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  二〇一六年 札幌・定山渓 五月集会特集 〜 その二 〜
山崎 秀俊

北海道・定山渓温泉で語らいましょう!
〜事務局交流会へのご参加を〜

齋藤  耕

*北海道特集*
札幌弁護士会における戦争法廃止の取り組みについて

市川 守弘 アイヌ遺骨返還訴訟・・歴史的和解へ
大賀 浩一

「おとり捜査の違法を認めて再審開始決定!」

橋本 祐樹

紙面の無駄遣い〜単なる曲紹介〜

今泉 義竜

築地公務執行妨害でっち上げ国賠事件、勝訴!!

高橋 陽一

稼働中の原発を止めた史上初の仮処分決定
―いのちと暮らしと琵琶湖を守る第二次仮処分決定の報告―

臼井 俊紀

三菱下関造船じん肺・アスベスト訴訟事件顛末記(てんまつき)
-不当判決をはねかえして-(二)

宋  惠燕

【緊急事態条項虎の巻シリーズ(2)】〜弊害の巻〜
「じゃまでしょ、それ。」

羽柴  修 「戦争させない、九条壊すな! 五・三兵庫憲法集会」について
山口 真美 「自治体職員の働く権利Q&A」を出版しました。ぜひ、ご活用ください!



二〇一六年 札幌・定山渓 五月集会特集 〜 その二 〜

 今号では、プレ企画と全体会・各分科会の詳細・特別企画のご案内をいたします。
 四月一日号団通信同封の申込用紙に必要事項をご記入のうえ、旅システムまでFAXにてお申し込み下さい。
 参加申込締切は、四月二八日(金)となっております。

プレ企画
1 支部代表者会議 (午後二時〜六時)

 支部代表者会議では、支部活動の現状、取り組み、活性化策、若手団員の参加確保、入団促進・退団防止策等について、討議する予定です。事前にアンケートをお願いしましたが、各支部で様々な努力がなされています。全国的に経験を交流し、今後の自由法曹団全体の活性化につなげる議論をしたいと考えています。
 後半部分では、弁護士をめぐる事業環境が激変する中で、団員事務所の財政基盤の確立、業務拡大、若手への継承、地域での役割発揮等の課題について、忌憚のない意見交換をしていきたいと思います。
 各支部(県)の役員の方はもちろん、それ以外の団員、とりわけ若手団員の積極的な参加をお待ちしております。

2 新人弁護士学習会 (午後二時〜六時)

(1)北海道支部企画

戦争法制下の自衛隊と弁護士の役割
【講 演】 北海道支部 佐藤博文団員(四〇期)
【ゲスト】 元陸上自衛隊戦車部隊隊員
(二〇一五年定年退官)

 昨年九月に成立させられた戦争法制は、今年三月二九日施行されました。「戦争のできる国」となった今、自衛隊員はいつでもどこへでも派兵され、殺し・殺される状況に置かれました。それに向けた訓練や教育も熾烈とり、事故・事件が多発しています。
 五月集会では、数多くの自衛隊関連訴訟に関わってこられた佐藤博文団員を講師として、「自衛隊イラク派兵差止訴訟」「空自女性自衛官セクハラ訴訟」や「自衛隊訓練死・国賠訴訟(命の雫裁判)」などの裁判闘争や、自衛隊の本質、自衛隊員の本音、相談のノウハウなどについて講演してもらい、団員弁護士が果たすべき役割を考えます。
 なお、元自衛官に参加してもらい、講師とのコラボや参加者との質疑で、自衛隊の実態・自衛官の人権状況をリアルに知ってもらう予定です。
 佐藤団員は、一九八八年に弁護士登録(札幌弁護士会)し、北海道合同法律事務所に入所し、入団。これまで関わってきた事件は、「週休二日制裁判(労働条件の不利益変更)」、「豊浜トンネル崩落・国賠訴訟」など多数あります。
 是非、奮ってご参加ください。

(2)本部企画

「関西建設アスベスト京都訴訟の成果と今後」
【講演】京都支部 谷文彰団員(六二期)

 今年一月二九日、京都地方裁判所で出された関西建設アスベスト京都訴訟判決は、国の責任だけでなく、建材メーカーの不法行為責任をも認める画期的なものでした。それまでの建設アスベスト訴訟では使用した建材を特定することができないという理由で企業の責任は否定されていましたが、この京都訴訟では、加害行為を理論的に明らかにし、建材の特定と企業の絞り込み作業を最大限行ったことが、「損害の公平な分担」の観点を踏まえた適正な判断につながったといえます。
 五月集会では、このアスベスト訴訟の内容と今後を講演してもらい、また京都弁護団における対企業の責任者である谷団員がどうしてこの訴訟に関わることになったのか、弁護団事件の苦労や醍醐味などを余すところなく語っていただきたいと思います。
 谷団員は、二〇〇九年に弁護士登録(京都弁護士会)し、京都第一法律事務所に入所・入団されました。これまで関わってきた事件に、ウェザーニューズ過労自殺事件、京都朝鮮学校ヘイトスピーチ事件、成年被後見人選挙権確認事件、元社会保険庁職員分限免職事件などがあります。
 こちらも、奮ってご参加ください。

3 法律事務所事務局員交流会
(午後二時〜六時)

[ 全体会 ](午後二時〜四時)
事務局交流会世話人
深 澤  亮(東京東部法律事務所)

 今年の五月集会事務局交流会は、五月二八日土曜日の午後に行います。
 事務局交流会は、全国の団事務所の事務局の方々と一同にお会いできる年一回の貴重な機会です。ぜひ多くの事務局の方にお集まり頂きたいと思います。各事務所、諸事情等で事務局の参加が難しくなっていると聞いておりますが、再度五月集会に参加する意義を議論していただき、事務局の参加の確保をお願いしたいと考えております。
 事務局交流会の全体会では、北海道支部の橋本祐樹先生(北海道合同法律事務所)に、「あくまで例え話〜冗談半分で聞いて下さい〜〔コント・歌つき〕(仮題)」及び事務局講演として、野津喜代美さん(郷路法律事務所)に「団事務所での経験と活動について(仮題)」としてご講演頂きます。どちらのご講演もなかなか聞けない貴重はお話しとなりますので、ぜひご参加をよろしくお願い致します。

[ 分科会 ](午後四時一五分〜六時)
●新人事務局交流会
事務局交流会世話人
戸 井 田 和 彦(三多摩法律事務所)

 自由法曹団員のいる法律事務所に新人事務局員として入所されたみなさん、どのように毎日を過ごされていらっしゃいますか。
 未経験の環境、初めて触れる仕事や活動、希望や期待に満ち溢れていますか。沸き立つ気持ちとは裏腹の戸惑いや不安を感じてはいませんか。
 一口に自由法曹団員のいる事務所といっても、事務所の成立ちの違いや弁護士の個性によって、その形態は千差万別です。それでも環境や条件は異なっていても、同じような経験をし、思いを共感できる仲間がきっといるはずです。
 この交流会では、打ち解けた雰囲気の中、全国の同世代の事務局の方同士、気軽に話をして頂いて、ここから始まる新しい「交流」のきっかけ作りを目ざします。

●事務局業務の経験交流
(効率化・ITの活用・事務職研修等)
事務局交流世話人
服 部 泰 子(武蔵小杉合同法律事務所)

 電話・来客対応、発送作業、弁護士のスケジュール管理から、案件管理、事件記録管理、そして事件処理の補助など、わたしたち事務員の業務は多岐に渡ります。
 この分科会では、効率化のため工夫していることや、IT(グループウェア、案件管理システム、判例検索システムなど)の活用、また、業務能力向上のために取り組んでいる各種研修(弁護士会研修・所内研修など)などについて経験交流していきたいと思います。
 各事務所で実践されている仕事の進め方や分担について情報共有することで、日常の業務で悩んでることや困っていることも、思いも寄らない解決方法が見つかるかもしれません。
 丁寧さ・確実さと同時に迅速さが求められる私たちの仕事。今回の分科会を通して、弁護士・事務員が相互により安心して、気持ちよく楽しく働けるように、またそれにより団事務所として益々運動にも取り組めるようになるような機会にしたいと思っております。
 沢山のご参加をお待ちしております。

●運動交流
事務局交流世話人
緑 川 順 子(旬報法律事務所)

 昨年九月の安保法制の強行採決、緊急事態条項を口実とした武装強化、あげくの果てには任期中の明文改憲に言及するなど、安倍政権の憲法への敵視がますます露骨なものとなってきています。それに加えて、大企業優先の経済政策、労働者派遣法の改悪、残業代ゼロ法案などなど、民意に背いた暴走がとどまるところを知りません。自由法曹団に結集する事務所の事務局のみなさまの中にも、安倍政権打倒に向けて日々活動に取り組まれている方も多いかと思います。
 本分科会では、今日の情勢のなか、全体会でのお話しなどもふまえたうえ、団事務所の事務局として、また、一人の国民=主権者として、どう行動していくのか、所属する事務所に限らず、自らが参加する地域の労組・団体での運動経験も交流するなかで、参加者全員でざっくばらんに話し合いたいと思います。
 また、時間の許す限り、各事務所で実践されている仕事の進め方や分担、日常業務と運動の両立についてなど、率直に交流したいと思います。豊富な経験のある人もない人も、交流のなかで明日からの業務や運動に向けての活力になるような分科会にできればと考えています。みなさまお気軽にご参加ください。

第一日目 五月二九日(日)
●全体会 (午後一時四五分〜三時四五分)
[ 記念講演 遠藤 乾 北海道大学教授 ]
リベラルの安全保障論
−安保/9条、抑止/和解、国家/人間−
事務局長 西 田  穣

 安倍政権は、この夏の参院選で、自公のほか「おおさか維新」などの改憲に賛成する勢力で三分の二以上の議席を確保し、任期中に改憲を行うことを公言しています。我々はこれを絶対に阻止すべく、より広く、憲法を活かし、平和と人権を守ることの意義を訴えていかなければなりません。
 ただ、この多くの人々に憲法・平和を訴えていくに際し、「国民の安全」の問題は避けて通れません。世界をみれば、IS問題や南シナ海での米中対立、北朝鮮核実験問題などが連日のようにニュースで取り上げられています。これらの世界情勢が国民に与える「不安感」を除去できなければ、私たちの訴えは説得的にはならないでしょう。
 遠藤教授は、国際政治学を専門とし、「シリーズ日本の安全保障」(岩波書店、全八巻)の編集代表を務められた教授です。遠藤教授は「安全保障イコール軍事ではない」とし、戦後の我が国は憲法九条のもと、相手方の不安を除去する「安心供与」という考え方で安全を確保してきたと述べます。他方で、私たちのような憲法や平和を擁護する側も「安全保障」=「軍事」という思考に絡めてしまい、「安全保障」論を深く議論することを忌避しがちであったと指摘します。
 私たちは、これから改憲、戦争をいとわない安倍政権と立ち向かうにあたり、憲法を守り、平和を訴えていくことが、相手の不安を取り除き、それが自分たちの安全確保につながることを訴えていく必要があります。そのために、私たちがとるべき「安全保障」論を、遠藤教授の講演を聞いて学んでいきたいと思います。

●分科会(午後四時〜六時)
(1)憲法分科会(一日目)
事務局次長 久 保 田 明 人

 安倍政権は、アメリカの世界に対する影響力が低下していく中で、中国やロシアが台頭するなど、変化しつつある日本をめぐる安全保障環境に対処する必要があるとして、昨年九月に、戦争法制(安全保障関連法)の成立を強行しました。安倍政権は、戦争法制の発動だけでなく、日米軍事同盟のいっそうの強化のため九条を含む明文改憲を虎視眈々と狙っており、任期中の改憲について「諦めず挑んでいきたい」とし、明文改憲への強い意欲を示しています。自民党の運動方針にも「憲法改正の国民投票は実施できる状況」と記載されており、参院選後には一気に明文改憲が政治課題として浮上する危険があります。九条改憲の目論見は何としても止めなければなりません。
 そこで、憲法分科会では、南シナ海での米中の覇権争いや北朝鮮問題・日米軍事同盟など日本をめぐる安全保障環境、明文改憲をめぐる攻防の現状、緊急事態条項など明文改憲をめぐる諸論点の状況などを確認し、戦争法制発動阻止・廃止の運動も踏まえつつ、参院選とその後の明文改憲策動に対して、いかに立ち向かうか、どのように運動を構築すべきか、憲法の平和主義を活かして安全保障問題をどう解決していくのかについて討論する予定です。
 また、沖縄の辺野古新基地建設の政府と沖縄の攻防が続けてられています。民意をないがしろにし、日米安保と軍事同盟の強化のため沖縄に負担を押し付ける政府に対しては、断固として反対の声を上げていかなければいけません。
 憲法分科会では、沖縄の辺野古新基地問題についても、全国の力を結集すべく、現状報告とこれからの運動について討論します。

(2)労働分科会(一日目)
事務局次長 種 田 和 敏

 全国の労働裁判闘争の報告と討論を行います。この間も、アンフィニ・資生堂事件、IBMロックアウト解雇事件、関西建設アスベスト判決、退職金減額に関する最高裁判決など注目の事件がいくつもありました。
 是非ご参加ください。

(3)刑事法制分科会(一日目)
事務局次長 湯 山  薫

刑事弾圧をめぐるたたかいについて
〜警察捜査の正体〜

 平成一六年二月に北海道警察の裏金システムを告発した元北海道警察警察官でジャーナリストの原田宏二さんを講師にお迎えして、警察の捜査の問題点、「グレーゾーン」捜査などについて講演をしていただきます。
 また、今国会で安倍政権が成立を目論む刑事訴訟法等の改悪(「司法取引」「通信傍受対象の拡大」等)に関し、その問題点を徹底検討し、今後どう立ち向かうべきか討議します。

(4)TPP分科会
事務局次長  岩 佐 賢 次

 TPPの承認を求める議案とその関連法案が衆議院の特別委員会で審議入りしました。
 自民党は「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」とTPP反対を公約にしながら、多くの国民を裏切り、TPP推進に転じました。また、TPPの付属文書、交渉過程の情報を一切明らかにしないまま、国会でTPP承認を求めるのは、国会軽視との誹りは免れません。それでどうしてまともな議論ができるのか甚だ疑問です。
 TPPは、食の安全を脅かし、外国企業、投資家の利益を図るためのISDS条項により、国家主権を脅かします。TPPが国民の健康や暮らしに与える悪影響は重大なものです。グローバリズムに突き進む安倍政権の正体も改めて浮き彫りにできればと思います。
●講演 久田徳二氏(北海道新聞編集委員)
「TPP協定案の問題点〜産業と暮らしへの影響〜」
●報告 ISDS条項の危険性について杉島幸生団員

 多数の皆様のご参加をお願いいたします。

(5)貧困・社会保障分科会
事務局次長 藤 岡 拓 郎

 貧困社会保障分科会では、子どもの貧困を中心テーマに取り上げます。
 近時、子どもの貧困についての報道をよくご覧になるのではないでしょうか。
 日本の子どもの貧困率は、二〇一二年は過去最悪の一六・三%となり、およそ六人に一人が貧困という結果となりました。一人親家庭の貧困率は五割を超えています。
 子どもの貧困は子ども自身によって引き起こされたものでもなく、その家族の内側に責任を押しつける問題でもなく、その政策を決め実践する人、それを放置する人、ひいては社会全体の問題と考えられます。貧困の世代間連鎖を断ち切るためにも、当事者だけでなく社会の構成員である私たち一人一人の行動が求められています。弁護士として、自由法曹団として何ができるでしょうか。
 問題は、ひとり親家庭の問題、親の就労(ワーキングプア)、教育(奨学金)、健康、医療、虐待など広範で複合的です。分科会では、専門家を講師に迎えて子どもの貧困に関する現状、問題の全体像を把握した上で、具体的な弁護士としての取り組み、課題などの問題提起を行い、最後に参加者の皆さんで意見を出し合い、取り組みの糸口を見つけたいと考えています。
 また、後半では銚子事件、生存権裁判、各地での貧困問題への取り組みについての報告も予定しています。ぜひご参加ください。

(6)女性差別撤廃条約分科会分科会
事務局次長 湯 山  薫

 昨年一二月一六日、最高裁で夫婦同氏制を合憲とする判決が出ました。
 そして、一二月二五日、第四次男女共同参画計画が閣議決定されました。
 本年一月二九日、日本政府は、女性差別撤廃委員会(CEDAW)に対して、課題リストに対する回答(報告書)を提出しました。その報告書の審議は二月一六日にジュネーブで行われ、 三月七日、CEDAWから総括所見が公表されました。
 日本政府の回答は、とりあえずやったことを羅列するだけです。成果があったかのように回答し、要請されたことを無視するのです。それに対するCEDAWの総括所見では、「主要な懸念事項と勧告」が、五〇項にも及びます。「懸念」だらけなのです。条約に応じて改正すべき法律は、民法親族法、戸籍法、刑法、入管法、優生保護法等々、多岐に及んでいます。
 五月集会において、女性差別撤廃条約とは何か、CEDAWは総括所見で日本政府に対して何を要求しているのか等について学習し、国に対しどのように求めていくべきなのか、議論を深め次の行動につなげていきたいと思います。

1 CEDAWの勧告の報告   中野和子団員、近藤里沙団員
2 選択制夫婦別姓最高裁判決の分析と日弁連の取組
三浦桂子団員
3 慰安婦問題(CEDAWの勧告を踏まえて) 大森典子団員
4 意見交換会

 女性だけの問題ではなく、社会の在り方の問題ですので、男性団員の積極的な参加を期待しています。

第二日目 五月三〇日
●分科会(午前九時〜一一時)

(1)憲法分科会(二日目)
*一日目をご参照下さい。

(2)労働分科会(二日目)
事務局次長 種 田 和 敏

 労働分科会の二日目は、裁判における闘争の経緯・成果や、過労死・過労自殺裁判、労契法二〇条裁判等の各地の裁判闘争について報告・討論する予定です。また、労働委員会でのたたかいについても意見交換します。
 これらの取り組みと経験を多くの団員が自由法曹団全体の力にするために、各事件についての報告を受け、討論したいと思います。

(3)刑事法制分科会(二日目)
事務局次長 湯 山  薫

倉敷民商事件のたたかいについて
岡山・倉敷民主商工会(民商)の小原淳事務局長と須増和悦事務局次長が税理士法違反で不当に起訴された倉敷民商事件は、最高裁でのたたかいになっています。上告趣意書の提出期限は六月一六日です。
本件訴追は民商の組織と活動に対する徴税権力の政治的意図に基づく弾圧であり、「差別的な立件」といわざるを得ません。弁護団の報告、上告趣意書の検討など、民主団体に対する弾圧とどう戦うか、討議します。

(4)ヘイトスピーチ分科会
事務局次長 岩 佐 賢 次

 法務省の実態調査によると、二〇一二年四月から二〇一五年九月までに特定の民族や人種に対して差別的な表現を行うヘイトスピーチを伴うデモは全国で一一五二件確認できたとされています。ヘイトスピーチを伴うデモは減少傾向にあるようですが、いまだ沈静化には至っていないのが現状です。
 札幌では、ヘイトスピーチをする団体の構成員から、ヘイトスピーチ問題に取組む弁護士へ懲戒請求がなされるなどさまざまな問題が生じています。
 そこで、札幌でのヘイトスピーチ問題の取組みを基調報告とし、各地における取組みの創意工夫など経験交流を行い、ヘイトスピーチ問題に取り組む団員のネットワークづくりを促進します。
 また、東京弁護士会が自治体向けに発行したQ&Aパンフレット、全国初の規制条例となる大阪市条例、今国会で審議入りしている人種差別撤廃施策推進法案(ヘイトスピーチ法案)など、ヘイトスピーチの根絶に向けた規制のあり方、問題点を具体的に討議します。
 多くの方のご参加をお待ちしています。

(5)教育分科会
事務局次長 増 田 悠 作

 今年は,選挙権年齢が一八歳に引き下げられ、七月の参院選において、初めて一八歳以上の選挙人を含めた選挙が行われます。
 選挙権年齢の引下げに伴い、文科省は、昨年一〇月二九日に通知を発出し、これまで全面的に禁止していた高校生の政治活動を一部解禁した格好としましたが、本来自由であるはずの政治活動をなおも不当に制約するものでした。さらに今年に入ってからは、高校生の政治活動に関するQ&Aを各教委に配布しましたが、そのQ&Aについても、高校生が学外で行う集会等の政治活動の学校への届出制を容認するなど、極めて不当な内容となっています。
 団としては、このような不当な通知により、現場の教員や高校生の政治活動が萎縮しないよう、考え方の指針を示すことで、積極的な政治教育や政治活動を呼びかけ、励ましていくことが不可欠です。
 安倍政権は、閣僚が放送法によるメディアの規制をほのめかすなど、メディアへの圧力を強めており、そのような政権の姿勢も影響し、各地で行政が市民の表現活動に対して、政治的中立性概念を用いて介入する事件が頻発しています。このような政治的中立性概念をどう捉え、どう対処すべきかについても、この分科会で扱います。
 多数のご参加をお待ちしております。

(6)原発分科会
事務局次長 岩 佐 賢 次

 報道によれば、安倍首相は、この四月一日にワシントンで開催された核安全保障サミット全体会合で、「事故の教訓を原発利用国・導入国と共有し、安全性、事故対策に向けての知見を世界に広げていくことが使命だ。」「日本における核セキュリティは、福島第1原発事故と密接不可分」とし、「二度とあのような原発事故を起こさないとの強い決意の下、日本は原子力の平和利用を再びリードしていくべく歩み始めた。」と述べ、原発の輸出、再稼働に向けた決意を述べたようです。
 福島第一原発事故から五年が経過した現在でも、事故の原因は未解明であり、依然として汚染水は増加の一途を辿っています。また、未だ一〇万人近くの福島の人々が避難を余儀なくされています。事故は収束するどころか、むしろ時を経て被害は一層深刻になっています。現状を無視するかのような、あまりに無責任な安倍首相の発言には多くの方が唖然としたことでしょう。
 ただ、唖然としても仕方がありません。そこで、改めてこの機会に日本が核と決別できない背景を検証し、核と決別するための方策を探求することにしませんか?
 また、関西電力高浜原発三、四号機については、昨年の福井地裁につづいて、大津地裁で運転差し止めの仮処分決定が出されました。現に運転している原発の差し止めを認める決定は史上初です。このように展望の開かれた明るい話題もあります。これを機に差し止め訴訟と被害者(避難者)訴訟の相互交流をすすめ、法的課題を深めましょう。
 「打倒!安倍政権」、「実現させよう!原発ゼロ社会」をスローガンに、ぜひ多くの方に参加していただければと思います。

●特別企画 1
五月二九日(日)
(午前 一〇時〜一二時三〇分)
*北海道支部企画「アイヌ問題を学ぼう!」

 北海道支部企画「アイヌ問題を学ぼう!」を開催します。
 北海道にアイヌの人たちがいることを知っていても、土地問題やサケの捕獲権などの先住権についてはほとんどその理解は広まっていません。そもそも明治以降の天皇制政府とアイヌとの関係が明らかになっていないからです。特に法的にアイヌの権限をどう考えるのかは全く整理されていません。
 アイヌ問題というと今まで差別問題が中心でした。しかし、そもそも江戸時代からアイヌと和人の権力との関係が明らかにならなければ、明治以降の和人政府の一方的侵略は明確にはならず、この本来的に異なる集団間の法的関係を明らかにしなければ差別問題も上滑りしてしまいます。
 この企画は、従来とは全く異なる切り口でアイヌの歴史を振り返り、アイヌと天皇制政府との権力関係を解きほぐし、アイヌの人たちの新しい歴史を開く第一歩となるための学習集会です。
 徳川幕府による松前藩安堵の黒印状(その後の歴代将軍による朱印状)に記載される「エゾのことはエゾ任せ」の意味、江戸時代のアイヌの法的地位について、榎森進先生(元東北学院大学教授・歴史学)に講義をしていただ後、市川守弘団員から、アメリカにおけるインディアン法の解説及び遺骨返還訴訟(三月和解)やサケ捕獲権訴訟を通じたアイヌ先住権の現状を報告していただきます。
 北海道支部の団員にとっても非常に興味深い企画です。全国の団員にも是非、ご参加ください。日曜日の午前一〇時からの企画ですので、土曜日に札幌市中心部に宿泊した方にも十分に参加可能です。

●特別企画 2
五月二九日(日)
(夕食懇親会後、二一時〜二二時三〇分)

(1)女性部企画
事務局次長 湯 山  薫

「セクハラについて話しませんか」
** ゆるカフェ **

 情けない実話です。
 先日、顧問をしている某組合の幹部に、「女性の価値は年齢で決まるんだよ。」「嫌がることを話すのが楽しいんだよ。」などと、暴言を吐かれました。このようなセクハラを止めて欲しいと文書で正式に申し入れたところ、逆ギレされてあちこちで悪口を言われているようです。申し入れしないで聞き逃せば良かったのでしょうか。でも、それではセクハラはなくなりません。
 弁護士業務中のセクハラ。みなさんも経験ありませんか?
 どんな経験をしたのか、その時どう対処したのか、どうすれば防げるのか等々、夕食後のひととき、お酒など飲みながらゆるカフェで話し合ってみませんか。

(2)給費制企画
事務局次長 増 田 悠 作

1 企画の目的
給費制復活を求めて活動する団員が全国から集まり、今一度、給費制復活に向けての意思統一をし、今後の運動のあり方を共有する。

2 企画の内容
(1) 貸与制の下で修習を終えたばかりの六八期の弁護士が体験を語り、改めて貸与制への変更の不合理さを確認する。
(2) 各地の運動に関する現状報告(ビギナーズネット、日弁連等の活動も含む)
(3) 給費制訴訟の現状報告(各地から)
(4) 今後の運動方針についての討議

 給費制は団の将来にも大きく関わってくる問題です。
是非、積極的なご参加をお願いいたします。

◆書籍販売について
前号でご案内の通り、書籍販売をご希望の方は、左記の書店さんと連絡をお取り頂いた上で、五月集会の会場宛に『自由法曹団五月集会・販売委託書籍』と明記してお送り下さい。
書籍を送る際の必着日等についても、左記書店さんに直接ご確認下さい。
*ポプラ書房(担当・七尾さん)
電 話 〇一一 - 七二一 - 二一三五
FAX 〇一一 - 七二一 - 二一三六
尚、例年通り各自での書籍販売コーナーのスペースも設けます。ご希望の方は、ご自身で販売していただいて結構です。
※売上金の管理・釣り銭等の準備は各自でお願いします。
※個人での書籍販売を希望される場合は、左記会場宛に『自由法曹団五月集会・個人販売書籍』と必ず明記してお送りください。(各自販売コーナーに寄せておきます。確認のため、当日は受付に一声お掛け下さい。)

★会場・宿泊先

定山渓ビューホテル
〒〇六一二三〇二
北海道札幌市南区定山渓温泉
電 話 〇一一 - 五九八 - 三二二三
FAX 〇一一 - 五九八 - 三二二二

配布資料については、現地での資料セットの都合上、五月二七日(金)中の必着でお願いします。

★宿泊・交通等 問い合わせ先

株式会社 旅システム(担当・青木さん)
電 話 〇一一 - 七四二 - 二二六〇
FAX 〇一一 - 七四二 - 二二六五

※【千歳空港−定山渓ビューホテル】の貸し切り送迎バスをご利用の方は、参加申込書にて事前申し込みの上、料金についても参加費と一緒に事前にお振り込み下さい。

※ 千歳空港からの送迎バスについて

 現在、千歳空港は長期間に渡り工事中となっております。
 空港内での移動時間が従来より多くかかるかもしれませんのでご注意ください。
 バスの集合場所は、利用者の方宛てに旅システムより連絡が入りますが、空港JAL側の一階、一番端の予定です。
 工事中のため、ANAご利用の方は一度外に出るか二階を通らなければならず、わかりづらくなっています。
 余裕を持った時間帯で航空便の予約をお願いします。


北海道・定山渓温泉で語らいましょう!

〜事務局交流会へのご参加を〜

北海道合同法律事務所 事務局 山 崎 秀 俊

 五月集会において事務局交流会が開催されるようになって何年が経つのでしょうか。
 弁護士団体の集会において、事務局の交流会が開催されるのは、おそらく自由法曹団だけでしょう。自由法曹団が、事務局の存在、役割の大切さを尊重してくださっていることの一端だろうと思います。また、毎年、この企画の準備を全面的に担っている世話人の方々のご尽力あってのことと思います。感謝を申し上げます。

 私が初めて参加した五月集会は、二〇〇一年の高知集会でした。法律事務所の仕事に就いてまだ二カ月程、他の事務所のことなど全く知らない私には、事務所が違うと、事件の種類、量、指示の出し方、処理の仕方が千差万別であることに驚きました。そのときすぐに視野を広げられたかと言えば疑問符が付きますが、広い視野を持たねばいけないと、気付きを得る貴重な機会になりました。
 あれから一五年が経ち、何度参加したことでしょうか。参加する度に、先進的な取り組みをしてる事務所の活動に刺激を受け、時には大先輩に悩みを相談したりできる場でもありました。

 ところで、この数年、事務局交流会の参加者が減少していることに寂しさを感じております。昨年の広島交流会は六〇名程の参加だったでしょうか。多いときには一五〇名を超える参加者がいたことと思います。
 法律事務所の仕事が特殊だとことさらに強調するものではありませんが、他業種の方に法律事務所の仕事の話をしても理解してもらえてないことが少なくないと思います。同じ仕事をしている仲間だからこそ分かりあえる話があると感じています。しかしながら、事務局にとって、他の事務所、とりわけ他の都道府県の方々と接する機会は非常に少なく、同じ仕事をする仲間と悩みを語り、助言を得たり、情報交換できる場として、事務局交流会はかけがえのない場です。その交流会を継続して盛り上げるには、大勢の参加者があってこそです。

 北海道・定山渓での五月集会はちょうど一〇年ぶりです。
 一〇年前と同じ会場なんてつまらないなんて思わないでください。今年の交流会では、北海道でしか見聞きできない、新しい憲法運動のスタイルもご披露する予定です。「えっ、Youtubeで見たことがある?」いえいえ、Youtubeでは見られない生ライブをご堪能いただく予定です!(「Youtubeって何のこと?」とお思いの方は、別掲、北海道支部橋本祐樹団員の原稿「紙面の無駄遣い〜単なる曲紹介〜」をご参照ください。)
 全国各地から、多数のご参加をお待ちしております。

※お詫びと訂正
四月一日号団通信に同封の「参加申込書」の記載に誤記がありました。
●参加費用欄の(1)(2)にある「憲法討論集会」は誤りでした。削除してください。

団通信本文の記載に誤記がありました。
●2頁下段8行目
誤り= (7)差別撤廃条約 → 正しくは (7)女性差別撤廃条約
●8頁上段6行目
誤り=(6)差別撤廃条約分科会 → 正しくは(6)女性差別撤廃条約分科会


*北海道特集*

札幌弁護士会における戦争法廃止の取り組みについて

北海道支部  齋 藤   耕

 札幌弁護士会での「新安保法制」=戦争法制阻止の取り組みは、憲法委員会が中心だが、憲法委員会の委員長は毎年弁護士会長が務めることになっている。二〇一五年度の太田賢二会長(二〇一六年度北海道弁護士連合会理事長)は青法協北海道支部元事務局長・自由法曹団員であり、率先して街頭に立ち、委員会では「もっとやれ」「どんどんやれ」と発破をかけつづけた。
 札幌弁護士会は、五月二二日の定期総会で、集団的自衛権行使等を容認する閣議決定の撤回を求めると共に同閣議決定に基づく関連諸法令の改正及び制定に関する反対決議を圧倒的多数で可決をした。そして、七月一六日と九月一六日には、衆議院及び参議院の強行採決を批判し廃案を求める会長声明を出した。
 さらに、七月二四日の北海道弁護士会連合会(道弁連)の大会でも、閣議決定の撤回と関連法令の制定及び改正に反対する決議を圧倒的多数で可決をすると共に、この日の朝八時から、旭川駅前で、道弁連として、街頭宣伝行動を行い、四会の会員弁護士五〇人以上が参加するなど市民に向け、安保法制反対の姿勢を示した。
 こうした総会決議に基づき、札幌弁護士会では、精力的に活動を行った。
 まず、六月一一日、札幌弁護士会が主催した市民集会「日本は再び戦争をするのか?〜集団的自衛権と安保法制の目的とは〜」講師森達也氏(エルプラザホール(男女共同参画センター)参加者二五〇人)を行った。
 さらに、特筆すべきこととしては、本年度のみで、合計四会の大パレード(デモ)を行った点である。
 いずれも、主催は北海道弁護士会連合会と、道内四つの単位会(旭川、釧路、札幌、函館)の共催との形をとった。
 第一回目は、札幌市で初めて真夏日となった七月一一日(土)「私たちはたたかわない!(NO WAR)大集会&パレードin北海道」を札幌市内の中島公園(参加者約六〇〇〇人)で開催し、第二回目は、同年九月六日、「私たちは戦わない PART2」を大通公園で開催した(参加者約二五〇〇人)。
 この二回の集会に参加した弁護士たちは、「Fight for NO WAR」と胸に書かれた揃いのオレンジのTシャツを着て、集会の表で裏で、声をあげ、走り回った。パレードの警備やコーラーをこの時初めて体験した弁護士も多かった。
 参加した市民からは、「是非とも続けて欲しい!」との要望が強く寄せられ、かつ、取材したマスコミから「PART2」が行われたのだから、「PART3」以降もあるんですよね、等と聞かれたこともあり、法案成立後も、続けてパレードを開催した。
 まず、特定秘密保護法が強行採決された一二月七日、正午から「私たちは戦わない PART3」を大通公園(集会参加者約二〇〇〇人、パレード参加者約一二五〇人)で開催した。
 さすがに、師走の札幌で、Tシャツで参加する弁護士はいなかったが、寒さを吹き飛ばす熱気の中でパレード(デモ)を行うことができ、法律が制定しても、多くの市民が諦めず、反対の声をあげ続けていることを示せた。
 そして、安保法の施行直前の本年三月二七日、四回目となる「止めるならいま!私たちはたたかわない PART 4」を開催し、三回目を上回る人数(集会参加者約二三〇〇〇人、パレード参加者約二〇〇〇人)を集めることが出来た。
 主催者として挨拶をした田村智幸道弁連理事長(当時)は、参加者に継続して反対の声をあげていくことの重要性を訴え、札幌弁護士会憲法委員会としても、二〇一六年度も継続してこの問題に取り組む予定である。
 二〇一六年度の活動を振り返っての感想を述べさせていただくと、やはり、弁護士会が弁護士会として、集会等を主催し、参加を呼びかけることで、党派性を超え、幅広い市民の結集を諮ることが実感できた。
 特に、四回の集会では、委員会内で議論し、集会参加者が、団体旗(政党、労組や市民団体)を掲げることを認めた。
 このことが、多くの団体において、参加するきっかけになったと思われる。
 また、強制加入団体である弁護士会が主催する集会、パレード(デモ)であるため、掲げるスローガンは、「集団的自衛権反対」「戦争法廃止」などに限定し、その他のスローガン(「原発再稼働反対」、「安倍政権ヤメロ」)は、遠慮してもらうこととした。
 もっとも、この点も、厳密には行わず、どうしても、スローガンを掲げる方については、事実上黙認するなどしてきた。
 私たちは、今後の安保法制廃止、立憲主義の回復のため弁護士会の果たすべき役割が大きいことを実感させるこの一年の活動であった。


アイヌ遺骨返還訴訟・・歴史的和解へ

北海道支部  市 川 守 弘

 三月二五日、札幌地裁で北大を被告として争ってきたアイヌ遺骨の返還訴訟に係る和解が成立した。和解内容は、原告の伯父にあたる遺骨一体のほか、氏名が特定されていない一一体の遺骨を利害関係人として参加したコタンの会(地元のアイヌで組織)に返還する、氏名が特定される他の四体の遺骨は北大がインターネットで祭祀承継者を募り、一年の間に名乗り出る者がいない場合に同様にコタンの会へ返還する、埋葬場所までの運搬費(霊柩車使用)、埋葬のための墓地造成費、合計一三〇万円ほどを北大が負担する、という内容である。なおこれらの遺骨は浦河町の杵臼という場所から掘り出された遺骨であり、掘り出された場所に再埋葬される。
 先住民の墓を暴き、骨を持ち去ることは世界中で植民地支配の元「優秀な民族」と「劣等民族」の比較という研究名目でさかんに行われていたが、ここ三〇年間、世界中で遺骨を返還する動きに変わってきた。日本人のアイヌ遺骨収集は、明治時代の東大の小金井良精がはじめて墓地を暴き一〇〇体を超える遺骨を蒐集した。江戸時代には箱館のイギリス領事館館員が、八雲から一〇体を超える遺骨を蒐集したが、箱館奉行小出大和守が白州に領事館員を呼び出し、吟味の上、当初否認していた墓暴きを認めさせ、アイヌに二五〇両の賠償をさせた(時代劇にあるような拷問ではなく、証人を尋問した結果を突き付けて自白に追い込んでいる)。ところが明治以降になると墓暴きは犯罪であるにもかかわらず、刑事事件にならずにアイヌ遺骨を蒐集したのである。現在全国の大学には一六三六体の遺骨と五一五箱の骨が保管されている。このうち、個人が特定できるのは二三体しかなく、それ以外は全く身元不明である。政府は一昨年閣議決定をして、これらの遺骨について、氏名が特定されている遺骨は祭祀承継者へ返還し、残りは二〇二〇年までに建設するアイヌテーマパーク(白老町)に集約し、今後のミトコンドリアDNA研究の材料にするとしている。北大の主張は政府見解そのものであった。
 政府見解には次の問題があった。第一に、祭祀承継者が遺骨返還の相手と限定していること(したがって他の者は権限がない)、第二にそもそもアイヌでは遺骨を管理していたのは誰か、を無視していることである。第一の点は、民法の立場で遺骨を物として相続の対象とし、家制度の下で家を継ぐ者に返還する点である。アイヌには家制度はなく、したがって一家の中で祭祀を承継するものなど定めていない。戦前の民法の家長制度はアイヌにも適用されたが和人ほど厳格ではなかった。この祭祀承継者にのみ遺骨が引き継がれる、とするのは現在において和人の考えを強制する同化政策そのものである。第二の点はアイヌの法的地位を理解するうえで重要な点である。江戸時代までアイヌは、各地に存在したコタンという集団が、特定の土地を支配し、支配地内においてサケなどの自然資源を獲得し、遺骨を埋葬していた。各コタンでは慣習法として民事法、刑事法を有し、訴訟も行われていた。つまりコタンは一種の国家であった。対外的には松前藩とのみ交易が認められつつ(対外的主権は制約)、対内的には自主決定権(対内的主権)を有していた。遺骨管理はまさにこのコタンの権限の一つでしかないのである。原告らは、コタン構成員の子孫としてコタンの権限を引き継ぐという主張をしていた。なお、これらのコタンの権限を先住権と呼ぶことができる(本件では杵臼コタン)。
 明治になり、幕藩体制が認めていたアイヌの法的地位が、単に力関係によって覆されたのであるから、一方的侵略行為によって天皇制政府によって支配されたと断定できるのである。政府が国連の先住民宣言を採択した際、日本には先住民宣言にいう権限を認められる主体はない、というのは、この明治以降に、権限を奪われ、コタンとしての集団性を失わされたアイヌのことをさしているのである。政府は自ら解体したコタンが「存在しない」とし、ゆえに国連宣言にいう権限はアイヌにはない、とするのである。
 私たちは、江戸時代まで存在した集団としてのコタンの権限がコタン構成員の子孫に引き継がれている、という主張をしてきたが、今回の和解では、氏名の特定できない遺骨一一体について、コタンの復活を目指す地元の団体であるコタンの会に引き渡す、という和解を獲得できた。コタンの会は今後遺骨を管理していくが、将来的にはサケ捕獲権等の先住権の主体として打って出ていくことになろう。
 以上のような意味において、アイヌ遺骨返還はやっと世界の潮流に乗れたという意味にとどまらず、日本における先住権の先駆けとなる和解を得た、という歴史的意味があるのである。


「おとり捜査の違法を認めて再審開始決定!」

北海道支部  大 賀 浩 一

 平成二八年三月三日、札幌地裁刑事第二部(佐伯恒治裁判長)は、ロシア人元船員のアンドレイ氏からの再審開始請求を認める画期的決定を出した。
 私は、再審弁護団の末席を汚す者として、ささやかながらそのご報告をしたい。
 アンドレイ氏は、平成九年一一月、けん銃と実弾を持って小樽港に上陸したところを、道警本部銃器対策課のAらにより現行犯逮捕され、銃刀法違反の罪で起訴された。
 実際には、捜査協力者の外人Sから「けん銃があれば欲しい中古車と交換してやる」などと唆されて亡父の遺品をわざわざ持ち込んだところ、Sからおびき出されAらに取り囲まれて逮捕されたのであり、これぞ犯意誘発型おとり捜査の典型であった。
 ところが、Aらは、こぞって内容虚偽の捜査報告書を作成したのみならず、弁護人が公判でおとり捜査の違法性を主張すると、Sらは捜査協力者ではなく、逮捕現場にもいなかったという偽証に及び、組織ぐるみでおとり捜査の隠蔽を図ったため、判決ではおとり捜査はなかったものと認定され、アンドレイ氏に懲役二年の実刑判決が言い渡され、同氏は控訴することなく判決確定後に服役した。
 その後、平成一四年七月になって、Aが現役警部のまま覚せい剤使用の容疑で逮捕され、その供述により、道警が点数稼ぎのために組織ぐるみで、おとり捜査やけん銃の偽装押収等の違法捜査を繰り返していた実態が明らかになったが、Aらの偽証や虚偽有印公文書作成・行使は不起訴処分となり、検察審査会が起訴相当議決をするも、再び不起訴処分に終わった。このため、アンドレイ氏は平成一七年七月に国家賠償請求訴訟を提起し、一部勝訴の判決が上告審で確定した後、平成二五年九月、再審請求に及んだ。
 再審請求審では、平成二七年一〇月にAの証人尋問が実施された後に結審した。
 このたびの再審開始決定は、「本件おとり捜査は・・・典型的な犯意を誘発するタイプのもの」で、「『何でもいいから』というAの指示を間接的な形で受けていたSが・・・それこそなりふり構わずにけん銃の日本への持ち込みを積極的に誘引していた事実が証拠から如実に窺われる」、「本件おとり捜査は、その必要性が認められず、かえって、具体的な嫌疑もない者に対して犯意を誘発するような働きかけを行うことで、犯罪を抑止すべき国家が自ら新たな銃器犯罪を作出し、国民の生命、身体の安全を脅かしたものであるといい得る」などと、おとり捜査の違法性を正面から認めた。
 のみならず、「捜査官らは、事件後、こぞって内容虚偽の捜査書類を作成した上、裁判でおとり捜査の違法性が争われるや、内部で口裏合わせをした上・・・等と真実に反する証言をし、組織ぐるみで本件おとり捜査の存在を隠蔽している」、「事案の真相を明らかにして、適正に刑罰法規を適用するという刑事裁判の目的を根底から覆し、請求人が公正な裁判を受ける権利を踏みにじるものである」と断罪した上で「本件おとり捜査は、およそ犯罪捜査の名に価するものではなく」、「令状主義の精神を潜脱し、没却するのと同等ともいえるほどの重大な違法がある」から、「そのような捜査によって得られた証拠を用いることは到底許されるべきことではない」から証拠排除されるべきであるとして、結論として再審開始を宣言した。まさに、弁護人の主張を一二〇%認める画期的決定であった。
 残念ながら、検察官の即時抗告により再審開始は先延ばしされてしまったが、必ずや再審無罪を実現し、アンドレイ氏の名誉回復を勝ち取りたい。


紙面の無駄遣い〜単なる曲紹介〜

北海道支部  橋 本 祐 樹

一 笑いに走る(?)
 北海道合同法律事務所芸能部アーティストセクションの橋本祐樹です。団通信の紙面の無駄遣いをして、北海道支部における安保法制反対活動の特殊事例をご紹介させていただきます。
 安保法制については、北海道支部でも各団員が旺盛な学習会講師活動をしています。二〇一五年一月から二〇一六年三月までの間に約二〇〇件をこなしているくらいです。
 そんな中、私も学習会活動をしていたのですが、他の団員ほど研究熱心ではなく高度な話ができないという難点のどあめがありました。そこで、深さはないけど、おもしろくて何か覚えて帰ってもらえるような工夫をした学習活動をしようと考えたのでした。
 私は、聴衆の間をぐるぐる歩き回って、質問をし聴衆から回答もらう際に聴衆のマダムをいじるほか、コントを上演するなどしていましたが、今では歌も歌っています。
 コントの相方は北海道合同法律事務所芸能部マルチクリエイティブセクションの柿田くんなのですが、柿田くんがギターを弾いていたときに、強行採決を繰り返すアベ政治に怒っていた私の頭に、佐村河内守並に(笑)歌詞が降ってきました。そこで、イルカの「なごり雪」の替え歌、イカルの「なごりバカ」を即興で奏で、その様子を北海道合同法律事務所芸能部ストラテジックマネジメントセクションの山崎さんにYouTubeに上げてもらいました(以下URLを貼りますが、YouTubeで「山崎秀俊」を検索していただくのが一番手っ取り早いです)。
https://www.youtube.com/watch?v=5nTBV_FKE2Y
二 曲紹介
 安保法制成立後も、国会での乱暴な審議や「アベ政治」を風刺し、怒りを持続させるための道具として新曲を発表し続けることにしました。
(1)二曲目はかぐや姫の「神田川」の替え歌「噛んだ側」です。これは立憲主義を無視して、飼い主であるはずの国民に噛みついた暴犬安倍政権を風刺したものです。動画を投稿することから、「神田川」の世界観を想像し、ベルボトムのパンツなどの衣装を揃え、風情溢れる光景を背景に撮影をしました。
 この曲で聞いていただきたいポイントは、「船の下にはホルムズ海峡 存立危機の小さな根拠 あなたはなつおの質問聞いて ありえないねって言ったのよ」というノンフィクション部分です。
https://www.youtube.com/watch?v=AoSNPD042MI
(2)三曲目は山下達郎の名曲「クリスマスイブ」の替え歌「エレクションイブ」です。これはちょうどクリスマスシーズンだったので作りました。選挙前に有権者に意識をしておいてほしい自民党の改憲草案のヤバさを歌詞に込めました。動画は、深津絵里が出ていたJR東海のCMをオマージュして、ほぼ完コピを目指しました。
この曲で聞いていただきたいポイントは「安倍は選挙前だけ下手に変わるだろう 騙されない入れない」という警告部分です。
https://www.youtube.com/watch?v=MErc1VpsMpw
(3)四曲目は長渕剛の名曲「乾杯」の替え歌「惨敗」です。これは今年改選を迎える自民党参議院議員の気持ちを想像して歌詞を作りました。これまでの作品でも多くの若者が登場し見事な演技をしてくれていますが、「惨敗」では、安保法制に反対する街頭活動を札幌でリードしている「ユニキタ」の多くのメンバーに出演してもらったほか、小野寺信勝団員にも出演してもらいました。
 この曲で聞いていただきたいポイントは「ウルトラライトの党のやばさを今だけこうして目を背けてほしい」という自民党候補者の気持ちを想像したところです。
https://www.youtube.com/watch?v=mrvDroS1n8g
(4)五曲目はちょうど卒業シーズンだったので、尾崎豊の名曲「卒業」の替え 歌「卒業〜アベ政治からの卒業〜」を作りました。安倍晋三が一九八〇年代のヤンキーも真っ青なぐらい「行儀よくまじめなんてできやしなかった」ので、あまり歌詞を変えていないのがポイントです。この作品には成田悠葵団員にも出演してもらっています。
https://www.youtube.com/watch?v=Q4rwbXwAVbk
三 歌ってください
 今後、参議院議員選挙まで、あと二曲を作成する予定です。
 上述の各曲については、広く拡散を希望しますし、各地の団員の先生方で自由に演奏をしていただきたいです(そもそも、私に著○権とかないですし笑)。明るく楽しく、ソフトな方法で、一人でも多くの人に選挙で賢明な選択をしていただくための情報を提供していたければと思います。
 なお、札幌での五月集会の懇親会では、私たちが生演奏をさせていただくほか、橋本プロデュースの還暦バンド(仮)による新曲披露もありますので、皆様こぞって札幌の五月集会へおいでください。


築地公務執行妨害でっち上げ国賠事件、勝訴!!

東京支部  今 泉 義 竜

 弁護士になって八年目、一二〇%勝訴を確信した事件以外はことごとく敗訴してきた当職ですが、今回、九九%敗訴を確信していた事件で望外の勝訴判決を得たので、報告する。
一 事件の概要
 被害者は新宿区で鮨店を経営する二本松進さん。路上駐車の取り締まりをしようとした二人の警官と違反の有無を巡って言い争いになったところ、警察官は突如「暴行!暴行!」と叫びだして現行犯逮捕されたという事件である。
 あとから判明した逮捕容疑は、「婦人警官の胸を七〜八回突く等の暴行を加え、車両のドアを閉める際に婦人警官の右手にドアを強くぶつける等して、職務執行を妨害し、暴行により全治一〇日間の傷害を負わせた」という進さんにとって全く身に覚えのないものであった。
 二本松さんは一九日間にわたって勾留・取調べを受けた上、「自白しないと、いつまでも勾留され、店が潰れる」「起訴されて長いこと刑務所に入る」「回数を少なくしてもよいから、自白したら」等と五島検事から自白を強要、虚偽の自白調書へ署名をさせられ、起訴猶予の不起訴処分となった。
二 六年以上に及ぶ裁判
 二本松さんは、二〇〇九年一〇月、当初本人訴訟として国、東京都を相手に国賠訴訟を提起、その後、国民救援会を通じて当事務所に依頼があり、小部弁護士と私が担当することとなった。
 捜査記録の開示をめぐっての攻防が長期間かかったが、最終的には裁判所は最高裁判例の枠組みの範囲で勾留請求時の捜査記録に限って文書提出命令をし、一定の捜査資料が開示された。
 警察官二名に対する証人尋問では、弁護団は、供述が相互に矛盾している点、また暴行の態様など重要な事実について捜査段階から供述の変遷を繰り返している点を徹底的に追及した。
 しかし、その後裁判長及び右陪席が交代し、新たな裁判長は目撃証人を一切採用しないという不当な訴訟指揮をした。小部さんはベテランの風格で怒りを込めた忌避を申し立てた(忌避申立書の起案は当職)。その迫力に気圧された裁判長は、しばし鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
 忌避は却下されたものの、改めて再開された弁論期日において弁護団は民訴法二四九条三項を根拠に、進さんと月恵さん、二人の警察官の再度の取り調べを要求したところ、裁判所は原告二人についてだけ職権で再度の証人尋問を実施した。忌避申立てをきっかけに、慎重な審理をしなければという裁判長の意識の変化を若干であるがその表情から感じた。
三 判決
 とはいえ、結局目撃証人を一人も採用しなかったという訴訟指揮から、弁護団は九九・九%敗訴判決を覚悟していた。進さんは、判決の日に記者会見をやろうと弁護団に提案していたが、弁護団は、敗訴判決について会見場を押さえるのは困難であると判断、判決前のプレスリリースにとどめた。
 二〇一六年三月一八日一一時。入廷した松村裁判長は、緊張した面持で「ゆっくり読みますのでよく聞いてください」と前置きし、主文を読み始めた。
 「被告東京都は、原告二本松進に対し、二四〇万円および…」
 ここで、勝訴したことが分かるのだが、全く予想していなかったため、喜びよりも「なぜ?」という思いの方が強い。進さんの方を見やると、進さんは「当然」というような表情を浮かべていた。
 法廷を出ると、傍聴していた記者数名が進さんに取材殺到。急遽司法記者クラブで記者会見を行った。「勝訴」の旗を用意していなかったのは、弁護団の判断ミスであった。
 判決は、「暴行のいずれについても、明確さに欠ける部分のほか、看過することのできない変遷または齟齬があったり、仮にその証拠関係のとおりであったとすればそれ自体が不自然であったり疑問が生じる部分を多く含んでいる」などとし、警察官らの証言の信用性を否定するものだった。
四 今後
 警察による不当な取締りに多くの人が泣き寝入りを強いられている中、警察官の不正を断罪した裁判所の判断は大きい。警察権力の濫用は、冤罪の温床である。こうしたことは許されないと声を上げた二本松さん、そしてそれを支え続けた国民救援会のみなさんには、本当に敬意を表したい。
 東京都は控訴すると思われるが、引き続き不正義を許さない闘いを二本松さん夫妻、国民救援会はじめ支援者のみなさんとがんばっていきたい。


稼働中の原発を止めた史上初の仮処分決定

―いのちと暮らしと琵琶湖を守る第二次仮処分決定の報告―

滋賀支部  高 橋 陽 一

 二〇一六年三月九日午後三時三〇分、大津地方裁判所前は歓喜の声であふれた。大津地方裁判所が関西電力の高浜発電所三、四号機の運転を差止める仮処分決定を出したからである。債務者である関西電力はこの仮処分決定に従い運転を止める操作を開始し、同月一二日には稼働していた三号機が停止した。司法が稼働中の原発を止めたのは史上初のことである。
一 経過
 まず、簡単に今回の決定に至るまでの経過を述べる。もともと、この裁判は故吉原稔団員が音頭を取って始めたものである。二〇一一年八月二日に関西電力が保有する高浜、大飯、美浜の各原発の運転差止めを求める仮処分を申立てた(第一次仮処分)。原発裁判としては三・一一後では最初の申立てであった。仮処分という形を取ったのも故吉原団員の提案で、三・一一後、最初の原発の運転差止めの決定を勝ち取ると意気込んでおられた。
 ところが、長谷部裁判長(当時)の不当な訴訟指揮により審理は引き延ばされ、山本裁判長が交代した二〇一四年になってやっと終結し、その年の一一月二七日に第一次仮処分決定が出された。決定の内容を大雑把にまとめると、債務者の有する各原発は安全とは言えず、原子力規制委員会が再稼働の許可を出すはずがないので保全の必要性がないという理由で申立てを却下するというものであった。
 しかし、その約三週間後には原子力規制委員会の高浜三、四号機の審査書案が出され、二〇一五年二月一二日には再稼働が許可(設置変更許可)された。そこで、もう保全の必要性では却下できなくなったのでその年の一月三〇日に大津地裁に第二次仮処分を申立てた。
 審尋期日は一二月一五日で終了し、翌年の二〇一六年三月九日に冒頭の決定が出された。
二 決定の特徴
 本決定は、これまでの裁判と比べていくつかの特徴があるが、重要な二つの点を指摘したい。
(1)判断枠組み論
 本決定の第一の特徴は判断枠組み論にある。本決定では、電力会社が主張立証すべきことについて、原子力規制委員会が設置変更許可を与えた事実だけでは不十分で、福島第一原発事故を踏まえ、原発の規制がどのように強化され、電力会社がその要請にどのように応えたかが必要であるとしている。福島第一原発事故後の判断枠組みとしてふさわしい内容であると思う。
 そして、本決定は過酷事故対策や耐震性能について関西電力の安全性に関する主張や疎明が不十分であるという理由で原発の安全性を認めなかった。
 三・一一前の原発裁判及び川内原発に関する鹿児島地裁仮処分決定や高浜原発に関する福井地裁の仮処分異議審決定は伊方原発訴訟最高裁判決を曲解し、原子力規制委員会の許可があることを重視し、その許可があった事実をもって電力会社側の安全性に関する立証のハードルを下げ、住民側の立証のハードルを上げていた。しかし、本決定では、原子力規制委員会の許可があったというだけでは電力会社の安全性の疎明がされたとはいえず、裁判所がわかるように十分主張や疎明しなければならないとして、電力会社に対する主張立証のハードルは上げた。裁判所が行政に盲目的に追従することを止めたのである。
(2)避難計画
 第二の特徴は避難計画に触れていることである。住民の避難計画は電力会社が作るものではないが、本決定ではわざわざ触れている。最も特徴的なのは、国家に避難計画を含めた規制基準をつくる信義則上の義務があると述べている点である。
 国際的な基準では原発の安全性について深層防護という考え方を採用しており、発電所内で異常に対応できなくても、住民を守れるようにしなければならないとされている。すなわち、原発の安全性が確保されたといえるためには住民が放射能による被ばくを避けることができる避難計画が策定されていることが必要であり、そのような計画が策定されていることが原発を稼働させる条件となる。しかし、日本において住民が被ばくしないような避難計画を作るのは不可能であるので、国は原発を再稼働させるためにあえて規制基準に避難計画を含めなかった。本決定では、その点を非難している。
三 今後について
 これからは、この決定を守り抜く闘いが始まる。早速、関西電力からは保全異議と執行停止の申し立てがされた。また、関西電力の社長からは本訴で逆転勝訴したら住民に対する損害賠償請求を検討するという発言もあり、財界からは司法に対して圧力をかけるような発言もされている。
 しかし、この決定を評価する市民の声も大きい。本決定がほかの原発再稼働差止め裁判に与える影響も大きい。脱原発を目指す市民の声と裁判官の正義感がコラボして原発をなくしていく道筋が見えてきた。全国の団員の皆様と脱原発に向けて力を尽くしたい。


三菱下関造船じん肺・アスベスト訴訟事件顛末記(てんまつき)

-不当判決をはねかえして-(二)

山口県支部  臼 井 俊 紀
三菱下関造船じん肺・アスベスト訴訟弁護団事務局長

 こうして、勝訴を確信して迎えた二〇一一年六月二七日の第一審判決は、三菱重工側の医師の意見書を無批判に採用し、私たちの側の意見書や送付嘱託に基づく記録のCT画像の読影の結果等を無視して、原告全員のじん肺罹患を否定して、全面敗訴させるという前代未聞の判決であった。
 これは、後にじん肺訴訟史上最悪と評される判決であり、私たちはこの結果を受け容れることなど絶対にできなかった。
 この「どん底」から這い上がる原告や弁護団の新たなたたかいが始まった。
第三章 第二審でのたたかい
 二〇一一年七月七日、私たちは広島高等裁判所に控訴した。
 この段階で、常任弁護団に東京の井上聡、松田耕平の各弁護士、福岡の岩城邦治、山本一行、原田直子、深堀寿美の各弁護士、広島の平田かおり弁護士、北海道の小笠原至、迫田宏治の各弁護士が加わり、第一審の敗訴判決を覆すべく、オールじん肺弁連とも言うべき陣容で臨むことになった。この体制ができたのは、鈴木弁護士の力に負うところが大きい。
 こうして、この訴訟は、一企業の、一地方の事件から、全国的なじん肺・アスベスト訴訟と位置づけられ、全国の支援を得て必ず逆転勝訴するという、不退転の決意を込めたものとなった。
  私たちは、高裁では、第一審が医学的証明がないという理由で敗訴になったことから、もう一度、じん肺管理区分決定の厳格性を、現行じん肺法に至る法制度改正の経過や診断基準等を詳細に立証することで明確にすることとした。それだけではなく、じん肺罹患が否定された原告らのCTを、じん肺臨床のスペシャリストである海老原勇医師に読影してもらい、CT画像上もじん肺所見があるという意見書を提出した。
 さらに、裁判所と当事者間の協議に基づき、原告側、三菱重工側の双方が原告らの最新のCT画像を新たに医師に読影してもらい、それぞれの意見書を提出することとなったので、私たちは、最新のCT画像を証拠として提出した上で、じん肺臨床の経験豊富な藤井正實医師の、詳細で明確な意見書を提出した。その中で藤井医師は、CT画像の読影上も原告全員がじん肺(アスベスト肺)であると診断した。
 その意見書を提出した段階で、私たちは、裁判所は概ね原告らのじん肺罹患を認定する心証を持ったのではないかと判断したが、未だ確証には至らなかった。
 そのような状況下、原告のお一人が亡くなるという事態になった。
 私たち弁護団は、遺族の気持ちを考えると辛かったが、確実な証明をする上で解剖をしたいと遺族にお願いをして、同意を得て解剖をした。
 その病理解剖結果は、じん肺(アスベスト肺)に罹患しているという内容であった。そして、この結果は、原告全員のCT画像に関する三菱重工側の主張が、独自のもので根拠がないことを浮き彫りにするものであった。私たちは、これでこの訴訟は逆転したと考えた。
 しかし、三菱重工側は、この解剖結果をも否定するという、考えられない主張をしてきた。これも、アスベスト肺の病理診断について、国際的・国内的に承認されたコンセンサスに基づかない、三菱重工側の独自の医学的主張に基づくものであった。
 これらの点を証拠に基づいて指摘して、最終弁論を終えた後、裁判所から和解の勧試があった。
 その内容は、ほぼこれまでのじん肺訴訟の基準に沿う、道理のある内容であった。この和解内容は、弁護士費用や遅延損害金が考慮されていないことから、判決認容予想額よりは低額なものであったが、長いたたかいを終わらせたいと願う原告らや遺族の希望で、私たちはこの和解内容を受諾する旨、裁判所に伝えた。
 しかし、三菱重工側は、和解を拒否した(二〇一四年三月三一日)。その結果、解決は判決に持ち越された。
 私たちは、勝利を確信していたが、それでも念には念を入れて、判決に立会うと思わぬ敗訴をすることが多い(?)というジンクスがある田中弁護士を、判決当日の東京行動の要員とする等、万全の配慮を怠らなかった。また、宮本武蔵ではない私は、無神論者であるにもかかわらず、ご先祖様はじめ神仏の加護をも祈念したのであった。
 こうして迎えた二〇一四年九月二四日、広島高裁は、第一審判決を覆し、原告全面勝訴の判決を言い渡した。
 この判決内容は、私たちが主張・立証してきた内容に即して、三菱重工のじん肺の元請責任、安全配慮義務違反を丁寧な事実認定により認めるとともに、原告らのじん肺(アスベスト肺)罹患についても、じん肺管理区分決定によりじん肺罹患が高度に推認されること、従って、これを覆えす為には三菱重工側で反証しなければならないが、三菱重工の主張するCT画像での認定基準(アスベスト肺であると認定する為には、CT画像において、胸膜直下の小葉中心性粒状影が確認されることが必須であるという基準)が独自のものであり、その基準で決めることは許されないこと、複数の医師が、CT画像の読影上もじん肺ないしアスベスト肺の所見を認めていること、さらには、解剖した一名については、その結果、積極的にじん肺罹患が認定できること等を挙げて、丁寧に認定した。
 この判決は、私たちを、三菱重工のしかけてきた不毛の医学論争からきっぱりと解放する、「宇宙の晴れあがり」のような判決であったが、決して画期的な内容ではなく、これまでのじん肺・アスベスト訴訟の到達点を、この事件にも及ぼしたものである。しかし、この判決の「宇宙背景放射」によって、じん肺・アスベスト肺をCT画像で争い、不可知論に逃げ込もうとする最近の企業側やそれに添った一部の判決の流れをくい止める内容となったものと評価できる。
 私たち判決立会の弁護団は、感激の判決言渡し、スムーズな(?)旗出し、喜びに沸く報告集会を経て、お好み焼きで軽く祝杯を上げて、東京へ向かった。
 判決日に合わせた東京行動の弁護団は、現地(広島高裁)弁護団からの勝訴の第一報を受けて街宣、三菱重工本社要請等を行った後、喜びの祝杯を上げた(と思われる)。
 このように、私たちは、三菱重工に対して、判決の当日から上告や上告受理申立をするなという要請を続けたが、この判決の内容であれば、上告理由は勿論、上告受理申立理由もないことが明らかであるから、事件が最高裁に上ることはないと思っていた。
 しかし、三菱重工は、最終日(一〇月八日)になって上告受理申立を行った。引き延ばしであることは明らかであった。更にたたかいが続くことになった。(続)


【緊急事態条項虎の巻シリーズ(2)】〜弊害の巻〜
「じゃまでしょ、それ。」

神奈川支部  宋   惠 燕

一 はじめに
 緊急事態条項虎の巻シリーズ(1)〜不要の巻〜では、災害対策に関する整備は既にある法制度で十分なことについて綴りました。「不要なのはわかったけど、あったらダメなの?」という声も頂きました。そこで、二宮団員からバトンを投げ渡された私が、シリーズ第二弾として「じゃまでしょ、それ」と題し、緊急事態条項を憲法に創設することの弊害について触れようと思います。
二 指揮命令系統の段〜混乱しちゃうよ!〜
 災害対策基本法は、災害時における応急対策について地方自治体の長に責任と権限を認めています(法五〇条二項)。災害時には被害状況を適切に把握し、指揮命令を迅速に行うべく、地方自治体の長の責任と権限を与えており、このような制度はこれまでの災害の教訓を踏まえた適切なものといえるでしょう。
 他方で、緊急事態宣言をして災害時の応急対策を内閣総理大臣に権限を集中(独占)させれば、迅速かつ適切な対応は期待できません。災害時には災害によって情報インフラが失われる又は混乱する可能性がありますし、現場の判断で動くことができなる危険もあるからです。このように見ると、災害時に中央に責任と権限を集中(独占)させることは、災害対応の観点からみると不適切だといえるでしょう。
 なお、複合災害時の指揮命令系統に関していえば、原子力災害特別措置法上の指揮命令系統(内閣総理大臣がトップ)と災害対策基本法上の指揮命令系統(地方自治体がトップ)が二重に存在することによって指揮命令関係が混乱するとの指摘もありますが、指揮命令系統の重複については、むしろ被災の現場である地方自治体に権限を委譲するといった法制度が望ましいと思われます。
 いずれにしても、災害時に中央に権限を集中(独占)させるといったことは、混乱を招くおそれが高いものといえます。
三 事前の準備の段〜油断しちゃうよ!〜
 災害には、何よりも「事前の備え」が重要です。「準備していないことはできない」という教訓は、日本が被災経験からイヤというほど得ました。
 さて、災害対策基本法では、国の防災基本計画(同法第三四条)に基づき、自治体や指定行政機関(省庁等)は防災計画(地域防災計画、防災業務計画)の策定をしなければならないとされています。また、防災教育や防災訓練の実施についても同様です。
 東日本大震災では、法律上必要とされていた防災計画(避難計画)、防災教育、防災訓練が不十分、不適切なものであり、救えたはずの命を救えなかったという事例も報告されています。このような教訓を得て、現在、各自治体では、改めて防災計画の見直しや防災訓練等に力を入れています。
 他方で、大災害が発生した場合は、内閣総理大臣の責任と権限によって対応するという緊急事態条項を用意することは、どのような影響をもたらすでしょうか。
 災害に対して国家緊急権によってなし得ることは、いわば「事後的」「泥縄式」な対応に過ぎません。このことは「準備していないことはできない」といった教訓に照らせば、できることは極めて限定的です。であるにもかかわらず、そのような制度を設ければ、「大災害時には中央の責任と権限でなんとかしてくれる」という油断が生じます。つまり、自治体における「事前の備え」へのモチベーションが低下するおそれもあるのではないでしょうか。また、中央と連携した防災訓練を頻繁に行うことは現実的にも難しいでしょう。
 このように見てくると、国家緊急権という「備え」は、役に立たない一方で、自治体独自の「備え」に油断を生じさる危険性があるとすらいえるのです。
四 次回予告
 これまで見てきた通り災害時の応急対策の場面で、国家緊急権は「邪魔」というほかありません。次回、最終回かと噂される緊急事態条項虎の巻シリーズ(3)は「あぶないだろ、それ。」でお送りする予定です。一体誰が書くことになるか…それも含めて、ご期待ください!


「戦争させない、九条壊すな! 五・三兵庫憲法集会」について

兵庫県支部  羽 柴   修

 昨年六月二一日、兵庫県弁護士会主催の安保関連法制反対、特定秘密保護法廃止を求める市民集会では九〇〇〇人の市民が開場の神戸東遊園地を埋め尽くした。強行採決後も「九・一九を忘れない」を合い言葉に安保関連法制廃止の運動が粘り強く闘われ、今年も同様の市民集会が弁護士会主催で企画され、五月三日が候補にあがっていた。しかし参院選を控え、同日は表題の統一集会を「総がかり行動兵庫実行委員会」主催で開催することになった。その経緯を報告する。
 第一次安倍内閣時代の二〇〇六年一一月三日「神戸ワールド記念ホール」において、九条の会他護憲関連五団体主催で「はばたけ!九条の心」市民集会が開催され、七五〇〇人の市民が参加した。兵庫では毎年五月三日に「兵庫県憲法会議」と「憲法・兵庫会議」主催による集会が個別に開催され、相互にエール交換はしていたものの、統一した集会開催が実現されなかった。ワールド市民集会は「九条の会」の呼びかけと関係者の長年の想いに応えた統一集会となったが、企画から実行委員会立ち上げ、開催まで関連五団体の努力は並大抵ではなかった。この市民集会成功の後、関連五団体が中心となり、憲法問題懇談会が一ヶ月に一回開かれるようになり、相互の情報交換と意見交換を継続してきたが、今回は「戦争をさせない、九条壊すな!総がかり行動兵庫県実行委員会」(略称;総がかり行動兵庫実行委員会)主催で行われることになった。
 呼びかけ団体は、戦争をさせない一〇〇〇人委員会・ひょうご、憲法改悪ストップ兵庫県共同センター、九条の心ネットワークの三団体である。「解釈で憲法九条を壊すな!実行委員会」が兵庫県レベルで活動されていないため、ワールド市民集会の五団体の一つである「九条の心ネットワーク」が呼びかけ団体となった。この集会は五月三日に個別に開催されていた護憲団体の統一集会という枠組みを超えた歴史的な集会となる。「戦争をさせない一〇〇〇人委員会・ひょうご」は自治労兵庫県本部と兵庫県教職員組合(兵教組)が中核であり、平和運動ではこれまで経験したことがない共闘になる。先日、兵庫県政記者クラブにおいて兵教組泉執行委員長(一〇〇〇人委員会)と兵庫労連津川議長(高教祖委員長・兵庫県共同センター)が並んで五・三憲法集会開催を発表する歴史的な記者会見が行われた(少々オーバーだが、ホントなのです)。
 「迷ってるあなた、このままでいいの」「あなたの行動が政治を変えます」「一人ひとりが、アベ政治の暴走にストップをかけよう」をキャッチコピーとした一次チラシ一〇万、二次チラシ一〇万を印刷配布済み。メインスピーカーは秋葉忠利元広島市長、総合司会小山乃里子、二次チラシには秋葉元広島市長と、赤川次郎さんからのメッセージを掲載。四月八日に清水雅彦(日体大教授)をお招きした集会成功のためのプレ企画(「憲法を守る力を作る」と題する講演)を開催、一二日には五・三集会の成功、二〇〇〇万署名達成のための全県一斉駅前宣伝行動(七〇箇所程度)を予定している。
 集会当日は参議院選挙兵庫選挙区でたたかう二人の候補者、市民各層からの訴え(シールズ関西、ママの会など)の後、神戸市内をパレード(雨天決行)をする予定。一万人を超す歴史的大集会を成功させるべく奮闘中である。


「自治体職員の働く権利Q&A」を出版しました。ぜひ、ご活用ください!

東京支部  山 口 真 美

 近年、大阪の維新の会の動きに見られるように公務員バッシングがあおられ、行政の現場では新自由主義構造改革の名のもと公務員の削減や公務の「合理化」が横行し、公共サービスの縮小や質の低下を招いています。その中で自治体で働く公務員の賃金や労働条件がやり玉に挙げられ、公共サービスの切り捨てに抗し、公務員の権利を実現しようとする労働組合への攻撃も強まっています。こうした動きに対抗し、自治体職員や労働組合の権利を守り拡大していくたたかいがいっそう重要となっています。
 このような状況の中、四月一〇日、日本自治体労働組合総連合(自治労連)の顧問弁護団である自治労連全国弁護団で「自治体職員の働く権利Q&A」を出版しました。
 自治労連弁護団は、自治労連の顧問弁護団として一九九四年に結成されて以来、全国各地の自治体労働者や労働組合に対する攻撃をはね返すたたかいに取り組んできました。「自治体職員の働く権利Q&A」は、弁護団が二〇年にわたって蓄積してきた実例をはじめ、自治体職場で実際に起こっている問題や今後起こりそうな問題にも射程を広げ、自治体労働者や労働組合の権利をどうやったら拡大できるかという観点から自治体職員の権利に関わる問題全般を取り扱っています。基本的な労働条件の問題(給与、勤務時間、休日、休暇)はもちろん、近年増加している公務員に対する懲戒や分限処分、公務災害も重点的に取り上げています。また、現場の労働者の関心の高いテーマである「仕事と生活の両立支援」、「職場のトラブル」、「臨時・非常勤職員」なども最新の状況をふまえて取り上げています。団結権、政治活動、選挙活動など、自治体労働者の権利闘争に不可欠のテーマも実際に職場で発生している事例をふまえつつたっぷり解説しています。
 Q&A形式で九二問に分け、具体的な設問に回答する形で解説しています。公務員の問題では通達の理解も不可欠ですが、本書では必要な判例や通達の紹介にも力を入れています。
 また、コラムでは、「現業の範囲」、「猟官制と成績主義」といった基本テーマから、リアルタイムな話題である「ワーク・ライフ・バランス」、「懲戒処分の濫用と政治による不当な行政支配」、「時代錯誤の大阪府市政治活動制限条例」、あるいは実務的な問題である「自治体職員の労働審判の活用」など、さまざまなトピックスを取り上げています。
 本書の執筆には全国四五名の弁護団員が関わっています。また、編集会議を通じて自治労連の現場の皆さんの声を反映させ、自治労連弁護団として文字どおり総力をあげて作成しました。本書は、自治体労働者の皆さんだけでなく全国で公務員の問題に関わる弁護士にとっても必携の書と自負しています。
 自治労連全国弁護団編・日本評論社発行で、A五判二三二頁、定価は一九〇〇円(消費税別)です。書店になければ自治労連までお問い合わせください。なお、日本評論社のHP(http://www.nippyo.co.jp/book/7097.html)ではQの詳細もご覧いただけます。
 「自治体職員の働く権利Q&A」、ぜひ、ご購入・ご活用ください。