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今 村 幸次郎 二〇一六年 佐賀・唐津総会 特集
佐賀・唐津総会でお会いしましょう
宮 原 貞 喜 二〇一六年 佐賀・唐津総会への誘い
吉 野 建三郎 佐賀・唐津総会、半日旅行、一泊旅行へのお誘い
今 村 幸次郎 戦争法廃止、改憲阻止に向けての秋以降の行動等について
田 井  勝 NLG総会に参加して
加 藤 萌 樹 沖縄県民大会に参加して
玉 木 昌 美 日本国民救援会第五八回全国大会(熱海)に参加して
村 松  暁 高校生に「わたしたちの政治活動は自由だ」のリーフレットを配布して
井 上 啓 コラップ6+αに参加して



二〇一六年 佐賀・唐津総会 特集

佐賀・唐津総会でお会いしましょう

幹事長  今 村 幸次郎

一 今年の団総会は、一〇月二二日(土)プレ企画〜一〇月二四日(月)の日程で、佐賀県唐津市東唐津の「唐津シーサイドホテル」で開催します。この一年間の団の取り組みを振り返り、次の一年の方針等を議論する重要な場となりますので、是非とも多数ご参集下さいますようお願いいたします。
二 一六年七月一〇日に投開票された参院選は、「安倍政治」を許さないたたかいに立ち上がった市民・野党の共闘が、安倍自公政権と正面から対決する歴史的な選挙戦となりました。野党共闘は、三二の一人区のすべてで統一候補を擁立し、うち一一選挙区(青森、岩手、宮城、山形、福島、山梨、新潟、長野、三重、大分、沖縄)で勝利しました。福島及び沖縄では、安倍内閣の現職閣僚を落選させるなど大きな成果をあげました。東京では山添拓団員が当選し、京都では大河原壽貴団員、和歌山では由良登信団員がそれぞれ次点と大健闘されました。
 他方で、自公は七〇議席、おおさか維新が七議席を獲得しました。非改選議員をあわせて改憲四党の議席は、一六二議席(自一二二、公二五、維一二、こころ三)で参院(全二四二議席)の三分の二を超え、衆参両院で改憲派が三分の二超の議席を占有する事態となりました。
 この結果を受けて安倍首相は、選挙戦では憲法「改正」についてほとんど触れなかったにもかかわらず、選挙後、「いかに我が党の案をベースに三分の二を構築していくか。これがまさに政治の技術だ」「これから憲法審査会でいかに与野党で合意をつくっていくかだ」「任期中に改憲を果たしたいと考えるのは当然のことだ」などと述べています。
こうした状況下において、戦争法反対や参院選で大きく盛り上がった市民・野党の共同をさらに発展させながら、「安倍流」明文改憲を阻止するたたかいを強く大きく広げていくことが急務となっています。
三 また、安倍政権は、南スーダンPKOに一六年一一月に派兵する自衛隊の部隊に、戦争法を発動して「駆けつけ警護」や「宿営地共同防護」の任務を付与する方針と報じられています。しかし、南スーダンでは、大統領派と副大統領派とが内戦状態にあります。ここで自衛隊が「宿営地防護」等のために武力行使をすることになれば、自衛隊員が殺し、殺されるという事態が現実化されてしまいます。私たちは、戦争法廃止の声を強め、その発動を何としても阻止しなければなりません。
 中国の南シナ海、東シナ海での軍事的活動の拡大、北朝鮮の弾道ミサイル発射等の情勢を受けて、戦争法制や抑止力論を肯定的にとらえる世論が広がりかねない状況にあります。私たちは、こうした動向に対し、「軍事に軍事で対抗する抑止力論は、相手国との政治的・軍事的緊張を増大させるだけで、人々の安全の保障にはつながらない」ということを草の根から訴え、非戦・非軍事の平和主義を広げることに努めなければなりません。
 総会では、団として、今後、戦争法廃止・発動阻止、「安倍流」明文改憲阻止に向けて、具体的にどのように取り組むか等について、討議していきたいと思います。
四 アベノミクスの強行により、格差と貧困が拡大しています。安倍政権が進める「働き方改革」は、あくまで「GDP六〇〇兆円」実現のための「成長戦略」で、「企業の生産性向上」・「サプライサイド強化」策であることに注意が必要です。八時間労働制の解体を狙う労働時間法制改悪や解雇の金銭解決制度は何としても阻止しなければなりません。労働法制改悪阻止、貧困根絶のための社会保障の抜本改革等を通じて、アベノミクスからの転換、労働者の命・健康・生活が守られる労働のルール構築、生存権保障の実質化を求めていかなければなりません。総会では、こうした課題と団の取り組みについても討議したいと思います。
五 それ以外にも、辺野古新基地建設阻止、治安強化・監視密告社会化反対、政権による教育介入反対、原発再稼働反対、TPP阻止、ヘイトスピーチ根絶、女性差別撤廃等々、重要な課題が山積しています。これらに関する団の方針等についても、積極的な討議をお願いしたいと思います。
六 これからの数年間は、「安倍流」明文改憲との全面的なたたかいのときとなります。今こそ、団は団結し、全団員が持てる力を最大限発揮して、平和、基本的人権、民主主義を守り強める活動に旺盛に取り組み、あらゆる改憲策動をはねのけていかなければなりません。総会において、そのための具体的方針等について討議したいと思います。
 それでは、皆さん、佐賀・唐津総会でお会いしましょう。


二〇一六年 佐賀・唐津総会への誘い

佐賀支部 宮 原 貞 喜(佐賀支部長)

 団総会が佐賀県で開かれるのは二一年ぶりです。支部団員一同、満を持して皆様のご参加をお待ちしています。前回は一九九五年(平成七年)嬉野温泉地での開催でした。奇しくも今年は日本磁器誕生・有田焼創業四〇〇年でもあります。総会の開かれる唐津は、佐賀県では嬉野温泉、有田焼と肩を並べる自然と歴史・文化の豊かな地です。唐津市には、日本最古の水田跡・菜畑(なばたけ)遺跡があり、三世紀に書かれた魏志倭人伝にでてくる末盧(まつろ)国は唐津市にありました。大会会場のホテルは白砂青松で有名な虹ノ松原の西端に位置し、早起きして東の浜の散策をお勧めします。遠く福岡方面に目をやれば前山から浮いたような浮岳(うきだけ)が望めるはずです。唐津は地形的に平坦な山並みを後背地(上場台地=うわばだいち、台形の山容の鏡山=かがみやま)としていますが、唐津から眺める浮岳だけは三角型の山容をそなえて特異な景観をなしています。大会の前後には各遺跡・唐津焼窯元巡り、少し足を伸ばして名護屋城跡と二三の陣跡巡り有田陶器市会場へ行かれてはいかがでしょうか。例年一一月二日から四日にかけて催される唐津くんちをご覧いただけないのが残念ですが、懇親会で唐津くんちの雰囲気をお届けできたらと思っております。
 プレ企画は、原発・有明海・オスプレイ・メガソーラー事件等の報告を踏まえ佐賀の環境を守る取り組みを紹介し団員の今後の運動の糧にしたく議論をお願いします。
 大会後の旅行も後述のように若手団員の結束で魅力あるものが企画されていますので、楽しみにしてください。
 来る唐津総会に是非全国の団員と事務局員並び各ご家族の皆様が多数参集されますようお誘いたします。


佐賀・唐津総会、半日旅行、一泊旅行へのお誘い

佐賀支部 吉 野 建三郎

一 半日旅行及び一泊旅行一日目
 佐賀・唐津総会後の半日旅行と一泊旅行の一日目は、名護屋城跡・佐賀県立名護屋城博物館の見学と、九州電力玄海原子力発電所玄海エネルギーパークの見学を予定しています。
 名護屋城は、豊臣秀吉が一五九二年から始まる大陸進攻(文禄・慶長の役)の拠点として、築城の名手、黒田官兵衛に縄張りを任せ、同じく築城の名手である加藤清正らを普請奉行に任じて築かせた、当時の城郭では大阪城に次ぐ規模の大きな城でした。現在城郭は取り壊されていますが、石垣の跡などから、その規模の大きさなど体感することができるでしょう。
 なお、団総会は、二〇一五年宮城から二〇一六年佐賀唐津にバトンが渡されましたが、名護屋城の大手門は、伊達政宗に与えられ、仙台城に移築されたと伝わっています。
 また、唐津シーサイドホテルを出発し、名護屋城跡に向かう途中に、「伊達政宗陣跡」という名前の交差点があるなど、名護屋及びその周りには、至る所に戦国大名の陣跡があります。佐賀県立名護屋城博物館にある模型(ジオラマ)で当時の名護屋城と陣跡の配置などを見ることができます。
 名護屋城跡・佐賀県立名護屋城博物館の見学の次に、九州電力最大の発電所であり、二〇〇九年から日本初のプルサーマル発電を実施している九州電力玄海原子力発電所玄海エネルギーパークを見学します。往復のバスの中では、地元唐津玄海地区で反対運動にかかわってきた方、原発なくそう!九州玄海訴訟の原告・弁護団員などのお話を聞く機会を設ける予定です。
二 一泊旅行二日目
 一泊旅行は、「武雄楼門」をシンボルとし、江戸時代初期には伊達政宗、宮本武蔵が、また幕末にはシーボルト、吉田松陰らが入湯したといわれている、武雄温泉に宿泊する予定です。
 「武雄楼門」は、東京駅を設計した唐津出身の建築家辰野金吾氏が設計し、東京駅一〇〇周年の際、東京駅の八つの干支のレリーフの残り四つの干支が「武雄楼門」の天井に描かれていたことで話題となりました。
 一泊旅行二日目は、はじめに、有田焼創業四〇〇年で賑わう有田を訪れます。
 日本の磁器は、文禄・慶長の役の大陸からの引き上げの際、肥前鍋島家が日本に連れて来た朝鮮出身の陶工李参平が、有田東部の泉山で良質な白磁石を発見し、有田で日本初の白磁器を産業として創業したのが始まりと言われています。
 有田では、人間国宝井上萬二氏と、その子(康徳氏)、孫(祐希氏)と三代の作品が展示されている井上萬二窯など窯元を見学し、国内屈指の陶磁器の展示数を誇る佐賀県立九州陶磁文化館、そして、深川製磁唯一の工場直営のアウトレットショップ「瓷器倉」と展示施設「忠次館」などがあるチャイナ・オン・ザ・パークを見学する予定です。一九〇〇年パリ万博金賞受賞の大花瓶が展示されている「忠次館」と、深川製磁の器と地元の食材を活かした創作フレンチレストラン「究林登(クリント)」は、本来火曜日は定休日ですが、一泊旅行二日目の火曜日には、自由法曹団の旅行のため、特別に開けてくださる予定です。
 その後、「よみがえれ!有明海訴訟」の有明海の干潟、オスプレイ配備が計画されている佐賀空港を見学し、解散の予定です。
三 最後に
 半日旅行、一泊旅行ともまだ十分に詰め切れておらず(特に玄海原発・有明海・佐賀空港関係)、内容を変更することもあると思いますが、自由法曹団佐賀支部の団員一同が、誠心誠意良い旅行となるように頑張りますので、多数の団員の参加をお願い致します。

以上


戦争法廃止、改憲阻止に向けての秋以降の行動等について

幹事長 今 村 幸次郎

 戦争法廃止・発動阻止、「安倍流」明文改憲阻止に向けて、この秋以降のたたかいが重要となっています。総がかり行動実行委員会等も様々な集会・行動を企画しています。以下のとおりご紹介し、参加を呼びかけます。

一 戦争法廃止、安倍内閣退陣、九・一九国会正門前行動(仮称)
○日時  二〇一六年九月一九日(月) 一五時三〇分〜一七時
○場所  国会正門前
       団の集合場所は国会南庭前(地図は別途ファックスニュース等でご案内します)
○主催  総がかり行動実行委員会 
       なお、同委員会は、全国各地で「九・一九全国行動」を行う予定です。各地でご参加ください。

二 さらなる広がりを求めてー総がかり行動のこれから(仮称)
○日時  二〇一六年一〇月六日(木) 一八時三〇分〜二〇時三〇分
○場所  北とぴあ(東京都北区王子一―一―一、JR王子駅北口・徒歩二分、東京メトロ南北線・王子駅五番出口直結)
○主催  総がかり行動実行委員会
       集会では、高野孟氏、中野晃一氏、渡辺治氏らによるシンポジウム「総がかりのこれまで・これから」(仮称)が予定されています。

三 憲法共同センター第二回全国活動交流集会(仮称)
○日時  二〇一六年一〇月一六日(日) 
       一〇時三〇分〜一五時三〇分
○場所  発明会館(東京都港区虎ノ門二―九―一四、東京メトロ銀座線・虎ノ門駅三番出口徒歩五分)
○主催  戦争する国づくりストップ!憲法守り・いかす共同センター


NLG総会に参加して

神奈川支部 田 井  勝

 この夏、アメリカのニューヨークに行き、NLG(ナショナルロイヤーズギルド)総会にはじめて参加してきました。
 昨年まで、私は本部次長で国際問題委員会の担当でしたので、一度はこのNLG総会に参加したいと思っていたのですが、次長の間はなかなか参加できず、退任してようやく、皆様にお供する形で参加することとなりました。
 私は、今回、自分が参加した労働問題の分科会の様子をお伝えします。
 NLG総会もわれわれ団の五月集会と同じく(?)、全体会やレセプションとは別に、分科会が開かれています。そこでは、貧困問題や差別問題、弁護士の将来問題的な会合なども開かれているようです。私は、アメリカに移民してきている外国人の労働問題を扱う会に参加しました。
 分科会が開かれている部屋に入ったところ、いきなり参加者全員の簡単な自己紹介。私もたどたどしく、「日本において日産自動車を相手に、非正規の労働者を原告として裁判している弁護士です」等々、(本当に)片言の英語で自己紹介し、喜んでもらえました(おそらくです)。
 また他の方の自己紹介からは、アメリカ、カナダ、メキシコの弁護士や労働組合の方が多く参加していることがわかりました。
 分科会では、カナダとアメリカの弁護士から、現在、外国(メキシコやアジア、アフリカ)から、農業や介護、家政婦等々としてアメリカやカナダで多く働くようになっていること、その一方で、保険などにも入らせてもらえず、かなりの低賃金で働かされている状況が発表されていました。発表者曰く、アメリカ大陸(メキシコなど)からきている労働者は、大勢の仲間がいて、弁護士や労働組合にアクセスしやすい状況にあるが、アジア・アフリカから来た労働者は言語の問題もあり、ほとんどの人が一人で苦しい状況の中働かされているとのことでした。
 TPPについても話題に上りました。多くの外国人労働者がアメリカに入ってくることが予想される、その中でその労働者の権利をどう守っていったらいいのかについて、真剣に議論されていました。またその一方で、その外国人労働者が入ってくることで、アメリカ国内の労働者の働き場所がなくなってきていることの問題も慎重に考えなければならない、という話もされていました。
 NLG総会は、英語がほとんどできない私でも非常に刺激的かつ新鮮で、勉強になりました。井上委員長や鈴木団員等々が毎年参加していることもあり、我々日本からの参加者に好意を持ってくださっているようで、非常にありがたかったです。また機会があれば、参加できたらと思っています。


沖縄県民大会に参加して

静岡県支部 加 藤 萌 樹

 私は、六月一九日に開催された沖縄県民大会に参加しました。この大会に参加して、沖縄問題に対する考えが変わりましたので、以下の通りご報告致します。
 この大会は、沖縄県民の女性が、元海兵隊員のアメリカ人男性に殺害された事件を受けて、沖縄からの米軍撤退を求めて開催されたものでした。この大会には、全国各地から、合計約六万五〇〇〇人が参加し、非常に大規模な大会となりました。
 私は、沖縄県民が、米軍撤退を求めるデモ活動を行っていること自体は以前から知っていましたが、今までは、ニュースや新聞報道で見るのみで、実際に沖縄に行って、このような活動に参加した経験はありませんでした。そのため、沖縄県民が、どのような気持ちでデモ活動を行っているのかについて、深く考えたことはありませんでした。また、沖縄問題については、どこか他人事のような感覚で接しており、将来、米軍が日本から撤退する日が来たら良いという程度の思いを持っていただけでした。
 しかし、実際に県民大会に参加し、沖縄県民の怒りに直接触れることで、この問題は、彼らにとって、今後の生き方を大きく左右するほど重要なものであることを知りました。
 彼らは、長期間に渡って、沖縄からの米軍撤退を主張し続けていたにもかかわらず、この主張が受け入れられることがなかったこと、米兵が起こした犯罪によって、何度も被害を被ってきたことから、戦後から現在に至るまで、沖縄県民は被害者であり続けているという認識を持っていました。そして、彼らは、罪を犯す米兵のみならず、沖縄に米軍基地を建設することを許容する日本政府、さらには、これを見過ごし、他人事として扱う本土の人に対しても、強い怒りを持っていることを痛感しました。このような彼らの思いは、県民大会において、女子大学生が述べた「安倍晋三さん、本土に住む皆さん、今回の事件の第二の加害者は誰ですか。あなたたちです。沖縄に向き合っていただけませんか。」という言葉に、とても良く現れていました。
 県民大会に参加することで、沖縄問題は、沖縄県民だけの問題ではなく、日本国民一人一人が真剣に向き合わなければならない問題であることを実感しました。今後は、弁護士として、沖縄問題解決の一助となるような活動をしていきたいです。
 そして、まず始めに、沖縄問題に対する、沖縄県民の気持ちを多くの方々に知っていただきたいと思い、今回ご報告をさせていただきました。


日本国民救援会第五八回全国大会(熱海)に参加して

滋賀支部 玉 木 昌 美

 日本国民救援会滋賀県本部の副会長をしている私は、今回も救援会の全国大会に参加した。常連である関係から懐かしい人に出会う機会となる。いくつもの県本部から日野町事件の署名をいただき、また、阪原弘さんが尾道刑務所等に服役していたころに特にお世話になった岡山県本部の方からはカンパまでいただき、うれしいかぎりであった。
 大会一日目には、東住吉冤罪事件の青木さんの特別報告が印象に残った。「生きてこうした場に立てないのではないかと不安に思っていたが、立ててうれしい。」という発言だった。「生きて救え。」と闘ってきた阪原さんが再審請求中に死亡されただけに心に響いた。
 私は、日野町事件の現状と課題について報告したが、いずれの再審事件にも共通するのが証拠開示問題である。開示を進めてきちんと審理をする裁判官にめぐりあうのかどうかで救済されるか否かが決定的となる。「消えたアリバイ」という番組を作ってくれた元毎日放送の里見繁氏は、「悪い裁判官に当たり続けた事件。日野町事件を一言で言えばそういうことになる。」と書いた(『冤罪をつくる検察、それを支える裁判所』)これは二審判決後の段階のものだ。その後、最高裁判決、本人による第一次再審請求の棄却決定、とそれが続いた。今回、大会でいくつもの事件の報告を聞いたが、「悪い裁判官に当たり続けた事件」があまりにも多すぎる。日本の刑事司法の悲惨な現状に唖然とするばかりである。尚、私は、問題ある司法の現状を知るため、新任裁判官の研修として、救援会の全国大会や裁判勝利をめざす全国交流集会を位置付けたらよいのではないかと思う。
 七月の団の常幹で、松橋事件の弁護団の吉田弁護士から、再審開始決定を勝ち取った経緯について報告を聞いた。大変参考になったが、「新旧証拠を総合評価して、『疑わしくは被告人の利益に』を貫き、自白の信用性がない。」と判断してくれたよい裁判官にめぐりあった、という報告が印象的であった。DNA鑑定等決め手がない中でよくぞ判断してくれた、という思いと、でも、そういう当然のまともな判断をする裁判官が貴重で珍しい司法の現状は何なんだ、という気がする。
 日野町事件支援の全国の方と再会する中、阪原さんが、「親戚でもないのに、休みをとって面会に来てくれ、差し入れまでしてくれる人たちがいる。」と救援会の人たちに本当に感謝していたことを思い出した。救援会の惻隠の情にあふれる活動が冤罪犠牲者を励ましていることは間違いない。
 今回、滋賀県から合計六名が参加したが、痴漢えん罪事件で罰金刑になり(最高裁で確定)、六か月の停職処分後、一年半の研修と称する退職勧奨にも耐え、現場復帰したKさんの妻がお礼の挨拶をした。「本人が教壇に復帰でき、授業やクラブ活動の指導もできるようになった、ここまでこれたのは、救援会の皆さんの支援のおかげ。」との感動的な発言に会場からはあふれるばかりの拍手があった。
 今回の大会は、静岡の萩原団員らの議長の進行のもと、比較的整理された発言が続いて救援会の役割を再認識することができた。参加者は二年後の創立九〇周年に向けて奮闘する決意を誓いあったが、さらなる運動の強化が必要な裁判所の現状である。


高校生に「わたしたちの政治活動は自由だ」のリーフレットを配布して

東京支部 村 松  暁

 はじめまして。三多摩法律事務所の村松暁(六八期)と申します。
 先日、東京都の多摩地域の二箇所の高校で、自由法曹団東京支部が作成した一八歳選挙権のリーフレットを、元気よく配ってきましたので、ご報告させて頂きます。
 リーフレットを配布したのは、学校が始業する前の七時四五分〜八時三〇分という時間帯です。弁護士生活六ヶ月程度ですが、早くも夜型になっていた私は、早起きするのに非常に苦労しましたが、弊所所員に怒られてはなるまいと思い、頑張って起きました。遅刻しなくて良かったです。
 早速話が脱線しましたが、一つの高校では地域の方を含めて計一一人で、もう一つの高校では地域の方も含めて計九人で配りました。
 集まった人たちのチームプレーで、さながら波状攻撃のようにリーフを渡していきました。表紙を見せながら配った人が断られたら、次の人が中身を見せながら配る。友人グループで登校している学生の一人が受け取ったら、次の人が「お友達もぜひ!」と配る。そんなこんなで、賑やかな雰囲気の中で配ったのが良かったのか、受取りは結構よかったと感じました。
 門の前に設置された選挙管理委員会の掲示板を見ながら、「(リーフを)もらおうかな」と受け取っていく高校生もいて、関心があるんだなと思いました。中でも個人的に印象に残っているのは、リーフレットを渡すと、「これ、一八歳選挙権のことですよね?」と話しかけてくれた高校生です。その高校生は、今度一八歳になるそうです。話を聞いてみると、どうやら、選挙が近づいているけれど知らないことや分からないことがある様子。始業時刻が近かったので、知りたいことはリーフレットに全て書いてあると豪語するにとどめました。ただ、もう少し時間があれば、選挙の性質、投票率の低さ、選挙活動とは何かといったことを話してみたかったですし、逆に高校生が学校の友達と政治のことについて話す機会はあるのかなど聞いてみたかったです。
 高校生は、学校という狭い空間の中で共同生活していることもあり、仮に、自分自身が一八歳選挙権などに興味をもっていたとしても、あまり話をする機会はないんじゃないかと思います。どんな形であれ、配ったリーフレットをきっかけに、少しでも高校生が自分自身の選挙権、ひいては政治などについて話し合うきっかけになればと願ってやみません。
 三多摩事務所は、地域に根ざした主権者教育などに取り組んでいますので、これからも、地域のみなさんと一緒に頑張っていきたいと思います。


コラップ6+αに参加して

神奈川支部 井 上  啓

 六月一七日から一九日まで、ネパールの首都カトマンズで第六回アジア太平洋法律家会議(COLAP6)が開催された。参加国は二〇カ国で日本からは日本国際法律家協会のメンバーを中心に二〇名が参加し、日本代表団団長の大久保賢一弁護士を始め、弁護士や学者の先生から合計一三本の報告が、(国際会議だから当然なのだが)英語でなされた。
 日本からの報告テーマは、「世界平和と地域平和」の分科会では、東アジアの平和をめぐる状況や、核兵器廃絶の運動につきオバマ大統領の広島訪問が紹介され、また沖縄の米軍基地問題や、昨年九月に成立した戦争法制と憲法九条の問題が提起された。また「人権」の分科会では、日本とフィリピンの移民問題、人身取引問題、離婚・DV問題などに対処するためのインターン提携共同事業が紹介され、さらに日本国内の「技能実習生」の過酷な労働実態が報告された。「経済発展の権利」の分科会では、原発による経済発展の危険性という観点から、福島原発事故の問題や避難生活者の精神的被害の報告がなされた。さらに先進国である日本における貧困・格差拡大の問題、憲法二五条に反する生活保護費削減処分の取消を求める裁判が全国で提訴されていることが報告された。なお、この報告者は、同じ横浜法律事務所の六八期新人の相曽真智子弁護士。「民主主義を脅かすもの」の分科会では、ヘイトスピーチの問題、戦前の治安維持法との関連で現在の状況を検討し、さらに政府のマスコミ介入など日本のメディアの状況が紹介され、さらに広島大学とフィリピン・ミンダナオ島の自治政府バンサモロとの平和構築プロジェクトの紹介がなされた。
 日本からの各報告の詳細については、日本国際法律家協会の「INTERJURIT」NO.189(二〇一六年八月一日発行)を参照していただきたいが、まる二日間、午前午後と英語漬けになり、ほぼ単語の連想で終始した身としては、中学生なみの英語力をなんとかしたいと強く感じた次第である。
 なお、今回のCOLAP6は、昨年ネパールで開催する予定であったが、昨年四月の大地震の影響で一年順延となったものである。東部山間部ほどではないというが、首都カトマンズにおいてもレンガが倒壊したまま木材で支えているだけの建物などが目につき被害からの復旧は遅れているようであった。カトマンズ市内の歴史地区パタンでも古い寺院が崩壊していた。
 ただ、ネパールは二〇〇八年に王政が内紛?により倒れ民主制に以降しており、同年憲法も制定され、新しい国造りの機運が盛り上がっていて、今回の会議の冒頭には、現職のネパール首相が参加して歓迎スピーチをしていた。
 二〇日からは、オプショナルツアーというか、ポカラ観光に一〇名で参加した。カトマンズからポカラまでは二〇人乗りのプロペラ機で行ったが、ジェット機とは違い、プロペラが回ったと思うとビューンと加速よく離陸し、着陸もキキッと止まった。ポカラではペワ湖でボート遊びしたり、サランコットやチャンドラコットなどのトレッキングに参加したが、雨期のためかアンナプルナ山群は見えなかった。ただ、最終日の午後、ポカラグランデホテル近くからやっとマチャプチャレ山が姿を見せてくれた。ところが、翌日ポカラからカトマンズに戻る飛行機が飛ばず、なんと二〇〇キロの山道をマイクロバスで戻ることになった。午後一時過ぎに出発して、カトマンズに到着したのは午後一〇時ころであった。街灯などない川沿いのじゃり道をぶっ飛ばして走るマイクロバスはなかなかスリリングな体験であったが、ネパールの村々を通り抜けて走るので、町場とは違う家の様子や子供たちの顔が見られて楽しい旅であった。

以上