」であり、危険な一部可視化の合法化、固定化である。「一歩前進」ともいえない。
日弁連の動き
 ところが、日弁連執行部は、相変わらず、「取調べの可視化の義務付け」と称している(同日付日弁連速報等々)。
 盗聴法拡大については、組織性が担保されているとか、補充性のしばりがあるなどと、法務省と同じ宣伝をしている。組織犯罪に限らず、一般犯罪が対象となり、複数犯ならすべて適用の恐れがあるのに、その危険性を無視ないし軽視している。
 司法取引も、えん罪を増やさないようにどうチェックしていくかという問題点の掘り下げもなく、(法律の規制ではなく)運用で頑張ろうと言うだけだ。
 問題点を隠して反対運動が盛り上がらないようにしていると疑われても仕方がない(この数年間の数々の日弁連速報など)。運動を背景にして当局と折衝するのではなく、運動を抑え付けて折衝しても力にならないのだが。
 可視化を制限する中途半端な可視化法案と引換えに、盗聴法の量的質的圧倒的拡大、えん罪を誘発する恐れの強い司法取引と抱き合わせで、法案に一括賛成していいのか。とにかく可視化を法律化したい、と前のめりになっているとしか見えない。実は、日弁連の刑事関連委員会内でも、法案に積極的に賛成する委員会はほとんどないと思われるのだが。
 行きがかり上、執行部として法案賛成の立場をとったとしても、会内の意見が大きく分れている(実際は、ほとんど反対意見だろう)以上、せめて積極的には法案推進に向けて動かないことを期待したが、そうならなかった。法案の早期成立を望む会長声明を矢継ぎ早に出し、国会要請まで執拗に行っているようだ。
えん罪被害者たちの動き
 えん罪被害者やその支援者たち(布川事件、東電OL事件、足利事件、袴田事件、志布志事件、氷見事件、福井事件、狭山事件、痴漢えん罪事件等々)は、法案はえん罪を増やすと、こぞって猛反対している。法案が国会に提出された今年三月から毎月、院内外で市民集会を開き、思い思いに法案反対の意見表明をしている。美濃加茂市長やその弁護人である郷原弁護士もこの集会で報告した。ホリエモンは、日程の都合で参加できていないが、野党推薦の参考人になり、法案を鋭く批判した。集会には、毎回、各党の国会議員が参加し(自民党議員の参加もあった)、国会報告している。
 集会の成功を受けて、えん罪被害者たちは、日弁連執行部に対して要請と面談申し入れをしたが、面談に応じないどころか、日弁連の立場は従来通りという一片の書面で回答する冷たい対応だったという。
衆議院の審議
 日弁連も賛成しており「対決法案」ではない、として簡単に通過することを恐れていたが、衆議院法務委員会の野党委員(民主党、維新の党、共産党)は共同勉強会を積み重ね、結束して頑張った。委員会では、本質を突いた鋭い質問をし、中身の濃い審議がなされた。与党委員も真摯に対応していたように見えた。野党委員が徹底審議を要求し、可視化、通信傍受、司法取引、その他(証拠開示・保釈など)の四テーマに分けて、それぞれ、一般討論、参考人質問、総括討論の三期日をとる審議方式が実現したが、この方式を与党が受容れたのだ(そのため自民党筆頭理事が途中で更迭された)。
 七月八日、私は、証拠開示・保釈テーマの参考人になった。人質司法や可視化について、韓国の例や、国連拷問禁止委員会ドマ委員の「日本の刑事司法は中世」発言も紹介し、刑訴法は国の根幹にかかわる問題であるから強行採決しないように、と訴えた。
 この頃、民主党、維新の党は、両党修正案を公表していたが、かなり現実的かつ原則的で、実質廃案を求めるにも等しい素晴らしい内容であった(可視化の例外は、「災害によりやむを得ないとき」と「被疑者が弁護人の同意を得て拒否したとき」に限定。司法取引は削除など)。
 ところが、なぜ、最終局面で、民主党、維新の党が微々たる修正に応じ、与党との共同修正案を提出したのか。法務委員のレベルを超えた国対あるいはそれ以上の野党幹部の指令があったともいわれる。そこに日弁連執行部が強力に働きかけたともいわれている。
 本会議の最初に登壇した畑野委員(共産党)の反対討論は、怒りにふるえていた。次に登壇した山尾委員(民主党)の賛成討論は、彼女が与野党共同修正案作成に関わったといわれるだけに、その微々たる修正の理由説明に終始していたが、本音がどこにあったかわからない。最後の井出委員(維新の党)の賛成討論は、事実上ほとんど反対討論だった。三人の野党委員の討論には鬼気迫るものがあった。
参議院でのたたかいが始まる
 舞台は参議院に移る。「参議院は衆議院のコピーではない」と、先日、参議院平和安全法制特別委員会委員長が強調していた。衆議院の法案審議は充実していたが、まだまだ論点は尽くされていない。何しろ、本来、盗聴法案、司法取引法案、可視化法案など別の法案として別々に審議されるべきが、形式上一つにされているのだから。
 日弁連執行部は、法案の運用頼み、裁判所頼みだろうか。法案成立を前提として、“よりよい弁護活動を”という方向に舵を切っている。今や、日弁連が法案成立に向けて突っ走る理由は、実は、被疑者国選の拡大であり、年間二六億円が日弁連に入るからだと、痛くもない腹を探られている。
 全国の単位会の過半数が反対すれば、執行部も足が止まり、各野党も元気を取り戻し、遠慮していたマスコミも報道するだろう。このところマスコミは、司法取引への関心を急速に強め、「司法取引法案」との報道も目につく。
 当初、政府与党が修正に応じることはあり得ないと思われたが、微々たるものにしろ修正に応じたのは、反対運動とそれを受けた野党の頑張りがあったからだ。急速に反対運動を展開し、参議院法務委員会の野党委員が頑張り、マスコミも取り上げるようになれば、法案の行方はわからなくなる。参議院でも、慎重審議を尽くして、廃案に追い込みたい。


衆議院法務委員会での盗聴法拡大についての参考人陳述

東京支部  長 澤   彰

 七月二九日、衆議院法務委員会において、「盗聴法」について、参考人として陳述したので、その内容を報告します。
 私は、一九八八年弁護士登録で、今年で二八年目になります。弁護士九年目の一九九六年に、法務省参考試案が出され、盗聴法制定の動きが始まりました。一九九九年八月、法案が制定されるまで、弁護士団体の自由法曹団で、盗聴法阻止対策本部の事務局長をしていました。
 本日は、盗聴法制定時に問題となった点を振り返り、改訂案の問題点について陳述します。
 まず、制定時、大きな問題となったのは、憲法違反という点でした。憲法は、戦前の人権侵害の暗黒社会・監視社会の反省と教訓に立って、人権保障規定を整備し、表現の自由を保障し、特に通信の秘密を明文で保障しました。プライバシーの権利も憲法一三条で保障しました。また、戦前の特高警察のような、警察権力による人権侵害を許さないという視点に立って、適正手続きの保障を憲法三一条以下に詳細に定め、憲法三五条では令状主義を規定しました。
 「通信の秘密」や「プライバシーの権利」を安易に「捜査の必要性・有用性」を理由に盗聴を法制化することは、憲法違反の疑いがあります。憲法上の権利が制限されるのは、他人の人権と衝突する場合、人権相互の調整の問題で、人権に内在する原理としてとらえることになります。抽象的な「捜査の必要性」による「通信の秘密」を制限するならば、戦前の暗黒社会と同じことになります。自民党改憲草案が、「公益」と「公の秩序」を理由に人権を制限することを狙っていますが、それと同じことになりかねないので、現憲法下では、違憲の疑いがあると考えます。
 また、令状主義をどのように適用するかも、大きな論点でした。令状主義の精神は、裁判官が、捜索・差押えの物を特定するというものですが、将来発生する「会話」をどのように特定するのか、重要な論点でした。会話は将来発生するものですから、「本件犯行に関係する通信ないし会話」という抽象的な内容でしか、令状に記載できません。到底、特定したとは言えません。
 さらに、盗聴令状は、被疑者に提示されませんし、被疑者の立会も出来ません。令状主義の要求する、「特定」「提示」「立会」の要素を没却してしまいます。そこで、通信事業者の常時立ち会いということの意味が重要になってきます。盗聴の被疑者ではありませんが、通信事業者の立会は、盗聴の濫用を防止するための、唯一の防波堤でした。但し、現行法での常時立ち会いは、切断権が認められていない弱点を持つものです。
 そして、当時の法案は、一般犯罪をも対象とするもので、人権侵害性の高いものでした。
 当時は、今日来られている緒方靖夫さん宅への神奈川県警の盗聴事件が発覚しており、一九九七年六月の国家賠償請求事件の東京高裁判決が出されていました。判決では、「情報収集活動を末端の警察官が職務と無関係に行うことは通常あり得ない。本件盗聴行為は、公安一課所属の警察官が、いずれも、県の職務として行ったと推認できる」と警察による犯行であることを明確に断じています。しかし、その後に至っても、警察は「警察として盗聴といわれるようなことを過去においても現在においても行っておらず、今後も行うことはない」と反省も謝罪もしていません。こんな警察に盗聴の権限は与えられないという運動を提起し、多くの国民の共感を得ました。警察による違法行為、不祥事も多く、それを隠蔽する体質に対する国民の不信感が多くありました。
 一九九九年六月、野党の三党・三会派の代表が結集した日比谷野外音楽堂には、八〇〇〇人が詰めかけ会場に入りきれない状態でした。民主党・菅直人、共産党・不破哲三、社民党・土井たか子、さきがけ・武村正義、二院クラブ・佐藤道夫、国民会議・中村敦夫というメンバーでした。
 結局、与党は、このままでは、盗聴立法の成立が危ぶまれるということで、対象犯罪を組織犯罪の四類型にしぼること(組織的殺人・集団密航・銃器・薬物)、立ち会いに例外を認めない常時立ち会いとすること、国会に報告制度を設けること、これらの修正案を提示し、最終的に強行採決をしました。当時、牛歩戦術ということで、野党が身体を張ってたたかったという歴史があります。
 今回、国会に提出された改正案の問題点について、述べます。問題点は、二つあります。
 第一は、対象犯罪が、拡大され、窃盗、詐欺、逮捕監禁など一般犯罪が広く認められていることです。
 これは、法律の第一条に定める「組織犯罪の摘発」という立法目的と明らかに矛盾します。最高裁の判決では、「重大な犯罪にかかわる被疑事実」に限定しており、その判断に違反します。
 改正法の定める組織要件である「数人の共謀」や「役割の分担に従って行動する人の結合体」は濫用防止になりません。上川法務大臣は、二人で、役割分担が認められれば、適用が可能だと答弁しています。
 第二は、「暗号技術を活用する新たな傍受方法」を導入する問題点です。
 この傍受方法では、通信事業者による常時立ち合いを排除しています。通信事業者による常時立ち合いは、第三者による監視の目が入ることによって、捜査機関による傍受記録の改ざんや通信傍受の濫用的実施を客観的に防止し、捜査機関に対して、かかる行為の自制を促す機能を果たしてきました。しかし、暗号技術を用いる方法では、捜査機関に対する自制効果が及びません。
 この方法は、全ての会話を何日にもわたり録音するものです。犯罪に無関係な会話が膨大に録音され、犯罪と無関係な人の会話が盗聴されます。個人のプライバシーが丸ごと裸にされます。統計資料によると、盗聴の件数は、当初は年間一〇数件、最近は数十件であり、犯罪と無関係な通話の割合は八五%といわれています。しかし、一般犯罪まで盗聴が実施されるようになれば、おびただしい件数の盗聴が実施され、高い比率の無関係通話に対する盗聴が実施され、プライバシー侵害の危険性が格段と高まることになります。
 特に、盗聴の対象がマスコミ関係者に向けられた場合の問題は重大です。犯罪報道に携わる社会部記者などが、犯罪グループ関係者に取材すれば電話でのやり取りや電子メールでの通信が軒並み盗聴対象とされ、正当な取材活動に致命的な影響が及ぶこととなります。
 現在の規則では、マスコミ関係者との通話であると分かった時点で切断することになっていますが、新しい傍受方法では、すべて録音されます。マスコミ関係者との会話が、立会人がいない状態で、警察が全て聞いてしまうことに対するチェックが事実上不可能となります。
 秘匿性の高い通話は、マスコミ関係者ばかりではありません。弁護士との通話も全て録音されます。弁護士の秘密交通権が全く保障できない実態となり、弁護活動がまるごと捜査機関に盗聴されてしまいます。弁護士としては、許すわけにはいきません。
 警察による盗聴が、私達の市民生活に忍び込んでくることはないのでしょうか。
 例えば、労働組合の要求闘争で、「次の団体交渉では、何が何でも、要求を勝ち取る、勝ち取るまで交渉はやめない」と執行部で意思統一し、役割分担をして、一定時間、会社の役員を部屋に閉じ込めたとすれば、逮捕監禁の要件を満たし、盗聴ができることになります。労働組合だけでなく、原発反対の交渉や環境問題改善のための自治体との交渉などに、濫用されることはないと言い切れるでしょうか。
 また、少年犯罪で一番多いのは、オートバイ窃盗です。少年グループが、役割分担をしてオートバイ窃盗を実行したとすれば、窃盗罪を盗聴の対象としていますので、盗聴ができることになります。被疑者少年の携帯が盗聴対象とされると、犯罪グループだけにとどまらない広範な人物との会話が盗聴の対象となります。家族や友人知人など広範な会話が盗聴されます。少年たちのラインやSNSでの通信は多数の人とのネットワークを形成しており、人権侵害の被害が広範に及ぶことが予想されます。
 最後に、弁護士会の状況について述べます。
 日弁連は、一九九九年の盗聴法制定時には、憲法違反の疑いを理由に、反対の立場を貫きました。法制審で反対の立場を貫き、法案提出後は、理事会内対策本部を作り、会長名で反対運動を全国の弁護士会に呼びかけました。日弁連は、マスコミや市民と一緒に、反対運動を展開し、与党に修正せざるを得ないところまで追い詰めた実績がありました。
 しかし、今回の法改正については、日弁連執行部は、一部の可視化を認めた法制審議会の答申案に賛成の立場を取ったため、盗聴法についても問題はあるが、「改正法案が速やかに成立することを強く希望する。」として、この法案に反対しないことを表明しています。この日弁連執行部の対応は、警察が盗聴法、検察が司法取引、日弁連執行部が一部可視化をそれぞれみずからの要求を実現すること、警察・検察・日弁連執行部の3者による談合であると言わざるを得ません。
 しかし、一八の弁護士会会長が反対の共同声明を発表し、その後、四単位弁護士会で反対の声明が出されています。全体で、四割を超える単位弁護士会が、反対を表明しています。五月には、東京の弁護士を中心に、盗聴法・司法取引に反対する弁護士と市民のデモを行い、三〇〇人の参加で成功させています。
 日弁連執行部は、法務委員を訪ね、早期成立を働きかけていると言われています。これらの動きは、反対運動を展開している冤罪被害者や冤罪撲滅を求める市民に対する重大な背信行為と言わざるを得ません。
 日弁連執行部は、集団的自衛権行使を認める戦争法案に反対し、全国的な運動を展開しています。「憲法違反の疑いがある」という点では、盗聴法も全く同じであり、今からでも、反対の立場に立って、反対運動を展開することを強く求めたいと思います。先に本委員会に出席した日弁連副会長の内山弁護士も、「日弁連は、現時点でも、通信傍受、盗聴についての基本的な考え方は変えていません。通信の秘密を侵害し、個人のプライバシーを侵害する、そういう危険性を持った捜査手法だという見方については一貫しています」と陳述しています。そうであるならば、日弁連が反対運動に参加することを強く呼びかけます。
 警察が盗聴した会話のうち、一番聞いてみたい会話は、ここにおられる政治家の皆さんの会話ではないでしょうか。その会話を権力の中枢が掌握して、それをどのように活用するかは、皆さんが十分ご承知のことと思います。警察による権力の濫用を許さないために、盗聴法改定案は、ただちに廃案とすべきであることを述べて、陳述を終わります。


*教科書問題*

四年前の雪辱へ向けて「教科書採択」熱い東京大田 夏の戦い

東京支部  佐 藤 誠 一

 今年の夏は暑く、熱くなる、それは四年前から決まっていました。四年前の夏、教科書採択の年。私たちはよもやこんなことになるなんて思いもよりませんでした。教育委員長は団員弁護士とも交流のある弁護士でしたから、なおのこと安心してました。油断してました。しかし、中学教科書歴史・公民の採否では、その教育委員長さん一人を除き、あと四名全員が育鵬社に手を挙げたのでした。結果を聞いた私たちはチョー愕然…。
 後日退任された前教育委員長さんにお話を聞く機会がありました。いわく、育鵬社を推薦する皆さんは教科書展示会で丁寧な意見を提出されました。なぜこの教科書がいいのか、具体的に意見を出されていました。育鵬社に反対する人たちは、「育鵬社に反対」、これだけでは教育委員を説得はできません…割り切れない気持ちでいっぱいになりつつ、首をうなだれて帰ってきました。
 しかしそれではいけない、四年後の夏は熱い戦いをするのだ!絶対に雪辱するぞ!と誓いました。しかしだからといって、そのときから四年後を目指し何かをはじめるなんてことはできない。しかしよるとさわると、悔しい、他の地域の皆さんに恥ずかしい、ということは言い合ってました。
 そうして迎えたこの夏。教科書どころではなかった。二年前から特定秘密保護法、そして去年から集団的自衛権、今年の戦争法案、私たちも地域の皆さんも、どうしても、「憲法優先」ってなりました。憲法の学習会、宣伝行動は大変な数をこなしました。教科書単発の学習会もありはしましたが、運動の指標になるような数はあがりません。そういう中で教科書採択の時期が迫ってきました。担当者だけは決めなくては。というので、弁護士、事務局それぞれから選任しました。担当者は、地域の「大田子どもの教育連絡会」、団本部の教科書委員会に出席しつつ、情勢を学び、行動しました。
 戦争法案の取組みで日々大忙しではありましたが、六月五日から教科書展示が始まる以上、それに向けて決起集会やらねば!ってことで展示開始ちょい過ぎの六月七日の日曜日、いつも各種の集会会場として利用する公営施設でした。
 当日、びっくりするほどわんさかわんさか人が集まりました。開会時刻で超満員。いつも六〇名参加でまあまあ集まったかな、という感じを受ける会場ですが、なんと二二〇名!熱気に包まれました。こどもが心配、いうより皆さん、孫が心配って方々でしたが…。
 元教員の方二名を講師に研究しました。テーマは育鵬社と他社教科書の違いは何か、そして教科書展示会でどのような意見を出すか。四年前の展示会区民意見は、一三四件集まりうち六割が育鵬社・自由社を薦める意見であったこと、これら意見は記述内容にふれて書かれていることが報告されました。情報公開で実際の意見を入手してサンプルとして配布して検討しました。確かに、アピールする意見とそうでない意見とがあるように思えました。よーし、具体的に意見を書くぞ、皆さんそう決意されたと思います(しかし言うはやすく、行うはかたかった…)。
 展示会はおおむね二週間程度、ほぼ六月末日頃まで。「区民意見」集約に取り組み、我が陣営意見として六月末の締め切りまでに、目標の三〇〇をようやく達成しました。当事務所でも各弁護士が「区民意見」を提出する取り組みをしました。
 教育委員会宛に団作成の意見書も届けましたが、これではちょっと長すぎて読んでもらえるか不安がありました。そこで六頁ほどの論文チックな意見書を大住がとりまとめ、事務所所弁護士のみならず、「弁護士九条の会・おおた」に参加されている団員でない弁護士さんも含め、九名連名で提出しました。結構いい意見書になったと自画自賛してます。
 区民意見に取り組むに当たっても、ママさんを意識した区内宣伝行動を駅頭や公園などで一三回行い、展示会場に足を運んでほしい、区民意見を出してほしい、太平洋戦争を真摯に振り返えって二度と戦争を引き起こさない社会を作ろうと記述する教科書を子どもたちに提供しよう、と訴えました。
 教育委員会開催日、委員会のある区役所フロアーは一三〇人もの人でごった返してました。区側はあわてて傍聴席を九〇まで増設。七月の委員会では区民意見等が報告されました。「区民意見はその数一三八二件(四年前のなんと一〇倍です!)、歴史・公民とも育鵬社・自由社に否定的な意見が多かった、学校意見は二八中学全校から提出され、歴史は東京書籍を推す意見、育鵬社に否定的意見が多かった」…やった!区民と学校の願いが育鵬社不採択にあることは明白になりました。
 そして待たれた採択の日(八月五日)。多数の教育委員の皆さんの意見が私たちの願いと一致したのです。歴史―育鵬社を推す意見全六名中一名、公民―育鵬社を推す意見二名、でいずれも東京書籍が採択されたのです(翌六日に確定)。この瞬間が待たれてました。
 戦争法案への取組みが浸透するにつれて、教科書問題の理解も深まっていったと思います。教科書採択日を迎える頃には、戦争法案と一体の取組みとなりました。私は戦争法案の学習会、集会挨拶の中で、戦争法案反対その締めくくりに教科書問題を訴えました。「戦争する国づくり」は「戦争する人づくり」を要求する、「人づくり」の基本は学校教育・教科書である…これが私たちの教科書問題に取組むスタンスでした。
 この結果に、運動に取組めばそれだけのことはある、と実感しました。いよいよ本丸の戦争法案です。延長国会会期末まであと一ヶ月。絶対廃案!廃案に向けて皆さんがんばりましょう。
(追記)教科書への取組みについての報告集会を、一〇月二五日(日)午後一時半から、蒲田駅東口の消費者生活センター大集会室で行います。興味おありの方、是非お越しください。